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2014年 04月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『未来都市2』

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今日の副題 「今度は王道、宇宙のSF」

※吟醸
ジャンル:SFアドベンチャー
プレイ時間:~3時間程度
その他:選択肢が一箇所アリ。内容自体はそこまで変わらない。
システム:NScripter

制作年:2012/10/24(Ver.1.00)
容量(圧縮時):119MB




道玄斎です、こんばんは。
大分、体調も良くなりまして、今日からまたボチボチ、積んでいたゲームを消化していこう、と思ってます。
取り敢えず、手始めに、私の好きなSFモノから行こうかな、という事で本作をチョイス。
というわけで、今回は「WORLD COMICS」(Twi☆Light)さんの『未来都市2』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・一章が程よい長さで区切られている為、サクサクとテンポ良く読んでいく事が出来る。

・90年代のアニメの様なイラスト。私は凄い好みです。

・或る意味で直球のSF作品、宇宙モノが好きなら是非どうぞ。


気になった点

・ラストが妙にあっさり。選択肢に拠る分岐と併せて、もうちょい余韻を残してくれたら良かった。

・もう少し掘り下げて欲しいキャラも居たり……。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
未来世界を描いたSFノベル第2弾。
今作では舞台を宇宙へ移し、最後に残された
人類の選択が描かれる。

時は宇宙開拓時代―。
新たに開拓された惑星で安住していた人類だが
ある日、惑星崩壊という不吉な噂が流れる。
そんなフロンティアへ現れた青年イツキは
とある少女を助けた事で壮大な運命へと
巻き込まれてゆく…。

前作とは世界観のつながりはあるものの、
独立したストーリーなので初めて読まれる
方も問題ありません。

という事で、以前、私も取り上げた事のある『未来都市』の第二弾です。
ストーリー説明に書いてある通り、本作『未来都市2』は、「2」という表記ではあるのですが、実質的に続編という形ではなく、独立したストーリーになっています。なので、本作から読み始めても、全く問題ありません。

さて、『未来都市』が、海底のSFという、比較的地味な(けど、物凄くSFらしい)舞台だったのに対して、本作では、舞台が宇宙に移ります。
舞台背景としては、今から数千年先の未来。人類は地球を捨て宇宙に飛び出してきました。そして、ある星に定住する事になるのですが、その星も崩壊の危機が迫っており……。

と、これまた物凄くSFらしい設定で、特に宇宙モノが好きな人にとってはたまらないんじゃないでしょうか?
何度も書いてますが、私もSFって凄く好きなんですよ。かなり懐の広いジャンルでしょう? 本作のような宇宙を舞台とするようなSFがあるかと思えば(ハードなものも、『スターウォーズ』のようなスペースオペラもある)、ミステリーと意外なほど親和性が高かったり、近年リバイバルしているクトゥルフ神話のような、ホラーとも仲良く出来る。

本作は、かなり「分かりやすいSF」である事は確かです。
その星の人間を全て収容出来るような、巨大な母艦があったり、ちょっと『マクロス』っぽいかもしれませんね。本作にも、世界のアイドル的な女の子いますし、ね。

本作をプレイして、すぐに気付くのは、そのテンポの良さです。
最終話を入れて、全部で9章あるんですけど、8章までは、一つの章の長さが15~20分程度なんです。最終話は流石にちょっと長いんですけど、一つ一つのチャプターが凄い計算されて作られてるな、という感じがしますね。

ストーリーも無駄がなく、引き締まっていたと思います。
主人公イツキのキャラも厭味がなく、云ってしまえばありがちな造型ではあるんですが、好漢。
それなりに登場人物が多いんですが、どのキャラクターも魅力的ですよね。イツキと同居する事になる、ヒロコとマコトを始め、チーフのアキ、超お嬢様兼アイドルのユミもいい味出してます。

スクリーンショットを見て頂ければ分かるように、90年代のアニメのような雰囲気のイラストが、キャラクターの魅力を増してます。
ちなみに……作中で、ブラウン管のテレビだとか、結構レトロなモノも出てきますが、それはヒロコとマコトの趣味という事になってます。宇宙開拓時代のSFには合わないような気もするんですが、そこら辺は恐らく、素材調達の関係でしょうね……。そうした点を以て、「SFらしからぬ!」と云うのは簡単なんですが、そのくらいは目をつぶらないと……とも思います。皆様はどう思います??


