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2015年 06月 07日

フリーサウンドノベルレビュー 『真帆とはじめてのTRPG』

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今日の副題 「ノベルゲームはリプレイ向きかも!」

ジャンル:クトゥルフTRPGリプレイノベル
プレイ時間:一時間半程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2015/5/20
容量(圧縮時)89.5MB



道玄斎です、こんばんは。
ちょいと、また間が空いてしまいましたが、意欲的な作品を見つけたのでレビューを更新致します。
いやぁ、本当にありそうでなかったタイプの作品ですよ。
というわけで、今回は「NoFace管理事務所」さんの『真帆とはじめてのTRPG』です。猶、本作は同サークルさんの『Mたちの調律』の番外編的な位置づけですが、単独で遊べる作品になっています。
良かった点

・ありそうで無かったTRPGとノベルゲームの融合。

・リプレイとして気軽に読め、クトゥルフ神話のちょっとした入門にもなっている。


気になった点

・単発のシナリオなので「ゲーム感」があっても良かったかも。

ストーリーは、サイトのほうから引用しておきましょう。
「透也くん、TRPGしようよ」
いつもの放課後、いつものように、真帆の突拍子がない提案が教室内に響き渡った。
TRPGってなんだよ? それって、どういう風に遊ぶんだよ?
初心者でも大丈夫か? ルールとかわからないし、なんだか難しそうだぞ?

そんな心配に対して、真帆はいつもの台詞を笑顔で言った。

「大丈夫だよ。透也くん」

本作を端的に述べるならば、「TRPGのリプレイノベル」ということになりましょう。
この説明で分かる方なら、きっとTRPGの歴戦のゲーマーのはずですから、本作を楽しめること請け合いです。

一方、この説明でピンと来ない方の為に、若干、TRPGについて説明しておきましょう。
私達は、「RPG」と聞くと、何の疑いもなしに、「Final Fantasy」とか「ドラゴンクエスト」なんかを思い浮かべたりするのですが、元々、RPGとはサイコロ片手に遊ぶ、アナログゲームだったのです。

TRPGの「T」とは、「table talk」の略でして、まぁ、「テーブルを囲んでわいわいやりながら遊ぶ」くらいの意味ですね。

FFやドラクエなどのコンピュータRPGとの違いは、ズバリそこにあります。
つまり、プログラムで制御されたシナリオ、ではなく、TRPGは、「テーブルを囲んだ仲間達の行動によって、いくらでもシナリオが変化していく」のです。

コンピュータRPGの場合、何かイベントやフラグの設定がプログラムに組み込まれていない場合、そこを調べても何も出てきません。無味乾燥な「なにもなかった」というようなメッセージが出ておしまいです。

TRPGの場合ですと、ゲームの進行役(GM=ゲームマスター)、そしてプレイしているメンバーの裁量やアドリブで、いくらでも内容が変化していくのです。
元々、シナリオ上では何も設定していない場所があったとしても、「そこを調べたい」と言えば、勿論プレイヤーはそこを調べることが出来ますし、「ここで事件を起こしたほうが面白いな」とゲームマスターが思えば、急遽アドリブで、そこからアイテムを入手させたり、イベントを起こしたり、ということが可能になるのです。

TRPGを巡る言説で良く言われるのが、「TRPGの魅力は、その自由度の高さにある」というものです。
「ゲーム」ということをあまり意識せず、会話の雰囲気を楽しんだり、逆にガチガチでシステマティックなゲームにして遊ぶことも自由なのです。

けど、「何でも出来る、超自由なRPGなんだよ!」っていうと、やっぱり語弊はあるんです。
結局のところ、TRPGはゲームマスターの用意したお話に乗っかっていかないと、先に進めません。
また、プレイヤーがそれぞれ、ゲーム内のキャラクターを演じるという関係上、「キャラクターとして相応しい行動」を求められる部分もあります。

まぁ、言ってしまえば、かなり「ツウ好み」の遊びです。
日本では、80年代中頃から90年代中頃にかけて、このTRPGの一大ブームがあったのですが、そこまで一般に浸透しませんでした。

一つ、当時は「オタク」に対する世間の目があまりにも厳しく、TRPGのようなディープな遊びは、オタクの気持ち悪さを表すものとして、揶揄される風潮がありました。

一つ、また、女性受けが大層悪く、TRPGなんてやっていようものなら、蛇蝎の如く嫌われたものです。アニメファンも同様でした。そして、世間はやはり「女性」を少しは取り込まないと、「まともな趣味」として見てくれないのです。


このような状況があり、専門誌こそ存在していたものの、TRPGの世界はかなりディープな方ディープな方に潜伏していったのですが、近年、また大きな盛り上がりを見せています。

