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2012年 06月 30日

フリーサウンドノベルレビュー 『Ribbon of Green』

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今日の副題 「これが洋ゲーの今」

ジャンル:女の子同士の友情ノベルゲーム(?)
プレイ時間:45分ほど(私が読んで)
その他:選択肢アリ。エンド数2つ。
システム:Ren'Py

制作年:2012/4/28
容量(圧縮時):58.1MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、久しぶりに洋物ゲームのご紹介。需要があるのかないのか、さっぱり分からないのですが、時々、こうやって洋物のノベルゲームをプレイしていたりします。
というわけで、今回は「Soyasushi Productions」さんの『Ribbon of Green』です。
良かった点

・日本人にも受け入れやすいイラスト

・洋ゲーには珍しく、キチンとしたストーリーが存在し、キッチリ読ませてくれる。

・ちゃんと起動するw


気になった点

・割と目にするストーリー展開。

・バッドエンドの意味があるのか、疑問。

ストーリーは、Ren'Ai Archiveから引用しておきましょう。
"I'm sorry for everything." Ribbon of Green focuses on hope, strength and friendship within this competitive world of nothing but survival of the fittest and elitism. In a society like this, if you lose hope, nobody would help you. It will be all over. This is the story of two female students who strived to survive in such a system. The system where the 'elite' students are treasured and well-maintained, while the rest are simply left behind, with no hope to the world...

こんな感じ。
競争社会の中にある、希望とか強さとか、友情とかに焦点を置いた作品、という事みたいです。最初の一文らへんを適当に訳しただけですが……。

さて、今回、評価基準が随分甘めな気がしますねw
「起動する」が、良かった点に入っている事からも、それが分かるわけですが、この「起動するかしないか」は、洋ゲーをプレイする時に、物凄く重要な点になってきます。

実際の所、「おっ! これは面白そうな作品だな」と思ってダウンロードはしたものの、実際に起動して遊べる作品はかなり少ないです。Ren'Pyの仕様とも関わってきそうな問題ですが、プレイ出来ない作品が多い、というのは致命的。
そんな中で、キッチリとしたストーリーを持ちつつ、尚かつ日本人の我々が受け入れやすい(というか、全然OKな)イラストを完備した作品がプレイ出来た事は僥倖でしょう。


ストーリーの大まかな流れは、日本で云う所の短大に通っている女の子二人の、公園でのやりとりを描く作品、と、まぁ、取り敢えずは云う事が出来そうです。
ただし、主人公のClarisseは、未来に絶望し、希望を無くし、学校にいかなくなってしまっています。一方で、そんな彼女を諫めるのがHanyuanです。どうも名前から察するに(ラストネームがLiである事も後に明かされるので)中華系の女の子みたいですね。

かつては親友であった二人が、夜の公園で出会い、互いの主張をぶつけていきます。
学校に戻るよう諫めるHanyuanに対し、Clarisseの心は頑なで、彼女に反発をするわけです。で、運命云々云いだしたClarisseに、Hanyuanはコインゲームで「私が勝ったら学校に戻って」と賭けを持ちかけます。
この賭けのシーン、中々いい場面で、作品の一つの見所になっています。この賭の結果……そしてラストは……ネタバレになるので伏せておきましょう。


と、まぁ、こんな風にちゃんと説明出来るストーリーを持っている点も、評価対象ですw
洋ゲーを漁っていると(デーティングシミュレーションというらしいですが)女の子とデートするだけ、みたいな、ストーリー性が極めて希薄な作品を多々目にします。
そうした作品(群)と比べてみると、やっぱりプレイしごたえがありますし、内容的にもちゃんと締まるので、満足度は高いです。
多分、ですけれども、これが2012年現在の洋ゲーの一つの到達点なんじゃないかな、という気がします。勿論、もっと「濃い」作品もあるのでしょうが、管見の及ぶ限り、本作ほど練り込まれた作品は洋ゲーでは見たことがありません。

内容……としては、所謂感動系に分類されると思うのですが、最大のトリックの部分は、割とありがちというか、どこかで目にした事のある、そんなものになっています。
私は、やはり日本人ですから、日本のゲームを基準として、洋ゲーを見てしまいます。なので、ちょっと上から目線ですけれども、大分、洋ゲーが日本の水準に近づいてきたな、と、そんな感触を感じました。
洋ゲーは、日本のゲームやアニメのキャラクターを使って、二次創作的な作品を作る、という段階を脱して、私達にとってはどこかで目にしたものであったとしても、自分のキャラ、自分のストーリーで勝負をかけてくる時代になってきたんだなぁ、と。


