久住女中本舗

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カテゴリ:サウンドノベル( 742 )


2015年 01月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 『チャイルドポルノ・パンデミック』

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今日の副題 「よく、ふりーむの審査を通ったなぁ……」

ジャンル:チャイルドポルノノベル(?)
プレイ時間:40分程度。
その他:選択肢なし、一本道。15禁。
システム:NScripter

制作年:2014/12/27
容量(圧縮時):95.2MB




道玄斎です、こんにちは。
年末年始の忙しさが、何とか一段落した今日この頃ですが、年末にまんざら知らない仲でもないガムベースさんが、新作をお出しになった、という話を聞きまして、恐る恐るプレイしてみた、というわけです。
というわけで、今回は「チクル妄想工房」さんの『チャイルドポルノ・パンデミック』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・「熱量」をヒシヒシと感じる。

・絵が上手くなくてもモザイクを掛ける事で、立派な「イラスト」にしてしまうなど、工夫アリ。


気になった点

・読了しても、オチの部分が分かりにくく、伝わってくるものが少ない。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
妹と暮らす男が児童ポルノの世界に生きようとする物語です。
選択肢はありません。
プレイ時間は30分~1時間です。
1作目『よみがえる思い出』から続く話です。
なので『よみがえる思い出』を先にプレイされていると、細かい所がわかりやすいかもしれません。
性描写があるので年齢制限は15歳以上。

こんな感じ。
一応、処女作『よみがえる思い出』との連続性があることが書かれているのですが、前作のプレイが「必須」かと云われれば、そんな事はないだろうな、と思います(エピソードが再生産されたり、とか見所はあるんですが)。処女作で敢えて語られなかった「結末」部分が、本作の発端部になっている、という構造ですね。
尤も、『よみがえる思い出』だけではなく、『やがて僕の訪れる公園』との微かな関連性も、亦感じる事が出来るのではないかと思います。


にしても……よくまぁ、ふりーむの審査を通ったなぁ……という気がしますw
直接的な性行描写みたいなものはないのですが、かなり際どいところまで描かれており、人を選ぶ作品である、という事はほぼ間違いなく云えると思います。

それはさておき、昨年末くらいから、創作物に対して「熱量」という言葉を以て、評価する流れがあるな、と何となく感じています。
つまり、その作品なりの巧拙ではなく、そこに込めた作者の「情熱」というか、力の入り具合を一つの評価軸にする、という潮流です。

ちょっと堅めの文学理論なんかでは、「作者」というものを考慮しない、というのが一般的だと思うのですが、「熱量」という概念は、どうしたって作者と結びついてしまいます。
作者というものの存在抜きには、「そこに込めた情熱」=「熱量」は語れないからです。

文学の研究では、作者は死んでいるか、或いは、自分達とは距離のある所にいるわけですから、作者を考慮しない、という策が採れる一方で、フリーのノベルゲームの場合、作者とプレイヤーの垣根が非常に低いんですよね。
作者自らが、サイトやブログ、或いは近年ではツイッターなどで作品について、自身の口からそのテーマを述べたり、という事は良くあります。
私なんかも経験があるのですが、或る作品についてレビューを書いた後で、「あの作者さんは、ブログで○○って云ってたから、あれは違うんじゃない?」と教えて貰ったり、或いは、作者さんその人から、「実はあそこの部分は○○で」とメールを頂く事も屡々あるわけです。

この、作り手と受け手の距離が極端に近い、というのが、フリーのノベルゲームの大きな特徴の一つだと思います。受け手としてゲームを楽しんでいた人が、ある日発奮して作り手に回る、という事もよくありますしね。
ともあれ、本作『チャイルドポルノ・パンデミック』では、作者ガムベースさんの熱量が、厭という程伝わってきます。

この作品が、何をテーマにしているのか? 何を訴えたいのか? そういう事は良く分からないにしても、です。
「良く分からないけど、なんか凄い力が入ってる……」
それが、私の、本作をプレイしての感想でした。文章は読みやすく、ストーリーの流れも一応追っていける。しかし、ラストシーンが何だか腑に落ちない、というか、良く分からない。けど、強烈なインパクトがそこにはあり、独特の引力も存在している、と思うのです。


ちなみに、作中で主人公が展開する思考は、所謂「抑止論」です。
つまり、「チャイルドポルノを供給し、欲望の捌け口を作ってやる事で、『実際の犯罪』を抑止しているんだ」という考えです。

冷静に考えれば、これには問題があります。
「確かに、チャイルドポルノの供給により、実際の犯罪は抑止出来るかもしれない。しかし、そのチャイルドポルノの被写体の女の子は、みんなの犠牲になるって事なんじゃないの?」というような、問題点です。

救われる人数が多ければ、多少の犠牲は無視しても構わない、という事なのか、それとも、主人公自身が、こうした議論の可能性を考慮出来ない程、何か追い詰められているという状況なのか……決定的な答えは出せないのですが、読んだ人間に対して、何かモヤモヤっとさせる、そういう作りになっている事は確かでしょう。


掲示板なのかツイッターなのか定かではないのですが、主人公が自身の行動や考えを表明する場があり、それに対して、レスをつける人がいる、という場面が何度か出てきます。
そのレスというのが、また困った事に、「妹を無理やり犯して屈服させちまえ!」というようなものでしてw
で、現実の掲示板とかでも、そういう事を書く人っていますよね。けど、それって「ギャグ」で書いてるんじゃないでしょうか? それに対して、「妹にんな事できねーよwww」みたいな、そういうレスが来る事を折り込み済みで、謂わば「遊び」としてのやり取り、だと思うんです。

しかし、本作の主人公は、そこで、そういうレスに対して、一々真面目に受け取り、考え込んじゃうんですよ。
ギャグとしての発話に対し、シリアスに受け止めていく……こういう認識のズレが、作品の(ギャグ的な)面白さであると同時に、主人公の性格的というか内的な問題をあぶり出しているような、そんな気がしました。


色々気に掛かる部分はあるんです。
例えば、主人公の妹「ありさ」は、小学五年生、六年生でありながら、その発話はかなり大人びたものですし、小学生じゃ使わない(使えない)ような言葉もポンポン使って、兄貴を罵倒します。
こういう部分から、妹ありさの存在に、何かを見いだそうとするのも一つの作品の楽しみ方だとは思うのですが、私の手には余るので、深入りは避けましょうw


もしかすると、「チャイルドポルノ」は表象というか、いくらでも付け替え可能な「服」みたいなもので、根本に、チャイルドポルノも包含する、何か「本当に描きたいもの」「本当に主張したい何か」があるのかな? なんて事は考えましたね。


云ってしまえば、良く分からない作品です。
そして、強烈に人を選ぶ作品でもあります。
けれども、他にあまり類を見ない、熱量と、インパクトを持った作品でもあります。

本当に、「一般的な評価」を下しにくい作品で、読者がそれぞれ、感じたものが、それぞれの評価になる、という、ちょっと逃げを打って、本稿を〆たいと思いますw



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-01-10 15:46 | サウンドノベル | Comments(4)
2014年 12月 19日

フリーサウンドノベルレビュー 『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』

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今日の副題 「魔女は飛ぶものです!」

ジャンル:ファンタジックADV
プレイ時間:初回は20分程度。トータルで1時間くらい。
その他:選択肢アリ(但し、実質一本道みたいなもの)
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2011/5/14(Ver.1.00、本レビューはVer.2.02にて)
容量(圧縮時):59.0MB




道玄斎です、こんばんは。
忙しさがピークに達している今日この頃ですが、ノベルゲームに飢えて飢えて仕方ないので、ついに遊んじゃいました。たまたま、物凄くテンポの良い作品に出会えて、しかも、ちょっと優しい気持ちになれるような、そういう作品だったので、ご紹介致します。
というわけで、今日は「藍恋工廠」さんの『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・気持ちよくプレイ出来る抜群のテンポ感。

・しかし、意外にも重層的な物語の構造。


気になった点

・Extraのストーリーは、上手く本編に織り込んでも良かったのかも。

・テンポの良さと裏返しに、やや情緒的な面が足りない部分も。

ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。
気象を司る魔女が、気象制御中、事故で落下し、地上人に姿をさらしてしまう。
そのことが原因で左遷されるのだが、その先でまた、同じような事故が起こり……

クリア後に有効になる選択肢により、物語は二つに分岐します。
プレイ時間は全部で1時間半程度です。

こんな感じ。



さて、以前ご紹介した事がある『娘子隊皓旗』の作者さんの作品です。
ちょっとファンタジックで、心温まるような、そういう作品でした。

あとがきを読むと分かるのですが、「気象+魔女」という組み合わせの面白さを発見し、それを物語として作っていった、という事のようです。

確かに、巷に溢れる「魔女」というのは、かなりステレオタイプでして、攻撃的な超自然的な力を行使でき、退廃的だったり、妙にミステリアスな造型だったり……という事が多いのですが、本作に出てくる「気象魔女」、フィレルは明るい「女の子」というような感じですし、一般にイメージされる「魔女もの」とは一味違う作品になっている、と云えるでしょう。

この「気象魔女」が、本作のオリジナリティの柱だと思うのですが、実は「天候魔女」と呼ばれる存在は「実在」していました。
……と、この事を突き詰めていく為に、少しだけ久しぶりに脱線させて頂きますw


