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2014年 11月 06日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.68

道玄斎です、こんばんは。
結局、風邪が全然治らなくて、昨日も病院に行ってきたんだよ。私は肺炎とか罹りやすいから、レントゲンとか撮って貰ったりしてね。結果、ただ風邪が長引いているだけ、って事だったんだけど、早く元気にならないかなぁ。

で、今日も例によって箸休め。
先日、ファンタジーノベルゲームを作ろうとしている人から相談を受けたんだ。
話を聞いてみると、「世界を救うんだ!」みたいな大きなファンタジーじゃなくて、云ってしまえばチマチマした事件を解決していく、人情派トラブルシューターものだったんだよ。

相談の要点は、つまり「主人公達のベースキャンプとなる、所謂冒険者の宿について、何かネタが欲しい」という事だったんで、渋谷の、とあるパプで話をする事にしたんだ。うってつけの場所でしょう?



■パブってなあに?

「ということで、冒険者の宿の何が知りたいのよ?」

「そうですね……まず、ああいった冒険者の宿屋っていうのは実在したんですか?」

「おいおい、魔法をぶっ放したり、剣をぶら下げて怪物を倒す連中が実在しないんだから、冒険者の宿なんてのはフィクションだよ」

「あぁ、そういえばそうですよねぇ」

「けど、そのモデルは勿論あるんだ」

「え? どこです?」

「ここだよ。パブ。ファンタジー作品に出てくる宿屋、あるいは冒険者の宿は、明らかにパブを一つのモデルにしているんだよ」

「だから、今日はここで飲み食いすることにしたんですね」

「ファンタジーって、雰囲気っていうか『ファンタジー感』が大事だ思うんだよね。これが『和民』だったら、ちょっとファンタジーの話をする雰囲気じゃないだろ?」

「まぁ、確かに……あれっ? けどおかしいですよ」

「ん? なに?」

「冒険者の宿を調べてたら、『イン』とか『エールハウス』とか『タヴァン』というのが、冒険者の宿屋に近い、なんて書いてありましたよ。パブなんて一言もなかったですよ」

「うん、そいつらを纏めて『パブリックハウス』、略して『パブ』っていうんだ」

「えー! なんだか良くわからないなぁ」

「つまり、『パブ』って大きな括りがあるんだよ。その中には歴史的に『イン』や『エールハウス』、そして『タヴァン』というものがあった。で、現代では、その3つが融合したり変化したりして、所謂洋風居酒屋みたいのになって、それを『パブ』って呼んでいるんだ」


ここが、パブのややこしい所だね。
つまり、現在俺たちが利用出来るパブが出来るまでに、実はそれなりの紆余曲折があって、段々と現在のスタイルに固定されてきた、ってことなんだ。
ただ、その機能っていうのかな、そういうものは、昔も今もそう変わらないんだよ。


「ふむふむ。じゃあ、『イン』や『エールハウス』、『タヴァン』っていうのは、全部同じって考えてもいいんですか?」

「そう解説してある本なんかも多いよね。『基本的に大差はない』みたいなね。けど、実は微妙に違うんだよ」

「と、いいますと?」

「そのお店の業務形態が、どこに軸足を置いているか、で一応分けられるんだ。『イン』っていうのは、今でも『東急イン』なんてホテルがあるから分かるだろうけど、あれは『宿泊を提供すること』に業務の主軸があるんだ。勿論素泊まりだけじゃ味気ないから、食事だって提供するし、お酒だって出てくるんだよ」

「じゃあ、『エールハウス』と『タヴァン』は?」

「『エールハウス』の方は、これは『お酒を提供すること』に軸足があるから、現代風に云うと居酒屋だね。『タヴァン』は、『美味しい料理を提供すること』が目的だから、実はレストランに近いんだ」

「ははぁ……実は違いがあるんですね」

「まぁ、一応はね。けど、『イン』でも飲食は出来るし、客を泊める部屋を備えた『エールハウス』だってある。現代だと四谷にある『オテル・ドゥ・ミクニ』って有名なフランス料理のお店があるだろ? 実際そこは宿泊出来るのか分からないんだけど、嘘でも『Hotel』って文字が入ってるんだ。こういうのが『タヴァン』のイメージに割と近いんじゃないかな? 勿論、もっと『タヴァン』は大衆的なお店なんだろうけどもね」

「だから、それぞれの境界が曖昧なんですね」

「そういうこと」


「イン」と「エールハウス」、そして「タヴァン」には、一応こんな区分けがあるんだ。
けど、「大差はない」で片付けてしまってもいいと思うな。大事なことは、冒険者と云われる輩は、「宿泊・飲食が出来る場所にいる」ってところなんだよ。
イメージとしては、やっぱり「タヴァン」寄りではなく、「イン」や「エールハウス」のように、誰でも気軽にフラッと入ってくれるような、そういう感じはするんだけどもね。