ちなみに、洋ゲーの一つの特徴と云うべき「選択肢」は、本作でもちゃんと存在します。
プレイしていけば、「正解」の選択肢はすぐに分かります。なのでトゥルーエンドはすぐに見れるんです。だからこそ、選択肢に意味はあったのか? と感じてしまう部分もあります。本作の場合も、一本道でいいんじゃないかなぁ……と思いましたね。
何故か、向こうの作品って、一本道を嫌うんですよねぇ……。これもノベルゲームを取り巻く謎の一つかもしれません。

ちょっと脱線しますが、一本道を嫌う、という事では、日本の女性向けの作品もそういう傾向がありますよね。
「このバッドエンドを見せる事って、そんなに重要かなぁ?」と思えるような、そういう分岐の仕方をする事もあったり。
女性向けのゲームは、主人公の名前変更が可能だと喜ばれるとか、主人公のタイプとして「無個性」というものが人気があったりするそうです。これは取りも直さず、作中の主人公に、自己を投影する為のシステムですから、また男性のプレイヤーとはちょっと違った視点で作品を見る、という事が女性の場合あるみたいです。


さて、脱線してしまいましたが、そろそろシメに入りましょう。
英語自体は、比較的ストーリーを追っていきやすい、読みやすいものだったと思いました。それでも分からない単語や文章とか出てくるんですが、ストーリーを楽しむのであれば、そういう場所を無視しても、全然イケるはずです(誤読してなければいいのですが……w)。
2012年の洋ゲーの一つの達成点、英語に尻込みせず、体験してみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-06-30 15:11 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 06月 29日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.52

道玄斎です、こんばんは。
今日は、お久しぶりの「箸休め」。テーマは、ノベルゲームで謎な事(モノ)。コメントなんかで、私の謎が氷解すればいいなぁ、なんて思いながら、書き進めていこうと思います。



■ノベルゲームの謎2題


ノベルゲームをプレイしていると、ふと気づく事があります。「これ……やたら色んな作品に出てくる単語だけれども、実態が良く分からない……」といったもの、或いは、「何のために存在しているんだろう……?」といった機能的な面の謎(逆に、何で実装されないんだ? って謎もありますがw)。

こんな具合に色々あるわけですが、今回は二つ、取り上げてみましょう。



○ファンシーショップ

これ、以前にも書いた事がありましたが、本当に謎なんですよね。
ファンシーな佇まいのショップなのか、それとも扱っている商品がファンシーなのか……。というか、ファンシーってなんだろう? みたいなw

大体、定番の展開としては、主人公とヒロインの一人(メインヒロインが多い)がデートする事になるんです。
そして、休日の街に繰り出すわけですが、基本いくつかお店を見て回って、その後、ファーストフード店、もしくは茶店に入る、と相場が決まってます。

その、お店を見て回る時……かなりの高確率で「ファンシーショップ」が登場するわけです。
察するに、ちょっと女の子女の子したお店で、男性であるところの主人公が入るには少し勇気がいるような、そんなお店のようです。

んで、まぁ、なんか髪飾りみたいのを買ったりしてね、茶店に行ったりするわけですけど、街中でファンシーショップなるものを見たことがある人、いますか?w
私は、今以て、その実態を掴む事が出来ません……。「ああ、あのお店はファンシーショップだよね」って、ものが見つからないんですw

辛うじて、掠りそうなのは、「キディランド」というお店。最近私がドはまりしている、リラックマ関係のグッズが充実しているお店です。
けど、そんなに強烈に全国展開している、って感じでもないし、どの街にもあるってわけでもなさそう……。

このファンシーショップは、ノベルゲームの謎、店舗・施設編でダントツの一位ですね。



○クイックセーブ/クイックロード

私も、ノベルゲームとの付き合いは結構長いと思うのですが、たまに実装されている作品がありますよね。
ですけど、未だに、その用途が良く分かりません。

察するに、選択肢と密接に関係する機能なんじゃないかな、とは思うのですが……。
けれども、世の中には「一個前の選択肢に戻る」なんて機能を備えたモノもあるわけで、何が何だか分からなくなります。