そもそも、魔女ってなんでしょう?
史実との接点、という所では、やはり「魔女狩り」で摘発された人々、というのが第一にイメージされてきますが、ご存じの通り、「魔女狩り」で摘発され、結果処刑されてしまった人々の中には、男もいますし、実際には冤罪だらけだったわけです(当たり前ですね)。

ただ、その初期の段階では、「こいつは、どうも魔女じゃないか?」と思われるような、疑わしい女性が摘発され、それが「魔女狩り」という大きなムーブメントになっていったわけです。
つまり、「魔“女”」ですから、最初は「女性」が魔女と目され、その後、概念が拡大していったのです。

問題は、どんな女性が魔女とされたのか、という所なんですが、これには二つの系統があります。
一つは、「薬草などの知識が豊富で、占いなども行う女性」の系統です。独自に伝承された医学的・薬学的な知識を持ち、占いなどの神秘的な分野に通じていた人々ですね。

例えば、『魔女の宅急便』の映画を見ると、キキのお母さん(彼女も亦魔女なのです)が、薬を調合しているシーンが描かれています。これは、まさに第一のタイプの魔女の姿です。

もう一方のタイプの魔女は、、「共同体の中での嫌われ者や、社会的な弱者」の系統です。
前者と比較して、「神秘=魔的」な力こそ、あまり感じさせないものの、或るコンテクストに於いて、「有害」と見なされていた人々、と云えましょう。

この二者を比較すると、私達が一般に思い浮かべる魔女は、やはり前者の魔女の系統、という事になりましょうか。


さて、肝心の天候魔女、なんですが、どうも、やはりそれも前者の系統なんじゃないかな、と思います。
本作に於ける気象魔女というのは、「自然現象」として私達が受け止めている、降雨や嵐、或いは快晴、虹などを管理する存在です。そこに「善悪」の概念は存在せず、基本としては、予定表に従い、粛々と気象を管理していく、というのがその姿のようです。
しかしながら、自分達の気象管理によって困る人々がいる、という部分で、主人公フィレル等が悩むシーンもあり、気象魔女のあり方そのものに一歩踏み込む描写もある、とお伝えしておきましょう。

それはさておき、「実在」の天候魔女とは、ズバリ、「悪天候を呼び寄せ、作物の実りを悪くしたりする存在」です。つまり、「天候魔女」という事で告発され、処刑された人もいた、という事です。
この天候魔女は、やはり天候を操る、という神秘的な力を持っている為、私は一番目のパターンの魔女のヴァリアントだと思いますよ。

長々と説明してきましたが、実は天候・気象を操るとされる「魔女」がいた、というのは事実なんですね。
ただ、まぁ、説明した通り、本作の「気象魔女」というのは、そこに「善悪」の基準や指針があって、天候を操っているわけではなく、「仕事」として天候の管理をしている、という造型で、それ故、自らの引き起こした天候によって苦しむ人々を見て、心を痛める事もあるわけです。


物語は、前述の通り、淀みなく、流れるように進んでいきます。
本当にテンポ良く、気持ちよくプレイ出来る、というのは物凄い高ポイントなんですが、一方で、「ここはもうちょいじっくりと描写しても良かったかな」と思える所もあるのです。

その一つが、今お話した、「気象を操る事によって、人々を苦しめる事がある」という問題です。
気象魔女の存在そのものに関わる重大な問題だと思うのですが、その悩みは、フィレル達の感情を揺さぶり、行動の発端にはなるんです。
けど、その問題に対して、フィレル達は何か自分なりの結論を出す、という事はないんですよね。云うなれば、その問題は、サラリと流れて行ってしまうわけです。

気象魔女というオリジナリティと、そのオリジナリティ故に生じる悩みなので、もうちょっと掘り下げて描写されても良かったかな、と。
また、悲しさなら悲しさ、嬉しさなら嬉しさを、もっとジックリと表現する部分、つまり情緒的な表現が少し物足りなかったかな。


一方で、作品は相当重層的に出来ています。
そこの厚みに関しては大いに評価したい所。
ネタバレになりそうなので、少し自粛しながら話すと、気象魔女達が積み上げてきた「物語」が、物語前史としてあって、その上に、本作の一番の主人公という立ち位置のフィレルの物語が載っかっている、という作りです。

勿論、その物語前史は、ちょくちょくと顔を出し、或いは仄めかされたりして、フィレルの物語を楽しみながら、自然と、その深さを感じられるようになっています。
で、取り敢えず本編を読了すると、Extraの一つとして、物語前史そのものを読む事が出来るようになっていました。

まさにExtraに入るに相応しいお話なんですが、私は、何となくのレベルで、「これ、本編に上手いこと溶け込ませちゃった方がグッときたかも」と思ってしまったんですよね。

本編があって、そこでの物語に決着が着く。
その本編を補完するようなExtraがある。
Extraを見ると、本編の内容が良く分かる。

って事なんですが、それだったら、最初っから本編に、Extraの内容を織り込んでしまえば、本編のラストでもっとガツンとインパクトがあったんじゃないかな、と。


私はこうやってお気楽に書き飛ばしてますけど、実際にやろうと思ったら結構大変だというのも分かりますw
だって、時間軸が違うわけですから、場面を上手く変えてやる必要があり、また主人公も違うわけで、視点の管理も必要になってきます。

上手く出来れば、効果的かもしれませんが、実際に上手く出来るかどうか、は分からない。
まぁ、何となく私が感じたこと、って事でご容赦下さいませ。


イラストはついていませんが、そこが却ってプレイヤーのイマジネーションを掻き立てますねぇ。
最近は、スマホ向けのノベルゲームなんてのも良く目にするのですが、「イラストがない」とか「イラストが綺麗じゃない」とか、そこのビジュアル部分が評価軸になっている、そうしたレビューを良く見かけます。
そうした意見だって当然あるとは思いますが、そこがそのレビューの主軸になっちゃうってのはなぁ……と、常々思っています。

優しい気持ちになれるような、そして同時にスピード感のある作品を探している方は、是非プレイしてみて下さい。


今日は脱線多めでしたけど、こんなところで。
それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-12-19 20:19 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 11月 06日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.68

道玄斎です、こんばんは。
結局、風邪が全然治らなくて、昨日も病院に行ってきたんだよ。私は肺炎とか罹りやすいから、レントゲンとか撮って貰ったりしてね。結果、ただ風邪が長引いているだけ、って事だったんだけど、早く元気にならないかなぁ。

で、今日も例によって箸休め。
先日、ファンタジーノベルゲームを作ろうとしている人から相談を受けたんだ。
話を聞いてみると、「世界を救うんだ!」みたいな大きなファンタジーじゃなくて、云ってしまえばチマチマした事件を解決していく、人情派トラブルシューターものだったんだよ。

相談の要点は、つまり「主人公達のベースキャンプとなる、所謂冒険者の宿について、何かネタが欲しい」という事だったんで、渋谷の、とあるパプで話をする事にしたんだ。うってつけの場所でしょう?



■パブってなあに?

「ということで、冒険者の宿の何が知りたいのよ?」

「そうですね……まず、ああいった冒険者の宿屋っていうのは実在したんですか?」

「おいおい、魔法をぶっ放したり、剣をぶら下げて怪物を倒す連中が実在しないんだから、冒険者の宿なんてのはフィクションだよ」

「あぁ、そういえばそうですよねぇ」

「けど、そのモデルは勿論あるんだ」

「え? どこです?」

「ここだよ。パブ。ファンタジー作品に出てくる宿屋、あるいは冒険者の宿は、明らかにパブを一つのモデルにしているんだよ」

「だから、今日はここで飲み食いすることにしたんですね」

「ファンタジーって、雰囲気っていうか『ファンタジー感』が大事だ思うんだよね。これが『和民』だったら、ちょっとファンタジーの話をする雰囲気じゃないだろ?」

「まぁ、確かに……あれっ? けどおかしいですよ」

「ん? なに?」

「冒険者の宿を調べてたら、『イン』とか『エールハウス』とか『タヴァン』というのが、冒険者の宿屋に近い、なんて書いてありましたよ。パブなんて一言もなかったですよ」

「うん、そいつらを纏めて『パブリックハウス』、略して『パブ』っていうんだ」

「えー! なんだか良くわからないなぁ」

「つまり、『パブ』って大きな括りがあるんだよ。その中には歴史的に『イン』や『エールハウス』、そして『タヴァン』というものがあった。で、現代では、その3つが融合したり変化したりして、所謂洋風居酒屋みたいのになって、それを『パブ』って呼んでいるんだ」


ここが、パブのややこしい所だね。
つまり、現在俺たちが利用出来るパブが出来るまでに、実はそれなりの紆余曲折があって、段々と現在のスタイルに固定されてきた、ってことなんだ。
ただ、その機能っていうのかな、そういうものは、昔も今もそう変わらないんだよ。


「ふむふむ。じゃあ、『イン』や『エールハウス』、『タヴァン』っていうのは、全部同じって考えてもいいんですか?」

「そう解説してある本なんかも多いよね。『基本的に大差はない』みたいなね。けど、実は微妙に違うんだよ」

「と、いいますと?」

「そのお店の業務形態が、どこに軸足を置いているか、で一応分けられるんだ。『イン』っていうのは、今でも『東急イン』なんてホテルがあるから分かるだろうけど、あれは『宿泊を提供すること』に業務の主軸があるんだ。勿論素泊まりだけじゃ味気ないから、食事だって提供するし、お酒だって出てくるんだよ」

