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久住女中本舗

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2008年 07月 11日

フリーサウンドノベルレビュー 『きみいろサンタ』

フリーサウンドノベルレビュー 『きみいろサンタ』_b0110969_01754100.jpg

今日の副題 「エンディングの爆発力」

※吟醸
ジャンル:メイド喫茶とクリスマス商戦バトル!(?)
プレイ時間:1ルート1時間半~
その他:選択肢あり。5つのルートが存在。18禁作品。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2006/12/25
容量(圧縮時):86.6MB




道玄斎です、こんばんは。
昨夜ちらっと予告していたように、ちょっと面白いゲームを発見したのでご紹介。
ミニスカサンタプロジェクト」(でいいのかな?)の『きみいろサンタ』です。美少女ゲーム好きならハマれる事請け合いです。
良かった点

・環のルートでのラストの盛り上がりは凄い。

・良い意味でのオーソドックスな美少女ゲーム的作品。


気になった点

・ルート間の密度のばらつきが気になる。

・ちょっと細々した点でいくつか(後述)。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
最近できたメイド喫茶に押され、売上不振に悩む老舗ケーキショップ。
その跡継ぎである主人公は、クリスマスシーズンを前にある決断を下す。
「メイドに勝つにはミニスカサンタしかねえ! この1週間で決着つけてやる!」
かくして、老舗の暖簾を守るために4人のミニスカサンタ(バイト)が立ち上がった──!

こんなストーリーになっています。


全く季節は合ってませんが、今日はクリスマスをテーマにした作品をご紹介。
経営不振に悩むケーキ屋がてこ入れの為に、ミニスカサンタのバイトを導入する、なんて「それメイド喫茶と同じじゃん……」というつっこみはさておき、なかなか楽しい作品でした。
経営不振を打開すべく、従業員にコスプレをさせる、というテーマは私のお気に入りの作品『挽歌の候、如何お過ごしでしょうか』にも一脈通じるものがありますね。

本作は、まぁ言ってしまえば「ギャルゲー」なんです。あっ、18禁と思しいからエロゲーかも。。
兎に角、可愛い女の子が一杯で、主人公が乗り越えるべき試練と恋愛がくっついて話しが進んでいくという、或る意味でとてもオーソドックスなスタイルになっています。

ヒロインの布陣も、高飛車系のクラスメイト、主人公を兄としたう幼なじみの妹系キャラ、眼鏡の巫女さん(関西弁だけどもw)、そして物語の或る意味でキーパーソンの謎の少女というw
もう、なんかコテコテの美少女ゲームですよね。

けれども、例えば後述する環のルートなんかでは、そこらの商業ゲームよりもよっぽど勝っているような所があって、侮れません。
オーソドックスである事と、単純な二番煎じとかマンネリとかはまたちょっと違うんですよね。


さて、環のルートは抜群に良かったです。
本作の中で、一番密度の濃いルートだったのではないでしょうか?
何が良かったのかって、後半からラストへの盛り上がりが凄まじいものがあったのです。大体、綺麗に分けられない事を承知で「結論系エンド」と「余韻系エンド」と最近、分けて考えているのですが、環のルートは「結論系」。
最近、「余韻系」の作品がすっごく増えているので、久々に「結論系」をプレイした、という嬉しさや楽しさ、はたまた懐かしさみたいなものも多少あるのですが、そういうものを差し引いても、やっぱり良いルートだったな、と。

兎に角、後半からの展開が熱い! メイド喫茶とのバトルもそうですし、主人公と環の二人の関係もグイグイと盛り上がっていきます。
そういえば、メイド喫茶とのバトルが目に見える形で勃発するのは、この環ルートと、桃美ルートの二つですね。

環ルートの場合、資本主義社会の弱者の淘汰というか、まぁそういうテーマみたいなものも織り込まれつつ、それと足並み揃える形で恋愛の方もちゃんと進展していくので、恋愛と主人公が乗り越えるべき試練というテーマがしっかりと絡み合っており、とても良かったです。
恋愛もあまずっぱさ前回で、見ていてこっちが赤面してしまいます。

