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2013年 12月 15日

フリーサウンドノベルレビュー 『ヤサシイセカイ。-Rewrite The Scars-完全版』

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今日の副題 「優しい世界でありますように」

ジャンル:倒錯病的愛憎ビジュアルノベル
プレイ時間:4時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。15歳以上対象作品
システム:Live Maker

制作年:2013/10/27
容量(圧縮時):171MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、複数の方からお勧め頂いていた作品のご紹介。「好き/嫌いが分かれるかも……」と云われていたのですが、そんな「嫌い」になる要素は無かったような……。
というわけで、今回は「プラスマイナスゼロ」さんの『ヤサシイセカイ。-Rewrite The Scars-完全版』です。ダウンロードは、こちらからどうぞ。
良かった点

・賑やかで楽しい、“攻め型”ノベルゲーム

・主人公に妙に感情移入出来てしまう。

・綺麗に纏まるラスト。


気になった点

・後半、性急だった描写も。

・良く分からなかった部分が一箇所。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
【あらすじ】
世界はきっと優しくなんて無くて、等しく無慈悲で残酷で――。
それでも信じていたかった。この世界の、優しさを。

今なお急速な発展を遂げ続ける現代魔術科学社会。
世間はその過程で生まれた魔動人形の中の一体、「最高傑作」の誉れ高いメル=レーヴェレンツの話題に大いに沸いていた。
主人に謀反し殺人を犯した、前代未聞の事件に。

一方で家庭教師であるアルフォンスは、今日も教え子のリーゼロッテの放胆ぶりに手を焼いていた。
それでも献身的に彼女に尽くす様を、他人から「気持ちが悪い」と一蹴されながらも。

そんな彼をストーカーするのが趣味であるリーゼロッテを、今日も屋敷へ戻そうと帰路を引き返していたその時。

運命の悪戯か、それとも偶然のような必然なのか。彼と彼女は、邂逅を果たしてしまう。
そう。世間を大いに騒がせているメル=レーヴェレンツに――。

【ゲーム概要】
基本的に読み進めるだけの、選択肢のないビジュアルノベルゲームです。

本作は性的・暴力的表現を含む十五歳以上を対象とした作品です。
また、男性向け・女性向け要素が混在しております。ご注意ください。

こんな感じです。

本作、舞台は西洋ファンタジーのそれを踏襲するような、そうした雰囲気の世界観なのですが、魔法と科学が融合したような、独特な世界観を持っています。
西洋ファンタジー作品だと、地名・人名・用語名なんかが、あまり日本人に馴染みのないものが多いせいか(人名とか、長かったりしますしね)、どうにも、すぐに覚えられない、という事があって、本作もその例に漏れない……んですけれども、ちゃんと人物に略称が設定されていて、比較的スムーズに読んでいく事が出来ました。

登場人物のフルネームを述べよ! って云われたら、ちょっと詰まってしまうんですけれども、主人公はアル、ヒロインはリゼット、メイドさんはエル……と云った具合に、略称ではバッチリ覚えてます。

さて、プレイしてすぐに気付くのが、ギャグテイスト強めの、ノリの良い楽しい展開で引っ張っていくタイプの文章だという事。いきなりヒロインのパンチラからスタートする辺りに、そういった作品の一端を感じ取って貰えるのではないかと思いますw

これも、毎度述べていますけれども、私のスクリーンショットを撮る基準は、「基本的に、最初に出てきた一枚絵」です。けれども、最初の一枚絵が、作品内容を紹介するのにそぐわない場合、或いは、ギャグっぽいデフォルメキャラの一枚絵とかだったりした場合は、「二番目の一枚絵」を持ってきたり、はたまたタイトル画面をキャプチャーしちゃう事も。