「じゃあ、『エールハウス』と『タヴァン』は?」

「『エールハウス』の方は、これは『お酒を提供すること』に軸足があるから、現代風に云うと居酒屋だね。『タヴァン』は、『美味しい料理を提供すること』が目的だから、実はレストランに近いんだ」

「ははぁ……実は違いがあるんですね」

「まぁ、一応はね。けど、『イン』でも飲食は出来るし、客を泊める部屋を備えた『エールハウス』だってある。現代だと四谷にある『オテル・ドゥ・ミクニ』って有名なフランス料理のお店があるだろ? 実際そこは宿泊出来るのか分からないんだけど、嘘でも『Hotel』って文字が入ってるんだ。こういうのが『タヴァン』のイメージに割と近いんじゃないかな? 勿論、もっと『タヴァン』は大衆的なお店なんだろうけどもね」

「だから、それぞれの境界が曖昧なんですね」

「そういうこと」


「イン」と「エールハウス」、そして「タヴァン」には、一応こんな区分けがあるんだ。
けど、「大差はない」で片付けてしまってもいいと思うな。大事なことは、冒険者と云われる輩は、「宿泊・飲食が出来る場所にいる」ってところなんだよ。
イメージとしては、やっぱり「タヴァン」寄りではなく、「イン」や「エールハウス」のように、誰でも気軽にフラッと入ってくれるような、そういう感じはするんだけどもね。



■パブの様々な役割

「まさに冒険者の宿ですねぇ。二階が部屋になってて、一階が酒場になってるってのが一般的な冒険者の宿ですからね」

「そうそう。それで普段はお酒を呑んでくだを巻いてるんだけど、依頼がくれば冒険に行き、そしてまたそこに戻ってくるのさ」

「あっ、そうだ! 思い出した。その依頼ですよ、聞きたかったのは!」

「依頼?」

「その依頼って、ファンタジー系の小説だと、冒険者の宿の壁とかに張り出されるんですよね」

「うん、そういうのが多いよね。あるいはお店の人が、依頼内容を見て、店にいる冒険者のパーティに声を掛けるとかね」

「ああ、そのパターンも定番ですよね。でも、ファンタジー世界が現実の世界じゃないから、そういう依頼のシステムも、フィクションなんですよね? 実は、依頼人からどういうルートで、主人公達に依頼が来るのか、ちょっと悩んでるんですよ」


ああ、そうだった。
元々は、自作ファンタジーノベルゲーム制作の為の集まりだったんだ、これは。
ついつい、脱線してパブそのものについて話し込んじゃったよ……。けど、こういう、時に脱線しながら、色んな話を楽しむ、っていうのが、パブの醍醐味だよね。


「うーん、この依頼システムも完全にフィクションってわけじゃないと俺は思ってるんだ」

「やっぱり何かモデルがあるんですか?」

「どうもね、パブっていうのは、時代が経つにつれ、社会的な機能を持つようになってくるんだよね。娯楽遊興の場であるのは勿論、給料を渡す場所になったり、商談をする場所になったり、とかね。裁判の場所にもなったらしんだよ。で、パブはその内『職業斡旋所』の役割も果たすようになってくるんだ」

「へぇ~けど、それはそれ専門の業者とかがいそうですけどもね」

「勿論、都会に行けば口入れ屋の一つや二つあったと思うよ。けど、パブなら、もっとその地域に密着した仕事の斡旋をしたりってことも出来ただろうし、急に人を集める臨時の募集みたいのもスムーズにいけそうじゃない?」

「基本、人がいつも集まってくる場所ですもんね」

「でさ、そういう、地域に密着した仕事、臨時の仕事っていうと……まさに、冒険者の仕事そのものじゃないか! 『最近、北の山に悪い魔法使いが住み着いて……』とか、『坑道が落盤で崩れてしまって、急遽埋まった人を掘り出す人手が欲しい』とかさ」

「ああ、確かに! 冒険の第一話は、近所に住み着いたゴブリンを急な依頼で退治するもんですしね!」

「だから、パブには職業斡旋としての役割が史実としてあった。そこに冒険者斡旋という要素を足したのが、ファンタジーの冒険者の宿、って気が俺はしてるんだ。冒険者だって職業には変わりないもの」


勿論、『冒険者の宿 ~その歴史的背景と役割~』なんて本や論文があるわけじゃないから、俺の推測なんだけどもね。けど、案外いい線いってるんじゃないかな?


「ということは、従来型の依頼でも全然おかしくはないんですね」

「勿論。逆に何で悩んでいたのか聞きたいくらいだよ」

「いや、実は最近プレイしたゲームなんですけど……あっ、RPGなんですけどもね。そこの宿というか酒場は、オヤジが硬派でして、酒は出すけど、食事は出さない、騒ぐことも許さない、冒険の依頼なんてもってのほかってヤツだったんですよ」

「なんか、頑固オヤジのラーメン屋みたいだなぁ!」

「でも、その店の雰囲気も中々良かったんですよ。確かに頑固オヤジなんですけど、そういう空間があってもいいな、って思っちゃったんですよねぇ。そしたら、一般的なファンタジーの依頼も、一工夫した方がいいのかな? とか考えちゃって」


うん、これは難しい問題かもしれないね。
つまり、ファンタジーにせよ冒険者の宿にせよ、見てきた通り、大体、物事には原型、つまりモデルがあるんだ。そうしたモデルから逸脱したお店の存在をどうするのか? ということなんだよね。

結論から云ってしまえば、魅力的で、その作品の中で違和感がなければ、自由にしたらいいんじゃないかな?
そもそもファンタジーだって、中世「風」のごった煮的な世界なんだしね。ただ、お店の名前に、『華屋与平衛』とか付けるのは勘弁してね。最低限の雰囲気ってのは、やっぱり保持しておかないとね。


「あたりまえですよ! 流石にそんな名前にはしませんって!」

「まぁまぁ……。で、どうするの? 従来型の冒険者の宿から依頼を受けるパターンにするの? それともなんか別の魅力的なお店を考えてみる?」

「……道玄斎さんはどっちがいいと思います?」



■お店の名前

うーん、こういう大事なジャッジメントを人に投げないで欲しいなぁ。
大事な部分を人に投げると、結局どう転ぼうとも、なんか不満が残ったりするもんだよ。


「けど、そうは云っても悩んでるんですよ~」

「俺だったら……一から雰囲気のある酒場を生み出すのは難しそうだから、従来型、かな」

「もちろん、それだけが理由じゃないんでしょ?」

「うん。あくまでそいつらの拠点は、従来型の冒険者の宿でもいいと思うんだよ。けどさ、シナリオを少しひねれば、依頼を受ける場は広がるよな」

「というと?」

「だからさ、毎度律儀に、冒険者の宿が斡旋してくれる仕事だけをうける、っていうのもなんかおかしいだろ? むしろ、街に出て買い物か何かしてたら、トラブルに巻き込まれて、そこから済し崩し的に依頼が発生して……みたいなパターンがあってもいいってことだよ」

「ああ、なるほど。確かにそうですね」

「で、その依頼人から詳しい事情を聞くために、馴染みの宿に連れて行く、とかね。そういう利用法だって全然アリだろ? だから、ハコとしての従来型の冒険者の宿を使いながら、依頼にはバリエーションを持たせていくんだよ」

「逆にそうでないと、単調になっちゃうなぁ」

「そうだよ。しかし君も大分酔ってるなぁ。それ何杯目だ?」

「この黒ビールおいしいんですよ! んー、4杯……5杯目だったかな……」

「よくそんなに呑めるなぁ! まぁ、吐いたり寝たりしなきゃいいよ。で、その冒険者の宿だけどさ、ちょっと名前くらい凝ってみたら?」

「それもよくありますよね。『踊る●●亭』とか」

「そうそう。実際、ロンドンのパブにもかなり変わった名前のパブがあるんだよ」

「動物をかけあわせた名前だったり、それこそモンスターの名前がついてる呑み屋があるって聞いたことありますよ」

「俺が大好きなSF小説の『白鹿亭奇譚』っていうのがあるんだけど、これもロンドンの架空のパブの名前だよ。あまり奇抜な名前にせず、『白鹿亭』くらいのネーミングを狙ってみるのがいいんじゃないかな?」

「了解です~」


こいつ、もう大分酔ってるよ……。
多分、酔いが覚めたら、今日の話なんて全部吹っ飛んでるパターンだと思うぜ……。


■宴の終わり

「話は戻るんだけどさ、君の呑んでる黒ビール、一杯1000円超えるだろ」

「けど、一杯入ってきますよ~」

「1パイントだから、500mlの缶よりちょい多いくらいか……って、それを5杯も6杯も呑んでるのかよ……」

「そういう道玄斎さんは、さっきから全然お酒呑んでないじゃないですか」

「俺は酒弱いの! あと、あまり云いたくなかったが、懐が痛むから、ほどほどにしてるんだよ!」

「ここは、その都度お勘定ですから、割り勘にならないんですよね」

「そこがパブのいいところだよ。自分が自分の責任において、呑みたいだけ呑む。実にいいじゃないか」

「道玄斎さんはケチくさいなぁ! あっ、お勘定がその都度で別々だからこのお店選んだんでしょ!?」


もー、冒険者の宿の話をするっていうから、パブにしたんじゃないか。
けど、もう酔って気持ちよくなっている人の前では、何を云っても無駄なんだ。まぁ、勘定が都度で、別々だからっていうのも決め手の一つだったんだけどもね……。