■パブの様々な役割

「まさに冒険者の宿ですねぇ。二階が部屋になってて、一階が酒場になってるってのが一般的な冒険者の宿ですからね」

「そうそう。それで普段はお酒を呑んでくだを巻いてるんだけど、依頼がくれば冒険に行き、そしてまたそこに戻ってくるのさ」

「あっ、そうだ! 思い出した。その依頼ですよ、聞きたかったのは!」

「依頼?」

「その依頼って、ファンタジー系の小説だと、冒険者の宿の壁とかに張り出されるんですよね」

「うん、そういうのが多いよね。あるいはお店の人が、依頼内容を見て、店にいる冒険者のパーティに声を掛けるとかね」

「ああ、そのパターンも定番ですよね。でも、ファンタジー世界が現実の世界じゃないから、そういう依頼のシステムも、フィクションなんですよね? 実は、依頼人からどういうルートで、主人公達に依頼が来るのか、ちょっと悩んでるんですよ」


ああ、そうだった。
元々は、自作ファンタジーノベルゲーム制作の為の集まりだったんだ、これは。
ついつい、脱線してパブそのものについて話し込んじゃったよ……。けど、こういう、時に脱線しながら、色んな話を楽しむ、っていうのが、パブの醍醐味だよね。


「うーん、この依頼システムも完全にフィクションってわけじゃないと俺は思ってるんだ」

「やっぱり何かモデルがあるんですか?」

「どうもね、パブっていうのは、時代が経つにつれ、社会的な機能を持つようになってくるんだよね。娯楽遊興の場であるのは勿論、給料を渡す場所になったり、商談をする場所になったり、とかね。裁判の場所にもなったらしんだよ。で、パブはその内『職業斡旋所』の役割も果たすようになってくるんだ」

「へぇ~けど、それはそれ専門の業者とかがいそうですけどもね」

「勿論、都会に行けば口入れ屋の一つや二つあったと思うよ。けど、パブなら、もっとその地域に密着した仕事の斡旋をしたりってことも出来ただろうし、急に人を集める臨時の募集みたいのもスムーズにいけそうじゃない?」

「基本、人がいつも集まってくる場所ですもんね」

「でさ、そういう、地域に密着した仕事、臨時の仕事っていうと……まさに、冒険者の仕事そのものじゃないか! 『最近、北の山に悪い魔法使いが住み着いて……』とか、『坑道が落盤で崩れてしまって、急遽埋まった人を掘り出す人手が欲しい』とかさ」

「ああ、確かに! 冒険の第一話は、近所に住み着いたゴブリンを急な依頼で退治するもんですしね!」

「だから、パブには職業斡旋としての役割が史実としてあった。そこに冒険者斡旋という要素を足したのが、ファンタジーの冒険者の宿、って気が俺はしてるんだ。冒険者だって職業には変わりないもの」


勿論、『冒険者の宿 ~その歴史的背景と役割~』なんて本や論文があるわけじゃないから、俺の推測なんだけどもね。けど、案外いい線いってるんじゃないかな?


「ということは、従来型の依頼でも全然おかしくはないんですね」

「勿論。逆に何で悩んでいたのか聞きたいくらいだよ」

「いや、実は最近プレイしたゲームなんですけど……あっ、RPGなんですけどもね。そこの宿というか酒場は、オヤジが硬派でして、酒は出すけど、食事は出さない、騒ぐことも許さない、冒険の依頼なんてもってのほかってヤツだったんですよ」

「なんか、頑固オヤジのラーメン屋みたいだなぁ!」

「でも、その店の雰囲気も中々良かったんですよ。確かに頑固オヤジなんですけど、そういう空間があってもいいな、って思っちゃったんですよねぇ。そしたら、一般的なファンタジーの依頼も、一工夫した方がいいのかな? とか考えちゃって」


うん、これは難しい問題かもしれないね。
つまり、ファンタジーにせよ冒険者の宿にせよ、見てきた通り、大体、物事には原型、つまりモデルがあるんだ。そうしたモデルから逸脱したお店の存在をどうするのか? ということなんだよね。

結論から云ってしまえば、魅力的で、その作品の中で違和感がなければ、自由にしたらいいんじゃないかな?
そもそもファンタジーだって、中世「風」のごった煮的な世界なんだしね。ただ、お店の名前に、『華屋与平衛』とか付けるのは勘弁してね。最低限の雰囲気ってのは、やっぱり保持しておかないとね。