百聞は一見に如かず、で実際にこの機能を使ってみればいいんでしょうけれども、何だか怖くてねぇw
以前チャレンジした事はあったんですが、何だか良く分からないので、放置して今に至ります。

普通にセーブして、ロードするのとは違う、何かの利点がある事はうっすら分かるのですが、やっぱり使い方が分からない機能です。
けど、どちらかと云えばフリーのノベルゲームには少なくて、商業のソレに多いって印象があるので、知らなくても何てこと無い。けれども、気になって仕方ない。そんな機能がクイックセーブとクイックロードなのでした。



○員外:クオテーション

これは、単純に気になる事が多いので、員外として一本入れておきます。
良く、特殊な単語なんかをクオテーションで括ること、ありますよね。

例えば、“今川焼き”とか、こんな風にして、クオテーションを付けてやるわけです。
けど、凄く気になるのが、“今川焼き”とクオテーションを付けてやるべき所が、”今川焼き”となっているケースが多いんですよね。違い、分かりますか?

何度か、「三点リーダは二つで一個」とか、「“!” “?”の後は全角スペースを空ける」とかそういう、文章の原則(飽くまで原則です。必ず守らないといけない、という事ではないです)、みたいのを紹介してきたわけですが、これもその一環ですね。
なんかすげぇ偉そうですけど、ちょっとした啓蒙活動みたいな……。

何か最近も、ちょこちょこ面白そうな作品を見つけてきてはプレイしているのですが、このクオテーションの問題が気になるので、ちょっと書いてみました。



という辺りでしょうかね。
ogg VS mp3みたいな、色んな意見が貰えるような記事じゃないですけれども、どこか楽しんで貰える所があれば幸いです。


それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-06-29 20:40 | サウンドノベル | Comments(18)
2012年 06月 21日

フリーサウンドノベルレビュー 『My little B』

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今日の副題 「僕と彼女の楽しい時間」

ジャンル:恋愛アドベンチャー(?)
プレイ時間:1ルート一時間ほど。コンプリートは2時間程度。
その他:選択肢アリ、6エンド。
システム:Live Maker

制作年:2011/12/4
容量(圧縮時):992MB




道玄斎です、こんばんは。
二日続けてのノベルゲームレビュー。オーソドックスな恋愛もの。少しホッと出来るような、そんな作品なんじゃないかと思います。
というわけで、今回は「TBBNProject」さんの『My little B』です。
良かった点

・奇を衒わないオーソドックスな恋愛モノ。安心してプレイ出来ます。

・良く目にする造型のヒロイン達だが、フルボイスで可愛らしく演出されている。


気になった点

・作品を貫く背骨が、今ひとつ活きてこなかった。

・作品の尺、内容に対して容量が大きすぎる。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
この春、幼い頃住んでいたこの土地に、俺は12年振りに帰り、野田波高校に転入することとなった。
テンションの高いクラスメイトやおかしな生徒会長、不思議な図書委員。
楽しい生活が送れそうだ。
そんな中、なかなか思い出せない幼い日の記憶。
あの時の彼女は、一体誰だったんだろうか―――。

こんな感じ。



ストーリーを読んで頂ければ分かるように、非常にオーソドックスな恋愛ノベルゲームです。
設定や、キャラ造型はお馴染みのものばかり。舌の肥えたプレイヤーは思わず面食らってしまうはずです。しかし、オーソドックスな楽しみというのも、絶対にあるわけで、本作の場合、とことん期待を裏切らない或る意味で安心感のある作品に仕上がっている、という印象がありました。

ちなみに、主人公以外フルボイス。
若干、音質の違いが気になる所ですけれども、女の子達の演技は上々で、可愛らしいキャラクターを上手く演出していたと思います。


さて、本作は、各ヒロイン毎に一本のストーリーのラインがある、というよりは、主人公とヒロイン達との「個々の場面/やり取り」を切り取るような形で作品が進行していきます。
ですので、何かを承けて次の展開が進行し、またそれを承けて……という、直線的な物語、というよりは、作中時間、作中イベントによる制限の中で、「美味しい場面」を描いていく、というタイプ。