例によって例の如く、問題が起きて、解決しての繰り返しではあるのですが、そのテンポも丁度良い感じですし、何より、エンディングへ向けて畳み掛けるように、熱いストーリーが展開していくのでした。こういう熱さは「あおぞら幼稚園」さんのそれに近いものもありますね。
で、やっぱり多少ご都合主義的な部分は確かにあります。が、そんなものを振り払ってしまえるパワーのあるストーリーでした。


真奈美のルートなんていうのは、とってもオーソドックスな「妹みたいな女の子」との恋愛を描く、これは本当に良くあるタイプのお話でした。
ただ、なんだか妙にあっさり終わってしまって、ちょっと物足りなさがあるのも事実。このルートでは、メイド喫茶と正面切っての戦いは出てきません。折角の舞台がそろっているのに、恋愛パートだけが描かれてしまった感じを多少受けました。
又、物語の始発部で語られる環との「勝負」の行方なども、すっぽり抜けてしまっているので、そういう所もしっかりと描写し、肉付けをしていけば、より良いストーリーになったのでは? と愚案致します。


千里に関しては、日本人なのにクリスマスを祝い、あまつさへケーキ屋でクリスマスのケーキを作っている主人公と、厳格な神社(親父は厳格な神主だ)の巫女さんたるヒロインの恋愛、というちょっと面白いテーマが入っています。
これも、なんだか割とあっさりと、神主の親父が二人の仲や、巫女がケーキ屋でバイトをする事を認めてしまった感がw いっそ思い切って、神主を納得させるような「神主とのバトル」とケーキを作るという事をミックスさせても良かったかも。

うんっと単純に考えれば、神主が納得するような、主人公のケーキに掛ける情熱や、生き様を見せて、或いは和風を取り入れたケーキを作っちゃったりなんかして、なんとか神主の理解を得る。それがきっかけで、神主さんも密かに町のケーキ屋たる富士屋を応援して、地域社会での必要性が今ひとたび認められ、経営が持ち直す、みたいな要素があっても良かったかな、と。ちょっと環のルートの後だと、悲しい事に他のルートのラストが物足りなく思えちゃうんですよw 或いはちらっと出てきた千里の競馬好きという特徴を上手くシナリオに盛り込んでも良かったかな?

そういえば、今、「生き様」なる言葉を使いましたが、遠藤周作という作家は「死に様という言葉はあるが、生き様という日本語は無い。辞書に載ってないから」と言ってましたが、私は使いますw もしかしたら『日国』には載ってるかもしれないし、「死に様」があれば、「死」を対義語の「生」に代える事は日本語として、すっごく自然な事なんです。

良くも悪くも、日本語の特徴って「変化する事」なのですから。例えば「ら抜き言葉」なんていうのも、物凄く日本語的です。しかも「ら」を抜く際には「可能」の意味の時に限定される、という分かりやすい特徴もあるわけで、「正しい日本語を使え!」と仰る方は怒られるかもしれませんが、私は容認派だったりします。遠藤周作だって、彼の使う日本語を明治最初期くらいの人間が見たら「なんて変な言葉遣いしてやがるんだ……」って思うでしょw それに辞書に載ってないから日本語としてオカシイってのは、順番が逆です。「先ず最初に言葉があった」のですよ。みんながその言葉を使うようになったから辞書に採録するんです。

勿論、「単位の数え方を間違えたり」なんてのは、嫌いなんですよ? こないだパックのお寿司を買ったお話をしましたが、「お箸何本入れますか?」って言われて、「おいおい、お箸は一膳、二膳って数えるんだろうよ……」と説教垂れたくなってきましたが、大人しく「一膳で」とさりげなく主張するに止めておきましたw

また、派手に脱線してしまいましたねw
まぁ、兎も角、環のルート以外は、もうちょっとこうギミックというかそういうのがあってもいいんじゃないかなぁ? と感じたのです。そういう意味でルートによる密度のばらつきみたいなものを感じました。


