久住女中本舗

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2008年 07月 18日

フリーサウンドノベルレビュー 『Nという名の男 Bという名の女』

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今日の副題 「センスが光る鬱系ノベル」

※大吟醸
ジャンル:鬱系ノベルゲーム(?)
プレイ時間:1時間半~
その他:選択肢無し、一本道。誤字修正パッチを当てておくと吉。15歳以上推奨。
システム:NScripter

制作年:2008/7/16
容量(圧縮時):34.2MB



道玄斎です、こんばんは。
昨日ちらりと話題にしたゲーム、滅茶苦茶私の好みでした。
なんだか、ある系統のゲームをプレイすると連続して似たような系統を引き当ててしまうものらしくて、ここ最近、鬱系と呼ばれるような、ちょっとダークなゲームをプレイしていたら今回も、というオチでした。今回も前半から中盤に掛けて『鬱夫の恋』を彷彿とさせるような、かなりダークな世界が見えますよ?
というわけで、今回は「禁飼育」さんの『Nという名の男 Bという名の女』です。
良かった点

・全体の雰囲気作りが巧み。

・ダークな描写と幽かに見える救いの手が、プレイヤーを飽きさせない。良質の引っ張り方。

・後半からラストの一枚絵の流れが見事。


気になった点

・例の男の感情面で微妙に消化不良感が。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
新任教師の中村という男に一目惚れしたてあみ

・・・少女の初恋は始まったばかり

こんな感じ。
なんだかとってもあっさりとした説明なので、少し補足しておくと、主人公のてあみちゃんは、正義感が強いちょっと不器用なタイプの女の子なんですね。で、授業中に騒いでいるヤツらに「ちょっと静かにしましょうよ」的な事を言ってしまったが為に、イジメられてしまう。
そんなイジメを救ってくれたのが、中村先生だったのだけれども……。

という感じですね。
てっきり、恋愛モノかと思ってしまいましたよ?

てあみちゃんは私の大好きな「姫カット」で、日本人形っぽい和風美人。
イラストもちょっと特徴があって良かったですね。全編に渉ってラフな感じのイラストになっています。これはてあみちゃんだけに限らず、全員がそういうタッチで描かれていますが、絵がとっても上手です。だからラフっぽいからといって、それが手抜きに見えたり雑に見えたりする事もなく、作品の雰囲気にしっかりととけ込んだ「演出」なのだな、と感じさせてくれました。

この演出に関して、更に付け加えておくと、やっぱり全編に渉って「モノクロ」な背景となっています。画像のチョイスや加工もとってもシックで素敵です。ただ、少し人物の絵が出ている時に背景が寂しいかな? 
何となくですが、、全体的なイメージとか雰囲気で言えば『本当の願い事』に少し似てる感じかもしれません。『本当の願い事』はちゃんとカラーですが。
ともかく、全体を通しての一貫した雰囲気作りの妙がヒシヒシと感じられる作品でした。

作者様は『さくっとパンダ』をお作りになられている方ですね。
『さくっとパンダ』。私も「結構いいよ」とお勧めをされているのですが、微妙に尺が長いみたいで躊躇していたのですが、これはやらないと駄目ですねぇ……。近いうちにプレイするつもりです。


内容に関して踏み込んでいきましょう。
てあみちゃんのイジメの描写は、王道的と言っても良いものです。
ある日学校に行ったら、机が無くなっていたというオーソドックスなものから、体育の時間、わざとボールをぶつけられたりと、どっかで見たことのあるようなものまで結構シビア。
この辺りの状況のダークさって言うんでしょうか、そういうものもとっても良く描けています。ただ、鬱系の要素が多分にあるので、このあたりで既に限界が来てしまうかも。
少なくとも、万人受けはしないかな、という感じですが、こういうちょっと暗めで、しかもラストで滅茶苦茶盛り上げてくれるような作品が好みの人は、プレイする価値は多いにあると思います。

結局、そのイジメを理解してくれて、助けてくれる先生にてあみちゃんは惚れちゃうわけですが、実は黒幕がその先生でして……。色んな事情があってそういう事をするに至るわけですが、この辺りからかなりプレイするのが苦痛になってきます。文庫版の『ガラスの仮面』の10巻辺りで、マヤが劇団つきかげの面々や、芸能界からハブにされていくのを見るのが辛い、という感情に似ていますね。って分かりませんよねぇ?w

その後はもう、不幸の連続で、見るに堪えないのですが、そんなてあみちゃんに救いの手が。
偶然間違い電話で知り合ったあゆり、という女の子です。
まさに自殺しようとしていた時に、偶然間違い電話が、そしてこちらの事情にお構いなしに「コンビニの新作肉まん」の話をされて、てあみは自殺を思い止めます。

この下りが凄く印象的でした。
実際、本当に辛い事があっても、本当に苦しくて腹に短刀を突きつけていても、本当に下らないちょっとした事で、人間って凄く楽になれたり、すっきり出来たりするんですよね、多分。
このあゆりちゃんの登場で、前編は幕を下ろします。
そう、一応、前編、後編に別れているんですよ。


ここから、やっと友達も出来て少しづつ、ささやかだけれども幸せな日常が戻りつつある、という辺りでまた事件が。事件の内容は相変わらずハードです……。
兎に角、ハラハラさせて、安心させて、またハラハラさせる、みたいに目が離せなくなってしまいます。

ラストは是非ご自身で確かめてみて欲しいのですが、完全なハッピーエンドっていうわけではありません。けれども、とっても良いエンドで、後半からエンドの一枚絵に向けての流れは本当に見事。
確かに完全なハッピーエンドじゃないのですが、それでも「最後までプレイして良かった」と思えるようなエンドで、目頭が少し熱くなってしまいました。

気になった点は、中村先生の感情面で消化不良の部分があった、という辺りでしょうか。
どうも中村先生は彼の本来の目的とは別に、てあみちゃんに好意を抱いていたと思しい所もあるのです。個人的にもうちょっとそこらへんも表現して「ただの悪役」ではなくて、悪役の悲しさみたいな部分が見れたら良かったかな、と。
あと、これは矛盾なのか分からないのですが、物語の核心のトリックというか、問題での中村先生の立ち位置が微妙にフラフラしているような。それは彼の職業は結局なんだったんだ? という辺りです。


大体こんな所でしょうかね。
それなりの長さがあって、しっかりと楽しめる良作でした。
全体的に鬱成分が多めなので、ニガテな人は要注意。作者様のサイトの「携帯小説風スイーツノベル」なんて、ジャンル分けに騙されちゃ駄目ですよw

ちょっとダークな雰囲気が好きな方は是非プレイしてみて下さい。
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by s-kuzumi | 2008-07-18 21:51 | サウンドノベル


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