<   2015年 12月 ( 3 )   > この月の画像一覧


2015年 12月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『サクとマツリの赤道儀』

b0110969_18153977.jpg

今日の副題 「ちょっぴりモヤモヤ強烈な読後感」

※吟醸
ジャンル:星を撮りに行くフルボイスノベルゲーム
プレイ時間:1時間ほど
その他:選択肢なし一本道。フルボイス。
システム:Yu-ris

制作年:2014/1/?
容量(圧縮時):233MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、短めではあるのですが、プレイ後にうまく言葉に出来ないけれども、強烈な印象を残す作品をプレイしたのでご紹介。ここまで読了後に色んな感情が残る作品って、珍しいのではないでしょうか?

というわけで、今回は「Custom Games」さんの『サクとマツリの赤道儀』です。
ダウンロードは上記サイトからどうぞ……と言いたいのですが、現在ダウンロードが出来なくなっています。また、同時に公開されている「設定資料集」も同様です。

恐らく、また何かのタイミングでダウンロード可能になると思いますので、その時は是非ぜひ。
また、android端末をお持ちのかたは、ストアから「スマホ版」をダウンロードできるはずです。
良かった点

・読了後に、何ともいい難い感情が押し寄せてくる。

・非常に丁寧に作られており、音声にも大きなこだわりが。


気になった点

・同時配布されていた「設定資料」を読まないと、理解できない箇所がある?)。

ストーリーは、私が簡単にまとめておきましょう。
サクは写真が好きな小学五年生。
彼のクラスには「魔女」と呼ばれている女子マツリがおり、クラスメイト達から陰湿な嫌がらせを受けている。
しかしマツリはそうした嫌がらせに対し、何も反応を見せようともしない。

サクはマツリと一緒に、学校の課題である「写真撮影」を行うことになっているのだが……。

だいたい、こんな感じ。


いやぁ、凄くいい作品でした。

タイトルが気になっていて、あらかじめダウンロードしておいたのですが正解でしたね。

尺としては1時間程度の、比較的小粒なサイズではあるのですが、非常に密度の高い作品になっていました。

タイトルやストーリーの概略から、「ちょっと変わった女の子と星を撮影しにいく感動ノベル」みたいな雰囲気を感じ取る人もいると思いますが、「それ以上」のものを感じさせてくれる、と断言できます。

実は、単純に星を撮影しにいく、というわけではなく、そこに至るまでに色々なエピソード(父親がカメラをやめてしまった理由や、学校のハムスターの話)があるんですよね。
それを丁寧に追っていきながら、本作の山場「星の撮影」に移っていく作りは、非常に丁寧なものを感じさせます。

どのエピソードも単発でどこか「浮いている」というわけではなく、読了した時に、「作品のテーマにしっかりとつながっているんだな」と感じさせてくれる、そういうものなのです。

ただ、それは「これが○○だから、あの△△と□□の意味でつながっている」と理解していく、というよりは直感的に感じさせるものであった、というのも確かでしょう。
それが故に、本作を貫く少しヒリヒリとした雰囲気や、読了後のなんともいえない不思議な感触が味わえるんじゃないかと思います。


ちなみに、本作品はフルボイスです。
ものすごい名演だったと思います。本当に「小学生」っぽい雰囲気が出ていて、「リアルさを感じさせる」ボイスアクトでした。

また、その編集も非常に巧みで、声の音量やリバーブ感で「人物間の距離」を演出したり、パンを振り、右から左へボイスが流れていくことで「移動」を表現したりと、他のノベルゲーム作品ではあまり見られない、音声に対するこだわりをひしひしと感じることが出来ました。

こういう音声演出って、もしかしたら他の作品にもあるのかもしれませんが、本作のそれは「サラッとしている」感じがあるんですよ。「わざとらしさ」や「いやみ」がない、というか。
だからこそ、「リアルさ」を感じさせてくれるものになっているんじゃないかな、と感じましたね。


一方で、読了後に感じる「不思議な気持ち」はそれはそれとして、ややスッキリしない部分が残っています。スッキリしないからこそ、不思議な感情が湧いてくるってことなんですけど、ここについては、ちょっと考え込んでしまいます。

どうやら、「設定資料集」を読むことで、そのモヤモヤは解消されるらしいのですが、「設定資料集まで読んだ上でないと作品の真価が分からない」というものについて、ちょっとだけ考えないこともないのです。
しかも、その「設定資料集」は単なる「データ集」ではなく、「物語の理解」へ直結してるからなんですよね。