「そうだよ、俺はケチなんだよ。けど、無い袖は振れないからな、借金してまで呑むよりマシだい!」

「あー、もー、すぐに開き直るんだから」

「けどさ、一応この店もさ、3/4パイントか、1パイントかで量を選べるんだけど、ロンドンのパブのようにハーフパイントは選べないんだよなぁ……」

「あっ、ハーフの方が料金が安いから、そういう事いうんでしょ? ほんとしみったれてるなぁ!」

「何とでも云ってくれ……。けど、俺が呑むんだったら、正直、ハーフパイントくらいが丁度いいんだよ。それ以上呑むと、俺は寝ちゃうし、下手をすると吐いちゃうんだ」

「うげっ、それは勘弁してくださいよ……」

「今日は、ほら、3/4パイント注文して、その半分くらいしか呑んでないだろ? このくらいならまだ大丈夫だよ」

「にしても、道玄斎さん、意外とパブに詳しかったですねぇ。パイントなんて、馴染みのない単位なのに、知ってる風だし」

「まぁね。俺は結構イギリス好きだし、イギリスの文化にも興味があるんだよ。特にパブなんて、いわば人生の交差点みたいな場所だろ? そういうの俺は大好きなんだよ。ここはハーフパイントが頼めないのが欠点だけどもな……」

「じゃあ、実際ロンドンに行かれたら、いきつけのパブではいつもハーフパイントなんですか?」

「あぁ……それね……」

「ん? なんか急に歯切れが悪いですね……」

「いや……実は、俺……イギリス行ったこと、ないんだ……」

「…………!」



というわけで、今日のお話はここでおしまい。
そんなに直接的にノベルゲームに関わるって話じゃないけど、たまには、お酒の話もいいもんでしょ。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-11-06 20:19 | サウンドノベル | Comments(3)
2014年 10月 18日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『男四人が打ち切り回避について本気出して考えてみた。』

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道玄斎です、こんばんは。
風邪が治って数週間、結構私生活の方で色々あり、更新が出来ませんでした。
気にはしていたんですが、如何せん、このブログの本筋というか、本流はサウンドノベル/ノベルゲームのレビューなので、私がゲームをプレイしない事にはどうしようもないんですw
で、今日はDLだけしておいた作品をプレイしてみたら、サックリ風味だったので取り上げることに。
というわけで、今回は「くらげのかえり道」さんの『男四人が打ち切り回避について本気出して考えてみた。』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。



漫画雑誌で連載を抱えている人(そんな人、そうそういないけど)には、大問題……というか死活問題の「打ち切り」を題材にした、ちょっとメタなノベルゲームです。

簡単に纏めると「打ち切りあるあるネタ」を、作中マンガのキャラクター達が披露していく……みたいな感じ。ポイントは「打ち切り」だけじゃなくて、「どうやってテコ入れするか」みたいな所に踏み込んだ会話がある、というところでしょう。

あまりにも起伏のないストーリー展開に対して、そのキャラクター自らが突っ込みを入れていくとか、「こうしたらいいんじゃないか?」的なアイデアを出していくところは、メタな面白さが詰まっていていいですねぇ。
ちょっと変わり種の作品っちゃ作品なんですが、こういう新しいスタイルの作品って、なんかいいですよね。

作中で言及されていた、「BL的な要素を積極的に入れていく」というのは、例のCLAMPの得意技ですね……w 昴君と星史郎さん(『TOKYO BABYLON』)や、桜と知世ちゃん(『カードキャプターさくら』)みたいに、百合的な要素を入れたりして、「同人を作りやすく」してくれているわけです。
CLAMPの場合、too muchな気はしますけどもねw


こういう小粒で、しかも一発のアイデアで勝負しているような作品に対して、何か指摘していく、というのは結構野暮なんですけれども、敢えて云うならば、「もうちょっと沢山のネタが見たかった」ということになりましょうか。
本当に、4~5分で終わってしまうので、もうちょい、沢山の「あるあるネタ」を見てみたかったな、と。

けど、そう思えるのも、「打ち切り」という事態に対して、きっと多くの人が一家言持ってるからなんですよね。
「あの作品の打ち切りは酷かった」とか、「あの作品、俺は好きだったのに……」とか、誰しも思う所があるはずです。そういう意味で、テーマというかネタの選択は凄く良い所を突いてきたなぁ、と思いますよ。

そうそう、本作に出てくるキャラクター達が、何の部活をやっているのか(そう、スポーツものの漫画の設定なのです)、というのも、ちょっと笑えるポイントになっておりますw
敢えて云ってしまえば、女性ファンが多い、スポーツ系少年漫画が好きな人には、凄く響く作品なんじゃないでしょうか。



今日はこの辺で。
それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-10-18 18:57 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 09月 21日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.67

道玄斎です、こんにちは。
今日は凄く天気がよくて、掃除機を掛けたり、部屋の整理をしたりと有意義な時間を過ごしているんだよ。普段は掃除の時間が取れないから、こういう時にやらないとね。

それはそれとして、ちょっと前に、ノベルゲームにまつわるヘンテコ話を書いたんだけど、ちょくちょく、「別のエピソードが知りたい」とか、そういうメールを貰うんだ。
取り敢えず、ファンタジーもので関係のありそうな話を書いたわけなんだけど、今日の話も、ファンタジー……っぽいって云えるかな?



■ネタがなければ借りてくる!

ゲームを作る時、一番大変なのは、とにかくシナリオ制作だよね。
大変ではあるけれども、やりがいはあるし、調子よく執筆出来ている時は、凄い気持ちのいいものなんだよ。

キャラクター作りは、以前書いた通りで、割と楽しんで出来ちゃう事が多いんだ。
舞台設定なんかも、キャラ作りの延長、みたいなケースも多いよね。

でも、どういう事件が起こって、どういう変化が生じて、そうしたエピソードの連続を通して、最終的にどういう結末を迎えるか? っていう、物語の芯の部分を作るのは結構大変なんだよ。

けど、これも慣れだったり、資質の問題だったりするのかな?
「書きたいことはいっぱいある!」って人にとっては、シナリオ作りは、なんだかんだ云って楽しい作業だろうね。

そうは云っても、「シナリオは思い浮かばないんだけど、ノベルゲームを作りたいんだ!」って人が一定以上居るのも、また事実なんだよ。
そういう人は、「二次創作」のノベルゲームを作ったりする事もあるね。「二次創作」による効果を当て込んでいる部分も当然あるだろうけど、既に誰かが作った「キャラクター」(や、その性格)、「舞台」などを、そのまま使えるから(本家のエピソードを踏襲したりも出来る)、シナリオ執筆のハードルを下げる事が可能になるんだ。

これは、シナリオを「借りてくる」一つのパターンだけど、この「借りる」という行為は、真面目に考えてみると、意外と複雑なんだよ。



■例によって相談だ

今を去ること数年前、私はやっぱり、とあるゲーム制作志願者からアドバイスを求められたんだ。

これも以前書いた事なんだけど、「こういうのを作ろうと思ってるんだけど、足りない部分とかはあるかい?」とか、「このオチだと弱すぎる? もっと設定を練り込んだ方がいい?」みたいな、具体的な指摘やアドバイスは、実は求められていない事がほとんどなんだよ。

大体が、「俺の考えた話、ちょっと聴いてくれよ!」という形だったり、「こういうの作ります!」という決意表明に近い形だったりするんだ。

真面目にアドバイスをする事だって、勿論皆無ではないよ。わざわざ私なんかに助言を求めてきてくれるんだもの。出来る限りの事はしてあげたいもんね。
けど、そういう人達は、やっぱり自分が思いついたアイデアに自信があるから、こちらが何を云っても聞かないことがほとんどだよ。

竜頭蛇尾って言葉があるけど、まさにそんな感じで、最初は勢いがいいんだ。だけど、段々、自慢のシナリオに矛盾点が出てきたりして収拾が付かなくなると、シナリオを投げてしまうんだ。
或いは、シナリオに行き詰まったら、外堀から埋める! と、イラストレーターを探してきたり、音屋を誘致してきたり、色々やるんだよ。
けど、人を集めるだけ集めても、結局シナリオがないと作業出来ないものね。そして企画は自然消滅……。

これはやっぱり、「今までにない全く新しいノベルゲームを作る!」なんて意気込んでる場合に起きやすいよね。「今までにない」ものを求めて、あれこれ試行錯誤してみたものの、旨味が無かったり、結局、その人が忌避したい「今までにあったもの」が、実は理に適っている事に気付いてしまったり……とかね。

で、その時、私にアドバイスを求めてきたのは、そういう「オリジナル志向」が強い人ではなかったんだ。
寧ろ、積極的にネタを「借りてこよう」と思ってる人だったってわけ。


「それで、一体どういう作品を作ろうとしてるの?」

「オリジナル作品はいづれ作ってみたいんですけど、まずはゲーム制作に慣れようと思ってます!」

「あっ、それは寧ろいいことなんじゃない? ゲーム制作に慣れていく中で、本当に描きたいものを熟成させる事だって出来るだろうし。まずは作りやすいもので、ゲーム制作を経験してみる、って大事だと思うな」

「そうですよね! なので、処女作はシンプルな作品にするつもりです」

「色んなやり方があろうだろし、向き/不向きもあるからねぇ。それにしても、結局やってみないと、向いてるかどうかすら分からないわけだから、シンプルな作品で全然いいと思うよ……って、君は俺に何を聞きたいんだっけ?」