で、今回の場合……最初の一枚絵がパンチラシーンで、作品内容を端的に表しているか、って云ったら、結構疑問なんですが、ヒロインは可愛いし、作品の前半~中盤くらいまでの、楽しい雰囲気を表しているような気がしたのでそのように。プレイしていけば、気合いの入ったOPムービーなんかも流れてきますし、作品の暗い所、シリアスな雰囲気は、そのムービーでちゃんと補完出来ますしね。


先ほどから述べているように、前半~中盤に掛けての楽しいやり取りが、本作の一つの魅力でしょう。
「病的なまでに誰に対しても優しい」(優しくあろうとする)アルと、そんなアルに真っ直ぐな好意を向けるリゼット、そして、そんなアルに気持ち悪さを覚える毒舌メイドさんとの掛け合いが、かなり楽しかったですね。
こうしたシーンを盛り上げるBGMなんかも凄い凝っていて、ターンテーブルのスクラッチ音が入ってたり、ちょっとラップ風のものが使われていたり、何というか、「攻め型」のチョイスだったと思います。

割と、ノベルゲームって、BGMは「激しく主張しない」ものが多くて、私自身も、そういう方向が主流って事でいいんだよな……と思っていたのですが、本作のように、クセのある音をガシガシ使っていく、っていうのも、結構面白いものですね。
勿論、テキストの楽しさや、攻める姿勢があってこそ、そのBGMのチョイスも活きてくるわけですが、そうした意味で、非常に楽しい作品になっていました。


もう一つ、特筆すべき点は、主人公アルの性質です。
かなり早い段階で、どうやら、「過去に」「何か」があって、「病的なまでに」「誰に対しても」(特にリゼットに対して、なんですが)「優しくあろうとする」人になってしまった、というのが明かされます。そして、アルの心中思惟の文章なんかを見ると、結構、そうした自分を性質を客観視しているわけで(本当に優しい人は、自分の優しさを客観視なんて出来ない)、決して本来的な意味で「優しい」わけじゃないんですよね。飽くまで「優しくあろう」「優しくしよう」としている、というか。

そうしたアルの葛藤を含んだ、心中の言葉や、彼の「優しさ」を揺さぶるような出来事が提示されていくのですが、何か、物凄いアルに対して親近感を覚えてしまうのですw
「女々しい男って、こういう時に、こういう事しちゃうよね!」とか、「こういう時は、こうするしかないよねぇ!」とか、妙な納得感があるというかw

本作を、うんと端的に、そして粗雑に纏めるならば、「心に傷を負ったアルが、ヒロインを通してその傷に向き合い、立ち直っていく」というような、非常に良くあるタイプの作品である事は確かなのですが、アルの内面に深く向き合っていく部分が、本作を大きな特徴であり、他の作品との差異でもあるのでしょう。
他の作品が、主人公の葛藤の内面に踏み込まない、というのではありません。その踏み込みの深さ、そしてその内的で、時にドロドロしている部分が作品のテーマに繋がっていくような作りが、やっぱりちょっと特殊だと思います。

今、「作品のテーマ」なんて云っちゃいましたけど、「ストーリー自体に、一貫した主張はない」と、後書きに書いてあるんですよね。『純白の街、灰雪の僕ら。』の時にも、似たような事を書きましたけれども、「作者」と「読者」の関係っていうのは、何か難しいものがあるなぁ、と。
お堅い、文学的な研究領域では、「作者の存在を考慮しない」(作者の、意図なんて考えない)っていうスタンスが普通なんですけれども、今回は、作者さんが、わざわざ後書きに「主張なんてないよ」って意図を暴露しているわけで、そこを考慮しないのも、何となく座りが悪いような、そんな気がする事もあるのです。

閑話休題。
ともあれ、私がプレイしてみて、(余計な事を考えずに)素直に感じたのは、「救いって何だろう?」っていうのが、作品のテーマの一つなのかもしれません。
それが偽善的なものであれ、アルの優しさに救われる人も確かにいる。それぞれの抱えた過去と、その救いを、それぞれがそれぞれのやり方で探していく……。そんな風にこの作品を纏める事も出来るかもしれませんね。