イツキが成長していく姿(勿論、ライバルもいる)や、人類存亡の危機など、見所も多くて、普通に面白い作品ですよね。今回は、何の迷いも無く、「吟醸」です。

一方で、ちょいと不満に思う所もありました。
一つは、ラストがかなりあっさり風味だという事。少しづつストーリーが盛り上がって、ちゃんと山場があって、じゃあ、どう纏まるんだ? って時に、割とあっさりと終わってしまった感が。

これは、単にラストの締め方だけの問題ではなく、八章目で出てくる選択肢の問題とも関わりがありそうです。最後の山場を前にして、選択肢が出てきます。つまり、「ヒロイン」の中から一人を選ぶ、という事なのですが、実は、ここで誰を選んでも、その後のストーリーに変化はありません。
勿論、選んだヒロインとの固有の会話がちょっと入る……んですが、変化といえばそのくらい。その選択によってラストが変わるとか、そういうのではないんですよね。

折角、魅力的なヒロインが居て、「ルート分岐」と思しき選択肢が提示されるのに、それがラストに影響を全く持たないわけで、ちょっとそこが残念でしたね。
もう少しでいいので、ヒロイン固有のルート感が出て、そうした形でラストが示されれば、もっと納得感があったんじゃないかな、と思います。

更に、主人公のライバルの黒田カズキも、初登場時は、単なる厭なキャラ、という感じだったのですが、ストーリーが進むにつれ、その魅力が明らかになってきます。
で、彼とヒロコの間にある問題は、その全貌が分からないまま、何となく流れてしまいました。後半でカズキは物凄く魅力を増すいいキャラなわけですが、もうちょい掘り下げてあげると良かったかな、という気が。


大体、こんな所なんですが、実は、本作で描かれている人類の生き残りは、「日本人」という事になっています。どうも、我々が住む現代から見て、未来に(作中では遙か昔に)、例によって世界大戦のようなものが勃発したらしいんですよね(第三次世界大戦も、SFでは定番のネタですよね)。
で、日本人は「戦わない」という選択を採る事で、生き延び、宇宙に住処を求めていった……という事らしいのですが、この辺り、未来を舞台としていながらも、現代に生きる我々へのメッセージのようなものを感じる所でもあります。

専守防衛というのが、果たしていいのかどうか……。
本作で描かれるように、それが一つの美徳であり、それによって明るい未来が開けるのかどうか……それは正直良く分かりません。専守防衛の立場を取っている国が戦わないといけない時って、既に戦いが本土に及んでるって事ですからねぇ……。侵略させない、という意味で、或る程度の軍事力の強化、充実は必要になるんじゃないかなぁ……なんて思ったりするんですが。

ともかく、架空の未来を描きながらも、実は、現代に生きる我々へのメッセージ性みたいなものを、その裏側に秘めている。こうした作りもSFらしいですよね。
本作の発している、一つのメッセージについての賛否はありましょうが、本作が、凄くテンポ良く楽しめる良質のSF作品だというのも、亦事実です。

三時間程度と、少し長目の尺ですが、SFがお好きなら是非プレイしてみて下さい。
それでは、また。



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私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~

http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

リニューアルも完了し、より使いやすい素材ポータルサイトになっております。

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by s-kuzumi | 2014-04-26 20:33 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 04月 15日