「あっ、忘れてました。実は、その処女作なんですけど、ネタを借りてこようと思ってるんですよ。そういうのってアリなのかなーって」

「え? 二次創作?」

「違います! その……みんなが知ってる有名どころの……」

「ってーと、アレかい? 日本のどことも知れぬ高校に、内向性が強い自堕落な学生がいて、彼を取り巻く色とりどりのヒロインが、何故か無条件的にその学生に惚れていく中で事件が起きる、という……」

「そうじゃなくて……ええい、はっきり云いましょう! 『童話』を下敷きにするんです」


こんなブログを読んでいるくらいだから、知ってるだろうけど、童話を下敷きにした作品は、それなりにあるんだよね。そして、私は、童話とか説話とか、そういうのが好きだから、割とチェックしてるんだ。

そうそう、この場合、「童話」っていうのは、もう端的に『グリム童話』を指す、って云ってもいいんじゃないかな。例外はアンデルセンの「人魚姫」くらいかな。
とにかく、グリム童話も、アンデルセンの童話も、著作権的にも問題がない童話だし、誰もが聞いたことがある話も満載なんだ。


「なるほどね。まぁ、実際、既に『グリム童話』を下敷きにしたノベルゲームは結構出てるんだよ」

「ええ、知ってます。実はそれを見て触発されたというか……」

「まぁ、いづれにせよ、話の筋を使いながらオリジナリティを出す、って事なら、全然OKだと思うな。刊行されてる本の文章をパクったりしなければ、ね。」

「あぁ、良かった! そこが心配だったんですよね~」

「問題は、そのオリジナリティの部分だよ」

「……というと?」

「いや、だってさ、既にみんなが知ってる童話をベースにするわけでしょ? って事は、童話通りの話の流れで、童話通りの結末だったら、それは『翻案』なんじゃない?」

「そこなんですよ! あくまで童話を下敷きにしながら、自分の作品を作るのはどうしたらいいか、って事も聞きたいんです」

「パッと思いつくやり方としては、今云った『翻案」。そしてキャラクターなんかは童話のそれを使いながら、大胆に改編をして、全く別の話に作り替えちゃうようなやり方、もう一個は、元の童話との差異……というかズレを上手く見せるような、そういうやり方があるかなぁ」

「翻案はちょっと……。作り替えも、それをやるんだったら、童話を下敷きにする意味があんまりないですよね……。となると、差異とかズレを見せる方向がいいのかな」

「まぁ、そうだろうね」

「分かりました。ちょっと資料を集めて、ネタを練り込んでみます!」


こんな調子で、彼女は童話を調べたり、関連書籍を集め出したんだよ
云っておくけど、自分が書きたいと思ってるものに関係する書籍を集めたりするのは、いい事だと思うよ。調べた事は、必ず作品に反映されるし、そういうのがリアリティにも繋がってくる。

けど、作品作りに活かす調査、ならば全然いいんだけど、結構脱線しちゃう事も多いんだよね……。



■蛙の王様

「やぁ、久しぶり。調査の方は順調?」

「ええ、書きたいネタも固まってきましたよ!」

「それは良かった。 で、どういうネタにするの?」

「まず、元の作品が有名じゃないと、どこが原作との違いなのか分からないですよね?」

「うん、そりゃそうだよ。あまり知られてない作品だったら、どこを変えたのか全然伝わらないと思うし」

「ですよね。なので、『シンデレラ』と『いばら姫』を使うことにしました! これなら女性はみんな知ってますから!」

「メジャーなお話だね。ただ、『シンデレラ』と『いばら姫』はメジャーすぎて、逆に差異を出すのが難しいかもなぁ……。もう既に色んな人がやってる、なんて事がありそうだよ」

「けど、大丈夫なんです! 私が加える差異は思想なんですから!」

「え? 思想? なんだいそりゃ?」

「『シンデレラ』も『いばら姫』も、女性抑圧の象徴なんですよ。今なお残る、家父長制度、男に抑圧される女性……その象徴が、『シンデレラ』であり『いばら姫』なんです。童話は、正直ですよ~。男性中心社会から不都合だとして、切り捨てられた真実の歴史を残しているんです!」

「ま、まぁ、そういう面も確かにあるんだろうけど……」

「むしろ、童話にこそ真実が宿る! 原作を掘り下げて、そういうところで差異を出していこうかな、って」

「つまり、童話を使って、女性啓蒙キャンペーンみたいなことをしようと?」

「その観点でやっていくつもりですよ。これなら差異も出せるし、新しい試みだから、話題になるかも……!」

「うーん、何を作るのも自由なんだけどもね、俺はやめておいた方がいいと思うなぁ」

「なんでですか? あっ、道玄斎さんは男だから、男性による女性蔑視が明らかになると、いい気持ちがしないんでしょう!?」

「心情的に、そういう部分があるのは否定しないけどもね。けど、もっと実際的な理由だよ」

「実際的?」

「うん、俺の持っているグリム童話は、角川文庫のヤツなんだけどもね。第一巻の一番最初のお話に、『蛙の王さま』ってのがあるんだ」

「『蛙の王さま』ですか……聞いたことないですね……」

「かいつまんで説明するとね、蛙に姿を変えられた王子様がいて、困っているお姫様を助けてあげるんだ。その代わりに、蛙の王子様は条件を提示するんだよ。条件っていっても、『仲良しでいてね』って事なんだけどもね」

「ふむふむ……」

「なんだけど、助けてもらったお姫様は、自分の悩みが解消するやいなや、蛙の王子様が疎ましく思えてきたんだ。当然、約束を全く守らなかったんだよ」

「それは……」

「で、約束を守ってくれよ、と訴える蛙を壁に叩きつけて、殺害を試みるんだ。うるさいからね」

「……最後はどうなるんですか?」

「ん? 殺害された瞬間、蛙に掛かっていた呪いが解けて、蛙は元の見目麗しい王子様に戻るんだ。そしたら、何故か『姫の仲良し』になって、結婚したらしいよ。その後も、ちょろっと話は続くんだけど、大体こういう話だね」

「……」

「つまり、男女の関係性を意識させるような物語っていうのも、グリム童話には多く入っていて、その中には、女性を抑圧していた名残、みたいのは確かにあるんだよ。けど、一方で、こういう女性の狡猾さが描かれるお話も結構あるのさ。あんまり、そういうのを気にしすぎるのもアレだけど、そういうとこで突っ込まれるかもしれないから、俺はお勧めしないのさ」

「童話も奥が深いですねえ……じゃあ、どうって差異を出したらいいんだろう……?」



■ネタの借用あれこれ

今となっては古典的、なのかもしれないけど、原作がぼんやりとしか記述していない部分を掘り下げてみる、っていうのは、有効な手かもしれないね。

つまり、何か超自然的な事象が起こって、一気に話が解決に向かう、って事が、童話や説話にはよくあるよね。特に文章中にはそれに関する説明はないんだけど、そういう所の理屈っていうか、説明を考えて、物語に深みを出す、って方法だよ。

或いは、さっき話した「蛙の王さま」では、お姫様と蛙の王子様が結婚した後、突如、ハインリッヒという家来が出てくるんだ。しかも忠臣である、なんて説明をひっさげてね。
そういう、唐突に登場する人物や、唐突に起こる事件の背景を考えたり、って事なんだけど、それなら、原作も活かせるし、自分の想像力で補完した、原作とはズレた世界も見せる事が出来るってわけだよ。


「うーん、そりゃ云うのは簡単ですよ。けど、それを実践するのが難しいから困ってるんじゃないですか!」

「まあね。けど、アドバイスなんて云っても、せいぜいこんなもんだよ」

「けど、なんかヒントくださいよ! 参考になるゲームとか」

「ま、ゲームじゃないんだけどもね、本でならあるよ」

「え? ほんとですか? なんてタイトルの本です?」

「『今昔物語』だよ」

「また、古文を持ち出して!」

「いやいや、誤解しないで欲しいんだけど、俺の云ってるのは、現代の文で書かれた『今昔物語』なんだよ」

「現代語訳ってことですか?」

「いや、単純な現代語訳とは違うんだな。福永武彦っていう作家が書いてる『今昔物語』なんだけどもね、まさに、原文では省かれている部分を上手く説明……というか捉え直しをして、元々の怪奇的ホラーから、人間的なホラーへの転換を図ったりもしているんだよ」

「へぇ~、それは参考になりそうですねぇ!」

「うん、すっごい文章が上手い人で、そういう部分でも参考になると思うな。池澤夏樹って作家のお父さんなんだけどもね」

「あっ、池澤夏樹なら知ってますよ! 教科書に載ってました」

「そうなんだ? 俺は、断然、父親の福永武彦の方が好きなんだけどもなぁ」

「それにしても、道玄斎さん、よくそんな作家のこと知ってますねぇ……。意外とやりますねぇ」

「いや、俺としては、逆に貴女が福永武彦を知らなかったことに驚いているんだけどもね」

「へ? なんでです?」

「うん……大きな声じゃ云えないんだけど、福永武彦の『草の花』って小説は、元祖ボーイズラブってことで、腐女子の間では有名なんだよ……」

「……!」



■顛末

というわけで、長くなっちゃったけど、今日のお話はこれでおしまいだよ。
ん? 結局、今日の話に出てきた彼女は、ゲームを作ったのか? って?

もちろん、完成品を作って、今ではシェアゲームをメインに活動しているんだよ。
ただし……BLゲーム制作サークルとして、だけどもね!



