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2008年 09月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『アリスは鳥籠』

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今日の副題 「思わぬラストに唸ります」

ジャンル:サイコサスペンス&ミステリー(?)
プレイ時間:~二時間
その他:選択肢なし、一本道。15歳以上推奨。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2008/8/30
容量(圧縮時):40.1MB




道玄斎です、こんばんは。
良く、「ある作品をプレイすると、連続して似たような作品を引き当てる事が多い」と書いていますが、今回は「アリスつながり」という事になりましょうか? ただ、アリスつながりとはいえ、かなり私好みのミステリー(?)で存分に楽しませて貰いました。
というわけで、今回は「偽書[香津宮奇譚]」さんの『アリスは鳥籠』です。
良かった点

・物語に緩急があり、緊張すべき部分、ちょっとほっとするような部分のメリハリがしっかりとしている。

・ノベルゲームならではの手法による演出もあり、興味深い。


気になった点

・ラストで出てくるキャラが少し唐突な気が。

・もう少し、シメを意識したエンディングだと良かったかも。

タイトルにアリスを冠するだけあって、中々それっぽさがある作品でした。例えば、ゲームの付属文章、所謂「readme.txt」なんですが、それも本作の場合「私を読んで!.txt」となっていました。これは例の「drink me!」「Eat me!」のパロディでしょうね。
そんな細かい部分にもギミックがあって、もうそれだけで私好みなのが分かるかと思いますw 他にアリスっぽさがあるとしたら、主人公の詠美がゴスロリ(甘ロリ系らしい)の格好をしている、なども入れてもいいのかな? けれども、一番アリスっぽいのはラストで……っと、微妙にネタバレになりますからこの辺で。気になった方は是非、最後まで読んでみて下さい。

さて、ストーリーですが、ベクターの紹介文から引用しておきましょう。
苦しくて目が覚めた。

ぼやけた朝の視界の中で、私にのしかかった母がにたにたと笑っていた。

骨と皮だけの痩せて醜く細い腕が、私の首を絞めていた。

――見慣れた光景だった。

選択肢なしサウンド付きノベル

こんな感じのストーリーです。

少し、暗めでクセのある作品でしたが、先にも述べましたように好みのテイストでした。
なんと言っても、この作者様は「縦書き」で文章を綴られます。書類だなんだってのは、今はみんなA4横書きがデフォルトになっていると思しいのですが、やっぱり縦書きは独特の味わいがあって私は好きですねぇ。今回、じっくりとプレイしたわけですが、横書きのものだと「ノベルゲームの“シナリオ”」というイメージで、それが縦書きだと途端に「文章」というイメージになってしまうんですね、私の中では。
シナリオと文章という二つの概念がどれほど離れているのか? っていうのは自分でも良く分からないのですが、何となく感覚的に、ね。で、やっぱりホラーとかミステリーとか、或いはサスペンスなんて作品は縦書きがあっているような気がします。というのも、自分が本で読む際にはみんな「縦書き」だからなんでしょうw

勿論、ただ単に縦書きってんじゃなく、文字の大きさとかフォントとかも拘っていたように思います。物凄く読みやすいんですよ。すらっと自然と頭の中に入ってくるというか。
意外とこの読みやすさに関連して、「クリック待ちのタイミング」が寄与している部分が大きいのかな? とも思いましたね。多くの場合、一文ごとにクリック待ちになったり、長めの文章だと途中の句点でクリック待ちになったり、まぁ、そういう処理ですよね。
ところが、本作の場合、実際に読み進めていく読書スピードっていうのかな? そういう部分でクリック待ちを設定しているような印象で私はプレイしやすかったです。皆様は如何でしょうか?