これは、割と頻繁に入るアイキャッチとも関係があると思われます。或るヒロインとのやり取りを承けて、次の場面が展開されていくのではなく、「一個一個のやり取り」がフィーチャーされる為に、アイキャッチで場面を変える事で、そのやり取りを完結させ、別のやり取りを描いていくんですよね。
共通ルートに特に顕著なのですが、個別ルートに入っても、やっぱり、ゆるやかでもストーリーの流れがある、というよりは、場面場面を描く、という感じです。

それが良いか悪いか、で問われたら、ちょっと悩みます。
一つ一つのエピソードをテンポ良く切り替えていく、と考えれば、決して悪い演出ではないと思いますし(それでも、少しブツ切り感はあるかな?)、何かシッカリとしたストーリーを求めている人には、物足りなさやブツ切り感を感じてしまう部分です。
ただ、作品の背骨として、「忘れてしまった幼なじみ」という存在があるはずで、そこをもっと表に押し出せば、作品全体にもっと統一感が出たんじゃないか、と取り敢えず云えそうです。


この手のノベルゲームで、「忘れてしまった幼なじみ」というのは、大体比重が重く、グッと、(主にメインの)一人のヒロインを焦点化していくものですが、そこが、本作の足りない点だったのではないかと。
いざ、プレイを開始すると、その「忘れてしまった幼なじみ」の存在は、主人公が求めるわけでもなく、個々のエピソードの中に埋没してしまうわけです。

本作のヒロイン達は、最初から主人公の事が大好きで、二人が恋仲になる事に疑いの余地はないんですよねw 勿論、それっぽい選択肢を選んでいかないといけないわけですけれども。
なので、枠組みとしては、恋仲になるまでの、甘酸っぱいやり取りを切り取って見せていく、という形。
が、それ故に、物語の背骨としての「忘れてしまった幼なじみ」の存在が希薄になってしまっている点、本作の一番気になる所でした。
大体、こうしたパターンだと、途中で何度か回想シーンが入って、少しづつ記憶が回復していくものなのですがw


こう、最初っから主人公の事が大好き、っていうヒロイン達も、時には悪くないものですよねぇ……。
正直、どの女の子も魅力的でした。それがありふれた造型だとしても。声優さんの演技も良かったですしね。

物静かで、読書が好きなほのか、元気系で僕ッ娘の玖苑、おっとりしつつも完璧超人の先輩優子。どれも甲乙付けがたいです。
ただ、やっぱり各ルートで、もう一押し欲しかった所。例えばほのかだったら、いつも持っているぬいぐるみ、という小道具があるわけですが、それが「キャラクターを特徴付ける為だけ」のものになってしまっていたり、或いは、玖苑のシスコンの弟の存在とかね。
そういう、ストーリーの中で活かせそうな素材はまだまだ残っていたように感じます。逆にバッドエンドなんかは不要だったのでは?

あと……この作品はなんで、こんなに容量が大きいんでしょうね……?
解凍してみると、1G超えてしまっています……。も少しスリムにしてやっても良かったですね。



大体こんな所でしょうか?
超オーソドックスですが、沢山の甘酸っぱいやり取りが楽しめる作品です。
青春恋愛モノが好きな方は、プレイしてみる価値があると思いますよ。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-06-21 19:32 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 06月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『獣道 白の刹那』

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今日の副題 「7年越しのアノ作品」

ジャンル:SF伝奇ノベル(?)
プレイ時間:3時間半程度
その他:選択肢一箇所アリ。しかし、実質的には1ルート
システム:NScripter

制作年:2012/5/14
容量(圧縮時):360MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、懐かしい作品……のリメイクの紹介です。私も以前、チラッと言及していた作品ですね。
というわけで、今回は「MBF FILMs」さんの『獣道 白の刹那』です。
良かった点

・一新されたグラフィック、演出が非常に凝っており、好印象。

・バトルを一つの軸に据えた作品、として危なげなくプレイ出来る。


気になった点

・何と云っても、本作だけで完結しない。

・実は、割と目にするタイプのストーリー展開。

ストーリーは、サイトへのリンクを張っておくことにしましょう。こちらからどうぞ。



本作は、過去に20000ダウンロードを達成している、『ケモノミチ~白ノ刹那~』(これは18禁でした)のリメイク版という位置づけになります。SF伝奇作品としてはかなり有名で、古参のプレイヤーはプレイした事があるのではないでしょうか。かく云う私も、セーブデータを見てみると(丸々、ゲーム、保存してありました)、2005年の11月にプレイしていました。