登場人物は、本当にそれぞれが好き勝手に動いている(ように見える)にも関わらず、ちゃんと話が一つの結末に収斂していく所なんかは、流石ですよね。
ラストも、期待を裏切らないものだったと思います。


一方、後半に掛けて、やや性急だったと思われる描写や、結末の付け方もありました。
一つは、この作品に於いて、物語を進行させていく役割を担っている、殺人魔動人形メルについてです。彼は、物語の核心とも云えるリゼット(やフォルカー)の過去について知っているらしい事、描写されるので、もっと中盤からグッと登場回数が増えたり、何か見せ場があるのかと思いきや、割と地味な形でフェードアウトしていってしまった、という印象が。

又、ラスト近くでの、フォルカーとメイドのエルとのエピソードも、やっぱり、ちょっと唐突かなぁ。「こうなって欲しい!」とは思ってたんですけれどもねw もしかしたら、私は、本作の中でエルが一番好きかも。なので、エルの結末そのものに関しては、手放しで祝福したいですw


アルとリゼットの物語に関しては、かなりストンと腑に落ちました。先にも触れましたが、アルの心中の描写はかなりリアルですよ。
「卑怯で臆病でずるい貴方が、好き」なんてグッとくるセリフがありましたが、要は、アルのそうした傾向は、リゼットによって見抜かれていて、それでもアルに好意を寄せてくれる。

過去に厭な経験(特に女性絡みで)をした男っていうのは、その辺りで臆病になっちゃうんですよw そこまで女の側から云ってくれていても、最後の最後で信じ切れないような部分があったりで、結果、いつもの曖昧な笑みと言葉で誤魔化して……。
そんなアルとリゼットの結末に関しては、語りません。是非プレイしてお確かめ下さいませ。


最後に、どうにも分からなかった箇所が一箇所あるので、そこに触れておきましょう。
アルの初恋の相手アリーシャについて、なんですが、或る疑惑がアルに掛けられていたんです。けれども、アルはそれを否定している。だとしたら、本当はアリーシャはどういう状態だったんだ? と。
ネタバレを回避しながら語ると、こんなもどかしい感じになってしましますw



今回は、「無印」にするか「吟醸」にするか、かなり悩みました。
時たま、「無印」を付けたけれども、個人的に凄く気に入ってしまった作品なんかがありますが、本作は正にそれですね。
女性がプレイしても勿論楽しめると思いますが、寧ろ、アルに共感出来ちゃうような男性にこそ、お勧めしたい作品です。楽しい前半分と、シリアスな後半部、是非お楽しみ下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2013-12-15 18:42 | サウンドノベル | Comments(2)
2013年 12月 05日

フリーサウンドノベルレビュー 『箱庭のうた』

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今日の副題 「二人の歌は世界を越えて」

※大吟醸
ジャンル:青春SFノベル
プレイ時間:10~12時間(読むのが早い人だと8時間くらい?)
その他:選択肢アリ、されどストーリーには影響しない。
システム:Yu-ris

制作年:2013/11/28
容量(圧縮時):219MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、今年最大の期待作をプレイしたので、そのレビューを。いつもは、ちゃっちゃかちゃっちゃかプレイしちゃうんですが、今回はじっくりとプレイしていきました。
というわけで、今回は「タクティカルシンパシー」さんの『箱庭のうた』です。ダウンロードはこちらから。
良かった点

・商業作品と比較しても遜色ない仕上がり。

・ストーリー作り、話の組み立てが、非常に巧み。

・ラストの演出も巧みで、感動出来ます。


気になった点

・ちょっと消化不良だった人物、エピソードはある。

・主人公涼介の活躍の場が、もうちょいあっても良かったか。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
夜の学校に現れるという『おばけ』のうわさ…
逢坂涼介は、忘れ物を取りに行った帰り、一人の少女に出会う。