さて、作品の中身にも踏み込んでいきましょう。
主人公詠美は、色んな意味でだらしない母親と二人暮らし。どうやら母親は詠美を生んだ事を後悔しているようで、彼女を疎み、そして時には彼女を殺そうとまで考えているようです。
物語が大きく動くのは、詠美の母親が「またしても」男を連れてきて、そして、やはり「またしても」その男との結婚を詠美にほのめかす所からです。

問題は、悉く母親の結婚を潰してきた詠美が、その新しい男に惚れてしまったという。
ここで、注目したいのは、「ノベルゲームならではの手法」が取り入れられている点です。文章での説明は極々あっさりとしたもので、描写そのものが「無い」と言っても良いレベルなんですね。ですが、印象的な背景を次々と短い時間で連続して見せる事で、読者に「何があったのか?」を雄弁に示してくれているという。
この演出、凄くいいですね。決してエフェクト全開とか、ムービーバリバリとかじゃないのですが、非常に効果的で良い演出だったと思います。

その後、詠美は母親を殺害し、自殺を図るわけですが、そこに麻里子という救いの手が。
この辺りの呼吸は『Nという名の男 Bという名の女』の前半部のラストに通じるものがありますね。実際、本作でもこの辺りで前半が終了、という感じです。

その後、麻里子と一緒に詠美は廃屋となっている祖母の家で生活を始めるわけですが、そこからが後編ですね。
ここは、ネタバレになってしまうので、詳しくは書きませんが、「ををを!」と思わず唸ってしまうような展開で、吃驚しました。分かる人だけ分かって貰えればいいのですが、大島弓子の『F式蘭丸』っぽい世界になってしまって、面食らうと同時に「これは面白いぞ……」と素直に感じました。って分かる人、いないよ、ね……?


さて、気になった点ですが、ラストのあたりでいくつか。
文章もメリハリがついて読みやすくて、ギミックも搭載されていて、良質の作品である事、疑いの余地はないのですが、割と唐突に謎を秘めた「蔦野」というキャラが出てきて、物語の謎解きの役目を果たすのです。裏の設定があれこれありそうで、キャラとしては魅力的なんですが、やっぱり唐突感があるように思います。
結局、蔦野は「誰の依頼で動いているのか?」とか、明確な回答はないんですよね。それに最後の最後でオイシイ所をかっさらっていってしまったような印象もw

ラストも「これでお終いじゃ!」というような「シメ感」の漂うものではなく、割とさらりとしたものだったのも、蔦野に関する違和感の一因かもしれません。蔦野の正体に触れつつ、物語をエンディングに持って行ければ、更に良い作品になったかもしれません。


大体、こんな所でしょうか?
あれこれと書いてしまいましたが、レベルの高い作品だと思いました。
書き忘れていたのだけれども、女の子の心理描写がリアルな感じで、良かったですねぇ。私は女の子じゃないので、あのくらいの女の子が何を考えて生きてるのか、なんて分からないのですが、それでもリアルさを感じるものだったような。まぁ、女の子をリアルタイムで眺めていた時期もありますし、「自分と世界との関係性(男との関係だったりする)を進捗させる事によって、独特のスペリオリティを獲得する」みたいな、女の子の心理ですねw 多分、女性目線ではないような気はするのですが、納得のいく描写になっていたように思いましたよ?

それでは、今日はこのへんで。
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by s-kuzumi | 2008-09-16 21:21 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by くじら at 2008-09-17 04:23 x
お久しぶりです。この夏は引きこもって終わりそうですw

アリスは私も大好きなので、やってみたいと思います!

名前変換などがあるゲームだと、恥ずかしながらついつい自分の名前を入れてしまう私ですが、デフォルトがアリスだと何故だか変える気がおきないんですよね。
アリスって名前がもうなんだか特別なイメージで代え難い感じですw

ではでは、今日はこのへんで~。
Commented by s-kuzumi at 2008-09-17 23:48
>>くじらさん

こんばんわ、ご無沙汰しております。
名前変換のゲームは、私の場合「デフォルト」を使用する事が殆どです。下手に恋愛モノに自分の名前を入れちゃうと、顔から火が出る程恥ずかしくなってしまうのでw

アリスに話しを戻すと、なんて言うかもう「記号化」された名前ですよね。決して古いお話じゃないものの、異常なまでに浸透していて、そういうのに凄く興味がありますねぇ。


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