作品の細かいディティールの部分は、結構忘れていたのですが、本作の一つの特徴とも云える、「変わった武器」などはバッチリ記憶していたりします。
今回は、プレイしながら、少しづつストーリーを思い出していくのが、楽しかったですね。


さて、実は、本作のような作品、非常にレビューしづらいのです。
グラフィックや演出は、バッチリ2012年仕様ですし、ストーリーも危なげなく面白い。手に汗握るバトルシーンも完備、となれば、特に書くことないじゃないですかw それに元々が2005年(?)の作品のリメイクなので、どうしても今現在の雰囲気と違う部分もあるわけで、そこもレビューしにくい要因だったりします。
かと云って、放り投げてしまうにはあまりに惜しい作品なので、私なりにいつものように、脱線しつつ色々書いていきましょう。

本作、レビューしづらいと書きましたが、そこを深く考えてみると、一つの考えに突き当たります。
それは、プレイヤーをアッと驚かせるような、或いは、時にやりきれない思いを抱いてしまうような、そういう仕掛け、ストーリーがあるわけではないから、なんですよね。小粒でもピリリと辛い作品には、そうした要素が詰まっている事が多いですよね。

云ってしまえば、酸いも甘いも噛み分けた大人のノベルゲーム、或いは、一風変わった設定などでプレイヤーを惹きつけていく作品、というよりは、SF伝奇としての「直球勝負」の作品、それが本作『獣道』と云えるのではないでしょうか?
勿論、グラフィックや演出の素晴らしさはプレイヤーを驚かせてくれますし、強い印象を残す特殊な武器の設定なんかも魅力的です。
が、反面、「ここ!」という焦点、或いはとっておきのアイデアが、実はあまりないので、焦点を絞ったレビューがしにくいわけです。それは、本作が単独で完結しているわけではない、という部分と不可分ではないでしょう。


ガワの話ばかりしていても仕方ないので、ストーリーの方にも、少しづつ踏み込んでいきましょう。
主人公の亜塔と、ヒロインの零華は、「組織」によって改造された、所謂異能の力を持つ強化人間です。そして、例によって、その組織は、何やら怪しげで反社会的な研究をしていて、その研究成果の一つが、強化人間であるというわけです。
記憶を無くした亜塔、そして零華も組織から抜け出し、組織と戦う事を決意するのであったが……というのが、ストーリーの簡単な流れでしょうか。

ここまで読めば、本作が『クロスフェードに墜ちた夢』等と同じ枠組みを持っている事に気づきます。
そうした意味で、ストーリーの概要として、新味がある、とはちょっと云いにくいですよね。リメイクだから当然っちゃ当然なんですが、やっぱりリメイク前の『ケモノミチ』の方が、時代状況と相俟ってインパクトがありましたね。
ちなみに、『クロスフェード~』の方は、良く「B級ハリウッド」と呼ばれていますが、本作の場合は、それだと何だかしっくりきませんね。本作の方は、もう少しヒューマンドラマの面も押し出されているかな、という印象です。


ここまで、割と本作のネガティブな面について書いてしまいましたが、勿論「お!」と思った点も多々あります。
一つは、テンポ。文章自体も読みやすいですし、事件が起き、それを承けてストーリーが進み、又、事件が起こる……という展開が軽快で、プレイヤーにストレスを与えません。
私がプレイして3時間半ですが、体感時間としては、そうですね、2時間くらいの作品を一気に読む、そのスピード感でプレイ出来たという印象です。

こうしたテンポの良さは、戦闘シーンにも活きてきます。
折角の戦闘シーンがダラダラとしていては、迫力が薄れてしまいますが、文章のスピード感が手に汗握る戦闘シーンを演出してくれます。
難解な言い回し、特殊な用語の多用なども無く、ストレスフリーで楽しめる点、大いに評価したい所です。

又、次々と起こる事件も、プレイヤーを前のめりにさせてくれます。
だからこそ、「おいおい、これからどうなるんだよ……!?」という所で本作が終わってしまうので、そこは一つ気になった点にもなっています。まぁ、前編・後編の前編のような作品ですから、そこを指摘するのは、ちょっと酷かな、という気はしますが。