「あたりまえですよ! 流石にそんな名前にはしませんって!」

「まぁまぁ……。で、どうするの? 従来型の冒険者の宿から依頼を受けるパターンにするの? それともなんか別の魅力的なお店を考えてみる?」

「……道玄斎さんはどっちがいいと思います?」



■お店の名前

うーん、こういう大事なジャッジメントを人に投げないで欲しいなぁ。
大事な部分を人に投げると、結局どう転ぼうとも、なんか不満が残ったりするもんだよ。


「けど、そうは云っても悩んでるんですよ~」

「俺だったら……一から雰囲気のある酒場を生み出すのは難しそうだから、従来型、かな」

「もちろん、それだけが理由じゃないんでしょ?」

「うん。あくまでそいつらの拠点は、従来型の冒険者の宿でもいいと思うんだよ。けどさ、シナリオを少しひねれば、依頼を受ける場は広がるよな」

「というと?」

「だからさ、毎度律儀に、冒険者の宿が斡旋してくれる仕事だけをうける、っていうのもなんかおかしいだろ? むしろ、街に出て買い物か何かしてたら、トラブルに巻き込まれて、そこから済し崩し的に依頼が発生して……みたいなパターンがあってもいいってことだよ」

「ああ、なるほど。確かにそうですね」

「で、その依頼人から詳しい事情を聞くために、馴染みの宿に連れて行く、とかね。そういう利用法だって全然アリだろ? だから、ハコとしての従来型の冒険者の宿を使いながら、依頼にはバリエーションを持たせていくんだよ」

「逆にそうでないと、単調になっちゃうなぁ」

「そうだよ。しかし君も大分酔ってるなぁ。それ何杯目だ?」

「この黒ビールおいしいんですよ! んー、4杯……5杯目だったかな……」

「よくそんなに呑めるなぁ! まぁ、吐いたり寝たりしなきゃいいよ。で、その冒険者の宿だけどさ、ちょっと名前くらい凝ってみたら?」

「それもよくありますよね。『踊る●●亭』とか」

「そうそう。実際、ロンドンのパブにもかなり変わった名前のパブがあるんだよ」

「動物をかけあわせた名前だったり、それこそモンスターの名前がついてる呑み屋があるって聞いたことありますよ」

「俺が大好きなSF小説の『白鹿亭奇譚』っていうのがあるんだけど、これもロンドンの架空のパブの名前だよ。あまり奇抜な名前にせず、『白鹿亭』くらいのネーミングを狙ってみるのがいいんじゃないかな?」

「了解です~」


こいつ、もう大分酔ってるよ……。
多分、酔いが覚めたら、今日の話なんて全部吹っ飛んでるパターンだと思うぜ……。


■宴の終わり

「話は戻るんだけどさ、君の呑んでる黒ビール、一杯1000円超えるだろ」

「けど、一杯入ってきますよ~」

「1パイントだから、500mlの缶よりちょい多いくらいか……って、それを5杯も6杯も呑んでるのかよ……」

「そういう道玄斎さんは、さっきから全然お酒呑んでないじゃないですか」

「俺は酒弱いの! あと、あまり云いたくなかったが、懐が痛むから、ほどほどにしてるんだよ!」

「ここは、その都度お勘定ですから、割り勘にならないんですよね」

「そこがパブのいいところだよ。自分が自分の責任において、呑みたいだけ呑む。実にいいじゃないか」

「道玄斎さんはケチくさいなぁ! あっ、お勘定がその都度で別々だからこのお店選んだんでしょ!?」


もー、冒険者の宿の話をするっていうから、パブにしたんじゃないか。
けど、もう酔って気持ちよくなっている人の前では、何を云っても無駄なんだ。まぁ、勘定が都度で、別々だからっていうのも決め手の一つだったんだけどもね……。


「そうだよ、俺はケチなんだよ。けど、無い袖は振れないからな、借金してまで呑むよりマシだい!」

「あー、もー、すぐに開き直るんだから」

「けどさ、一応この店もさ、3/4パイントか、1パイントかで量を選べるんだけど、ロンドンのパブのようにハーフパイントは選べないんだよなぁ……」

「あっ、ハーフの方が料金が安いから、そういう事いうんでしょ? ほんとしみったれてるなぁ!」

「何とでも云ってくれ……。けど、俺が呑むんだったら、正直、ハーフパイントくらいが丁度いいんだよ。それ以上呑むと、俺は寝ちゃうし、下手をすると吐いちゃうんだ」

「うげっ、それは勘弁してくださいよ……」

「今日は、ほら、3/4パイント注文して、その半分くらいしか呑んでないだろ? このくらいならまだ大丈夫だよ」

「にしても、道玄斎さん、意外とパブに詳しかったですねぇ。パイントなんて、馴染みのない単位なのに、知ってる風だし」

「まぁね。俺は結構イギリス好きだし、イギリスの文化にも興味があるんだよ。特にパブなんて、いわば人生の交差点みたいな場所だろ? そういうの俺は大好きなんだよ。ここはハーフパイントが頼めないのが欠点だけどもな……」

「じゃあ、実際ロンドンに行かれたら、いきつけのパブではいつもハーフパイントなんですか?」

「あぁ……それね……」

「ん? なんか急に歯切れが悪いですね……」

「いや……実は、俺……イギリス行ったこと、ないんだ……」

「…………!」



というわけで、今日のお話はここでおしまい。
そんなに直接的にノベルゲームに関わるって話じゃないけど、たまには、お酒の話もいいもんでしょ。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-11-06 20:19 | サウンドノベル