カテゴリ:サウンドノベル( 740 )


2014年 03月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『よんひくいちは』

b0110969_19581850.jpg

今日の副題 「期待の地平を裏切る名作」

ジャンル:未来予知が可能な少年が主人公のノベル(?)
プレイ時間:1時間半ほど。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2014/3/2
容量(圧縮時):121MB




道玄斎です、こんばんは。
日々、「あの時、ああすればよかった」と悩んでいる私ですが、もし、私に未来予知があれば、そうした後悔はしないで済んだのか? 或いは別の悩みが生じてしまっていたのか、とにかく、そんな事を考えさせられる作品のご紹介。
というわけで、今回は「現屋」さんの『よんひくいちは』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・1時間半の中に密度の濃い物語が詰め込まれている。

・場面場面で、プレイヤーに考えを促すような、不思議な作品内容。


気になった点

・割と難しい表現を使う為、分かりにくい部分がある。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
ある日不思議な力を手に入れた男子高校生。
「自分は、未来予知ができる。」
その力で彼は、何を掴むのか。
その力で彼は、何を失うのか。

雨の日を境に何かを失った彼が、
いつもの非日常のなか、生き抜くお話。

大雑把ですけど、面白いノベルゲームって二種類に分けられると思うのです。
それは、プレイを開始して、少しづつストーリーが盛り上がっていって、最後に「ああ、面白かった」と終わるタイプ。今一つは、プレイを開始して幾ばくも経たぬ内に「お! これは面白いぞ……」と気付くタイプ。

あんまりにも、単純で一面的な切り分け方ですけれども、経験ありませんか?
本作、『よんひくいちは』は、まさにこの後者のタイプでした。プレイして、10分くらいで「あ、凄い面白いじゃん!」と感じたのです。
でも、一方で、ラストまで読んでみると、最初に感じた面白さとは別の種類の面白さがある事にも気付く。そういう作品でした。

主人公、宥大(ゆうた)には、所謂予知能力が備わっています。
その予知とは、予知の対象となる、人物・内容・場所・期間が分かるというもの。但し、人物・内容は必ず分かるものの、残りの二つは振れ幅があり、分かる時と分からない時、或る程度の制限が付くもの(期間なら、一週間以内、など)がある。

そんな宥大が、ある日、クラスメイトの男子が「主人公になる」という予知を得てしまうのです。
そこが、この物語のスタート地点と云っても差し支えないでしょう。面白そうでしょ? 「主人公」という、小説とか、ゲームの中にしか存在しないであろう漠然とした存在に、クラスメイトがなってしまう。そんな予知を得て、この物語が動き出します。

そして、その予知をきっかけとして、宥大は、凌太(これが主人公になる、と予知されたクラスメイト)、寛、そしてどこか不思議な黒助という友人に恵まれて生活をしていくのだが……という感じ。

宥大の予知能力者故の苦悩、みたいなものを孕みながらも物語は進んでいくわけですが、本作の凄い所は、そうした予知能力だけを推進力にしているわけではない、という点です。
詳述は避けますが、ホラーの雰囲気を持つパートがあったり(今日のスクリーンショットはそこからです)、超自然的な要素(まぁ、予知もそうなんですが……)が、物語に大きく関わっていたり、見所がたっぷりで、密度を感じるのです。

故に、最初の10分かそこらで予想する、ゲームの雰囲気というか、色がコロコロ変わっていく。そんな印象もありました。だからこそ、今日は「ジャンル」がかなり苦しい書き方になってしまったのですw
ともあれ、そこを、この作品の欠点と見るか、或いは面白い所と見るか、意見は分かれそうですが、私は後者の立場です。予知能力だけじゃない、と、書きましたが、そこがやはり、一つの芯になっている部分はありますしね。


全部プレイすると、ちょっと不思議なタイトル『よんひくいちは』の意味も分かるのですが、そうした、物語の謂わば焦点、と共に私が気になったのは、宥大の母親の存在でした。
何も、この作品に限りませんけれども、ゲームに於ける母親の存在、ってのも、ちょっと考えていくと面白いテーマなのかもしれません。商業作品なんかだと『Kanon』の秋子さんとか、凄い人気ですし、魅力がありますよね。

宥大の母親に、話を戻して。
母親らしい、慈愛に満ちあふれた存在なのは間違いないのですが、その母親の持つ優しさや、「信じる」という事が、やっぱり、物語の焦点や核心に届いている気がするのです。そんなに作品中で沢山描写されるキャラクターではないのですが、だからこそ、凄く印象深く、いいキャラクターだったなぁ、と思います。


ちなみに、文章そのものは比較的読みやすい、と云ってもいいのですが、使っている漢字や言い回しに難しいものがあったりして、実は「すんなり読めない」という印象です。例えば、「落暉」なんて言葉を私は、生まれてこの方使った事がありませんw
一つは、宥大の心中思惟を、結構緻密に描いているから、という事はひとまず云えそうなのですが、高校生の男の子がこんな言葉を使って思考するかなぁ? とか、いや、けど、「小説」だったら、そういうのも全然アリなんだよな……とか、色んな事を考えてしまいます。

作品や、その内容を、じっくりと反芻して、ノベルゲームから「考える事」を引き出したいプレイヤーっていますよね。私の知り合いにもいますw 「多分、作者はそんな事考えてないよ」ってな事でも、真剣に考えちゃう。
下手な考え休むに似たり、ってことわざもありますけれども、そういう人は、頭がいい人が多いんですよねぇ。
そういう人にとって、この作品の持つ、「読みにくさ」っていうのは、寧ろ逆にプラスに働くのかもしれません。

まぁ、私は馬鹿で、考えるのがニガテなので、難解な漢字や表現によって、ストーリーをストレートに読み解きにくいという所で、「気になった点」として挙げましたが、こういう作品が出てくるから、ノベルゲーム漁りが止められないんですよw



大体、こんなところでしょうか?
最初の10分で感じる「面白い!」という感触と、プレイしていく内にその「面白さ」の内実が変化していく、密度の濃いストーリーが光る作品でした。一応、無印にしてはいるのですが、ちょっとまだ、吟醸にしようかどうか、迷っていますw もう一度くらいプレイしてみて、最終判断をしますw
短すぎず、長すぎない尺で、良い作品を探している人には、断然お勧め致しますよ!



それでは、また。



/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2014-03-20 20:02 | サウンドノベル
2014年 03月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『femme fatale』

b0110969_17465790.jpg

今日の副題 「運命の女は悪女でもある」

ジャンル:浪漫ミステリー(?)
プレイ時間:4時間半程度。
その他:選択肢アリ、間違った選択肢はバッドエンド直行。18禁。
システム:?(独自システムと思しい)

制作年:元々2001年にリリースされたものを、2006年にリニューアル。
容量(圧縮時):181 MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、ちょっと朝からのんびりしています。ここ数ヶ月、色々と忙しくてため込んでいた作品を少しづつ消化中。今日は、商業ブランドから期間限定という事でリニューアルし、配布された作品のご紹介。
というわけで、今回は「inspire」さんの、『femme fatale』です。ダウンロードはサイトに入って、一番したのミラーサイト一覧にて、mirror.fuzzy2.comからどうぞ(直リンク出来ませんでした)。
良かった点

・大正時代を舞台としている為、ちょっとレトロな雰囲気が味わえる。

・淡々と進むストーリーが、意外にもプレイヤーを離さない。

・今でも十分通用するイラストと、ちょっと嬉しい女性フルボイス。


気になった点

・ミステリーではあるものの、最後までプレイしてもスッキリ感はあまりない。

・システムにバグがあり、ハマると先に進めない(後述)。

・タイトルと関係のある女性が、もっと表に出てきても良かったのかも。

今回、ストーリーは私が纏めておきましょう。
時は大正時代。東京で探偵業を営む八神は、一時、郷里に戻ってきた。
そこで、父の代から知り合いである警部に、ある事件の調査を秘密裏に依頼される。その事件とは、八神の妹鈴花が通う、ミッション系学校で起きた女生徒の不審な死に関するものであった。
八神は、妹鈴花、そして元許嫁の聖美と生活を共にしながら、事件の真相を探っていくのだが……。

といったところ。

正直な所、私はあまりハードボイルド系のミステリーを読んだりした事がないので、アレなんですが、どうやら本作は、そうした系統の作品のようですね。

舞台は、大正時代。
それぞれのキャラクターの発話、或いは地の文なんかも、「現代モノ」のそれと比べると、なんだか古めかしい言葉遣いで雰囲気が出ていました。ただ、正直、読めない漢字が一箇所、二箇所くらいありましてw ルビを振ってくれてたらなぁ……なんて。

如何せん、古い作品ですから、そこらへんに文句をつけてもしょうがない部分はあるのですが、2006年にリメイクされているのならば、もうちょっと遊びやすいシステムだったらな、という部分は色々ありました。
文字表示も、クリック待ちカーソルが出るとか、表示速度とか、そういうのは一切なくて、クリックすると、一気にずらっと文章が表示される形式。実はそれなりにバッドエンドがあるのに、セーブスロットの数が少なく、またセーブ(及びロード)出来るタイミングが限られている、等々。

そうした面がある事は確かなのですが、一方で、イラストが今でも十分通じる綺麗なものであったり、女性キャラはフルボイスなど、嬉しい部分も。


ところで、本作のタイトル、「ファムファタール」ですけれども、タイトルだけ聞いて、皆さんはどのようなイメージを持たれました?
私は、と云うと「運命の女(ひと)」という、邦訳がありますから「なんだか、ロマンチックな、そういう話なのかな?」と思っていました。ところが、プレイしていくと、探偵業(?)がメインであるわけで、あんまり、そういうロマンチックな方向には話が進んでいかないんですよね。

不審に思って、ちょっと調べてみたら、どうやら「ファムファタール」には、もう一つ意味があって、そちらは「男を破滅に導く魔性の女」という意味だったんです。
で、本作のタイトルの意味する所も、そっちの方だったというわけです。


一応、本作をノベルゲームと位置づけてレビューしているわけですが、ちょっと独特なシステムもあるので、その辺りの解説も入れていきましょう。

本作は、クリッカブルマップによって物語を進行させていく形式、といって差し支えないと思います。
一日の始めに、マップが表示され、行くことの出来る場所が示されます(場合によっては複数の中から選択する事に)。そして、その場所に出向いて、事件を調査するわけです。
そして、一日の終わりには、自宅書斎にて、「思索」というコマンドを選択し、昼間の活動で得た情報を整理していきます。選択肢は、この「思索」の中に出てきます。更に、必要があれば「呼鈴」なるコマンドで、鈴花乃至聖美と会話をして、「就寝」コマンドで次の日に……。