なんてことない日々之雑記vol.384

道玄斎です、こんばんは。
最近、すっかり暖かくなって……というか、もはや「暑い」という感じすらあるのですが、皆様は如何お過ごしでしょうか? 私は、というと……。



■ゲームのBGM作ったよ

最近、ゲーム用のBGMを一曲作る機会がありました。
偶発的というか、なりゆきでというか、そういう形です。

いざ、作る、となった時に、資料(ゲームの雰囲気が端的に分かるスクリーンショット)を頂いたのですが、「これなら楽しんで作れそうだな!」と思い、ざざっと一気に作ってしまいました。

メロディアスだったり、ドラマチックな展開があるような曲だとそうはいかないんですが、スピード感と、楽しさみたいなのが出せれば良さそうだったので、制作は意外と楽々でした(そんな何分もあるようなBGMじゃないしね)。BPMは、何と170。かなり早いです。

「作りたいもの」と、「頼まれてるもの」の方向性が上手い具合に合致すると、本当に制作が楽しいですね。
ドドドンとドラムを打ち込んで、ちょちょっとコードを入れて、メロディ的なものを追加してやれば、輪郭は何とか整います。

あとは、音を抜き差ししたり、サンプリング素材を散りばめて、味付けをしたり、そんな感じで完成。
ちょっと悪ノリもしてみたんですが、何故か「その音外して!」って云われる事なく採用して頂きました。「あれ? いいのかなぁ」なんて不安になったのですが、完成した作品をプレイして納得。
他のBGMも結構、攻め型というか、アグレッシブな音が多くて、私が仕込んだ悪ノリも、全然浮く事なく、普通に馴染んでいたという。

オーダーと、自分の作ったものに齟齬が無かったというか、何か凄い奇跡的に上手くいきましたね。
たまにゲーム用BGMを作ってみるのも楽しいもんです。それが誰かのゲームのお役に立てるなら云う事無しですよね。

「ゲームのBGM」って云うと、何か凄い名曲みたいのをイメージしちゃう人もいるんですけど、カッコいいドラムのループが出来たら、それが十分BGMの役目を果たしてくれる、みたいなケースもありますし、「自分に出来るところから」とか「出来そうなところから」BGMを作ってみるのはお勧めです。

たまには、じっくりと作ってみるって作業も必要なんでしょうけど、別にプロのBGM制作屋になろうってんじゃないんですから、楽しんで出来たらいいですよね。

今回のBGM制作も、私にとって、非常に良い経験になりました。
一曲作るごとに経験値がたまり、確実にレベルアップする、なんて云われますけど、今回の経験を活かして、次に作るものが、今の自分のものより良いものになってたらいいな、と願う次第です。



■例によって例の如く

体調不良です。
今回は、インフルエンザの時のような症状が五日間に渉り続いている、というもの。

吐き気はするし、頭痛はするし、発汗はひどいし、関節痛まである。
ここ数日でガリガリに痩せてしまいましたw

ちょっとね、コンピュータをいじるっていうのが、今億劫です。
私の予想だと、あと二日くらいはしんどい状態が続きそうなので、ゲームプレイもそれから、ですね。


私は、こうやって、病弱報告をしたりはするんですが、死んだことはないので、意外と根は丈夫なのかもしれませんw

ま、あと数日は、大人しくしています。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-04-15 21:20 | 日々之雑記 | Comments(0)
2014年 04月 06日

Novelers' Materialリニューアル公開!!

道玄斎です、こんにちは。


お待たせしました。
やっと、私達が運営している、ノベルゲーム素材ポータルサイト、Novelers' Materialのリニューアルが完了致しました!

