2008年 07月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 『踏切』

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今日の副題 「凄いの入ってます」

※吟醸
ジャンル:踏切を舞台にした短編オムニバス集(?)
プレイ時間:1時間半くらい。
その他:選択肢無し、一本道。
システム:NScripter

制作年:2005/9/16
容量(圧縮時):70.9MB




道玄斎です、こんばんは。
昨晩、暑くて暑くて気力が減退していたのですが、面白いゲームを見つけたのでちょっとプレイしていました。で、今読了し終えたので、早速。
というわけで今回は「さくらミント」さんの『踏切』です。
良かった点

・踏切をテーマとした短編集で、全体を見れば或る程度の長さではあるものの、一話一話は軽やかに読める。

・普通に一本のサウンドノベル作品として成立してしまうような、凄い作品も入っている。


気になった点

・微妙にオチが付かずに終わってしまっているような、お話も。。

ストーリーは、短編オムニバスですから、説明しづらい。
というわけで、作品紹介のページへのリンクを張っておきます。こちらからどうぞ。


というわけで、「さくらミント」さんの過去にリリースされた作品です。お世話になっているサークル様ですね。
2005年に本作は完成しているハズなのですが、何故か私のサーチには引っかからずに今までプレイしておりませんでした。が、本作には凄い作品が収まっていて、プレイしてこなかったのを後悔しています。立ち絵などは無いのですが、文章や内容で読ませる或る意味で正統派作品。
とはいえ、かなり多くの背景写真などを使用されており、見ていて楽しいです。どうやらご自身で写真を撮ってこられたようなものもあるようですね。
ちなみにスクリーンショットに写っている駅は恐らく原宿でしょう。

で、踏切を一つのテーマとした短編集です。
内容としては、すっごく軽いライトなものから、上質のサスペンスホラーのようなもの、はたまた意外などんでん返しが仕掛けられている感動的なストーリーなど、様々な作品が6編収まっています。


抜群に良かったのは、「羨望」と題されたストーリーです。
もう、この一篇だけで一本の作品として成立してしまうくらいのクオリティを持った作品でした。少しづつ日常がアッチの世界とリンクしていく怖さ。いつの間にか表が裏になってしまう怖さ。そんなものを感じる良質のサスペンスホラー(という言い方が正しいのかどうか分からないけれども)でした。

感触としては、『世にも奇妙な物語』って昔やってましたよね。今でもたまに特別編と題して放送されたりしていると思います。その『世にも奇妙な物語』の初期の作品に似た感じです。
ちなみに私は、断然初期の方が好きです。段々と回を重ねるにつれ、面白みが半減していってしまった気がするんですよ、あの番組。これは脱線ですね。

で、『世にも奇妙な物語』を例に挙げた事からも分かるように、あんまり後味みたいなものは良くないのです。けれども、その微妙なもやもや感が滅茶苦茶好みなんですよ。
もやもや感も含めて、作品が成立しているので、そういう後味の悪さみたいなものも含めて楽しむと良いでしょう。
正直、この一篇を読むためだけに本作をダウンロードする価値がある、といった感じです。六編のストーリーの中で、私的なベストですね。


次点は「おかえり」という作品。
ラストの方で、思わぬ仕掛けにびっくりしたりするのですが(ちゃんと伏線は張ってある)、これも又良質の感動作品になっていたと思います。読者へのミスリードが上手いですよね。
プレイしおわった後で、考え直すと「割とよくあるタイプかな?」なんて思ってしまうのですが、実際にプレイしていると、「うわぁ……そうだったのか……」と思わず唸ってしまう作品です。ノベルタイプのゲームの良さが活きてますよね。

このストーリーも又、一本の作品として成立してしまうくらいのものになっております。
ただ、途中で妙に「笑いを取る」部分が出てきてしまって(グランマが出てきた辺り)、そこの所だけ妙にテンポが悪くなってしまっているので、少し残念。
実は、プレイしていると、この中盤、「別の作品」なんじゃないかと思うくらい、雰囲気が変わってしまっているのです。前半・中盤・後半があるとしたら、前半と後半と比べて中盤が妙に浮いてしまっているんですね。それは微妙にウケ狙い的になってしまっているという事でもありますし、結構頻繁に変わるBGMや、随所に掛かるエフェクトがこうした違和感を与える原因になっているように愚案致します。

全体を見ると、とっても良いストーリーですので、もう少ししっとりとシリアスな感じにまとめても良かったのかな、と。


今、こうして書いていて気付いたのですが、全6編の作品を提示する順番にもこだわって作られたのかな、なんて思います。
最初は割とライトで軽めのストーリー。後半から読み応えのある作品が増えてきます。
尤も、最初の「男の戦い」とか「青春18切符(仮)」なんて、結構面白いんですがw