と、まぁ、こういう流れになるわけです。
セーブ/ロードのタイミングも、クリッカブルマップ選択時か、自宅書斎に居るときに限定されています。
ある種の単調さは感じるものの、特に迷う事なくプレイ出来るのは好印象です。「思索」や「呼鈴」で、全ての情報を見ないと「就寝」出来ないので、情報の取りこぼしは起こらないんですよね。

今、ある種の単調さ、と書きましたが、ストーリーの進み方も、少しづつ盛り上がって……というよりは、淡々と描写されていき、事件の真相付近まで近付いても、そんな雰囲気は変わりません。ラストに至っても「淡々」という感じですからw ミステリーに「謎の解明」というスッキリ感を求める人には、ちょっと物足りないかもしれません。
じゃあ、盛り上がりがなくて、更にスッキリしたエンドじゃないなら面白くないのかよ? と云われれば、「いや、それは違う」と云いたいのです。

盛り上がりや、その盛り上がりを際だたせる為の日常パートが、ノベルゲームには大事、と、私は良く書いているのですが、本作の場合、それは当てはまらないのかもしれません。
一つは、あまり「ノベルゲームの文章」というよりは、「小説」の方に近い文章を採っているせいだと思います。今では使わないような、ちょっぴりレトロな言葉遣いが多用される、というのは先にも書きましたよね。逆に云えば、ノベルゲームに小説っぽさを求める人には、結構満足出来る作品ではないかと。

で、淡々としてはいるのですが、ちゃんとストーリーは進んでいきますし、別の人物から別の依頼をされ、それが追っているヤマに繋がっていったり、と、プレイしていて飽きる、という事がありません。すっごい派手な事件とかは起こらないのに、プレイヤーを離さない。見習うべき部分が多い作品だと思いましたよ。

バッドエンドはありますが、基本一本道、と考えてもいいと思います。
何故ならば、誤った選択肢を採ると、即バッドエンドに向かってしまうからです。ちなみにエッチシーンはこのバッドエンドに集中しています。
正規のルートでも、イベントとして、エッチなシーンが入る事は勿論ありますが、総量から見れば、大した事はありません。


気になった点の中で最大のものは、「バグがある」という部分でしょう。
尤も、本作はWindows XP用なので、Windowsのバージョンの違いでバグが起きてる可能性も否定出来ないのですが……。
そのバグというのは、「思索」から人物や場所を選択して情報を整理していると、突然、別のシーン(前日のシーンとか)に切り替わってしまう、というものです。

これも先に書きましたが、全ての「思索」を終えなければ「就寝」出来ず、従って、ゲームを続行する事が出来ません。
対応策としては、「何度も、繰り返し、同じ『思索』をし続けるしかない」という、ちょっと後ろ向きなものしか発見出来ませんでした。

何かのタイミングで、シーンの切り替わりが起こったり起こらなかったりするので、ひたすら、ループして、正しく判定され「就寝」出来るまで、頑張るしかない、という事になります……。これが、本作の最大のマイナスポイントでしょうか……。


話を戻して。
調査を進めていくと、学園の理事長が数年前変わった事や、その理事長がかなり胡散臭い人物である事、更に学園の外国人女教師にもよからぬ噂がある事などが分かってきます。

そうした情報が、調査の中で少しづつ判明していくのは、それが一本道であっても、結構楽しいものです。情報を提供してくれる酒場の主人だったり、古書店店主とのやり取りは、本作に於ける主人公の立場を明らかにしてくれますし(八神の父の代で家が没落、されど地元では顔が利く)、学園に通う女の子達との接触も、スリルを感じるものや、微笑ましいものまで色々あります。

登場する女の子はみんな可愛いですね。
ミッション系の学校での事件だけあって、登場する女の子は、レイチェル、カレンと、外国の子も多いのです。個人的には、一番可愛いのは、やっぱり妹の鈴花って事になっちゃうんですけどもねw 

さて、問題は、タイトルの「ファムファタール」だと推測される、外国人教師フレイアです。
本作に底流しているのは、云ってしまえば、男尊女卑的な思想で、「女性として生きるという事」みたいなものが一つのテーマとなっているようです。
主人公の元許嫁の聖美や妹鈴花、カレン、中国人女性ツェイリン、そしてフレイアを巡る問題には、その「女性として生きる」問題がつきまといます。

そうした、事件の中に潜んでいるテーマ性みたいなものが、作品に深みを与えている事、間違いないのですが、フレイアに関しては、ちょっと不足を感じる部分があります。事件の真相と関わりがあるので、詳述は避けますが、もう少し、フレイアが表に出てきて、作品を貫くものを、より強く意識させてくれたらなぁ、と、思うのでした。


本作は、どうやら、『エーデルヴァイス』という商業ゲームの前史に当たる作品のようです。
フリー化されたのは、その『エーデルヴァイス』のプロモーション用って事になりましょうか。しかし、単独で十分楽しめるものですし、以前からお勧めされていた事もあって、今回取り上げてみました。

システム的に使いにくい部分や、バグがあったりはするのですが、大正時代のレトロな雰囲気を味わったり、どちらかと云えば小説に近い、ハードボイルド路線を楽しんでみたり、と、見所は結構あります。
最新のWindowsでは動かないかもしれませんが、プレイ出来るようなら、是非ご一読あれ。



それでは、また。



/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2014-03-12 17:45 | サウンドノベル
2014年 03月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『Summer Girl ―夏の少女とボク―』

b0110969_1825015.jpg

道玄斎です、こんばんは。
やっとこさ、少し色々とゆとりが出来たので、プレイしようとため込んでいた作品を遊んでいます。今日は、その中でも、かなり短めの作品ですね。
というわけで、今回は「mint wings」さんの『Summer Girl ―夏の少女とボク―』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。



今回は、凡そ20分程度で読了してしまったので番外編です。
主人公大輔が、幼い頃に体験した、ちょっと不思議な出会いを描く、ノスタルジック短編作品。ふりーむの一言作品紹介欄に「心ほぐす 一般向けビジュアルノベル」と、書いてあるのも頷けます。

皆さんがフリーのノベルゲームに求めるもの、って何でしょう?
ゲーム性? ストーリーの良さ? イラストの良さ? それとも、どれだけ商業作品に近付いているか?
様々なご意見、あるかと思います。ちょっと、最近、色々な人との関わりの中で、そうした「フリーのノベルゲームに求めるもの」を意識してしまう場面がありました。

まぁ、別に「フリーの」と限定しなくてもいいっちゃいいんですが、兎にも角にも、色んな人が、色んなものをゲームに求めているわけですよね。ストーリーは二の次で、エロ要素が強けりゃいい、なんて人もいるわけですしw

たまに目にしたりするのが、「俺は○○という立場で、ノベルゲームを捉えている。よって、そこからはみ出たものは認めない!」「ノベルゲームは△△じゃなければいけない!」なんてタイプの人。一本、自分の意見を持っていて、そういう所は素晴らしいと思う一方で、私は、どうにも、そうした意見には賛同出来なかったりします。

私は本当にいい加減なので、「その時その時、自分が楽しんでプレイ出来て、何か心に残るものがあれば、それでいい」みたいな考え方です。
同じ作品をプレイするにしても、プレイする時間帯とか、その時の自分の精神状態とか、或いは、自分の身辺の事情とか、そういったファクターで個々の作品は、結構色が変わって見えたりします。

うんと単純な話だと、失恋した直後に、失恋の悲しみを描くような作品をプレイしたとしたら、それが割とありきたりな演出だったり、よく耳にするお馴染みのBGMを使っていた作品だとしても、結構グッとくるんじゃないでしょうか?

そうやって考えていくと、或る意味で、ありきたりな、オーソドックスな作品っていうのも、それが「オーソドックスだから」という理由で排除される謂われはないんじゃないかな、と。
オーソドックスな作品に対して、個人的な楽しさなんかをもっと積極的に見いだしてもいいんじゃないか? なんて思っています。それでも「ちょっとこれはなぁ……」と思う作品があれば、言及しなきゃいいだけですしw


と、いつにも増して前置きが長くなりましたが、本作も亦、割とオーソドックスな手触りを持つ作品です。
祖母の住む田舎にやってきた、主人公大輔が、駄菓子屋さんで働く一人の不思議な少女と出会い、少しづつ惹かれていく……というもので、「(主人公にとって非日常的な)田舎での出会い」「不思議な少女」など、部分部分を切り出してみれば、きっと、目にしたことのある設定だと思います。

又、舞台が夏である為、少女の衣装も白のワンピース。
少女らしさと、夏っぽさ、そして微かなまぶしさを感じさせてくれます。

そういえば、大輔と、不思議な少女のぞみは、年齢差がちょっとあるようです。
大輔の方が幼くて、のぞみは大輔にとってお姉さん、という位置づけです。この年齢差が、実は作品のノスタルジック感を増して、素敵なものにしていたと思いますよ。
これが、同い年の少女で、例によって例の如く、彼女にハッキリと恋心をおぼえてしまう……なんて事になっちゃうと、この尺だと、流石にちょっとね。そういうストーリーがあっても当然いい訳ですけど、そこに説得力を持たせる為には、もう少しエピソードを積み上げた方がいいのは、云うまでもありません。

大輔の、のぞみに対する、恋未満の、ほのかな憧れ、みたいな雰囲気がラストまで効いています。
作品を彩るBGMの選曲も、とても良かったと思います。確かにノスタルジックな雰囲気が出てますし、夏のまぶしさの中にある翳りのようなものも感じさせてくれます。

20分くらいの短めの作品ですし、今は、春なのでちょっと季節はずれているのですが、私は、本作を何だかとっても気に入ってしまいました。作品全体を包み込む、優しい手触りも魅力的です。
最近、忙しさなどで、固くなっていた私の心も、少しほぐれた気がします。