少女の名は『佐藤ことり』。

無口で無感情な、変わった女の子…。
ことりは一ヵ月前の事故によって、記憶を失っているらしかった。

そんなことりはどういうわけか、毎夜学校に忍び込んでは、何かをしている様子。

彼女と仲良くなっていく中で、涼介は誰も知らなかった『真実』を知ることになる。

久々にじっくりと読んだ大作でした。
本当に良い作品なので、レビューを読んでいる時間があったら、ダウンロードしてプレイしてみて下さい。


……と、それだけで終わらせてしまうのも、アレなので、例によって例の如く、あれこれ語っていくことに致しましょう。


どこから話しましょうかね。あっ、そうだ。作者さんの情報からいきましょう。
大抵の場合、フリーのノベルゲームは、個人や、小規模のサークルがリリースしています。しかし、本作、株式会社による制作です。恐らく、これから、会社としての活動が本格化してくる……という感じだと思うのですが、兎にも角にもフリーで作品をリリースして下さっています。

でも。
よくよくシナリオやグラフィック、音楽を担当している方を見てみると、『私とあなたといた世界』『彼女の嘘の止まった世界』の作者さんではありませんか。
恐らく、ここを見て下さっているような方ならば、その二作をプレイしている……か、或いは名前くらいは見た事があるハズです。
そうした、作品制作の中で培ってきた技術を元に、会社を作ったと思しいのですが、嘘でも会社ですから、今後は、商業ブランドになったり、そっちの方で活躍していく方なのかなぁ、という気がします。となると、「もう、フリーのものはリリースしてくれないのかな?」と、ちょっぴり寂しい気も。


ともあれ、『私とあなたといた世界』、そして『彼女の嘘の止まった世界』の名前を出しましたが、どちらもSF的な色合いが強い作品で、そうした傾向は、本作『箱庭のうた』にも踏襲されています。

ストーリーは先ほど引用した通りなのですが、謎の転校生ことりと、主人公涼介の関わりだけが焦点化されていくのではなく、涼介とその仲間達との、何気ない時間だったり、ことりが、少しづつ皆と仲良くなり、いつしか、ことり自身も「仲間」となっていく。その過程が丁寧に描かれており、好印象です。

ノベルゲームに於いて、作品の「ウリ」みたいな部分とはならなくても、「ここがシッカリしていると、クオリティが格段にアップする」というようなポイントは存在していて、その一つが、脇役の描き方、描かれ方です。
脇役が、終始賑やかに、主人公やヒロインの周りを盛り立てる。それ自体は悪い事ではないのですが、結局、その脇役達は「賑やかし要員」の域を出なかった、という事になれば、それはちょっと問題かもしれません。

脇役にも脇役の人生(?)があり、それぞれ日々生活しているわけです。
当然、生きている以上、悩んだり、苦しんだり、或いは、喜んだりする時があるはずです。そんな彼らの「人間としての姿」を、シナリオに盛り込めたら、グッと作品に奥行きが出てきます。そして、作品が単なる「お話」ではなく、もっと活き活きとした「物語」に変わるのです。

単純に、主人公とバカをやって、掛け合いをするだけの悪友、なんてのがノベルゲームに良く出てきます。フリーのゲームだけではなく、商業のものですら(今年はちょっと商業のものも、例年より多くプレイしました)、そうした「賑やかしの為だけの要員」がいたりするのが現実です。
けれども、やはり、業界を牽引するようなメーカーの作品や、定評のあるシナリオライターの作る作品には、脇役が活きるエピソードが、本筋のストーリーを補強するように、上手く配置されています。そうした、脇役が輝くエピソードがあるからこそ、普段のバカも活きてくるのです。


話を、本作に戻しましょう。
本作の場合、涼介の友人として、伊月、歩、夏之、こなみが最初から、仲の良いグループである事が示されています。それぞれ個性的なキャラクターで、変にごっちゃごちゃする事もありません。まぁ、夏之の性別が分からなくて、最初「???」となりましたがw