つまり、ここに於いて、この作品の「読了」には2種類あるということになります。

  ・普通に「ノベルゲーム」を読了した状態

  ・「ノベルゲーム」読了後、設定資料まで読んだ状態

です。
そして、今……必然的に前者を選択せざるを得ない状況にあるわけで、ちょっとだけフラストレーションはたまりますね……。


そうはいっても、この作品はなんだか心に染み込んできますし、冒頭でもお話ししました通り、強烈な印象を残します。

ただ、「設定資料集」が残っているということは、その作品を100%理解していないわけで、その辺りで微妙に考えたり、葛藤があったりするのですw

ゲームそれ自体でしか判断出来ない、というのも1つの真実だと思うけれども、「これも読んでね!」とか「これを読んで100%」ってものがあった場合、その作品の理解をどこに依拠したらいいんだ? って感じです。

ま、これはつまらない蛇足ですね。


単純な感動モノ、とは絶対に言えない、ヒリヒリとした感触、ほろ苦い部分、痛い部分。
色んなものを感じさせてくれる作品です。

是非ぜひ、お読みくださいませ(今だったらandroid版がおすすめ)。



それでは、また。
[PR]

by s-kuzumi | 2015-12-26 18:17 | サウンドノベル | Comments(4)
2015年 12月 25日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『夜の路地裏案内』

b0110969_1861573.jpg

道玄斎ですこんばんは。

今日はクリスマス。
誰かと一緒に過ごしたり、あるいは家族と過ごしたり、お一人で過ごされる方もいらっしゃいましょう。
悲しい哉、私は一人で過ごしているのですが、タイトルが気になってゲームをプレイしてみたら、「今日プレイするのにピッタリだな」と思う作品に出会えましたのでご紹介。

というわけで、今回は「晴好雨奇一丁目」さんの『夜の路地裏案内』です。
ダウンロードはこちらからどうぞ。


「夜の路地裏」って、なんだかワクワクしませんか?
表通りにはないミステリアスな雰囲気はありますし、もちろん犯罪などのダーティなイメージもそこにはあります。

本作は、そんな「夜の路地裏」に迷い込んでしまった女の子「ロスチル」(迷子の子供、ロストチルドレンからの命名かな?)を主人公が案内していく、というもの。
路地裏とはいえ、若干の灯りがあり、どこか「優しい」雰囲気になっているのも一つの特徴でしょうか。

最初の一周に関しては固定のエンドで、二週目以降、選択肢が表示され、エンドが広がっていく、という作りです。

エンド数も多くないので(全部で4つ)、コンプリートは楽々です。
だいたい20分くらいで読了可能です。


多分……「このエンドを見ないとあのエンドは開放されない」タイプの作品だと思うのですが、そこが上手く機能していたと思います。

最初のほうは「ロスチルってどんな子なのかな? なんで夜に出歩いているのかな?」という部分に関心が向くようになっており、それが徐々に別の疑問にシフトしていく作りは巧みでした。
キャラクターも主人公、ロスチル、騎士、魔女のおばあさんと、短編ではありながらも、ちょっとにぎやかな感じ。

また、1つのエンドを見るごとに、タイトル画面が変わっていくのも、ちょっと凝っていて面白いですよね。

いわゆるトゥルーエンドに関しては、あえて言及しません。
けれども、ちょっと暖かい気持ちになれること請け合いです。

あえて、気になった点を挙げるなら「お醤油」でしょうかw
一応、洋風ファンタジーな趣がある作品ですから、「お醤油」はちと世界観から外れてしまうのではないかと……w


実力のある作者さんだと思うので、次回作が楽しみですね。
短編だけでなく、少しボリュームのある作品なんかも読んでみたいかな、と。


というわけで、今日は短いですが、この辺で。



それでは、また。
[PR]

by s-kuzumi | 2015-12-25 18:10 | サウンドノベル | Comments(2)
2015年 12月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『学校七不思議5』

b0110969_1735945.jpg

今日の副題 「深みのある学校ホラー作品」

ジャンル:ホラータッチマルチADV
プレイ時間:コンプリートまでおよそ2時間半ほど
その他:分岐多数。マルチエンド。『学校七不思議』『学校七不思議2』をプレイしておくとより楽しめる。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2015/12/15(公開)
容量(圧縮時):255MB



道玄斎です、こんばんは。
今日も久々のノベルゲームレビュー。
ここ、一年間くらい、なんだか妙に忙しくって、腰をおちつけてゲームをプレイするってことがなかなか出来なかったのです。その代わりに、無料ゲーム.comさんのほうで、ノベルゲームにまつわるお話を「コラム」という形で書かせて頂いております。

さてさて、今回のタイトルを見て「お!」と思った方もいるのではないでしょうか?
そうです、2000年からリリースされ続けている『学校七不思議』の最新タイトルがついに登場。
何度も書いていますように、私はこのシリーズが好きなので、さっそくプレイして取り上げてみました。

というわけで、今回は「銀の盾」さんの『学校七不思議5』です。
ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・単なるホラーや、ドッキリ型ホラーとは一線を画す深みがある

・2015年に至っても新作が出るという、素晴らしさ


気になった点

・やはり今作でも「七番目の怪談」の謎は明らかにならず……

ストーリーは、ふりーむ! のほうから引用しておきましょう。
どこの学校にも必ずあるという、怪談「七不思議」にまつわるADV。
今回は過去作との繋がりが深いため、「学校七不思議」「学校七不思議2」を
クリアした後でのプレイをお勧めします。