良い作品だと思うので、是非遊んでみて下さい。
ダウンロードだけしておいて、夏にプレイしてみる、なんてのも乙かもしれませんよ。



それでは、また。



/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2014-03-09 18:03 | サウンドノベル
2014年 02月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『ゴス道の乙女たち』

b0110969_2305423.jpg

今日の副題 「惚れた女がたまたまゴスロリだっただけ!」

※吟醸
ジャンル:ゴス伝奇アドベンチャー(18禁)
プレイ時間:8時間半~9時間程度。
その他:選択肢アリ。全部で4ルートに分岐。18禁、残酷描写アリ。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2008/8/1(発売)、2011/7/16(フリー配布)
容量(圧縮時):415 MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、前回、かるーく予告しておいた作品のご紹介。元々は所謂同人シェアゲーだったものですね。
時間が経つと、昔発売していた作品をフリー公開する、というのはたまに目にするのですが、これも色々議論があるみたいですね。本作の場合ですと、2011/7/16にフリー公開が始まったのですが、例えば、2011/7/15に本作を購入しちゃった人がいたら、その人は損した気分になる、というヤツです。
そうした議論があるのは承知しているのですが、基本フリー作品を取り上げる、というスタンスの私からしてみれば、何はともあれフリーでプレイ出来る、というのは最高に有り難いのです。
特にシェアのものをフリー化して下さると、普段、あまり馴染みのないシェアゲームの世界にも触れられますしね。
というわけで、今回は「01-Torte」さんの『ゴス道の乙女たち』です。ダウンロードはこちらから
良かった点

・中盤以降、ストーリーのテンポが上がり、ギャグも冴えてくる。

・物語内歴史がバックグラウンドにあり、それが作品に奥行きと重さを与えている。

・3Dアニメーションなど、意外と凝っている部分も。


気になった点

・割と気怠い前半部。

・ちょっと投げやりなエンドを持つヒロインが一人w

・賛否が分かれるトゥルーエンド。

ストーリーは、公式サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。



休日、間違って原宿駅で降りてしまって、街行く人を眺めてみれば、「霞ヶ関で同じ格好してたら、好奇の目に晒される事間違いなし!」ってな感じの服装をした若者達が大勢います。
沢山のレースが付いているスカートは、中に骨が入っている為、ふっくらと形を保ったまま。「歩きにくくないのかよ……」と思わず心配してしまうような、厚底の編み上げブーツ。頭には、やっぱりコサージュとかレースが沢山ついたヘッドドレス。

そう、ゴスロリです。
っと、ここで短絡的にゴスロリというと、私の見識が疑われてしまうので、ちょい補足をしておきましょう。
上記に挙げたような服装は「ロリータ系」という大きな括りに入れられる事は多分間違いないのですが、ジャンルは細分化されています。白やピンクを基調にした「甘めのロリータ」もあるし、モノトーンがベースの「ゴシック系」もある。

随分と前置きが長くなっちゃいましたけど、本作は「ロリータ系」の格好をした女の子達をヒロインに据えた野心作です。
いやぁ、意外とありそうで無かった、って感じですけど、「意味はないけど、ゴスロリ書きたかったんで……」っていうわけでもなく、そこには必然性があり、そういう部分も込みで面白かったです。
メインヒロイン、エリカは、ハサミを持ち歩くちょっと危ないゴスロリ少女ですけど、凄い可愛いです。ちなみにスクリーンショットはエリカです。
その他にも、パンクの要素が入った服装のミサや、甘ロリ一直線みたいなアンリ、と、多様なロリータをヒロイン達がカバーしています!

さてさて、公式のサイトを見てみると、ちらほら目にする著名なゲームレビュワーさん達の賛辞の言葉が載っています。
そこに書かれている事に頷ける部分もあるのですが、全面的に肯定出来るわけでもありません。ま、こっちは、フリーメインのレビューなので、見方が違うって事で、そこらへんの違和感を先ずは追っていきましょう。


前述のメッセージの中に、スピード感がある、というような事が書かれていたりするわけですが、個人的にはそのスピード感を楽しめるようになったのは、前半分が終わってから、という印象です。
ストーリー的な部分で云うと、主人公直都が、エリカを助手にし、ようやく「ゴス狩り」への調査を本格的に行っていく、という辺りからでしょうか?

それ以前は、「ゴス狩り」事件の概要であったり、主人公周辺のキャラクターの紹介などのパート、と云ってもいいのかな。要所要所で、ギャグっぽいテキストが入り込むんですが、個人的にはそこまで笑えなかったかなぁ……。

ただ、中盤以降から、ストーリーが加速していきながらも、やっぱりギャグっぽいやり取りや、おふざけシーンなんかも入ってくるんですが、何故か質的には変わってないはずなのに、そっちの方は思わず笑ってしまう事があったんですよね。
どうも、私は、ストーリーが進捗している、という状況があって初めて、ギャグを楽しめるようですw やっぱりストーリー的な進展がないと、ちょっと焦れてきちゃいますからね。そういう状況下でギャグが出てきても、「ギャグはいいから、ストーリー進めてくれよ」って云いたくなってしまうというか。

で、中盤以降のストーリーのスピード感は、物凄く良かったですね。
今まで朧気だった事件の輪郭が少しづつ見えてきて、色んな事実も判明してくる。「事件の真相に近付いていく感触」が気持ちよく味わえます。バトルシーンもあって(主人公は、特殊な訓練を受けてる設定ですw)、そういう所も熱いですよね。とっても面白くプレイ出来ました。

結構、人死にが出たり、悲惨な状況、残酷な描写が続出するのにも関わらず、そこで湿っぽくならない軽妙さも併せ持っていて、バランス感も良かったと思います。
所々で、3Dアニメーションが出てくるんですが、これもさりげなく凄い事をやってる気がしますよ。


「ゴス狩り」の調査をし、真相を突き止め事件を(取り敢えず)解決するまでを前半、それ以降を後半と位置づける事も可能です。
私は、最初の2時間くらいで、エリカと共に「ゴス狩り」事件の調査を本格的に開始するまでを前半、事件を解決するまでを中盤、それ以降を後半と勝手に決めているんですが、そんなのは、各人がそれぞれ決めればいいわけで、当然、ザックリと前半・後半と決めてもいいのです。

で、どの区分けをしても、後半に当たるパートは、所謂「ヒロインの個別ルート」に相当します。
私が最初にプレイしていたら、どうやらエリカのルートに入っていったようでした。メインのゴスロリ娘ですし、個人的にも一番好きなタイプなので、無意識的に選択肢を捌いていたのでしょうw
ちなみに、選択肢の数はそこまで多くありません。よって、四つのエンドを見るのも多分、そんなに苦労しないはずです。

ただ、これも今まで何度となく話してますが、「フラグがリセットされない」なんて事がたまにあって、違う選択肢を選び続けているのにも関わらず、同じルートに入り込んで抜けれなくなってしまう、という事がありました。
そういう時は、サックリ本体を再起動してやれば、フラグがリセットされます。

エリカのシナリオは、中盤までの流れを汲みつつ、物語内で語られる歴史的背景がグッとせり出してきて、物語に奥行きと重みを与えています。
結局、歴史は繰り返すというか、過去を或る意味でなぞっている……という仕掛けは、この作品固有のものではないにせよ、やっぱり物凄く有効な手法だと思いました。
ループというのとは、また違うんですよね。ループは飽くまで同一人物がある時間内を何度もやり直す、っていうのが、簡潔な説明だと思うのですが、これは、時代を超えて、図らずも同じような事が起こり、同じような事を別の誰かが繰り返してしまう、というような、そういうものです。

うんと分かりやすい例を挙げると、やっぱり『源氏物語』とかになるのかなぁ。
光源氏って男がいて、オヤジさん(天皇)のお后様(自分の義母)と密通してしまうんですよね。結果、光源氏の子供が、オヤジさんの子供として生まれてくる事に。

で、光源氏自体が、そういう悪い事してるわけですから、「俺も同じ事されんじゃねーの?」って恐怖があるんですよね。よって、自分の息子の夕霧には、奥さんの一人であり、寵愛の紫の上を近づけなかったんです。その代わりに容姿の劣る花散里という女性を、養母にしています(夕霧の実母は、彼を産んですぐに死んでしまっています)。

で、時代が過ぎて、光源氏は、女三宮なる皇女と結婚せざるを得なくなってしまうのです。血筋的に考えれば、女三宮は、自分の兄貴の娘だから、姪に当たるわけで、そこらへんの感覚の違いは現代と昔では大きく違いますからスルーしてしまいましょう。
ともあれ、幼さの目立つ女三宮を娶ったはいいけれども、今度は、その女三宮が夕霧の友人でもある柏木という男と密通をしてしまい、懐妊。
生まれてきた子は、柏木の子ではなく、光源氏の子として育てられる事に……。

……と、まぁ、こんな感じで、歴史は繰り返すというか、因果が回ってくるというか……そういう、歴史的バックグラウンドに支えられた、奥行きのあるシナリオになっていくわけです。

エリカの場合は、メインヒロインですから、エンドが二種類です。トゥルーとハッピーの二つ。
最初、「絶対にハッピーの方がいいや」って思ってたんですが……そういう物語内歴史の輪みたいなものを強く感じさせ、又それを次世代に継いでいくかのような、トゥルーエンドも捨てがたいぞ、と。
今、エリカのエンドで、好きなものを一つだけ選べ、と云われたら、私は、迷ってしまいます。トゥルーは普通の恋愛アドベンチャーを望む人にとっては、バッドエンド風味な部分もあります。けれども、寧ろ、そのトゥルーの方が、この物語に通底している歴史の論理には合致するんじゃないか? と、そう考えてしまうわけですね。

ちなみに、ミサのエンドも、エリカのトゥルーエンドを見ていると、多分、その「歴史の論理」みたいなものが感じられると思います。
直都とミサも、自分たちの気持ちで、事件を解決し、処理したはずが、実はそれは……みたいな。やっぱり、そうした部分で深みが出てますよね。ただ、ミサの場合は、死体消失の謎が放置されていたような……。

一方、甘ロリのアンリですが、上記の二人と違って、物語の「歴史の論理」による束縛を受けないキャラクターなんです。ロリロリで可愛らしい子なんですが、エンドも、他の二人と違ってちょっとだけ投げやり感がw 投げやりっていうと言葉が悪いかもしれませんが、ちょっとギャグで逃げちゃった、みたいなw
その意味では、作品の持つ「重さ」を感じずに、素直に楽しむことが出来るキャラ、とも云う事が出来るかもしれませんね。



大体こんな所でしょうか?
久々に、歯ごたえがある、しかも野心的な作品をプレイ出来て、本当に楽しかったです。
中盤からの面白さは、本当に気持ちの良いものですし(凄惨な場面とかはありますけど)、ゴスロリも堪能出来ますし、ちょっとフッと怖さを残すエリカのトゥルーエンドも、賛否はありましょうが、絶対に入ってて良かった、と思います。