アニメを始めとする「オタクのもの」として嫌われていた趣味が、急に「クールジャパン」などと名付けられ、日の目を見るようになってきました。
女性のアニメファン、ゲームファンも増え、ここにきてようやく、オタク趣味が「揶揄の対象」ではなく、一つの文化として認められるに至ったのです。


……と、ここまででかなり書いてしまったので、もうそろそろTRPGの概略はやめにしましょう。
ともあれ、近年、またTRPGのブームが起こっており、その中でも、昔は「上級者向け」のディープなTRPGであった『クトゥルフ神話TRPG』に人気が集まっています。

さて、「クトゥルフ神話」ですが、これは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
アメリカのラヴクラフトさんが生み出した、宇宙的恐怖(コズミックホラー)が大きな特徴の恐怖小説です。
実は、最近、私は「無料ゲーム.com」さんにて、ゲームのコラムを書かせて頂いているのですが、その第十一回目に、クトゥルフ神話については書いているので、もしよろしければ、そちらの方をご覧下さい。


前置きがやたらと長くなってしまいましたが、本作は「ノベルゲームの中で、キャラクター達がクトゥルフ神話TRPGで遊ぶ様子」を描いた作品となっています。

TRPGを遊んだ様子をまとめたものを「リプレイ」と呼ぶのですが、本作はまさにそのリプレイと言っても差し支えないでしょう。
リプレイは基本「本」という媒体で出版されるものです。それを読むと、ゲームのルールや雰囲気、そして物語そのものが楽しめる、というとても優れたフォーマットなのですが、よくよく考えてみれば、ノベルゲームという媒体との相性は、物凄くいいんですよね。

リプレイは当然「サウンド」は付いてきません(ですので、擬音で表現したりするわけです)。
さらに、ビジュアル面も、表紙や挿絵くらいなものですから、十分とは言えません。

対して、ノベルゲームは、サウンドノベルとも呼ばれることがあるくらいですから、「サウンド」を付けることが出来る。また、立ち絵、一枚絵という形でビジュアル面を補うことが出来るのです。
そして、勿論、文章を読ませるという基本がありますから、リプレイの「内容」を記述することはお手の物なのです。

どうです?
これは相性が抜群ですよ。ですので、本作もクトゥルフ神話TRPGのルールを知らなくても、「読み物」として全然楽しめてしまいます。途中で「ダイスを振り判定をする」演出などもありますが、ルールに興味がなければ、「成功したか/失敗したか」だけ把握しておけばよく、それでも十分楽しめます。


本作の持つ、TRPGに由来する面白さはこんなところでしょうか。
一方で、中身(つまり、ここではTRPGのプレイ内容)も、シンプルな設定ながら、クトゥルフ感が出てて面白かったです。「あの」教団の名前が出てきた時には、思わず吹いてしましましたw

舞台こそ日本ですが、クトゥルフ初心者に、「クトゥルフの怖さってこういう感じなんだよ」と伝えることに成功していると言えるでしょう。プレイの雰囲気なんかも、かなりリアルですし、「わいわいやっている感じ」が良く出ていましたね。


さて、気になった点なのですが、これは難しい問題です。
本作のように「単発」の冒険の場合、「ゲームっぽさ」というのがあっても良かったのではないか、という点です。

つまり、ゲームの要所で、「選択肢」を出して、バッドエンドとグッドエンドに分岐するくらいはあっても良かったかもな、ということです。
TRPGは、プレイヤーの思わぬ不注意でキャラクターが死亡したり、ミッションが未達成になってしまうことがあります(特にクトゥルフの場合には!)。

そこも紛れもなくTRPGの要素なので、今度は「ノベルゲームの側の特徴」、つまり選択肢によるルート分岐で、そういうプレイの可能性を見せるって方法もゲームっぽくてアリなんじゃないかな、ということですね。

例えば、同一のキャラクターを使い、何度も冒険や物語を重ねていくパターンを「キャンペーン」とか「キャンペーンシナリオ」なんて呼びますが、この形式ですと選択肢分岐は制作側に大きな負担となります。
しかし、「単発」シナリオの場合ですと、比較的それがやりやすいのです。そして、そこでミッション未達成だと、どういうエンドになるか、逆に成功だと、それがどのように変わるのか、が見えると、既存のリプレイの枠を越えた表現が出来るかな、と愚案する次第です。


とはいえ、TRPGのリプレイとノベルゲームが、ここまで相性がいいとは思いませんでした。
これは、もしかしたら、新しいノベルゲームの一つの潮流になる可能性がありますねぇ。

TRPGファンは勿論、ノベルゲームファンも、ちょっと本作に注目してみて下さい。
ノベルゲームの新しい可能性が、本作に秘められていると思いますよ。



作品の本筋とはあまり関係がないTRPGについて大分書いてしまいましたが、今回はこの辺で。
それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-06-07 18:59 | サウンドノベル | Comments(0)