Novelers' Material(http://novelersmaterial.slyip.com/

見て頂ければ分かる通り、随分、旧版のものとは変わっています。
大幅に変わったデザインに目がいきがちですが、機能的な部分でもバッチリ進化してますよ。

ちょっと、どの辺りが進化したのか、書き出してみましょう。

・大幅なデザイン変更。グリッド表示も出来るように(画面最上部のアイコンから)。

・従来の「展開表示/省略表示」はなくなり、常に素材をプレビューしながら利用出来るように。

・素材規約に「初期値」が設定出来るようになりました。より投稿しやすい形に。

・簡易メッセージ機能搭載。素材作者とのやり取りがよりスムーズに。

・mp3、ogg、wavなどの音素材は、設定無しで、視聴出来るように。


と、この辺りが大きな改良点でしょうか。
素材を投稿する人にとっても、そして素材を利用する人にとっても、随分、使いやすくなったと思います。

サイトデザインがかなり変わったので、最初は戸惑う部分もあるかと思いますが、慣れてしまうと、旧版のものより断然使いやすい事がお分かり頂けるはずです。

論より証拠、まずは使ってみて下さい!
そして、ゲームを作っている人、ゲームをプレイする人、或いは、音楽を作ったり、写真を撮るのが好きな人などに、広めて下さると嬉しいです。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-04-06 11:44 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 04月 05日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『ネームテイカー』

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道玄斎です、こんばんは。
今日は、さりげなく積んであった作品をプレイしてみたら、尺が10~15分くらいの短いもので、且つ、ちょっと笑えるものでしたので、番外編にてご紹介。
というわけで、今回は「がっかり亭」さんの『ネームテイカー』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。


「がっかり亭」さんと云うと、例の『無理やり主人公』の作者さんです。
今回も、軽妙で楽しい物語になっていたと思いますよ。

さて、中身の方ですが、舞台はファンタジックな世界。
主人公の女の子の名前は、何と、「ゼムギルガン」。およそ女の子の名前とは程遠いものですw
彼女は、もっと女の子らしい可愛い名前に改名しようと、彼女の住む国の首都までやってきたのだが……。

というが、簡単なストーリーの纏めになりましょうか。
つまり、主人公ゼムギルガンが改名を果たす、というのが、この作品の一つの目的です。
ストーリーのテンポは良すぎるくらい良いですし、本当にサクサクとプレイ出来て、合間合間にちょっと笑えるネタ(勿論、名前絡み)が入ってきます。

私がプレイして気になったのは、ストーリーというよりも、この作品の持つ、一つのテーマというか、そういう部分だったりします。
それは、所謂「キラキラネーム」(別名:DQNネーム)がハバを効かせている昨今の、現代社会を反映させているのかな? という辺りです。

とんでもない当て字系のもの、女の子なのに男の名前が付いている、もはや意味が分からないもの……沢山のキラキラネームがあります。
本作は、ファンタジー世界が舞台ですが、「男の名前が付けられた女の子」が主人公です。彼女の葛藤や苦悩、そしてそれが故に生み出される爆発力(とギャグ)を軽妙に描きながらも、ちょっと、そうした名前を巡る問題に踏み込もうとしているのかな、という印象でした。

今、検索して出てきたんですが、「恋恋愛(れんれこ)」やら、「振門体(ふるもんてぃ)」なんて名前もあるそうです。ホントかなぁ。
ともあれ、私が、キラキラネームに関して、物凄く気になっているのは、「その子が、歳をとった時にどうなるのか?」という事ですw

例えば、今の例ですと、「恋恋愛ばあさん」とか「振門体じいさん」とかに、最終的にはなっちゃうわけですよねw それはちょっと、いくらなんでもおかしいだろう、と思うわけですよw
赤ちゃんだったら、ちょっと変な名前を付けても、何となく馴染んじゃうような部分ってあるのかもしれないですけど、子供も成長して、老いて、やがては死んでいきますからね……。


というわけで、かなり短めのギャグノベル(一箇所選択肢アリ)なのですが、内側には、ちょっと、キラキラネームに対しての主張というか、問題提起というか、そういうものも持った作品だったのではないかと思います(そこが選択肢になっているのが、またいい感じ)。

ちょっと笑える部分もあり、名前について考えさせられる部分もあります。
短い作品ですから、サクッとプレイしてみて下さい。



それでは、また。



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http://novelersmaterial.slyip.com/index.php

只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

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by s-kuzumi | 2014-04-05 17:57 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 04月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 『喉の渇くその前に』