ゴスロリとか、ミステリー風味とか、恋愛とか、色んな要素の入っています。
ちょっとでも興味を持ったら、是非プレイしてもらいたい、そんな作品です。というわけで、今回は吟醸。



それでは、また。


/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2014-02-12 23:00 | サウンドノベル
2014年 01月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『闘う男のミカタ★恋するほぐシャキ体験キャンペーン』

b0110969_1615819.jpg

道玄斎です、こんにちは。
今日は、ちょっとイロモノゲームのご紹介。以前、『ペヤングどらま館』という作品(?)がありましたが、本作も、企業によって作られたプロモーション用のゲーム。
というわけで、今回は「花王株式会社」さんの『闘う男のミカタ★恋するほぐシャキ体験キャンペーン』です。プレイはこちらのページからどうぞ。



ゲームの女の子のタイプって、ザックリと二分割出来ると思いませんか?
「可愛い系」と「綺麗系」。勿論、それに当てはまらないタイプもいますし、中には「可愛さもあるし、綺麗さも併せ持っている」なんてハイブリッド型もあったりしますが。

本作(?)は、先ず、「あなたの属性を選んでください」と言われ、「学生」若しくは「社会人」を選択します。
すると、学生の場合は、「城貴優」、「穂久下こころ」の二人が表示、社会人の場合は、「城貴あい」、「穂久下サキ」の二人が表示され、要はヒロインを選択せよ、というわけです。

どうも……この四人のヒロインの苗字から察するに、城貴優とあい、そして、穂久下こころとサキは姉妹という設定のようですねぇ。城貴が蒸気、穂久下が気分を「ほぐす」と掛かっている事は云うまでもありません。

で、名は体を表す、というわけで、城貴姉妹が「可愛い系」、穂久下姉妹は「綺麗系」の造型です(「こころ」ってのは、「可愛い系」の名前なんですけどもね)。言動もやはり、そうしたタイプにキッチリ分けられています。ちなみにスクリーンショットは城貴優です。

ブラウザで遊べるノベルゲーム、なんですが、BGMがついてないのがどうにも寂しい気がします。
1ルート、2分もあれば終わってしまう作品とはいへ、やはり、無音なのはなぁ、とw ゲームのラストで、ヒロイン達がじゃじゃーん、と「蒸気でホットアイマスク」を主人公に差し出すんですが、その時も効果音くらいあっても良いかもしれませんね。

内容としては、至ってオーソドックスなノベルゲームの体裁です。
ただ、前提として、ヒロインは主人公の事を一定以上気に掛けてくれている、というか、好意を持ってくれている、という状態w
ヒロイン達の質問に選択肢で答えていくと、お勧めのホットアイマスクを教えてくれる……そんな作品です。

結構笑えるのが、選択肢で「ダメな答え」をしても、ヒロイン達は全く意に介さず、「そういえば」と、ホットアイマスクを勧めてくるところですw このちょっぴり強引な所が妙に面白さを誘いますねぇw
又、「ダメな答え」を選び続けても、半ば強引に話が進んでいき、所謂バッドエンドは存在しません! ヒロイン達は最後の最後まで、主人公(私達)に好意を持ってくれたまま、アイマスクを勧めてくれるのです!

本当に1ルート2分もあれば終わってしまうような、そんな作品ですが、企業がこうした「ノベルタイプ」のゲームを、プロモーションに使っている、というのが面白いですね。
先にも述べましたが、BGMやSEを入れてみたり、ダメな答えを選び続けたら、ヒロイン達が拗ねたりする、といったアクションや、エンドを用意すれば、もっと(ギャグ的な意味ではない)面白さが増すんじゃないかな、と愚案致します。


最近では、フリーのノベルゲームも尺の長いものが増えてきましたよね。
そんなゲームとゲームの合間に、ホットアイマスクでリフレッシュしてみてはどうでしょう?w



新年一発目のレビューが、ちょいイロモノですが、今日はこの辺で。
それでは、また。
[PR]

by s-kuzumi | 2014-01-26 16:00 | サウンドノベル
2014年 01月 08日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.62

道玄斎です、こんばんは。
今日は、久しぶりの箸休め。気楽に読み流してやって下さいまし。



■バトル描写を巡る問題

サウンドノベル/ノベルゲームに於いて、「戦闘シーン」が描かれる作品ってありますよね。
全部が全部とは云いませんけど、伝奇モノなんかに多いイメージ。セーラー服を着た黒髪のロングヘアーの女の子(可愛い系ではなく、綺麗系の女の子)が、日本刀を持ってチャンチャンバラバラやる、なんてのは、一本や二本、思い当たる作品があるんじゃないでしょうか? まぁ、サウンドノベル/ノベルゲームに限りませんけれどもね。漫画なんかだと、鬼咒嵐さんとか……。

そういう、刀とかを遣うバトルでなくても、肉体をぶつけ合う格闘、或いは、銃なんかを使用したバトル、色々なバトルが想定出来ます。こうしたバトルシーンを持った作品って、結構熱いものが多くって、私は結構好きだったりします。

でも、そうした「バトルシーン」を描写するのって意外と難しくないですか? 実体験を作品に活かす、というのが、説得力のある描写や作品の一つの要件だと思われるのですが、実際に刀で斬り合った人なんて、皆無ですし、それなりに普通に生きていれば、ケンカくらいはあるかもしれないけど、激しい戦闘に巻き込まれる事も無いと云って差し支えないと思います。

例外は、何か格闘技をやっている(やっていた)人の場合ですね。
日々の練習や試合で培った、経験を活かしてバトルシーンを書いていったりすると、やっぱり、そこには説得力が生じるのではないでしょうか。私も、色々サウンドノベル/ノベルゲームをプレイしている方ですけれども、バトルシーンを読んで、たまに、「あっ、これは、何かの経験者だな」と気付く事があります。それは、描写される「技」だったりが、実在していたり、「実際にその技を使った事のある人しか分からないであろう実感」、みたいなものも併せて書いてあったりする場合です。
まぁ、勿論、書籍なんかで知識を得て、それを巧みに使用した、という可能性も否定出来ませんけどもね。


前置きが長くなりましたが、「説得力のあるバトルシーンを描く」というのは、バトルを内包した作品に於いて、それなりの重要度があるんじゃないかと考えるわけです。

私の知り合いのゲーム作者さんも、バトルシーンを描くに当たって、結構悩んだようです。
で、私に、「バトルの描写をしたいんだけど、上手い方法ないかな?」と、聞いてきたわけです。私は、その時、割といい加減に、「んー、本屋さんで格闘技とか、お目当ての武術の本とかを探してみて、技とかを取り入れてみたら?」と、答えてしまったのです。

で、その後、色々考えてみたのですが、「バトルシーンの描き方」って云っても、大きく二つに大別されるんじゃないかな? と思い至ったのでした。
一つは、「技や技術の描写」です。つまり、どういう構え方があるのか、とか、或る技を使うと、どう体が動くか、とか、或る打撃を食らった際、人がどう倒れるか、とか、そういった部分の描写の仕方。
もう一つは、「それを、どのような文体で描写するか」という、「描写テクニック」とでも云うべき、描き方の問題です。

もしかしたら、私が聞かれたのは、後者の方だったのかもしれません。
私が、バトルシーンに定評のある作品を何作も作っているならともかく、そうでないわけですから、その可能性は低いんですが、もしかしたら、「今までプレイした作品の中で、ハッとするような描写があったら教えてくれ」という意味だったのかな、なんて考えると、ちょっと悪い事をしたなぁ、と思ったり。



■「意識の流れ」を取り入れてみる

で、もし、後者だった場合を考えて、「どういうアドバイスが出来るのか?」を考えてみた結果、行き着いたのが「意識の流れ」です。

これはジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』という作品で取り入れられた技法で、非常に有名なものなのですが、海外作品だけでなく、例えば、川端康成も取り入れた事のある技法です(『ユリシーズ』に影響されたんですね)。
川端康成には、例の『伊豆の踊子』だけではなく、『水晶幻想』なんて作品があるんですよね。で、その『水晶幻想』が、意識の流れを取り入れた作品となっています(川端の他の作品にも、意識の流れを取り入れたものがあるんですが、便宜上省略します)。

で、まぁ、意識の流れってのは、どんなもんじゃい、っていうと、一言で説明するのは難しいんですが、「登場人物の意識の流れを、連想ゲームのように叙述していく方法」って云えば、伝わるかな……。
試しに、ちょいと、『水晶幻想』を引用してみましょう。

廃墟。栄華と逸楽の町、ポンペイ。ポンペイの廃墟には、スペキュラムも埋もれていた。死の町。埋れた私の日々、埋れた日々の廃墟である私。この人と結婚してほんとうによかったと思ったことが、私に一日でもあったかしら。ほんとうに、私はこうしてお嬢さんと向い合って坐っていて、私は私の内に坐っている。二人いながらひとりぼっち。夫の腕のなかにいる、あの時の孤独。孤独なありさまの獣類の感情はどんなものかしら。乳児の孤独。子供の見るもんじゃありません。(川端康成、『水晶幻想|禽獣』、講談社文芸文庫、1992年から、114ページ目の一部を引用)


と、こんな感じ。
適切に分かりやすい所を引用出来てるかどうか、定かではないんだけど、何となくイメージは掴めるんじゃないかと。登場人物の頭の中、その時の思考を、思考の脱線をも含めて、進行していくような様子を書き留め、そのまま叙述する。厳密な定義はともあれ、大凡、こんな感じの文章です。

これが、どうして、バトルシーンに良さそうか、っていうと、上記の文章を見て貰えれば分かるように、「意識の流れ」を描こうとすると、一つ一つの文章が、短くなります。下手をすれば単語の連続になったりもするわけです。
バトルシーンの描写は、迫力とか、そういう部分も大事だと思うのですが、「スピード感」も重要要素です。手に汗握るはずのバトルを、だらりと描写されたら、きっと締まりがないものになってしまいます。
なので、戦いながら、主人公なりの「意識の流れ」を、上手く描写する事が出来れば、バトルのスピード感が出せるんじゃないかと思うのです。

ただ、「意識の流れ」をそのまま使ったんじゃ、余計なノイズも入り込むかもしれません。
私達も、普段、何気なく物を考えたりする時、ふと、何となくその思考のスキマに「かまぼこ」の事を考えたり、「数年前無くした小銭」の事を考えたりすると思いますw 

バトルの描写で、「かまぼこ」が入り込んじゃどうしようもないですよねw
なので、飽くまで「戦闘に関する意識の流れ」と、限定して使ってみるのが、基本になるのではないでしょうか。



■けど、たまに目にするよ?