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-09-21 16:10 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 09月 17日

フリーサウンドノベルレビュー 『雨恋のキセツ』

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今日の副題 「雰囲気抜群、しっとりノベル」

ジャンル:雨の降り続く街を舞台にしたラブストーリー(?)
プレイ時間:コンプリートで、一時間ちょい。
その他:選択肢アリ、エンド分岐アリ。またオマケシナリオ(?)も。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2014/7/7(ふりーむ公開日)
容量(圧縮時):108MB




道玄斎です、こんばんは。
またしても、積んであった作品があったので、プレイしてみたら凡そ一時間という所。
しかも、後で載せるストーリーを見て貰えれば分かるように、なんか物凄くゆかしいものを持っている……こりゃ取り上げるしかなかろうってんで、取り上げる事に致しました。
というわけで、今回は「追及探偵事務所」さんの『雨恋のキセツ』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・舞台や、その設定に物凄くゆかしいものがある。

・イラストは美麗。ヒロイン二人はどちらもとても魅力的。


気になった点

・実は、メインシナリオでは、主人公の問題は解決せず、シナリオが恋愛に流れてしまったような部分が。

・エンドロールのムービーがあると思しいが、再生されない。

ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。
神が宿る街。神宿。
神宿には雨にまつわる神がいる。所謂、土地神というものだ。
その神は、雨を降らすことも、止ませることも自由自在。
しかし、5月の半ばから降り出した雨は一か月もの間、止むことなく降り続け、もはや神は宿るこ とのない街と詠われた。
この街には、それでも人が大勢押し寄せ、いつものように仕事をし、
買い物をし、遊び、離れていく。 

ここは終着点ではなく、交差点みたいな街。

※雨が長く続く街を舞台にしたADVです。

こういうお話です。


さて、本作は所謂「VIP系」です。
オリジナルのBGM、美麗なイラストなど、VIP系が強い分野はしっかり抑えてあり、更に、魅力的な舞台設定があり、非常に興味をそそります。

雨が降り続ける街、しかも「交差点みたいな街」なんですよ。
これだけで、しっとりとした、何かドラマが生まれそうな……そんな気がしませんか?
明朗ハイスクールコメディにはない、深みがそこには感じられるはずです。


肝心の物語の方なんですが、主人公は記憶喪失です。
そして、なし崩し的に探偵事務所の居候(探偵助手の下っ端)となり、自身の記憶と、この街に降り続く雨の原因(=雨を降らす神様の動向)を探る、というのが、物語の端的な纏めになりましょうか。

主人公の回りには、探偵事務所の所長である真実(まみ。いい歳だけど、見た目ロリ)、雨降りの神様を祀っている神社の巫女さん亜紀、そして図書館で出会う少女れま、と、魅力的な女の子キャラクターが一杯です。

先にも書きましたが、女の子のビジュアルはとっても素敵。
雨ならではのシチュエーションもあったりしますw スクリーンショットはそこからとってきましたw

ところで、ストーリーの概略はプレイ前に目を通しているんですが、てっきり巫女服姿の亜紀が、「雨を降らす神様」だと思っていました。
ちょっと偏見かもしれませんが、こういう美少女系の神様って多くありません?w

ちょっと脱線しますけれども、大体、土地神、或いは地方の神様、みたいな存在は、「大地を司る神様」とか「戦争の神様」とかメジャーな神様と比較すると、かなりパワー自体は落ちるんですよ。
ある限定的な地域で、更に特殊分野に於いてのみ、力を振るえるっていう造型ですよね。けど、例えば、その出自が「元々、その土地で暮らしていた住民で、悲劇的な死を遂げた」なんてものだった場合、やっぱり、神様としての性質もローカルなものになるんです。

だからこそ、物語に登場させやすいんです。
それが、パワフルな神様だと、力が強力なものですから、大抵の無理は効いちゃうし、主人公、或いはヒロインがどうこう出来る余地が少なくなっちゃうんですよねぇ。
でも、ローカルな性質の神様だと、人間と同じように悩みを持っていたりして、その悩み事を主人公達が解決してやったり、或いは、主人公達の抱える問題と、神様の方の問題が重なってきたり……とかね、物語に無理なく、自然に超自然的なものを組み込む事が出来るんです。

だから、大抵の「神様」が出てくるような作品は、そうしたパワー抑えめの、ローカルな性質を持っているハズですよ。


さて、ド派手に脱線しましたけど、巫女さんの亜紀は、全然神様とは関係がなかったんですw
誤解を恐れず云うと、「ヒロインの一人」という位置づけですよね。まぁ、そういう意味では、れまもそうなんですが。

で、本作で一番気になった所が、まさにそこなんです。
舞台や設定はバッチリ、ヒロインも可愛い、しかし、そうした街や神様を巡る謎、そしてそれに密接に絡んでくるであろう主人公の失われた記憶……がスポッと抜けてしまって、各ヒロインとの恋愛に、いつの間にか焦点がシフトしちゃっていた、という点です。

折角、魅力的な舞台があるにも関わらず、主人公は、探偵事務所から神社に行くか図書館に行くか、くらいしか動かないわけで、もう少し、街の色んな場所に移動してみたり、そうした街や自身の謎を解く過程で、ヒロインとの恋愛も副次的に描かれる、みたいな感じの方が、個人的には納得度は高かったかな、と思います。


そうそう、亜紀とれま、それぞれのルートを見ると、タイトル画面から、第三のルートとも云うべきシナリオを読む事が出来ます。そこで、やっと、主人公や街を巡る謎が解ける、という仕組みです。
やっぱり、そのルートを、各ヒロインのルートに上手く接合させてやった方が良かったかなぁ、とw
けど、真実が好きな方にはたまらないルートにはなっているハズですw 個人的には、やっぱり、れまが一番好きですがw


今日はちょっと辛口なんですが、雰囲気はいい作品なんですよ。
だからこそ、自分の願望を押しつけたくなっちゃうのかもしれませんね。
作品の雰囲気を十全に味わう為に、是非雨の日を狙ってプレイしてみて下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-09-17 21:04 | サウンドノベル | Comments(1)
2014年 09月 15日

フリーサウンドノベルレビュー 『Unknown』

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今日の副題 「服を着たまま5キロ川で泳いでも、優しくしてくれる彼女が欲しい」

※吟醸
ジャンル:実は爽やか、ハイスクールグラフィティ。
プレイ時間:合計で3時間程度。
その他:二篇のストーリーを収録。選択肢なし、一本道。
システム:WOLF RPGエディター

制作年:2014/7/4
容量(圧縮時):22.9MB




道玄斎です、こんばんは。
三連休もお終いですね……。私は、最後の休日、という事で、気になっていた作品をプレイしてみました。タイトルが意味深で、かなり気になっていたんですよね。で、プレイしてみたら、かなり面白かったので、こうして取り上げる事に。
というわけで、今回は「今門 楽々」さんの『Unknown』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・少しづつ読みやすく、テンポ良くなっていく文章。

・等身大の高校生を活き活きと描いている(特に「超レ欲ス」)。

・各篇共に、冒頭部の伏線などがちゃんと回収される丁寧な作り。


気になった点

・「無意確認生命体」の方は、ラストがちょっと消化不良だったかも。

ストーリーは……うーん、ふりーむの方にも、サイトの方にも詳しい記述がないので、今回は変則的に、Youtubeの紹介動画を張っておきましょう。こちらからどうぞ。



久々に、少し長目の尺のものをプレイしました。
感動した! とか、泣ける! とかではないけれども、地味に良いお話が詰まった、とても素敵な作品だったと思います。

本作の体裁について、先に述べておくと、二本立てになっており、それぞれ「無意確認生命体」、「超レ欲ス」というタイトルが付いています。

これら二つのストーリーには、連続性があって、「無意確認生命体」での結末を承けて、「超レ欲ス」のストーリーが進展していきます。ですので、特に理由がなければ、「無意確認生命体」の方から読んでいった方がいいでしょうね。

どちらかと云えば、「無意確認~」の方が、少しシリアスな印象です。
ちょっと冷めた……というか、達観した16歳の女の子が主役の話なのですが、彼女には、どうも秘密があるらしい……。
そんな彼女が巻き込まれる事件と、その後の生活や、彼女の変化を丁寧に追っていくストーリー、と、ひとまず纏める事は出来そうです。

確かにショッキングな事件は起きたりするのですが、よくあるタイプの、「ラスト付近で物凄い事件が起こって、それをヒロイン、主人公の二人三脚で乗り越える」みたいな、感じとは違うんですよね。
事件そのものは、冒頭部で示されていますし、プレイしていても、比較的早くその事件に到達しちゃいます。

寧ろ、事件後の方に焦点があって、凄いバカだけど、何だか妙にホッとする志田君の登場により、主人公しぶき(雌舞希)が、少しづつ変化していく様子や、彼女の持つ秘密に焦点が移行していきます。


一方で、「超レ欲ス」の方は、主人公が男の子。
過去に、「無意確認~」の主人公しぶきを泣かした事があって……。けど、実は彼女に惚れている……という、複雑な立場の少年が主人公となりますw

こちらは、明るい、男子高校生の明朗ストーリーと云った感じで、「あー、このくらいの年頃の男って、こんな感じだよねぇ!」と、思わず、「うんうん」と頷いてしまうような、楽しい作風です。

結構、この男の子の心情っていうか、そういうのがリアルというか、活き活きと描けているというか、まぁ、兎に角、そこが凄く個人的にグッとくるポイントでした。

ド派手な事件が起こるわけじゃない。けど、本当に些細な事で悩んでしまったり、或いは個人的なレベルでは、それが「大事件」に思えてきたり……。皆さんも身に覚えの一つや二つ、あるんじゃないでしょうか? 特に、男性は、女の子絡みで、そういう気持ちになる事、多かったですよね?