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今日の副題 「主軸に寄り添う、もう一本」

ジャンル:死後の世界での問答ノベル(?)
プレイ時間:1時間程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2013/10/12
容量(圧縮時):59.5MB




道玄斎です、こんばんは。
ついに新年度、突入ですね。進学や就職、色々あるかと思いますが、ゲームを楽しむくらいの余裕は欲しいものです。今日は、前回レビューした作品『よんひくいちは』の作者さんの処女作です。あれをプレイしちゃったら、前作がどんなのだったのか、気になりますからね。
というわけで、今回は「現屋」さんの『喉の渇くその前に」です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・「思い込み」という、ちょっと変わったテーマの作品。

・予想以上に、密度が濃いストーリーと、何とも云えない不思議な読後感。


気になった点

・もうちょっと易しく表現出来る部分は、易しくした方が、全体が理解しやすいかも。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
――ここは死後の世界へ誘う空間。
真っ白な世界には、イスとティーカップと、番人。
どこまでも孤独な、一縷の幸福を祈る番人。

こんな感じ。

って、これだけじゃ、ちょっと物足りないので、私が補足しておきましょう。
主人公は、日々の生活に疲れ、自殺を決行……したものの、気がつけば、真っ白な世界で倒れていた。その世界には、扉のようなものがあり、倒れている主人公に声を掛ける人物もいる。
声を掛けてきたのは、イノという名前の性別不明の子供。イノは、どうやらこの空間の番人で、イノとの問答によって、「天国」か「地獄」に行くかが決まるらしいのだが……。


という所でしょうか?
「死んだらどうなるのか?」というのは、宗教の根本的なテーマです。
兎にも角にも、人間は「死」に対する興味関心が強いようで、ノベルゲームの場合なんかだと、本作でも描かれる「自殺」に焦点を当てたものも、結構良く目にします。

これは、やっぱり、『ナルキッソス』という作品が与えたインパクトが大きかったのかな、と思いますね。
『ナルキッソス』以降、似たような手触りを持つ作品が多数出てきたように思います。
単なる『ナルキッソス』の亜流、みたいな作品もあれば、そこから一歩進んでオリジナリティを出している作品もあって、ノベルゲームに於ける「死」、特に「自死」は、今なお、メジャーなテーマであり得ています。

本作も亦、「自殺」が描写されますが、所謂「死後の世界」と現世の中間地点みたいな所が舞台となっており、『ナルキッソス』の流れを汲むもの、とは一線を画しています。
何にせよ、『よんひくいちは』の作者さんの作品ですから、一ひねりあるんだろうなぁ、と思いながらプレイしていったら、案の定、「生死」、或いは「自殺」の問題ではなく、「思い込み」という、非常に変わったテーマを主軸にしていた、というわけです。

イノの力によって、主人公は、自らの過去と向き合う事になるわけですが、どうも彼は生前、思い込みによって、随分と損をしてしまったようです。
この主人公というのは、もしかすると「この物語の主人公」なのではなく、プレイする私達自身なのかもしれませんよ。

私達も、絶えず、思い込みをしながら生活をしています。
「思い込みなんてしないよ」と云う人ほど、「思い込みをしないという思い込み」があったりするわけです。
思い込みとは、一面的なモノの見方、と言い換える事も出来ます。例えば、ネット上ではHNだけで、性別が分からない、なんてケースがありますよね? その人の文体とか内容とか、或いは顔文字の頻度なんかを見て、勝手に「あいつは女」とか、逆に「あいつは男」なんて思ったり。

或いは、一旦嫌いになっちゃうと、その人がその後、どんなに良い事を云ったり、善行を積んでいても、その人の厭な部分、つまり「嫌い」の面しか見えなくなっちゃうとか。


作中でも描かれますが、自分の中で完結しているような、思い込みなら、まだいいんです。
問題は、対人関係に於ける思い込み、だったりします。
誰かの行動、言動に対して、自分の中で、最初っから枠組みを作ってしまって、その裏側にある真意や、事象に気付かず、後々悔いるような事をしてしまう。身に覚え、ありませんか? 私はいっぱいありますw