……と、つらつら「意識の流れ」を、バトルシーンに使ってみる事について書いてみたんですが、もしかしたら、「似たようなの、見たことあるぜ?」という人もいるかもしれません。実際、私もサウンドノベル/ノベルゲームで見た事があります。

「斬られた!? 温かい。血。右足。濡れている。後ろ。後ろに下がらなきゃ。足、動かない。」

みたいなw
ちょっと、あんまりな文章ですけどもねw
これを、そのまま「意識の流れ」と云っていいのか、はともかくとして、ちょっとしたアイデアの一つにはなる、かも、しれません……。

あんまりこれをバシバシ使うと、それはそれで間延びしちゃいますし、だらけちゃいますから、「ここぞ」って時に、ちょこっと拝借してみる、みたいな感じで使ってみると面白いかもしれません。
私達にとって大事なのは、「意識の流れ」に対する理解ではなくて、その効果的だと思われる部分を、こそっと(いや、こそっとしなくてもいいんだけどさ)掠め取ってしまうという所なので、盲信せず、使えそうだと思ったら、お試し下さいませ。



という辺りで、今日はおしまいです。
たまには、こういう記事もね、あった方が、個人的に楽しいです。



それでは、また。
[PR]

by s-kuzumi | 2014-01-08 20:29 | サウンドノベル
2013年 12月 15日

フリーサウンドノベルレビュー 『ヤサシイセカイ。-Rewrite The Scars-完全版』

b0110969_18422193.jpg

今日の副題 「優しい世界でありますように」

ジャンル:倒錯病的愛憎ビジュアルノベル
プレイ時間:4時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。15歳以上対象作品
システム:Live Maker

制作年:2013/10/27
容量(圧縮時):171MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、複数の方からお勧め頂いていた作品のご紹介。「好き/嫌いが分かれるかも……」と云われていたのですが、そんな「嫌い」になる要素は無かったような……。
というわけで、今回は「プラスマイナスゼロ」さんの『ヤサシイセカイ。-Rewrite The Scars-完全版』です。ダウンロードは、こちらからどうぞ。
良かった点

・賑やかで楽しい、“攻め型”ノベルゲーム

・主人公に妙に感情移入出来てしまう。

・綺麗に纏まるラスト。


気になった点

・後半、性急だった描写も。

・良く分からなかった部分が一箇所。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
【あらすじ】
世界はきっと優しくなんて無くて、等しく無慈悲で残酷で――。
それでも信じていたかった。この世界の、優しさを。

今なお急速な発展を遂げ続ける現代魔術科学社会。
世間はその過程で生まれた魔動人形の中の一体、「最高傑作」の誉れ高いメル=レーヴェレンツの話題に大いに沸いていた。
主人に謀反し殺人を犯した、前代未聞の事件に。

一方で家庭教師であるアルフォンスは、今日も教え子のリーゼロッテの放胆ぶりに手を焼いていた。
それでも献身的に彼女に尽くす様を、他人から「気持ちが悪い」と一蹴されながらも。

そんな彼をストーカーするのが趣味であるリーゼロッテを、今日も屋敷へ戻そうと帰路を引き返していたその時。

運命の悪戯か、それとも偶然のような必然なのか。彼と彼女は、邂逅を果たしてしまう。
そう。世間を大いに騒がせているメル=レーヴェレンツに――。

【ゲーム概要】
基本的に読み進めるだけの、選択肢のないビジュアルノベルゲームです。

本作は性的・暴力的表現を含む十五歳以上を対象とした作品です。
また、男性向け・女性向け要素が混在しております。ご注意ください。

こんな感じです。

本作、舞台は西洋ファンタジーのそれを踏襲するような、そうした雰囲気の世界観なのですが、魔法と科学が融合したような、独特な世界観を持っています。
西洋ファンタジー作品だと、地名・人名・用語名なんかが、あまり日本人に馴染みのないものが多いせいか(人名とか、長かったりしますしね)、どうにも、すぐに覚えられない、という事があって、本作もその例に漏れない……んですけれども、ちゃんと人物に略称が設定されていて、比較的スムーズに読んでいく事が出来ました。

登場人物のフルネームを述べよ! って云われたら、ちょっと詰まってしまうんですけれども、主人公はアル、ヒロインはリゼット、メイドさんはエル……と云った具合に、略称ではバッチリ覚えてます。

さて、プレイしてすぐに気付くのが、ギャグテイスト強めの、ノリの良い楽しい展開で引っ張っていくタイプの文章だという事。いきなりヒロインのパンチラからスタートする辺りに、そういった作品の一端を感じ取って貰えるのではないかと思いますw

これも、毎度述べていますけれども、私のスクリーンショットを撮る基準は、「基本的に、最初に出てきた一枚絵」です。けれども、最初の一枚絵が、作品内容を紹介するのにそぐわない場合、或いは、ギャグっぽいデフォルメキャラの一枚絵とかだったりした場合は、「二番目の一枚絵」を持ってきたり、はたまたタイトル画面をキャプチャーしちゃう事も。

で、今回の場合……最初の一枚絵がパンチラシーンで、作品内容を端的に表しているか、って云ったら、結構疑問なんですが、ヒロインは可愛いし、作品の前半~中盤くらいまでの、楽しい雰囲気を表しているような気がしたのでそのように。プレイしていけば、気合いの入ったOPムービーなんかも流れてきますし、作品の暗い所、シリアスな雰囲気は、そのムービーでちゃんと補完出来ますしね。


先ほどから述べているように、前半~中盤に掛けての楽しいやり取りが、本作の一つの魅力でしょう。
「病的なまでに誰に対しても優しい」(優しくあろうとする)アルと、そんなアルに真っ直ぐな好意を向けるリゼット、そして、そんなアルに気持ち悪さを覚える毒舌メイドさんとの掛け合いが、かなり楽しかったですね。
こうしたシーンを盛り上げるBGMなんかも凄い凝っていて、ターンテーブルのスクラッチ音が入ってたり、ちょっとラップ風のものが使われていたり、何というか、「攻め型」のチョイスだったと思います。

割と、ノベルゲームって、BGMは「激しく主張しない」ものが多くて、私自身も、そういう方向が主流って事でいいんだよな……と思っていたのですが、本作のように、クセのある音をガシガシ使っていく、っていうのも、結構面白いものですね。
勿論、テキストの楽しさや、攻める姿勢があってこそ、そのBGMのチョイスも活きてくるわけですが、そうした意味で、非常に楽しい作品になっていました。


もう一つ、特筆すべき点は、主人公アルの性質です。
かなり早い段階で、どうやら、「過去に」「何か」があって、「病的なまでに」「誰に対しても」(特にリゼットに対して、なんですが)「優しくあろうとする」人になってしまった、というのが明かされます。そして、アルの心中思惟の文章なんかを見ると、結構、そうした自分を性質を客観視しているわけで(本当に優しい人は、自分の優しさを客観視なんて出来ない)、決して本来的な意味で「優しい」わけじゃないんですよね。飽くまで「優しくあろう」「優しくしよう」としている、というか。

そうしたアルの葛藤を含んだ、心中の言葉や、彼の「優しさ」を揺さぶるような出来事が提示されていくのですが、何か、物凄いアルに対して親近感を覚えてしまうのですw
「女々しい男って、こういう時に、こういう事しちゃうよね!」とか、「こういう時は、こうするしかないよねぇ!」とか、妙な納得感があるというかw

本作を、うんと端的に、そして粗雑に纏めるならば、「心に傷を負ったアルが、ヒロインを通してその傷に向き合い、立ち直っていく」というような、非常に良くあるタイプの作品である事は確かなのですが、アルの内面に深く向き合っていく部分が、本作を大きな特徴であり、他の作品との差異でもあるのでしょう。
他の作品が、主人公の葛藤の内面に踏み込まない、というのではありません。その踏み込みの深さ、そしてその内的で、時にドロドロしている部分が作品のテーマに繋がっていくような作りが、やっぱりちょっと特殊だと思います。

今、「作品のテーマ」なんて云っちゃいましたけど、「ストーリー自体に、一貫した主張はない」と、後書きに書いてあるんですよね。『純白の街、灰雪の僕ら。』の時にも、似たような事を書きましたけれども、「作者」と「読者」の関係っていうのは、何か難しいものがあるなぁ、と。
お堅い、文学的な研究領域では、「作者の存在を考慮しない」(作者の、意図なんて考えない)っていうスタンスが普通なんですけれども、今回は、作者さんが、わざわざ後書きに「主張なんてないよ」って意図を暴露しているわけで、そこを考慮しないのも、何となく座りが悪いような、そんな気がする事もあるのです。

閑話休題。
ともあれ、私がプレイしてみて、(余計な事を考えずに)素直に感じたのは、「救いって何だろう?」っていうのが、作品のテーマの一つなのかもしれません。
それが偽善的なものであれ、アルの優しさに救われる人も確かにいる。それぞれの抱えた過去と、その救いを、それぞれがそれぞれのやり方で探していく……。そんな風にこの作品を纏める事も出来るかもしれませんね。

登場人物は、本当にそれぞれが好き勝手に動いている(ように見える)にも関わらず、ちゃんと話が一つの結末に収斂していく所なんかは、流石ですよね。
ラストも、期待を裏切らないものだったと思います。


一方、後半に掛けて、やや性急だったと思われる描写や、結末の付け方もありました。
一つは、この作品に於いて、物語を進行させていく役割を担っている、殺人魔動人形メルについてです。彼は、物語の核心とも云えるリゼット(やフォルカー)の過去について知っているらしい事、描写されるので、もっと中盤からグッと登場回数が増えたり、何か見せ場があるのかと思いきや、割と地味な形でフェードアウトしていってしまった、という印象が。

又、ラスト近くでの、フォルカーとメイドのエルとのエピソードも、やっぱり、ちょっと唐突かなぁ。「こうなって欲しい!」とは思ってたんですけれどもねw もしかしたら、私は、本作の中でエルが一番好きかも。なので、エルの結末そのものに関しては、手放しで祝福したいですw


アルとリゼットの物語に関しては、かなりストンと腑に落ちました。先にも触れましたが、アルの心中の描写はかなりリアルですよ。
「卑怯で臆病でずるい貴方が、好き」なんてグッとくるセリフがありましたが、要は、アルのそうした傾向は、リゼットによって見抜かれていて、それでもアルに好意を寄せてくれる。