先に、『クロスフェード~』との比較(?)を行いましたが、『クロスフェード~』同様、本作も、危なげなくプレイ出来る作品で、バトルが出てくるような作品を求めている人には、手放しでお勧め出来ます。
色々書いてきましたが、普通に面白いんですよ、この作品。だからこそ、レビューが書きにくいわけで……。

お馴染みのストーリーという事は、「期待を裏切らない」という事と表裏一体です。
なので、「アレと同じじゃねーかよ」という消極的なものの見方よりも、「俺の好きなタイプの作品が来たぜ!」と好意的に受け止める方がハッピーになれる気がします。
ノベルゲームは、所謂「ゲーム性」は低いですが、プレイヤーの作品との向き合い方次第で、面白くなったり、或いはつまらくなったりするから不思議なものです。


2005年のリメイクという事なので、どうしても、2012年の今の雰囲気と違う部分はあります。
が、『ケモノミチ』(『獣道』)が、(2012年に至る)SF伝奇作品の成熟していく土壌を、創り上げて来た、とも云えるのではないでしょうか?
旧作をプレイした人も、もう一回楽しめる作りになっているハズです。伝奇モノ、バトルモノが大好物な方にもお勧めの一作です。続編も……フリーで出る事を期待して筆を擱こうと思います。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-06-20 15:57 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 06月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 『forever more ~俺と彼女の、奇跡の5日間~』

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今日の副題 「さよならは七月の終わりと共に」

ジャンル:記憶喪失の女の子を拾うノベルゲーム(?)
プレイ時間:約1時間
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2010/2/15
容量(圧縮時):51.8MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、少し前にリリースされていた作品を探してきました。びっくりするくらいの「王道感」のある作品ですが、ラストの何とも云えない、少し物悲しい余韻が気に入ってしまったので、ご紹介する事に。
というわけで、今回は「Project TKM」さんの『forever more ~俺と彼女の、奇跡の5日間~』です。
良かった点

・王道故の安心感。但し、気になった点でもある。

・絶妙な余韻を残すラスト。


気になった点

・あまりに王道すぎて吃驚するかもしれないw

・どこかに、もう一ひねり欲しかった。

ストーリーは、少し長目ですけれども、作者さんのサイトから引用しておきましょう。
俺は、市内の高校に通う、ごく普通の高校生だった。
特に成績がいいわけでもなく、運動ができるわけでもなく。
ただ、なんとなく流れるままに、平凡で、あまりにも平凡すぎる日々を過ごしていた。

7月中旬。
夏休みまでの残り日数も少なくなった、その日。
俺が住む地域には、今年になって初めて台風が接近していた。
朝のうちから雨が降り始め、昼前には視界がはっきりしないほどの豪雨となっていた。

学校が途中休校となった俺は、大雨の中、駅から自宅までの道を急いでいた。


そこで、俺は初めて出会ったんだ。 彼女と。


あの日からの5日間。
それは、人生で最も短く。 でも、絶対に忘れない。
そんな5日間だった。

これは、俺が彼女と過ごすことのできた。5日間の、奇跡の記録である。

こんな感じ。


さて、ノベルゲームの王道、と云えば皆様はどんなものをイメージするでしょうか?
帰宅部で、どこか日常にやるせなさを感じている男子高校生が主人公。これは王道ですね。
そんな主人公が、ある日、偶然、記憶を喪失している女の子を拾ってしまい、済し崩し的に同棲生活が始まる。これも亦王道。
何故か主人公が、高校生にも関わらず一人暮らしをしている……これも厭という程目にする設定ですし、主人公の隣の家(乃至近所)には、幼なじみの女の子が住んでいて、更に彼女は、主人公のクラスメイトでもある。同時にクラスには、ちょっとバカだけれども、実はイイ奴の悪友がいる……。

こんな感じに枚挙に暇がないわけですけれども、本作、上記の要素が全て入っています。
まさに、キングオブ王道。云ってしまえば、王道という名のピースで構成されているのが本作、と云えるのかもしれません。