彼らは、作品の前半からラストに至るまで、涼介、そして、ことりと行動を共にします。
前半部は、夏之のギャグで押していくような所はあるんですが、それが結構笑えるんですよねw 

個人的に、本作で一番好きなキャラだったのは、こなみですね。夏之の妹で中学一年生。「じゃよ」とか、そういうヘンテコな言葉を使う子ですが、大人びた一面も持ちつつ、年相応の顔を見せる時もある……。そんなみんなの妹分で、ほんっと可愛いです。ちょっと崩れた顔の差分があるんですが、それもギャグシーンとマッチしていてグーでした。

で、本作で特筆すべきは、「メインのストーリー」と、仲間の物語が、上手く溶け合って存在している、という点でしょう。
云うまでもなく、メインのストーリーとは、ことりの謎に関するものです。そのメインのストーリーを展開する一方で、例えば、こなみであったり、或いは、歩や伊月に関する物語が、本当に巧みに織り込まれ、それが又、メインのストーリーに還元されていきます。そして、物語全体が、ことりを含めた「仲間の物語」として成長していくような、そんな作りになっています。

脇役のエピソードを織り込む、というだけではなくて、それを通して、物語そのものが、一つの方向性を持って成長する。本当に脱帽致しました。
脇役、と云えば、ことりと対立関係にある組織の構成員も途中から出てきます。
日寄子や、クリスといったキャラですけれども、彼らも亦、その「仲間の物語」に於いて、重要な役割を果たします。なので、どのキャラクターや、どのエピソードも、「何となく浮いている」という事がないんですよね。シッカリと物語に組み込まれている。これは本当に凄いことです。

この辺りで、ことりの事情についても、少し触れておきましょう。
ことりは、記憶を無くしています。そして、「ことりは、或る組織に属していて、ことりだけが倒す事が出来る『敵』を狩っている」という設定が明らかになっていきます。
スクリーンショットは、そのことりと、彼女が使う武器……みたいなものです。

そして、対立する組織がある事も判明して、ストーリーも緊張感を孕んだものになるのですが、意外や意外、伝奇モノにあるような、チャンチャンバラバラ、みたいな事は殆ど起きません。寧ろ、日寄子なんかは、涼介達と仲良くなってしまいます。

単純な善と悪の対立ではなく、それぞれ信ずる所が違うだけ、という状態ですから、そんなに険悪な雰囲気にもならないんですよね。で、日寄子も、やっぱり「仲間」になっていく。
そして、彼らの本拠地で、心地良い日常、心地良い時間が流れていきます。涼介の「こんな日が、ずっと続いたらいいのに…」という呟きは、実はプレイヤーの気持ちでもあります。

或る程度の尺を持った作品で、私が評価するポイントの一つがまさに、この涼介の呟きと重なるんです。
「いつまでも、この心地よさを感じていたい」と思わせるような、そんな魅力のある日常シーンがあると、本当に読了してしまうのが、ちょっと怖くなるような、そんな気持ちになったりします。


プレイしていくと、途中途中で、全く別のストーリーが挿入されていきます。
中盤くらいまでは、「何だか良く分からない……」という感じですけれども、徐々に、そのストーリーがなんであるか、が分かってきます。
SF好きならお馴染みの、「並行世界」(パラレルワールド)というヤツなんですけれども、後半まで読み進めた時、その並行世界の物語が、本作のメインの世界の物語と鏡像関係にある、まさにパラレルの関係にあるという事を読み取らないといけません。

並行世界では、人々は「リセットシステム」の制御に失敗し、眠り病とでも云うべき状態に罹っています。
そして、並行世界での主人公、テトラの周辺事情が、断片的にメインの物語に挿入されていくわけですが、テトラは何人かの仲間達と暮らしていて、その仲間も一人、また一人と眠っていきます。
その仲間の描写で、或る人物は「○○は、△△の妹だった」とか表現されたり、或いは、「料理を作るのが好きな子」が居たり、「テトラの為に絵を描いてくれる子」がいたり、「最後の最後までテトラを支え続けてくれた子」がいたり……。

並行世界の物語は、並行世界の物語、と別個に捉えるのではなく、メインの世界の物語とのパラレルな関係を読み取る事で、作品の持つ、厚みに気付く事が出来ます。
並行世界を描いた作品は、結構ありますけれども、ここまで、厚みを持った構造になっている作品は実は珍しいのでは?

