2008年 09月 27日

フリーサウンドノベルレビュー 『菓子狐憑き』

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今日の副題 「ドラマチックで、色んな部分で楽しめます」

※吟醸
ジャンル:狐と人間の少女との出会い(?)
プレイ時間:2時間ほど
その他:選択肢なし、一本道。フルボイス。
システム:NScripter

制作年:2008/10 (と、readme.txtに書いてある。フリーソフト版 ver1.0)
容量(圧縮時):92.8MB



道玄斎です、こんばんは。
さて、ボチボチ忙しくなってきて、色々とやらねばならぬ事の増えた今日この頃ですが、取り敢えず宣告通り、「花を吐く抄女」さんの新作の一つ『菓子狐憑き』のレビューを書いておきます。恐らく、今後劇的にゲームレビューの更新頻度が下がると思しいのですが、まぁ、一つお含みおき下されば幸いです。
良かった点

・『一子~』同様に、テキストの読みやすさ理解のし易さが劇的に向上した。

・ストーリー性が表に出て、ラストは物悲しさをのこした上質のもの。


気になった点

・微妙に単語の読み方で気になった部分が……。

ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。


さて、前回に続いて連続で「花を吐く抄女」さんの作品を取り上げています。同時に二本、フリー版でリリースして下さったからですね。思えば『挽歌~』をプレイして「これはもっと評価されていい」と思ってから早幾とせ(ってそんなに経ってない)。確実にレベルが上がってきていると感じました。これも前回の『一子~』の時にも書いたのですが、割と最近のリリースでは、割と抽象的というか、微妙に捉え所の無い部分に踏み込んだものになっていたので、『一子~』そして今回の『菓子狐憑き』の明確にストーリーを持った作品が表に出た作品が、この作者様の場合とても新鮮で、且つ素晴らしいものになっていたと思います。

ついつい忘れてしまうのですが、とても多産なゲームメーカーでいらして、今回の作品なんかを見れば、本当に着実にレベルが向上している事が分かるかと。定期的なリリースもファンとしては嬉しい所。

「※当サークルのノベル作品には絵は登場しません」なんて書いてあるわけですが、そんな事は実はないんですよね。一般的な「立ち絵」「一枚絵」が存しないだけで、ちゃんと発話しているキャラの絵がその都度表示されるのです。それに嬉しいフルボイス。
声優さんのチョイスも演技もとってもグーなんですよ。今、「どなたがお声を当てているのかな?」なんて思って調べてみたら、何とプロとしても活躍している方のお名前を発見してしまいました。「リーダさん」と云うと分かる方もいらっしゃるかも……。天川みるくさんですね。
「そんなにまた捨てられるのが恐ろしいのですか!?」というビンタと共に投げかけられる台詞は、ぐっさりと刺さった記憶がありますw あっ、いや本作ではなく『遥かに仰ぎ、麗しの』です。あんなにトラウマをガシガシっと刺激されたゲームは珍しいw 評価は割と分かれるのですが、私は傑作の一つだと思ってたりして。

っと、また脱線ですね。
ともあれ、他の声優さんもプロとして活躍されている方ばかりで、ボイスのクオリティや演技は流石の一言。しかし、気になった点もこの台詞の「読み」にあったりするのも又事実。
というのは「異形」という言葉が出てきて、時に「いぎょう」と発声されたり、又ある時は「いなり」と発声される。
本作は狐さんと人間の少女の交流というか、まぁそういう作品ですから、狐→稲荷→いなり→異形と、異形をいなりと呼ぶのはある種、自然なものを感じます。けれどもそれを「いぎょう」とお馴染みの呼び方で発声している時もあって、「ありゃ? どっちだ?」と暫し考えてしまいました。
まぁ、ストーリー的に問題があるとか、そういう部分ではないので、気にならないっちゃ気にならないんですけれどもね。

では、中身の方に入っていきましょう。
12歳、駄菓子大好きの中学一年生の女の子が主人公ですね。彼女はある日、狐の清白(すずしろ)と出会った事がきっかけで、その姉の鈴菜、そして母の薺(なずな)と交流することに。『菓子狐憑き』というタイトルの通りです。

そんな訳で一つ、駄菓子が重要アイテムになっているわけです。
駄菓子の描写が実に細かくて、妙に懐かしい気分になってしまう事請け合い。魚を使っているクセに「トンカツ」を自称する駄菓子とかねw 
今は駄菓子屋なんてとんと見かけないのですが、昔は駄菓子屋というのが子供達のコミュニティの重要な場になっていたように思います。それでもやっぱり小学生くらいまで、かな?
上級生のお兄さん、お姉さんに色んな遊び方を教えて貰ったりしたもんです。

今でも覚えているのは「ラムネのビー玉の取り出し方」でしょうかね。あれは、からにしたラムネの瓶の地面に置いて、瓶の両側面を両足(靴の内側)で挟み込みます。そして、そのまま瓶ごとジャンプ。すると着地と同時に被害を最小限にして瓶を割ることが出来、目出度くビー玉が取り出せるというわけです。あれ……? 割れた瓶の始末ってどうしてたんだろう……w
そんな事を教えて貰ったり、お姉さんに遊んで貰ったり、或いはお菓子に付いている「アタリ」籤を言葉巧みに巻き上げられたり、とw まぁ、結構子供にとって重要な場でしたね、駄菓子屋は。

で、またもや派手に脱線したけれども、そんな駄菓子についても結構しっかりとした描写がなされている為、物凄く懐かしい手触りがある作品だったと思いました。

こうしたちょっとほのぼのとした狐たちと、少女二菓(ふたか)の交流を描いていく、ハートフルなストーリーかと思いきや、後半でやっぱり思わぬストーリーが進展していきます。
このストーリー自体も唐突なものではなく、ちゃんと随所に伏線が張られているので、違和感を感じる事なく「をを、こういう事だったのかぁ……」と感心出来るものに。
ストーリーの出し方も良かったですよね。第四章の次に第零章を出して、その後の第五章への期待感を大いに盛り上げてくれています。
この第零章を読むと、大体の事情が分かって、実は本作が少し悲しいお話である事に気がつきます。

「誰が悪いというわけでなく、それぞれの思惑が少しづれてしまっただけ」

というような二菓のセリフがありまして、それが本作の悲しい部分を端的に表すものとなっています。『一子~』も、そして本作も後半でいつになくドラマチックな展開になり、この作者様の新しい展開を見ることが可能となっています。
これも毎回思うのですが、メインの視点人物(今回は二菓)が、年齢にともすれば合わない、少し内省的でマセた感じで、そこが却って可愛らしさが出ていていいですよね。こういうキャラだからこそ、時にこうしたシリアスな台詞を吐いてもとっても似合う。


大体、こんな感じの作品です。
少し今回は(今回も?)脱線多めですが、ほのぼのとした雰囲気、そして物悲しい後半からの展開、色々と楽しめる作品に仕上がっているのではないでしょうか?

ファンの方は固より、是非プレイしてみて貰いたい作品です。
それでは、また。
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by s-kuzumi | 2008-09-27 01:18 | サウンドノベル


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