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2012年 02月 16日 ( 1 )


2012年 02月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『Polar night』

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今日の副題 「温かい雪国のストーリー」

ジャンル:微ファンタジック恋愛ノベルゲーム(?)
プレイ時間:1ルート凡そ1時間ほど。コンプリートで2時間程度。
その他:選択肢有り。3ルートに分岐。
システム:NScripter

制作年:2012/2/13
容量(圧縮時):71.5MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、こんな時間に更新を。東京は雪がちらほら降っていましたが、そんな今の季節にぴったりな作品のご紹介。
というわけで、今回は「Lunaria Project」さんの『Polar night』です。
良かった点

・雪国(アイスランドを模していると思われる国)なのに、どこか温かい手触りがある。

・背景も全てオリジナル。エンディングテーマも流れます。


気になった点

・主人公にまつわるエピソードが重たく、それが故に、逆に各ルートが薄味になってしまっている。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
ほぼ一年中雪に覆われる国、イースランド。
主人公・クライドは、その国の治安維持を担っている。
といっても、大きな事件などそう起きないこの国では、
税金の無駄遣いとまで言われるほど暇な職務だった。

そんな仕事を、少々厄介なパートナーのエステルとこなす日々。
家に帰れば家庭的な幼馴染み、セリアとの温かい時間がある。

しかし、一見平和以外の何物でもないその生活は、非常に不安定だ。
何がしかの問題を抱えた人々は、いつだって何かを恐れている。

寒さの中にある小さな温もりに、今日も縋り続けている――。

若干改行等、見やすく直してあります。



さて、本作の舞台は、架空の国イースランドです。
すぐに分かるかと思いますが、アイスランドを模していると思われます。作中の街レイヴィークも、アイスランドの首都レイキャヴィークから採っているのかな? という気がしますね。

それはさておき、本作、イントロは上々です。
主人公の職業(駐在さんみたいな感じ)や、部下のエステル。そして幼なじみのセリアと主人公に麻薬のようなクスリを売る少女アイリスの紹介がちょっとしたエピソードを通じて描かれます。
同時に、主人公が抱えているトラウマ……精神的な問題にも触れており、その後の物語への伏線となっていました。
事件が滅多におきない、のんびりとした駐在の仕事、という設定が、厳しい雪国であるにも関わらず、そこに暖かな雰囲気を与えていて、良い雰囲気が出ていましたね。

大体、途中で描かれる武術大会までが前半、それ以降を後半と考えると分かりやすいと思います。
プレイ時間も大体1ルート1時間程度なので、ダレる事はありません。
その武術大会での賞として、温泉地へのチケットを貰い、誰とそこにいくのか? 或いはチケットを売却しお金に換えてしまうのか、でルートが綺麗に3つに分かれていきますので、選択肢選びに迷う事もありません。


個人的に好きなヒロインはエステルですね。
所謂、ツンツンしているタイプの子なんですが、剣術に関しては天賦の才を持っている、ちょっと不器用な女の子。どうも、作者さんの後書きを読むと、メインヒロインがこのエステルと思しいのですが、気になった点にも関わるので、そこは後述しましょう。

又、正統派のヒロインとして、主人公の幼なじみのセリアもいます。
主人公の暗い過去を一緒に体験し、それを誰よりも分かっている子です。主人公クライドと同棲しているわけですが、クライドは割とクールで「幼なじみで、それ以上でもそれ以下でもない」と云っていたり。

この二人と比べると、小さな女の子というアイリスは少し、雰囲気が違うヒロイン像ですね。
人で賑わう通りで露天商をやっていて、尚かつ、主人公に違法なクスリを売る、という少しダーティーな部分ももっています。


各ヒロインとの関わりの中で、クライドは自分の過去と対面していく事になります。
彼の過去は結構重たく、又その悩みは単一のものではありません。色々な出来事、経験、そして現在の状況が複合的に主人公にのし掛かっています。

ただ、気になった点なのですが、各ヒロインのルートでは、クライドの抱える悩みが全て解消されるわけではありません。一応、ちょっと力業を使って解消させてしまうんですが、どうしても物足りなさを感じてしまいます。
例えば、エステルのルートでは、主人公が頼っている怪しいクスリとの決別が大きなテーマとなり、セリアのルートでは、脱出してきた祖国の問題に踏み込み、アイリスルートでは、死んでしまった妹の問題がメインとなっていきます。

全ルートをプレイして、全体、として見てみれば納得出来る部分があります。
が、それはパズルのように各ルートの内容を、クライドという一人の人物に当てはめていった時に納得出来るのであって、単一のルートでは、クライドが悩んでいる他の問題が、些か置き去りにされてしまっています。

寧ろ、この3ルートを一つのルートに纏めながら、ヒロイン毎に分岐が行われれば、納得感がより増したハズです。各エピソードをヒロイン固有のエピソードではなく、共通のエピソードとして取り扱って、その先にヒロイン個別のルート、若しくはエンドがある、というイメージですね。
そうした意味で、クライドの過去が重すぎるが故に、一つ一つのルートが却って薄味になってしまっている感触がありました。これは、ラストがどのルートでも結構性急になってしまっている辺りと不可分ではないですよね。


とはいえ、前半と後半を分ける武術大会での描写は冴えがあり、適度な緊張感が伝わってきていいですね。この大会にクライドのパートナーとして参加するキャラクターエステルが、やはり頭一つ、他のヒロインより抜き出ているかな、という印象です。

良かった点でも書きましたが、背景もオリジナルのもので、作品世界を綺麗に描いていて好印象でした。
フリーの素材だけで作品を作ろうと思うと、どうしても足りない素材、探しても見つからない素材が出てきて、別の素材を代替的に使ってしまうんですが、そこはオリジナルの凄い所で、世界観がちゃんと伝わってくる、良い背景、そしてイラストだったと思います。



何度も取り上げている作者さんですが、凄く執筆ペースが速いですよね。
NScripterの場合、nscripter.datを見ると、テキスト量が分かります。本作の場合凡そ200kbという所でしょう。これ、結構な量があるんですよ。400字詰めの原稿用紙にすれば、256枚ですから。

非常に多産な作者さんで、今度はどんな物語が出てくるのか、今から楽しみです。
ともあれ、まずは、本作の雪国だけれども温かい、そんな感触を味わって見て下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-02-16 16:17 | サウンドノベル | Comments(0)