メインの世界はメインの世界で、奥行きのあるストーリーになっている事、前述の通りです。
それに加えて、並行世界と、メインの世界が重なる事で生まれる厚みもそこに加わる事で、物凄く重層的世界が構築されています。この懐の深さも本作の大きな魅力の一つでしょう。


さて、気になった点ですが、実は、主人公である所の涼介は、そこまで主体的に何かをする、って感じではないんですよね。
確かに、ことりの一番身近な存在として、彼女を支える重要なポジションに居るのですが、彼が主体的に行動を起こしたり、主人公らしいガッツを見せたり、という事はあまりありません。
やっぱり、物語の後半くらいでは、主人公は主人公らしい、がむしゃらな勢いだったり、ガッツだったりを見せてくれると、熱くなれますよね。その点、ちょっと涼介は淡泊だったかな、と。

もう一点は、途中、涼介の護衛に付く大野というキャラがいるのですが(こいつも、夏之と同じくウザキャラw)、この大野に関しては、何となく、モヤモヤが残ったままなんですよね。
ことりの属する組織と、対立する組織があって、大野はその二つの組織の間を行ったり来たり出来るような立ち位置にいて、しかも、結構な権力を持っているらしい事が示されるのですが、その二つの組織の上位組織の存在だったり、大野の立ち位置だったりの部分では、何となく消化不良感がありました。


最後に、本作のラストについても少しだけ触れておきましょう。

ラストはちょっと、『あの花』っぽい感じのラストで、エンドロールに入っていきます。エンドロールの入り方も巧みでした。
で、勿論、エンドロールが終わったら、そこで物語が終了、ではなく、エピローグが入って本当のエンド、です。

本作は、割と分かりやすい伏線を張って、それを素直に回収していくタイプの作品、ではあるのですが(エンドロールの入りなんかは、まさにです)、最後の最後で、「こうきたか!」というような、絶妙な終わり方をしました。

この一連のラストの演出は、本当に素晴らしいですね。
長い時間を掛けてプレイしていたのが報われるというか、「プレイして良かった!」と思わせてくれる、そんな素敵なラストです。


さて、いつにも増して余計な事を書きまくってしまった感はありますが、超お勧めの作品です。
文句なしの、そして久々の大吟醸!
長時間プレイする価値は絶対にありますよ!



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2013-12-05 21:05 | サウンドノベル | Comments(2)
2013年 12月 02日

なんてことない日々之雑記vol.379

道玄斎です、こんばんは。
最近寒いですねぇ。特に朝がね、寒くて寒くて厭になっちゃいます。

ノベルゲームの方は、ちょっと大型(?)の作品をちまちまプレイしています。更に、お勧め頂いている作品も控えていて、当分、作品選びには苦労しないで済みそうです。それに併せて、レビューの方も順調に更新出来たらなぁ、と。



■言葉のサンドバッグ

私は、日常的に、若者と接触する機会が多くて(なんて書くと、年寄りみたいですが、一応まだまだ若いつもりです)、色んな形で彼らとコミュニケーションを取ったりしています。

お互い顔をつきあわせる形での、直接的なコミュニケーションはそれはそれとして、最近はスマートフォンに入っているアプリを使ってコミュニケーションを取る、という事も増えてきました。