ともあれ、こうした「思い込み」に関するテーマを掘り下げていったのが、本作『喉の渇くその前に』という事になりましょうか。
自殺をして、一度死んでから、自分のそれまでの人生を振り返ってみると、何と、不必要な思い込みが強かった事か。主人公を通じて、私達は、それに気付く事になるわけです。


かくして、「一面的なモノの見方は良くないよな」と改めて気付かせられるんですが、この作品の魅力は、その「思い込み」を推進力とするストーリーで50%です。
もう半分は、白い空間の番人ことイノと、主人公の不思議なやり取り、そして彼らの間に芽生える、友情……というのはちょっと違うのですが、不思議な関係です。

友情でも愛情でもピンと来ない、何とも云えない不思議な、魅力ある関係が、ストーリーの進捗と共に描かれていきます。そして、ちょっとフワフワっとした、捉え所が難しいけれども、優しい手触りのエンディングへと繋がっていきます。


この作者さんは、ちょっと、プレイヤーに考えさせるような、そういう懐の深いテーマの作品を作っていますよね。
この作者さんが作った二作品に共通しているのは、表面上の事象というか、テーマみたいなものは、比較的くみ取りやすい。けれども、もう一本、フワフワっとしたもう一つのテーマが寄り添うような形で、一つの作品として纏まっている。そんな印象があります。

前回取り上げた、『よんひくいちは』でも書きましたが、ちょっと文章表現が難しくて、その「もう一本の軸」が見えにくい部分はあるのかな、という気はします。
例えば「穎悟」なんて言葉、私は生まれてこの方、使った事がありませんw 主人公の心中と同化した地の文でも、かなり凝った文章ですので、サラッと読めるわけではないんですよね。

勿論、凝った文章が悪いとか、そういう事が云いたいんじゃありません。
こうした、「小説寄り」の文章のノベルゲームがある事、それ自体は、寧ろいい事だと思います。サウンドノベルにせよノベルゲームにせよ、「ノベル」という文字が入るわけで、文章に凝る、というのは非常に大事な事だと思うのです。
その方向が、「より読みやすい」方に向くのか、「じっくり読む」方に向くか、とザックリ二つに分けられそうですけれども、後者の「読ませるタイプ」の文章を持った作品があってもいいんじゃないか、と思いますよ。ライトなものもいいけれど、それだけだと物足りなくなっちゃいますからね。

ただ、それでも、「易しく表現/表記出来る所は易しくする」というのも、亦大事な事だと思うのです(「亦」なんて漢字を使ってる私が云うなって話ですけどw)。
作品の雰囲気や、世界を壊さない範囲で、もう少しだけ平易な言葉に置き換えてみる。それだけで、グッと読みやすくなりますし、この作者さんの場合で云うと、「もう一本の軸」がより明瞭になるような気がします。


最後に、一個、脱線を。
作品中に「信号の『進め』を、青という人もいるし緑だという人もいる」みたいな文章が出てくるんですけれども、これ、実は日本語の問題なんです。日本は古来から、「緑のものを青と呼ぶ」ケースが結構あって、野菜を「青物」とか云ったりしますよね? あれなんかは、その典型的です。色と言語って結構密接に繋がってるんですよ。良く聞くのが「虹の色」。私達は疑いなく、虹を七色って云いますけれど、世界には、三色だとか二色だとか、云う所もありますよね。あれも、或る色に相当する言葉が存在するか否か、って問題と繋がってきます。


というわけで、いつものクセで長々と書いてしまいましたが、この作者さんの独特な作品の雰囲気は、やっぱりプレイしてみないと分かりづらいと思います。
少し、読みにくい所はありますけれども、フリーのノベルゲームを探してて良かった、と思えるような、そんな作品である事、間違いないと思いますよ。一時間くらいのものですから、気になったら是非、気軽にプレイしてみて下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-04-03 17:34 | サウンドノベル | Comments(0)