ところで、王道の良さって何でしょう?
一つは、安心感でしょうね。王道に囚われない新味のある作品は、上手く機能すればプレイヤーを惹きつけますし、ノベルゲームに大きなブレイクスルーをもたらすことも往々にしてあります(それがまた定番になって、王道になっていくものですが)。
だけれども、メリットがあれば、同時にデメリットも存在するのが辛い所。例えば、新味のあるものを作ろうとした結果、何だか良く分からない、情報の伝達に齟齬をきたすような、そういう作品が生まれてしまう可能性があります。

ですが、王道から設定なり、キャラクターメイキングなりを拝借すれば、「それらしい」作品を作る事が比較的容易になります。つまり「そんなに外れない」作品が出来る公算が高まる、というわけです。
でも、やっぱりそこにもデメリットがあって、「どこかで見た作品」が溢れかえったり、その中で、あまり面白味の無い作品が生まれてしまう事も。


本作をプレイしている時、「王道すぎてどうしよう……」と、ちょっと困った、という事は告白すべきでしょう。
ヒロインのミライは、記憶喪失で、主人公ヒカルの家に居候する事に。更に主人公の幼なじみの香子や、クラスメイトの有本が出てきて、ミライやヒカルと関わってくる。
更に、ミライには何か秘密があるらしい事、所々で示されている……。

そういう意味で云えば、安心感こそあるものの、本作は、「どこかで見たことのある感」がたっぷりの、ちょっとレビューしにくい作品だと感じてしまったのでした。
逆に、「どこで他作品との差異を見せてくれるのか?」という部分が、非常に楽しみだったわけです。

が。
大凡、予想通りの展開と予想通りの結末を迎えてしまったので、微妙に肩透かしを食らったのは確か。
では、何故本作を取り上げようかと思ったのか? と云えば、ラストの何とも云えない雰囲気、余韻が素晴らしかったからです。

ミライというイレギュラーな存在が入り込む事で、非日常の空間が生まれ、結果、やるせない感じの主人公も生活にハリが出るわけですが、記憶喪失少女型のノベルゲームの場合、大体二つの結末に分かれます。
一つは、記憶を取り戻し、自分の元々いた場所に帰ってしまう、という別れのタイプ。
今一つは、上記のように、元々いた場所に一旦は戻るも、ラストで戻ってくる、という再会のタイプ
どうでしょうか? 大体、当てはまるような気がしませんか? 

本作の場合は、前者なのですが、ミライがいなくなり非日常が終わりを告げ、また日常が戻ってくる。
その切なさ、ある種の気怠さを描く所。そこが本作で一番光っていたシーンだったと思っています。
こう、フッとある種の物悲しさが入り込み、その余韻が棚引きながら物語が終わる。こういうタイプ、私好きなんですよね。


さて、一方の気になった点ですが、王道的展開、に関してはもう十分でしょう。
追加で挙げるとすれば、本作の持つ、特殊な文章表記に違和感を感じてしまいました。
というのも、本作は句点(「。」)の後に、全角スペースを入れる、というかなり特殊な文章表記をしているのです。
大体、ノベルゲーム(や小説)の文法(?)として、全角スペースを挿入する場所は決まっています。それは文中の「!」「?」の後です。これは、今まで散々述べてきたので、繰り返しません。
ところが、本作は、句点の後にスペースが入っていたんですね。何か意図があるのか? と思いきや、どうもそうでもないらしい。
読みやすさ……という事を考えるならば、やはり、句点の後にスペースを空けるのはやめたほうがいいのかな? と思いました。


もう一点は、やはり、もう一ひねり欲しい、という所でしょうか。
先にも述べましたが、予想通りの結末を迎えてしまったので、どこかにもう少し、軽くでもいいからヒネリがあると作品全体が締まったんじゃないかな、と愚案致します。

そうですね……。
例えば、本編のエンド後に、時間が経って、ミライと再会する、なんて場面を描いても良かったのではないかと。勿論、そこに至る道も沢山の方法が考えられますし、王道、みたいな展開もやっぱりあります。
本作の場合、相性の良さそうなパターンは、ミライとヒカルに血縁関係が存在している、とかね。



超ド定番の設定がてんこ盛りの作品ですが(逆にここまで王道てんこ盛りだと、逆に新しい気もしますがw)、それ故に読みやすくもあり、又、ラストでは思わぬ物悲しさを感じさせてくれます。
王道だから、という事で敬遠せず、是非ラストまで読んでもらいたい作品です。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-06-02 12:07 | サウンドノベル | Comments(0)