十年くらい前は、メールが全盛期でしたが、最近は、もしかすると、普通のメールなんかより、そうした「メールアプリ」を使ってのコミュニケーションの方が、普通のあり方になってきているのかもしれません。
まぁ、実際、私も自分の友人と連絡を取ったり、或いは、友人から連絡がきたりする場合、メールアプリを使う事が圧倒的に多くなってますしね。

何だろう、メールってちょっと改まったというか、かしこまった感じがしますけど、メールアプリの場合、何となくもうちょっとカジュアルにメッセージを送れるような、そういう感触がありますね。


それは兎も角、最近、そうしたメールアプリを使ってのコミュニケーションで気になる事があるんです。

それは、話題の連投とも云うべき状態で、Aという話題があって、相手がそのAという話題について、話を振ってきたら、こちらはそれに返事をする。それを承けて相手は、また返事をする。
こうした会話のキャッチボールが正常に行われている状態なら、問題はないのですが、そのキャッチボールがどうにもスムーズにいかないケースがあるんです。

Aという話題があって、そこからBという別の話題に話が流れる事は、日常的にあると思います。
話の上手い人(というか、話していて楽しい人かな)と話すと、話題が、BからC、CからDへと、スムーズに流れて、話自体も面白いものですから、最初に話そうと思っていたAが流れちゃっても、「楽しいから、ま、いいか」となったりね。

そうした場合であっても、話題が切り替わる時って、「そういえば」とか「○○と云えば」とか、或いは「ところで」とか、そういう言葉を使いますよね。
逆に云うと、そうした言葉があるから、「あっ、話が変わるんだな」と分かるわけです。当たり前の事ですが。

でも、最近の若者は、どうも、こうした「そういえば」とか「ところで」といった言葉を使わない傾向があるみたいなんです。
なので、Aという話題で、相手から話を振られている。そこで、返事を考えて、文字を打ち込んでいる最中に、今度は、Bという話題が振られてくる。仕方ないから、取り敢えず、打ち込みかけのAに対する返事を送信するも、それはもう流れてしまった「死んだ話題」となってしまっているので、スルーされてしまう。で、そうこうする内に、今度は話題Cに話が送られてくる……。
或いは、Aという話題に、普通に返信しても、「その返事に対する返事」ではなく、完全に独立した「話題B」が脈絡を無視して振られてくるとか。

こういう事が、一回や二回ではなくて、結構しょっちゅうあるんです。
勿論、何人も、そういう事をする人がいるw

考えてみるに、別に、相手は、その話題について話を振りはしたものの、別にそれに対する「反応」とか、「こちらの言葉」を求めているわけじゃないんだろうな、と。
ただ、「話したい事を、話したいタイミングで話しているだけ」。そういう感じがします。

これをやられている状態を、名付けて「言葉のサンドバッグ」と呼んでいますw


で、この言葉のサンドバッグ状態が頻発するものですから、私も、知り合い複数人に、この話をしたんですよ。
そうしたら、案の定というか、「それ分かるわ!」みたいな反応が返ってきて、「俺が単純にナメられてたわけじゃなかった!」と、ちょっと嬉しくなりましたw
こちらをサンドバッグにする若者と、同世代の人ですら、「最近、そういうやり取りが増えてきて、何かストレスがたまる……」と、云ってましたから、やはり、私がナメられて、という事ではなかったみたいです。何度も云いますが、ホッとしましたw


なんか、こういう時、さっき「若いつもり!」って書いちゃいましたけど、「若者」との距離をちょっと感じてしまいますね。
そして、物わかりの良い大人を演じて、若者に迎合するのではなく、自分の信じる、「分かりやすくて」「相手に優しい」言葉を使っていこう、と決心したのでした。



と、まぁ、何となく今日は、ガラにも無く真面目な話(?)をしてしまいましたが、そんな日々を送っておりますw



ということで、今日はこのへんで。
それでは、また。
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by s-kuzumi | 2013-12-02 20:29 | 日々之雑記 | Comments(0)