さて、最後の最後にとっておいた、桃美ルートは、敢えて順番を付けるとしたら、環の次のルートになりましょうかね。これはどちらかと言えば余韻タイプ。
桃美の正体(いや、すぐに分かっちゃうんですがw)や、メイド喫茶とのバトルなんかがリンクして手堅く纏まったシナリオです。これはオーソドックスでちょっとほっと出来るタイプのシナリオだったと思います。最後、盛り上がりみたいなものには少し欠けるけれども、良いお話だったと思います。


で、気になった点ですが、細々とした部分でいくつか。
スクリプトの関係だと思うのですが、文字表示が重なって表示されてしまう所が随分ありました。特に複数人による一斉発話の際に、

「がんばろー!」
「がんばるぞ!」

みたいに、会話ウインドウに二列でセリフを一気に表示させる、なんて場面があります。
この時に「がんばろー!」と「がんばるぞ!」が重なって表示されて、ぐちゃぐちゃっとなってしまっていました。又、文字が微妙に会話ウインドウからはみ出たりしているものもあったり。。
あと、これは結構痛いのですが、「既読スキップ」がついていません。「スキップ」なるものは搭載されているのですが、未読までスキップしてしまったり、既読をスキップしてくれなかったりと、ちょっと挙動が不審。私の環境の問題、なのかしら……?


大体、こんな所でしょうか?
環ルートが良かっただけに、他のルートに関してはちょっと辛口になってしまいましたね。
季節ものの作品ですが、12月まで取っておくもよし、これから夏本番の今にプレイするのもよし。楽しみ方は人それぞれです。

環ルートが好みだったので、吟醸にしてみました。是非、環ルート、やってみて下さいね。
それでは、また。

by s-kuzumi | 2008-07-11 00:17 | サウンドノベル | Comments(7)
Commented by Tner-Harold at 2008-07-11 10:41
可愛いですね。
Commented by うめ at 2008-07-12 23:31 x
この間このブログを知って参考にさせてもらってます。
きみいろサンタ面白かったです。環の話は本当にバランスよかったです。
ところで、4つエンディングとのことでしたが、
セーナルートもありましたよ。えっち絵はないですけど。
Commented by s-kuzumi at 2008-07-13 05:20
>>うめさん

はじめまして。
拙いブログを参考にして下さっているとのこと、嬉しく思います。

『きみいろサンタ』は王道ですが、楽しめるゲームだった事は間違いないですよね。やっぱり環のルートが一番グーなんですが。。

ありゃ? セーラのルートもあったんですか……。
これは、もう一度プレイして確かめねば。。。貴重な情報ありがとうございます!

どうぞ、これからも宜しくお願い申し上げます。
Commented by akino at 2008-07-13 14:29 x
道玄斎さん、こんにちは。
NScripterのデフォルトのスキップは未読・既読関係なしにとばして行きます。
たぶん既読スキップの指定をしていないのでしょう。

あと、既読部分をとばしてくれない部分ですが、分岐などで重複している文章を
別々に記述しているからではないでしょうか。
内部的に別の箇所にある文章は、内容が同じでもとばすことはありません。
(あ、でもこれは既読スキップが有効でなければ当てはまりませんね……)
Commented by s-kuzumi at 2008-07-13 23:56
>>akinoさん

どうも今日はありがとう御座いました。

さてさて、NScripterの挙動についてご解説いただき、ありがとう御座いました。ついつい「既読スキップ」がデフォルトだと思いこんでいましたw もう1回、NScripterのマニュアル読まないと駄目ですね……。
Commented by 通りすがり at 2008-08-31 21:17 x
システムはNScripterではなく吉里吉里ですよ。
Commented by s-kuzumi at 2008-08-31 21:55
>>通りすがりさん

こんばんは。
調べてみたら、仰る通り吉里吉里/KAGだったようです。
ですので、早速修正致しました。ご指摘有り難う御座いました。
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