と、まぁ、大凡、二つのストーリーはこんな感じなんですが、秀逸なのは「伏線」を綺麗に活かし、綺麗に回収してくれる、という所。

どのストーリーも、ちょっと意味深な感じの冒頭部を持っているんですけど、ストーリーが進むにつれ、文章もこなれてきて、ドンドンテンポが良くなっていきます。そして、最後には、その意味深な冒頭部の謎もスッキリ解ける、というわけです。

そして、「ああ、ここであれを持ってくるのか!」と云うような、テクニックも巧み。
読後感も爽やかですし、派手な事件やクライマックスが無い、という意味で、地味…な方に入るとは思うのですが(女の子のビジュアルは凄い可愛いです)、本当に素敵なお話になっていました。


気になった……という程でもないのですが、「無意確認~」のラストが、ちょっぴり消化不良っぽく感じたなぁ、というのはありました。
勿論、ああいう形で、物語を終える事で、読者(プレイヤー)へ想像の余地を残して、独特な余韻を漂わせる、みたいな手法であろう事、想像に難くないのですが、「え? 結局、これはどうなったの?」と、ちょっぴり困惑してしまったのも、又偽らざる所だったりしますw
その結末のあやふやさは、「超レ~」の方を読む事で、解消されましたけどもね。



本作も亦、WOLF RPGエディター製の作品です。
けど、必要な事は全て設定出来ますし、全く不自由さを感じさせません。しっかりと「ノベル向け」にカスタマイズされている印象でした。

地味かもしれないけども、何だか心に染みてくるような作品で、しかも読後感が凄く爽やかなものですから、今回は吟醸で。

私の録ったスクリーンショット、或いはふりーむ記載のスクリーンショットは少し暗めの内容を想像させてしまうのですが、全体を通して、本作の印象を云うなら、繰り返しになりますが「爽やか」です。
是非、プレイしてみて下さいね。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-09-15 19:07 | サウンドノベル | Comments(3)
2014年 09月 11日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『夢の中』

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道玄斎です、こんばんは。
今日は、気になっていた作品をプレイ。プレイ時間は凡そ15分程度でしたので、番外編で。
というわけで、今回は「きじ」さんの『夢の中』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。



最近、ふりーむなんかを覗いてみると、WOLF RPGエディター製のノベルゲームが結構多く出てますね。私も、ここで何度かそうした作品を取り上げたりもしましたよね。そして、本作も、亦、WOLF RPGエディターで作られた作品です。

至ってシンプルなノベルゲームです。
セーブ/ロードの機能は無し。右クリックでバックログの閲覧は可能。但し、BGMや効果音無しの「文字と背景だけ」。云ってみればかなり地味な作品です。

確かに、BGMがないと物足りなさを感じます。
そもそも、こうしたゲームは、「サウンドノベル」という云い方もあるわけで、ただの文章に加えて、そこにサウンドを載せる事で、表現の幅を広げているわけですからね。


けど、本作、なんか妙に惹かれるものがあるのも、事実なんです。
本作は、SFと呼ばれるジャンル……に近いと思います。アンドロイドは出てくるし、人間とアンドロイドの区別をどう付けるのか? みたいな、フィリップ・K・ディック的な世界……とも云えるのですが、多分、本作の焦点はそこじゃないんですよね。

寧ろ、ラストのちょい物憂い感じだったり、少し暗めの世界観だったり……そういうところが、個人的には「お!」と思えましたね。比較的短文で歯切れの良い文体も、作品の雰囲気にあっていたと思います。ちょっと翻訳SFの趣を感じる、みたいなね。


ディック的な世界……みたいな事を書きましたけど、別に、本作には違法アンドロイドを狩る、なんて描写が出てくるわけじゃありません。
そうではなくて、アンドロイドという存在が極々自然に、人間の生活に入り込んでいて、そのアンドロイドを含めた家族……というかコミュニティというか、そういうもののあり方だったり、アンドロイドが発達した世界での人間の心のゆらぎ、みたいなものを描く作品です。

なので、実はエンタメ系のノベルゲームというよりは、ちょっと小説……文学寄りなテイストですよね。
それが、BGMこそ無いものの、モノトーンの背景と妙にマッチしていて、独特の雰囲気を出していました。


作品に合った渋めのBGMがついていれば、きっと、もっと作品全体の纏まりや、訴求力がアップするんじゃないかと、愚案致します。
少し変わったSF、ちょっと物憂いラスト、是非楽しんでみて下さい。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2014-09-11 20:04 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 09月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 『処女失格 ~初めては貴方に捧げたかった~』

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今日の副題 「型と面白さ」

ジャンル:乙女処女失格ノベル(readmeより)
プレイ時間:2時間程度
その他:選択肢なし、一本道。18禁。本レビューは「ネット公開版」にて。事前にパッチを当てておくこと。
システム:NScripter

制作年:2014/6/15
容量(圧縮時):196MB




道玄斎です、おはようございます。
早いもので、もう九月です。気が付けば、照りつけるような暑さはなりを潜め、少し涼しい秋風が吹くようになりましたね。
私は、と云えば、少し忙しさが増しつつあるのですが、何とかまた最近、ノベルゲームをプレイする時間を取ることが出来るようになりました。
というわけで、今回は「agony/禁飼育」さんの『処女失格 ~初めては貴方に捧げたかった~』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・独特の作風は今以て健在! しかも、マンネリ感がない。

・ちょっとほろ苦さを残すラスト。


気になった点

・誤字修正パッチを当てても、誤字が多め。

・陵辱的な要素アリ。苦手な人は要注意。

ストーリーは、今回は私が簡単にまとめておきましょう。
ぬいぐるみ少女(?)「ちぎみ」と、同居人である「ごかく」さんは、ちょっぴりメルヘンでラブラブな日々を過ごしていた。
そんなある日、ごかくさんは、会社で必要な資料を家に忘れたまま出勤してしまう。ごかくさんの役に立つべく、ちぎみは、ぬいぐるみの体というハンデを乗り越え、彼に忘れ物を届けようとするのだが……。

と、このくらいにしておきましょう。


いきなり脱線しますけれども、気が付けば、私、サウンドノベル/ノベルゲーム用のBGMを制作するのが、趣味の一つになっています。「音楽作ってます!」って大上段に構えて云える程ではないのですけど、まぁ、チマチマとね。

たまに、ゲームをプレイしていて、自分の作った曲を発見すると、凄いテンションが上がったりしますw テンションが上がったあとで、妙に気恥ずかしくなって、その曲が流れている所は、凄い速度で読み飛ばしちゃったりするわけですが……w

で、本作『処女失格』の作者さんがリリースしている、所謂シェアゲーム(『淫靡で残酷な豚』)にも、私の作ったBGMを使って頂いているみたいで、感謝感謝です。


さてさて、タイトル、そしてスクリーンショットをご覧頂けば、本作が、『さくっとパンダ』、『キナナキノ森』など、話題になった作品の作者さんだという事、すぐに分かるかと思います。

吸血鬼を思わせる、野性的な容貌の中年男。
変わった名前を持つ、肉感的なヒロイン。
そしてヒロインを待ち受ける過酷な運命……。

この作者さんの作品は、大体このパターンというか、この型で出来ています。
本作も亦、この変奏でした。けど、それでもやっぱり、本作は(というか、この作者さんの作品は)面白いのです。


本作は、大きく、前半と後半に分ける事が出来ます。
前半は、ストーリー部分で書いた通り、少しギャグっぽいテイストが入り込んだ穏やかな日常パート。
後半は、その日常の裏にある、「真相」を探っていくパート、と位置づける事が出来ましょうか。

この作者さんの作品を、何作品も読んでますから、前半を読んだ時に、「絶対、このまま微ファンタジックなほのぼの路線で終わるハズがない!」と、斜に構えて読んでいましたw
或る意味で、「絶対凄いのが来るぞ……」という、信頼感がそこには存在している、と云ってもいいのかもしれません。


そこで私は、はたと考え込んでしまったのです。
前述の通り、ある種のパターンによって物語が作られている。勿論、細部は作品によって違いますが、同じ型を使っている、と、言い切って良いような気がします。

毎回同じような話で飽きてしまう作者さんがいる一方で、本作の作者さんのように、同じ型を使い続けていても、魅力を放つ作品があるのか、どうしてなのか、と。
真面目に考えていけば、本当に色々な要素があるのでしょうけど、パッと思いついたものは、「型の部分での個性がずば抜けている」という事。

本作も、比較的女性向け……だとは思うのですが、そもそも「中年男」がヒロインの相手役になる、っていう設定が、物凄く個性的ですよね。しかも、その中年男もただカッコいいだけじゃなく、その内側に、ドロドロとした悪意を秘めている、という。

素直な女性向けゲームでは、或る程度、攻略対象の男性キャラのパターンが決まっていて、そういう安心感みたいのはあるんですが(勿論、素直な作品も私は好きです)、間違っても極悪中年男と結ばれるパターンはないんですよねw

ヒロインの造型にしてもそうです。素直なそれだと、あまり個性が無く、「可愛くない」とか称されつつも、普通に立ち絵、一枚絵を見ると美少女だったりして……。で、色んな男性キャラから、色んなやり方で愛されていく……みたいなね。所謂一つの「愛されガール」というか。
本作のヒロイン(?)ちぎみも、確かに可愛いんだけど、実は口は悪いし、変顔多いし、食い意地は張ってるしと、やはり、広く流布しているヒロイン像とは違いますよね。