過去に厭な経験(特に女性絡みで)をした男っていうのは、その辺りで臆病になっちゃうんですよw そこまで女の側から云ってくれていても、最後の最後で信じ切れないような部分があったりで、結果、いつもの曖昧な笑みと言葉で誤魔化して……。
そんなアルとリゼットの結末に関しては、語りません。是非プレイしてお確かめ下さいませ。


最後に、どうにも分からなかった箇所が一箇所あるので、そこに触れておきましょう。
アルの初恋の相手アリーシャについて、なんですが、或る疑惑がアルに掛けられていたんです。けれども、アルはそれを否定している。だとしたら、本当はアリーシャはどういう状態だったんだ? と。
ネタバレを回避しながら語ると、こんなもどかしい感じになってしましますw



今回は、「無印」にするか「吟醸」にするか、かなり悩みました。
時たま、「無印」を付けたけれども、個人的に凄く気に入ってしまった作品なんかがありますが、本作は正にそれですね。
女性がプレイしても勿論楽しめると思いますが、寧ろ、アルに共感出来ちゃうような男性にこそ、お勧めしたい作品です。楽しい前半分と、シリアスな後半部、是非お楽しみ下さい。



それでは、また。



/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2013-12-15 18:42 | サウンドノベル
2013年 12月 05日

フリーサウンドノベルレビュー 『箱庭のうた』

b0110969_2144915.jpg

今日の副題 「二人の歌は世界を越えて」

※大吟醸
ジャンル:青春SFノベル
プレイ時間:10~12時間(読むのが早い人だと8時間くらい?)
その他:選択肢アリ、されどストーリーには影響しない。
システム:Yu-ris

制作年:2013/11/28
容量(圧縮時):219MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、今年最大の期待作をプレイしたので、そのレビューを。いつもは、ちゃっちゃかちゃっちゃかプレイしちゃうんですが、今回はじっくりとプレイしていきました。
というわけで、今回は「タクティカルシンパシー」さんの『箱庭のうた』です。ダウンロードはこちらから。
良かった点

・商業作品と比較しても遜色ない仕上がり。

・ストーリー作り、話の組み立てが、非常に巧み。

・ラストの演出も巧みで、感動出来ます。


気になった点

・ちょっと消化不良だった人物、エピソードはある。

・主人公涼介の活躍の場が、もうちょいあっても良かったか。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
夜の学校に現れるという『おばけ』のうわさ…
逢坂涼介は、忘れ物を取りに行った帰り、一人の少女に出会う。

少女の名は『佐藤ことり』。

無口で無感情な、変わった女の子…。
ことりは一ヵ月前の事故によって、記憶を失っているらしかった。

そんなことりはどういうわけか、毎夜学校に忍び込んでは、何かをしている様子。

彼女と仲良くなっていく中で、涼介は誰も知らなかった『真実』を知ることになる。

久々にじっくりと読んだ大作でした。
本当に良い作品なので、レビューを読んでいる時間があったら、ダウンロードしてプレイしてみて下さい。


……と、それだけで終わらせてしまうのも、アレなので、例によって例の如く、あれこれ語っていくことに致しましょう。


どこから話しましょうかね。あっ、そうだ。作者さんの情報からいきましょう。
大抵の場合、フリーのノベルゲームは、個人や、小規模のサークルがリリースしています。しかし、本作、株式会社による制作です。恐らく、これから、会社としての活動が本格化してくる……という感じだと思うのですが、兎にも角にもフリーで作品をリリースして下さっています。

でも。
よくよくシナリオやグラフィック、音楽を担当している方を見てみると、『私とあなたといた世界』『彼女の嘘の止まった世界』の作者さんではありませんか。
恐らく、ここを見て下さっているような方ならば、その二作をプレイしている……か、或いは名前くらいは見た事があるハズです。
そうした、作品制作の中で培ってきた技術を元に、会社を作ったと思しいのですが、嘘でも会社ですから、今後は、商業ブランドになったり、そっちの方で活躍していく方なのかなぁ、という気がします。となると、「もう、フリーのものはリリースしてくれないのかな?」と、ちょっぴり寂しい気も。


ともあれ、『私とあなたといた世界』、そして『彼女の嘘の止まった世界』の名前を出しましたが、どちらもSF的な色合いが強い作品で、そうした傾向は、本作『箱庭のうた』にも踏襲されています。

ストーリーは先ほど引用した通りなのですが、謎の転校生ことりと、主人公涼介の関わりだけが焦点化されていくのではなく、涼介とその仲間達との、何気ない時間だったり、ことりが、少しづつ皆と仲良くなり、いつしか、ことり自身も「仲間」となっていく。その過程が丁寧に描かれており、好印象です。

ノベルゲームに於いて、作品の「ウリ」みたいな部分とはならなくても、「ここがシッカリしていると、クオリティが格段にアップする」というようなポイントは存在していて、その一つが、脇役の描き方、描かれ方です。
脇役が、終始賑やかに、主人公やヒロインの周りを盛り立てる。それ自体は悪い事ではないのですが、結局、その脇役達は「賑やかし要員」の域を出なかった、という事になれば、それはちょっと問題かもしれません。

脇役にも脇役の人生(?)があり、それぞれ日々生活しているわけです。
当然、生きている以上、悩んだり、苦しんだり、或いは、喜んだりする時があるはずです。そんな彼らの「人間としての姿」を、シナリオに盛り込めたら、グッと作品に奥行きが出てきます。そして、作品が単なる「お話」ではなく、もっと活き活きとした「物語」に変わるのです。

単純に、主人公とバカをやって、掛け合いをするだけの悪友、なんてのがノベルゲームに良く出てきます。フリーのゲームだけではなく、商業のものですら(今年はちょっと商業のものも、例年より多くプレイしました)、そうした「賑やかしの為だけの要員」がいたりするのが現実です。
けれども、やはり、業界を牽引するようなメーカーの作品や、定評のあるシナリオライターの作る作品には、脇役が活きるエピソードが、本筋のストーリーを補強するように、上手く配置されています。そうした、脇役が輝くエピソードがあるからこそ、普段のバカも活きてくるのです。


話を、本作に戻しましょう。
本作の場合、涼介の友人として、伊月、歩、夏之、こなみが最初から、仲の良いグループである事が示されています。それぞれ個性的なキャラクターで、変にごっちゃごちゃする事もありません。まぁ、夏之の性別が分からなくて、最初「???」となりましたがw

彼らは、作品の前半からラストに至るまで、涼介、そして、ことりと行動を共にします。
前半部は、夏之のギャグで押していくような所はあるんですが、それが結構笑えるんですよねw 

個人的に、本作で一番好きなキャラだったのは、こなみですね。夏之の妹で中学一年生。「じゃよ」とか、そういうヘンテコな言葉を使う子ですが、大人びた一面も持ちつつ、年相応の顔を見せる時もある……。そんなみんなの妹分で、ほんっと可愛いです。ちょっと崩れた顔の差分があるんですが、それもギャグシーンとマッチしていてグーでした。

で、本作で特筆すべきは、「メインのストーリー」と、仲間の物語が、上手く溶け合って存在している、という点でしょう。
云うまでもなく、メインのストーリーとは、ことりの謎に関するものです。そのメインのストーリーを展開する一方で、例えば、こなみであったり、或いは、歩や伊月に関する物語が、本当に巧みに織り込まれ、それが又、メインのストーリーに還元されていきます。そして、物語全体が、ことりを含めた「仲間の物語」として成長していくような、そんな作りになっています。

脇役のエピソードを織り込む、というだけではなくて、それを通して、物語そのものが、一つの方向性を持って成長する。本当に脱帽致しました。
脇役、と云えば、ことりと対立関係にある組織の構成員も途中から出てきます。
日寄子や、クリスといったキャラですけれども、彼らも亦、その「仲間の物語」に於いて、重要な役割を果たします。なので、どのキャラクターや、どのエピソードも、「何となく浮いている」という事がないんですよね。シッカリと物語に組み込まれている。これは本当に凄いことです。

この辺りで、ことりの事情についても、少し触れておきましょう。
ことりは、記憶を無くしています。そして、「ことりは、或る組織に属していて、ことりだけが倒す事が出来る『敵』を狩っている」という設定が明らかになっていきます。
スクリーンショットは、そのことりと、彼女が使う武器……みたいなものです。

そして、対立する組織がある事も判明して、ストーリーも緊張感を孕んだものになるのですが、意外や意外、伝奇モノにあるような、チャンチャンバラバラ、みたいな事は殆ど起きません。寧ろ、日寄子なんかは、涼介達と仲良くなってしまいます。

単純な善と悪の対立ではなく、それぞれ信ずる所が違うだけ、という状態ですから、そんなに険悪な雰囲気にもならないんですよね。で、日寄子も、やっぱり「仲間」になっていく。
そして、彼らの本拠地で、心地良い日常、心地良い時間が流れていきます。涼介の「こんな日が、ずっと続いたらいいのに…」という呟きは、実はプレイヤーの気持ちでもあります。

或る程度の尺を持った作品で、私が評価するポイントの一つがまさに、この涼介の呟きと重なるんです。
「いつまでも、この心地よさを感じていたい」と思わせるような、そんな魅力のある日常シーンがあると、本当に読了してしまうのが、ちょっと怖くなるような、そんな気持ちになったりします。


プレイしていくと、途中途中で、全く別のストーリーが挿入されていきます。
中盤くらいまでは、「何だか良く分からない……」という感じですけれども、徐々に、そのストーリーがなんであるか、が分かってきます。
SF好きならお馴染みの、「並行世界」(パラレルワールド)というヤツなんですけれども、後半まで読み進めた時、その並行世界の物語が、本作のメインの世界の物語と鏡像関係にある、まさにパラレルの関係にあるという事を読み取らないといけません。

並行世界では、人々は「リセットシステム」の制御に失敗し、眠り病とでも云うべき状態に罹っています。
そして、並行世界での主人公、テトラの周辺事情が、断片的にメインの物語に挿入されていくわけですが、テトラは何人かの仲間達と暮らしていて、その仲間も一人、また一人と眠っていきます。
その仲間の描写で、或る人物は「○○は、△△の妹だった」とか表現されたり、或いは、「料理を作るのが好きな子」が居たり、「テトラの為に絵を描いてくれる子」がいたり、「最後の最後までテトラを支え続けてくれた子」がいたり……。

並行世界の物語は、並行世界の物語、と別個に捉えるのではなく、メインの世界の物語とのパラレルな関係を読み取る事で、作品の持つ、厚みに気付く事が出来ます。
並行世界を描いた作品は、結構ありますけれども、ここまで、厚みを持った構造になっている作品は実は珍しいのでは?