「男の戦い」に関しては、結構誰しも思い当たるような、日常の出来事を書いた話で、「ああ、こういう事あるよねぇ」と妙に共感してしまいます。かく言う私も、毎朝毎朝、いっつも同じ車両の同じ場所に乗っているお姉ちゃんに、いっつも鞄の角で腹を突かれたりして、いつのまにかお互い「またお前か!」みたいな雰囲気になっているのでしたw
名前も知らない、けれどもいっつも見かけるあいつとの心の中だけのバトル。着目点が面白い作品でした。オチ的なものはないんだけどもね。


「青春18切符(仮)」も男なら誰しも経験のある(?)、「とある系統の本」を何とかして買おうとする、高校生のお話。これまたオチもなにもないんだけども、無駄に熱いので結構笑えます。

作品の中でもありましたが「無難な雑誌を重ねてレジに持っていく」という手法は、まぁポピュラーなんですが、私自身は、「逆に無難な雑誌を上に重ねて持っていく、という行為が実は恥ずかしいんじゃないのか?」とレジに本を持っていく途中で思い直して、「無難な雑誌を下」に、「アレな本」を上にしてお会計を払う、という男気溢れる事をやったことがありますw


さて、一方で「海」「アルミ缶」といった作品は、結構いい所までいきながらも、何となくオチが付かずに、さらりと流れてしまって少し物足りなさが。ただ、各作品の配置を考えるとこのくらいでもいいのかな? と思わなくもないのですが、「アルミ缶」はもうちょっと、オチが付いていたらなぁ、と個人的に思いました。じわりじわりと期待が高まって一気にクライマックスへ、という辺りで、何となく終わってしまったので、ありゃりゃ? と。


短編オムニバスといって侮る勿れ。
とっても良質の作品が詰まった、切り口の楽しい作品集です。「羨望」はちょっと暗めのサスペンスホラーが好きな人にはお勧めの一篇です。お好きな方は是非是非プレイを。
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by s-kuzumi | 2008-07-09 20:00 | サウンドノベル | Comments(4)
Commented by TAKER at 2008-07-10 22:50 x
こんばんは、TAKERです。
懐かしい作品のレビューありがとうございます。

この作品はさくらミントの処女作ということで、
ノベルゲーム作成のノウハウもほとんど無いまま、
「それじゃ、とりあえずテーマだけ決めてみんなで書いてみるか」
という感じで作者も演出もほとんどバラバラのまま作り上げたものです。

「羨望」は私の作ですが、
それまで文章をほとんど書いたこともないこともあって、
後半はウンウン唸りながらひと晩で1行とかなんとか書いていった記憶があります。
自前の写真は近所のほか、「おかえり」で使われた踏切は新海誠氏の
出身地である長野県小海町まで撮りにいったものです。
…しかし真夏にスーツ姿で、じっと佇んでいるのは流石に堪えました(←私ですw)
Commented by s-kuzumi at 2008-07-11 00:27
>>TAKERさん

こんばんは。
「羨望」、TAKERさんがお書きになっていたんですね。
いや、すっごく面白くて、私的に『踏切』の中ではベストのシナリオでした。すっごく緻密で、スリルに満ちていてとっても面白かったですよ!

小海町っていうと八ヶ岳の方でしたっけ?
私にゆかりのある長野の土地は「~郡」で「大字」とかだったりするので、もう辺境地もいいところなんですがw あっ、刀が少し有名かも……。

それはそうと、スーツのお姿はTAKERさんなんですねw
ああいう手作り感、好きなんですよねぇ。真夏にスーツを着るのは耐え難いとは思うのですがww
Commented by Low at 2014-02-03 12:59 x
先日ベクター探索で発見でき ようやく読むことできました。

わたしは終編の「おかえり」が気になりましたかねえ。
なんか 気になるなあと・・・ 途中でミスリードさせようとしてるのかなあと気付き ラストでそおかあと。  幽霊なんて 会ったことも見たこともありませんが 彼みたいなのがいてもいいかなあと思いますね。

見たことも会ったこともないですが こおいう話は好きです。

>「無難な雑誌を下」に、「アレな本」を上にしてお会計を払う、という男気溢れる事をやったことがありますw

あ~ あるある 若いころw 
レジが若い女性でも知り合いでなければ・・・・・   それでもちょっとは はじかしかったかな・・・

Commented by s-kuzumi at 2014-02-23 12:31
>>Lowさん

こんにちは。
また懐かしい作品ですねぇw

今は確か、こちらのサークルさんは、商業ブランドになっていたハズ……。

この短編集は、決して派手さはないけれども、地味に面白い作品が詰まっていて、「おお!」と驚きながら読んだ記憶があります。

私が好きなサークルさんでした。
また、フリーでも何か出してくれないかなー、なんて。


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