この主人公(ヒロイン)と相手役の型は変わらないけれども、その型そのものに既にして個性が宿っている、という訳です。


今一つの要素は、「そこに、ちゃんとしたストーリーがある」という事。
パターンや型に或る程度沿っているとはいえ、ちゃんとストーリーが流れていきますし、結末というか〆のパートがちゃんとあるんですよね。ストーリーの緩急も凄いシッカリしてますし。

そうしたオチみたいな部分はなくて、何となく雰囲気で流れちゃう作品っていうのも、世の中にあって。
その雰囲気が、心地良いものだったら、全然それも作品としていいと思いますし、そうした作品の中に、私も好きな作品が結構あります。

ただ、大凡の傾向として、その雰囲気系の作品を作る人は、延々と同じような雰囲気系を作り続けるみたいな部分はありますよね。ちょっと言葉は悪いけど、同じようなネタで同じような雰囲気がウリの作品を量産されちゃうと、最初の数本は楽しめるけど、段々、新鮮さや面白さを感じなくなっていく事があって……。


というわけで、型の部分で物凄い個性を持っているという事。そして、緩急の効いたストーリーをちゃんと持っているという事。
この二つが、本作を「いつもの作品」ではなく、ちゃんと「新作」として成り立たせているんじゃないかなぁ、なんて愚案致します。

寧ろ、この要件があるからこそ、「個性」が際だつような、そういう部分もあるんですよね。前述の通り、「この人の作品なら、絶対このままじゃ終わらない!」というような、信頼感があったりね。
あっ、そうそう。作品の〆についても、少し話しておきましょう。

本作は、例によって悲惨なパートを挟んで、それにどう向き合っていくのか、というのが最終的な着地点になるわけです。そこが、ちょっとほろ苦くて、凄く良かったですよ。
この作者さんの持ち味の一つとして、「人間の心理描写」が上手い、というのが挙げられるんじゃないかな。

悪意のような、ドロドロとした心理を描くのもお手の物だし、後悔や諦念……そうした部分の心理描写も凄くいいです。少し暗めの人間の心理、心情という事になるかな。幸せな感情よりも、そういう負の感情の方が、プレイヤーとしてグッときたりする事が多いんですよねぇ。
もっと云えば、負の感情をしっかり描けるから、その後の正の感情にも入り込める。そういう部分って絶対ありますよね。


気になった点は、やはり、誤字修正のパッチを当てても、それなりに誤字が多い、という所でしょうか。
「なんにせよ」とありたい所が「なんによせ」になっていたり……そういう部分がチラホラと。

あと、一応注意書きの延長みたいなものですが、結構キツい陵辱シーンもあります。
18歳未満はプレイをしない。そうしたシーンが苦手な人も、プレイを控える、というのが吉。


結局、今回は、作品の中身について、全然触れませんでしたねw
敢えて云いますが、「いつものパターン」です。けど、やっぱり読み応えがありますし、面白いのです。
個人的に好きだったシーンは、「バスの中」のシーンと、ラストのほろ苦く、少し切ない部分ですね。

人を選ぶ部分は勿論ありますが、agony/禁飼育さんのファンなら、是非プレイしてみて下さい。期待を裏切らない作品になっていると思いますよ。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2014-09-04 11:37 | サウンドノベル | Comments(3)
2014年 08月 24日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『今日僕は自殺をします』

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道玄斎です、こんばんは。
今日は、久々のノベルゲームレビュー。全ルートをオマケまで含めて見ても、20分といった所なので、今回は番外編です。
というわけで、今回は「闇黒天使」さんの、『今日僕は自殺をします』です。



ちょっと前に、ファンタジーの要素を取り入れたノベルゲームにまつわるヘンテコ話をしたのですが、今日取り上げる作品の作者さんは、ファンタジーノベル作品、『クレイズン・ハート』というものもリリースしていたりします。ちょっと女性向けのテイストを感じますが、興味があれば是非是非。


「自殺」を一つのテーマに据えた作品を、ちょくちょく目にするようになりました。
それもこれも、発端は『ナルキッソス』だったように思います。『ナルキッソス』を目指して作られた作品がある一方で、また別の切り口から自殺の問題……もっと云えば、「生と死」の問題に取り組んでいる作品も増えてきました。

中には「これはちょっとなぁ……」と思ってしまうものがあるのですが、非常に大きなテーマを扱うものですから、真剣に作ってあったりして、概ね、力作が多いような気がしています。

そうした「自殺」を扱う作品群の中で、本作は「割とシンプル」に作られているのではないでしょうか?
フルボイスで(声優さんは皆、好演でした!)、気合いの入った作りなのは、間違いないにせよ、シナリオそのものは、じっくり読んで(聞いて)も、10分そこそこ。

一つには、少しづつ、自殺に至るまでの道筋を描き、そして「死ぬか生きるか」の選択を描くのではなく、主人公が「今日、自殺をする」と決心する所から物語がスタートする、という部分と関係があるのでしょう。
「最後の一日」を焦点化していく、という手法ですね。


本作には、面白い試みがいくつもありました。
一つは、「セーブ/ロード」が出来ない、という事。更に、スクリーンショットを見て頂ければ分かる通り、「自殺する」という禍々しいボタンが、基本、画面に表示されていますw

基本的に、プレイヤーが主人公の自殺決行のタイミングを制御出来る、という事なのですが、「いつ自殺するか」が、エンドを分けるのです。選択肢を使わないエンド分岐というわけで、これは中々面白い仕掛けだったと思いますよ。まぁ、或るタイミングでは自殺ボタンを押しても、「今は様子を見よう……」みたいな感じで、自殺出来なかったりするのですがw

主人公が「自殺へと至る理由」の方は、比較的オーソドックスなものなのですが(所謂、イジメです)、そうした作品の仕掛けの部分が、この作品を特別なものにしていたように思えます。
プレイしながら、場の流れを読んで、自殺ボタンをクリックする。そうする事で、トゥルーエンドへの道筋も拓けてきます。

更に、トゥルーエンドの方では、「死ぬ」という意味が逆転したりして、そこは素直に「おお、上手いなぁ!」と思いました。一発でトゥルーエンドに行くのは難しいかもしれませんが、尺自体が短いので、何度か試してみれば、すぐに到達出来るはずです。

所謂、エンターテイメント、とはちょっと違う雰囲気の作品ですが、これも亦、やはり楽しめる作品だと思っています。作品の作り(構造)的な部分で、あれこれ考える事も可能でしょうし、ストーリーを味わう、というのも勿論アリです。バッドエンドを楽しむ、という遊び方だって当然可能(バッドエンドが楽しい作品もありますからね)。


そういえば、後書きにて、「敢えてイラストを付けなかった」という事が記されているのですが、私はそれは大正解だと思います。
昨今、フリーのそれであっても、「綺麗(や、可愛い)イラストが付いているのが当たり前」というような風潮すらあるわけですが、敢えて、イラストを排除して雰囲気を作っていく、という方法は、私はとっても好きです。

確かに、美麗なイラストがついていれば、それだけでダウンロード数が跳ね上がります。
けど、好きに作ってるものなんですから、ダウンロード数だけを絶対に価値基準にする事はないんですよね。そりゃ、多いに越したことはないんですがw

本作の場合、イラストこそないものの、やはり、タイトルワークが目を引くので、そこでダウンロード数は補填出来てるんじゃないかな、なんて勝手に思っていますw 完全に余計なお世話ですが……w


さて、作品については大体これくらい、なのですが、今日はちょっと久々なので、蛇足を書いていくつもりです。

本作の主人公は、所謂イジメにあっていて、それが為に、自殺を決心するわけですが、「学校という場では、なかなかイジメの問題は解決しないだろうなぁ」というのが、私の正直な所感だったりします。

そもそも、当たり前の事なんですが、学校というのは結構矛盾に満ちた空間です。
「イジメはいけないんだよ」と教えている教師が、職員室の中でイジメをやっている、なんて事は日常茶飯事なのですから。子ども達の中で発生するイジメに教師も加わっていた、なんてニュースも見たことありますでしょう?

学校を出て、社会に出たとしても、イジメは至る所にあります。
しかも、その手段はもっと巧妙になりますし、その被害は学生時代の比ではありません(休職に追い込まれてしまったら、収入がなくなっちゃいますからね)。

なので、学校は「イジメをなくそう」じゃなくて、「どうしたってイジメは出てくる」っていうスタンスの方がいいんじゃないかなぁ、なんて思うのです。
どういう場面でイジメが発生するのか、どうやって解決していくのか、そっちの方に重心を置いて、「イジメに対処する手段」というか、そういうものを学ばせる方が、意義があるように思えるのです。

勿論、対処出来ないような酷いケース、と云った例外はあるでしょうけど、基本的に「力のある奴がそうでない奴をイジメる」という構造自体は、あまり変化はしません。
「イジメはいけないよ」と、イジメそのものを全否定するより、「イジメはいつでもどこでも起こり得る」という立場で、それに対抗する術、逃げる方法を教えて免疫を付けてやる……というのが実践的かなぁ、なんて愚案致します……。


ガラにもなくあれこれ書いてしまいましたが、脱線はいつもの事なので、どうぞご容赦下さいませ。
ともあれ、今日はこの辺で。


それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-08-24 17:00 | サウンドノベル | Comments(5)