メインの世界はメインの世界で、奥行きのあるストーリーになっている事、前述の通りです。
それに加えて、並行世界と、メインの世界が重なる事で生まれる厚みもそこに加わる事で、物凄く重層的世界が構築されています。この懐の深さも本作の大きな魅力の一つでしょう。


さて、気になった点ですが、実は、主人公である所の涼介は、そこまで主体的に何かをする、って感じではないんですよね。
確かに、ことりの一番身近な存在として、彼女を支える重要なポジションに居るのですが、彼が主体的に行動を起こしたり、主人公らしいガッツを見せたり、という事はあまりありません。
やっぱり、物語の後半くらいでは、主人公は主人公らしい、がむしゃらな勢いだったり、ガッツだったりを見せてくれると、熱くなれますよね。その点、ちょっと涼介は淡泊だったかな、と。

もう一点は、途中、涼介の護衛に付く大野というキャラがいるのですが(こいつも、夏之と同じくウザキャラw)、この大野に関しては、何となく、モヤモヤが残ったままなんですよね。
ことりの属する組織と、対立する組織があって、大野はその二つの組織の間を行ったり来たり出来るような立ち位置にいて、しかも、結構な権力を持っているらしい事が示されるのですが、その二つの組織の上位組織の存在だったり、大野の立ち位置だったりの部分では、何となく消化不良感がありました。


最後に、本作のラストについても少しだけ触れておきましょう。

ラストはちょっと、『あの花』っぽい感じのラストで、エンドロールに入っていきます。エンドロールの入り方も巧みでした。
で、勿論、エンドロールが終わったら、そこで物語が終了、ではなく、エピローグが入って本当のエンド、です。

本作は、割と分かりやすい伏線を張って、それを素直に回収していくタイプの作品、ではあるのですが(エンドロールの入りなんかは、まさにです)、最後の最後で、「こうきたか!」というような、絶妙な終わり方をしました。

この一連のラストの演出は、本当に素晴らしいですね。
長い時間を掛けてプレイしていたのが報われるというか、「プレイして良かった!」と思わせてくれる、そんな素敵なラストです。


さて、いつにも増して余計な事を書きまくってしまった感はありますが、超お勧めの作品です。
文句なしの、そして久々の大吟醸!
長時間プレイする価値は絶対にありますよ!



それでは、また。



/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2013-12-05 21:05 | サウンドノベル
2013年 11月 27日

フリーサウンドノベルレビュー 『純白の街、灰雪の僕ら。』

b0110969_2048685.jpg

今日の副題 「創作といふものは、斯くもむつかしひものなのです」

ジャンル:頽廃電波倒錯ビジュアルノベル
プレイ時間:~2時間程度
その他:選択肢なし、一本道。対象は15歳以上
システム:Yu-ris

制作年:2013/8/24
容量(圧縮時):216MB



道玄斎です、こんばんは。
最近、めっきり寒くなりましたね。今年は、秋の時期が無く、いきなり冬がやってきたような、そんな気がします。まぁ、この時期になりますと、あまり外でアクティブに遊んだりは出来ないので、自然とノベルゲームで遊ぶ率が高くなるのでした。
というわけで、今回は、「プラスマイナスゼロ」さんの『純白の街、灰雪の僕ら。』です。ダウンロードは、こちらからどうぞ。
良かった点

・ノスタルジックな雰囲気と、SF色が混ざり合う、独特な世界観。

・創作とは何か? みたいな事を考えてしまう、懐の深さも。


気になった点

・ラストは綺麗に決まりつつも、どこか閉塞感を感じてしまう(後述)

ストーリーは、少し長目ですが、ふりーむから引用しておきましょう。
【あらすじ】
白が降る。雪が降る。だから、死体も降り注ぐ。
徹底的に漂白されていながら、死んでいるような街。
ここは、そういうところだった。

音のない白い箱に入りたかった。
人間がみんな、自分を糞袋だと認めていればどんなに良いだろうと夢想していた。

そして、今この白い街で、ひとびとは己の弱さや愚かさを素直に受け止め死んでいく。
僕の望んだ世界が、ここには在った。

この街の名前はさまざまだ。監獄都市。白ノ匣。凍花街。
そして、もっとふさわしい呼び名は――「ひと捨て場」。

そこに降ってきた少女は、奇しくも死体ではなかった。
真白の絨毯に広がる鮮紅色の長い髪はひどく美しく、そして鮮烈で――。

だから「僕」は、「彼女」を拾った。

【ゲーム概要】
基本的に読み進めるだけの、選択肢のないビジュアルノベルゲームです。
本作は性的・暴力的表現を含む十五歳以上を対象とした作品です。ご注意ください。

『Imperfect Blue』の作者さんの新作です。
『Imperfect Blue』は、比較的ストレートで、楽しい作品であったわけですが(重い部分も勿論あるんですけども)、本作は、舞台からしてちょっとヒネリが効かせてあります。

正直、あらすじを読んだ時の印象は、「『朝焼けの謳』みたいな、殺伐としたスラム的な舞台なのかな」と思っていたのですが、意外や意外、そうした雰囲気とはちょっと違いましたね。

SFっぽい作品なんだな、と分かってはいたのですが、主人公(?)テオの住居は、廃校舎である事が示され、近所には、あぜ道がある事、よろづ屋的なお店がある事が判明して、「あれ? あんまりSFっぽくないぞ……」とw
例えば、テオの服装なんかも、彼が小説家であるという事実があるにせよ、書生さんとか文士さんとか、そういうイメージで、SFに直結しないような雰囲気があります。

本作は、登場人物の語りによって進行する物語なのですが、彼らの語りも、どこか古めかしい……もっと云ってしまえば、文語的……或いは昭和初期の文学をイメージさせるような、そういう文章なんですよね。途中途中で出てくるアイキャッチにも、何か「文学っぽい」文言が書かれてますしね。
ストーリーが進むにつれ、テオ、そして、ヒロインたるコハルの事情とかも明らかになってくるんですが、そこで語られる彼らの過去も、そうした、大正の終わり~昭和初期に掛けての雰囲気を持ったもので、何とも云えないノスタルジックな気持ちにさせられます。

でも、その一方で、SF的な枠組みも当然あって、テオはロボットに食事を作らせたりしていますし、舞台となっている凍花街の市街地なんかは、現代的なんですよね。
これは、良い/悪いという問題を越えて、何だか不思議な気持ちになるような舞台設定で、この作品の大きな特徴の一つでしょう。


ストーリーの方は、飄々としてつかみ所の無い男、テオが、行き倒れ状態のコハルを拾った所から始まります。コハルは、元々テオを尋ねてきたので、正確には行き倒れではないのですが、「女の子を拾う系」のノベルゲームの系譜に入れてしまっても差し支えないでしょう。

そして、「女の子を拾う系」の常として、当然、二人は同居する事に。
基本的に、この二人の同居エピソードを通して、それぞれの抱えている問題を少しづつ意識させ、後半でそれを明らかにして……という、流れそれ自体は、オーソドックスなものです。

割と、一エピソードが短めなので、読みやすいと思います。細かい部分なのかもしれませんが、こういう部分、やっぱりゲームを作り慣れている感じがしますねぇ。これは、個人的な感触なんですが、作者が男性の場合、一つのエピソードは割と長目、作者が女性の場合、一つのエピソードは短め、という気がします。勿論、作品に合った形であれば、どちらでも困らないんですがw

普通に読んでいくと、「あれ? そういう設定だっけ?」と、思う箇所がぽつりぽつりと出てきます。
或いは、「これ、何かあるっぽいけど、サラッと流れちゃったぞ……」みたいな箇所も。
こうした、伏線は、ちゃんと後半~ラストにて、回収されていきます。ちょっとした違和感、謎なんかを散りばめている作品は、後半でいかに鮮やかにそれを回収するか、が一つのポイントだと思うのですが、本作は、ストーリーの加速に合わせて、そうした違和感や謎の回収をしてくれるので、中々気持ちよかったです。

エピソードの連続で物語を綴っていくわけですが、コハルがテオを好きだと気付く為の描写は、もう一押しあっても良かったかな、と。
現実の恋愛がそうであるように、何か劇的な事件があって、「ああ、この人が好きなんだ!」って気付くケースは稀なのです。何気ない日々の積み重ねの中で、或る相手が、少しづつ特別なものになっていく……そういうケースの方が多いとは思うのですが、それをノベルゲームで描写するのは、中々難しい。その微妙な淡いを描く事が出来たら、とても素晴らしい事だとは思うのですが、現実的に考えると、何か特別なエピソードで以て、分かりやすい形にしてあげる。そちらの方がお手軽ですし、プレイしていても納得感はあったりするんですよね。ここら辺は、本当に創作というものの難しさを感じます。。


そういえば、本編の直接的な内容ではないのですが、意外と、考えさせられるような、エピソードが出てくるんですよね。
その一つが、「創作ってなんだ?」とでも云うべき問題です。テオは小説家として身を立てているわけですが、別に小説を書く事に情熱を捧げている訳ではないんです。しかも、書くジャンルはてんでバラバラ。それでも、テオの小説は評価され、世の中に流通している。

前述の通り、作品そのものが文学的なテイストを漂わせているから、なのかもしれませんが、何か私には、そうしたテオの生業である小説を巡る一連の描写が、物凄く気になってしまったのです。
良くできたノベルゲームがあるとして、別に作者はそれを創り上げるのに心血注いでいたわけでもなく、「出せるから出した」とか、「何となく作ってみた」とかであった場合、何かモヤモヤしたものを感じませんか?