某テレビ局へ視聴者から送られてきた、一枚の投稿写真。
そこは、学校の怪談を追って失踪した二人の女生徒の実話や、夜の学校で肝試しを行った生徒が不可解な死を遂げたなど、曰くのある県立高校。

卒業生であるアシスタントディレクターとカメラマンの主導で、夏の怪奇特集としてその高校でロケを行う。
マスメディアによく取り上げられる有名な霊能力者がその学校にまつわる『学校七不思議』を祓ってみせるという企画だ。

デジタル時代の影響で、心霊写真も恐れられなくなった現代。
この高校に伝わる七つの怪談『学校七不思議』さえも、今夜テレビカメラの前でその正体が暴かれるのか。
本当に悪霊の仕業ならば、霊能力者の力によって穢れは全て祓われ、哀れな女生徒の霊達も成仏させてやれるのか。
それとも……


複数のエンディングを全てクリアするとおまけがありますので、是非コンプリートしてみて下さい。

こんな感じです。


数年くらい前から、いわゆる「実況動画」が流行るにいたって、ノベルゲームに限らず、フリーゲームの世界に多少の変化があったようです。

1つは「ホラー作品の見直し」。
もう1つは「ドッキリ系の多用」という感じでしょうか。

実況には、実況主が録画したものを流す、というものだけでなく、「それを視聴した人がコメントでその動画に参加できる」という部分があるわけです。

すると、「淡々とストーリーが流れていくもの」より、「ドッキリ」などの要素があって、動画に起伏を付けやすいもの(実況主がリアクションしやすもの)、そして、コメントが増えやすいものが好まれるようになってきました。

そうした「ドッキリ」要素があるもの、として「ホラー」作品が見直されてきた、ということなんですが、端的に云って、「実況ウケ」しやすい作品ということでの盛り上がりなんですよね。


一方で、本作はなんと2000年から、同シリーズがリリースされ続けているという、「ホラーノベルゲーム」の老舗。その世界を長年、支え続けている作品といってもいいでしょう。

そして、ドッキリ系で耳目を集めていく、というよりは、ストーリーの良さ、その奥深さでしっかりと「読ませる」タイプの作品、だと云えるのではないでしょうか?


そもそも「学校の七不思議」というのは、みなさんもご存じの通り、とても有名な怪談(群)です。
そして、実は「あまり怖くない」んです。

本作にも出てくるように、「骸骨の標本が動く」とか、そんなに怖いとは思えませんよね?
また、本シリーズを通して、かなりおいしい役どころの「トイレの花子さん」であっても、怖さとかわいらしさ、みたいなものが相半ばしている印象すらあります。

じゃあ、どうするか?
といったときに、本作シリーズが採用しているのは「学校七不思議」の背後の設定、つまりバックグランドをしっかりと成立させる、というもの。

「学校七不思議」という怪談(群)が存在しており、それを調査した二人の女生徒(美加と絵梨。今日のスクリーンショットは美加)が行方不明となる。そして、今も夜の学校に、その二人は囚われ続けている……。

こういう状況が、作品の背後にあるんです。
「学校七不思議」だけではなく、それに関わった(より正確に云うならば、知ってはいけない第7の不思議を知ってしまった)二人がいて、「夜の学校の世界」に七不思議と共に存在している。

そして、その二人は、「怖さ」を感じさせる存在ではなく、むしろそこに「切なさ」や「優しさ」を感じさせる存在でる、というのも特筆すべき点でしょう。


ですので、物語は、視点人物の「物語」であるのと同時に、美加と絵梨の「物語」と重なってくる、という重層的な構造をとります。さらに本作の場合、『学校七不思議2』の「物語」もそこに重なってきますから、相当に厚みのある物語構造をしている、と云ってもいいでしょう。

怖さを追求していく、というよりは、明らかに「物語的な深み」を感じさせる作りなのです。なにしろ「ホラータッチ」なわけで、ホラーとは作者さんも云っていないわけですからね。
今だからこそ、こうした作品はものすごく価値のあるもの、だと思います。


さて、一方で気になった点は、「やはり今回も七不思議の『七つ目』の謎は明らかにならなかった」という部分です。

きっと、それが明らかになるのは、本シリーズの「ラスト」なのでしょうね。
とはいえ、少し本作、つまり『学校七不思議5』でそれが見えてくるかな? という淡い期待があったのも事実でした。

ま、それはともかく、ちゃんと「次回予告」までついていましたから、まだまだ『学校七不思議』は終わりません! 次は『学校七不思議6』がちゃんと待っています。

リリースまで何年かかるかわかりませんが、ファンとしてその日をまた待ち続けたいと思います。
[PR]

by s-kuzumi | 2015-12-16 22:05 | サウンドノベル | Comments(0)