或いは、作者が、ブログやTwitterでは、「全力で書いてます!」とか、書きつつ、心の中では「ほんとは、テキトーに書いているだけだもんねー!」と思ってたりする場合、ともすれば評価の一つに組み込まれてしまう「作者の情熱」とか「努力の姿勢」とかってのは、全くアテにならない、って事になりますよねぇ。
結局、私達は、或る作品の由来が何であれ、作品それ自体でしか、作品を評価し得ないって事なのかなぁ。

んー、何かガラにも無く難しい世界に足を踏み入れてしまったみたいですw
こういうのは、時々考えてみると面白いんですが、私は頭が悪いので、いつも適当なトコで切り上げますw 頭痛がしてきちゃうからねw
けど、何か、そういう事を考えさせるような、深さを、この作品が持っているのは事実だと思います。何度も云いますが、作品自体に文学的な香りがしますし、それを狙っている部分も当然あるのでしょう(『ドグラ・マグラ』の引用なんか好きな人にはたまらないでしょう?)。

こういう深みにはまれる一方で、物語そのものは、スムーズに流れていく、というバランスもいいですよね。時に、そういう観念的な世界というか、そっちの方に行ったまま戻ってこない作品とかもありますしw 


……と、色々書いてきてアレなんですが、ラストまで読んで、私は、何となく閉塞感を感じてしまったんです。いや、文学が、とかそういう話じゃなくて。

後半~ラストの流れは、本作のSF的な部分が強く出ているんですが、そのSF的な枠組みに関しては、ラストまで読んでも、全くスッキリしないんです。
確かに、表面上のストーリーは収束されて、エンドロールの後の一枚絵+短い台詞で〆る、という綺麗な終わり方をするのにも関わらず、実はあまり問題は本質的に解決していないんじゃ、と思ってしまうような感じなんですよね。

ネタバレですから、詳しくは語りませんけど、そのSF設定そのものに閉塞感があるんですよね。
そして、期待するのは、その閉塞状況をブチ破るようなラストだったりしたわけで。ハッピーエンドを手放しで喜べない、みたいな感じになってしまいました。



という事で、今日はなんか余計な事を随分書いてしまった気がします。
けど、時には、あっけらかんとしたボーイミーツガール的な物語じゃなくて、もっと深く抉っていけるような、そういう物語も読みたいですし、そういう物語だったからこそ、色々余計な事を書いてしまったわけですw

2時間あれば、十分読了可能だと思います。
そこまで長くないけれども、何だか色々考えるきっかけになり得るような、そんな作品でした。後書きにもありましたが、『Imperfect Blue』と読み比べてみても面白いかもしれませんね。気になった方は、是非、プレイしてみて下さい。



それでは、また。

/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2013-11-27 20:54 | サウンドノベル
2013年 11月 23日

フリーサウンドノベルレビュー 『Good days』

b0110969_21225027.jpg

今日の副題 「俺と彼女とオルガンと」

※吟醸
ジャンル:ハートウォーミングラブストーリー(?)+短編集
プレイ時間:合計で2時間半程度。
その他:選択肢なし。途中でエクストラが開放されていくが、本編と直接的に関係がない。
システム:NScripter

制作年:2013/3/29
容量(圧縮時):32.1MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、お勧めされた作品をプレイしたので、そのレビューを。結構お馴染みな設定だったのにも関わらず、不思議と引き込まれてしまいました。というわけで、今回は「夢見る少女と水の空」さんの『Good days』です。
今回から、ダウンロードサイトのURLも張っていこうと思います。ダウンロードはこちらから。
良かった点

・お馴染みの設定にも関わらず、何故か引き込まれる不思議な魅力。

・優しい雰囲気と、読みやすい章立て。

・充実のエクストラ。


気になった点

・文章にくどさを感じる部分も。

・誤字や表記が不審な点、意味が通りにくい文章が散見される。

・ラストにもう一押し欲しかった。

ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。
梅雨の近づく六月初め。
 時代に取り残されたような廃教会で、少女は一人オルガンを弾く。
 凛として儚く、何処か歪な少女との邂逅。

--------------------------------------------------------

本編『Good days』他、短編四編収録したオムニバス形式の短編ノベルゲームです。

ちょっとあっさりですが、こんな感じです。



久々に、尺が十分にある作品をプレイしました。
と、云っても、本作はちょっと変わった作りで、「本編」を読み進める事で、エクストラの「短編」が読めるようになります。しかし、その短編は、本編と関わりのあるものではなく、独立した短編なのです。

ですので、実は本編だけの尺で云えば、一時間ちょいと云ったところ。
短編の方は全部で四本。長いのも短いのもありますが、これも、全部読んで一時間ちょいでしょうかね。合計すると、大体2時間半くらいです。勿論、短編を飛ばして本編だけ読んでしまう、というのも可能ですし、本編・短編・本編・短編……と交互に読んでいってもいい。ちなみに私は後者の読み方をしました。


さてさて、肝心の中身に入っていこうと思うのですが、本作(本編の方ね)、結構良く目にする設定と、ストーリーの流れを持っているんです。

主人公は、何の気無しに足を踏み入れた廃教会で、一人静かにオルガンを弾く、謎の少女と出会う。そして、その少女は、妙にぶっきらぼうというか、心を閉ざしているような感じがする……。勿論、少女はとても美しい。

こうしたイントロを持つ作品って、ノベルゲームに限らず、結構良く目にします。
ラノベなんかにも多いですよね。作品によっては、主人公が出会うヒロインが、人間じゃなかったりするわけですが、基本的に、ミステリアスな存在だったり、物悲しさを感じさせるような造型になっていたりするわけです。

ですから、「あ、このパターンね」と、作品の型としてはすぐに分かってしまう部分は持っています。
それは、取りも直さず、こうした作品の型が好まれてきたという事でもあります。
同時に、ハシカみたいな、「こういう設定が凄く響く年頃」みたいのも、あると思うんですよ。だから、私はプレイしていて、「いやぁ、もう、この手の設定は卒業したからねぇ」と、ちょっと冷めた目で見ていました。

けど、ジンワリと入ってくる物語は、それが予定調和的であっても、厭味がなく、心地良いものだったんです。「もう卒業した」と云いつつ、実は全然卒業出来てなかったというねw
それにしても、お馴染みの設定、お馴染みのストーリーの流れを持った作品でも、「うーん……」と、思ってしまう作品がある一方で、こうして、「やっぱりいいもんだなぁ」と思える作品がある。この差ってなんでしょうね……。

その謎はすぐに解けるハズはないのですが、一つ、本作を、読んでいてピンときたのは、「起承転結」の流れが非常に綺麗だという事。それぞれの尺の配分も良かったと思います。特に承の終わりから転にかけて、そして結への繋ぎ方がスムーズで、次を期待させる作りは、基本を押さえたものですが、それだけに安心感を持ってプレイ出来ます。


そして、一章をプレイする度に開放されていくエクストラの短編集が、全部合わせれば本編と同じくらいのボリュームで、お腹いっぱいになりました。

特に、一個目の短編、『stand by me』が凄く良かったですね。
これも、実は本編と同じく、かなりベタな設定ですw 妙に観念的な話を持ち出す、美人で孤高のオーラを持つ文芸部の先輩とか、本当に良く目にする造型ですよね。

で、そんな彼女に憧れて、文芸部に入部した主人公との関わりを描く、そんなお話なのですが、最初は結構とっつきにくい文章とか話の中身で、アレだったのですが、段々とその先輩が物凄く可愛く思えてきちゃうんですよねぇ。
そして、そんな彼女に憧れる主人公を応援したくもなり、いつの間にか、自分を主人公に重ねて、プレイしてしまう……というわけですw ともあれ、ラストも綺麗に決まってますし、これは凄く素敵な短編作品でした。


さて、一方で気になった点は、文章がややくどい、という点でしょうか。
本編や、今書きました『stand by me』なんかも、前半部は「すらっと読める」という感じではなく、どちらかと云えば小説とか、或いはもっといってしまえば、凝ったラノベのそれに近いような、手触りがあります。

そういう文章の傾向は、漢字変換にも現れていて、「まだ」を「未だ」、「せい」を「所為」と表記していたりします。その一方で、「確率」とありたい所が「確立」になっていたりと、誤字が割と多め。
凝った文章にしたせいで、「ん?」となってしまうような表現も散見されます。

例えば、「きっと運命なんて一つもない、本当に偶然の邂逅」という文があるのですが、その偶然の邂逅こそが運命と云うものなんじゃ? という気が私にはするのですw


あと、本編で気になった点と云えば、ラストがもう一押し欲しかったな、と。
最後、主人公夏希と、ヒロイン望が幸せに向かって、やっと一歩踏み出そうとする、まさにその時に、物語が終わってしまいます。
そこに、「敢えて最後まで書かない美学」や「余韻の効果」を感じ取る事は容易なのですが、やっぱり、もうちょい続きを書いて欲しかったなぁ、と思いました。

或いは、例えば、これも良くある演出かもしれませんが、適当な所で、物語自体を切り上げてしまう。
そして、エンドロールが流れている最中に、「その後」を描く一枚絵を、何枚かゆったりと表示させていく。そして最後の一枚で、二人の繋いだ手がクローズアップされたイラストを持ってくるとか、そういう演出の方向性もアリかな、と。
何にせよ、折角積み上げてきた物語なわけですから、最後でもう一押ししてやると、良かったのではないか、という事ですね。ラスト辺りでは、主人公夏希も、ちょっとだけ焦れったいトコありますしね。うんと、アレな云い方だと小学生に「愛してる!」とか云ってもいいじゃん! とw


もっと前に話をすべきでしたが、本編のヒロイン望は、凄い可愛いですw
大学生と小学生の、年の差恋愛(?)を描くわけですが、望は大人びたタイプですし(勿論、その中に脆さみたいなものもあるわけですが)、丁寧に物語を積み上げていっているので、そこに違和感を感じる事はありません。

ちなみに、本編は、背景がみなモノクロで、一見すると「暗い」イメージがあるのですが、それが、上手く「優しさ」に結びついていたような気がします。そうした優しい雰囲気も、本作の魅力の一つですね。


最後に、エクストラで語られる短編に話を戻して、今日はお終いにしましょう。
本当に、本編とは、全く違う舞台で、全く違う登場人物達の織り成す物語で、一瞬、面食らってしまうのですが、『stand by me』や、『夏と風鈴と彼女』(これもコテコテ設定w)なんかを読んでいくと、どこか、本編との繋がりを、私は感じるのです。

孤高で、孤独な女の子と、それに向き合おうとする不器用な男の子の物語、と云うと、綺麗にまとめすぎた感はありますが、「全く無縁の短編が入ってる」のではなく、か細い糸ではあるものの、本編との連続性を有した作品が、本作に於ける短編集なのではないか、と思うのです。


というわけで、今日は悩んだ末に、久々の吟醸です!
みんな何だかんだいって、好きなタイプの作品、ではあると思うので、是非、プレイしてみて下さい。
短編と本編の読み方ですが、私は、やっぱり、本編を読んで、短編を読んで……ってやっていく読み方をお勧め致します。



それでは、また。


/* 以下、宣伝

私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

以上、宣伝 */
[PR]

by s-kuzumi | 2013-11-23 21:23 | サウンドノベル