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2016年 12月 27日

フリーサウンドノベルレビュー 『眠れない夜に』

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今日の副題 「ノベルゲームの原点回帰」

※吟醸
ジャンル:
プレイ時間:1時間~1時間半程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:Nscripter

制作年:2016/12/24
容量(圧縮時):71.7MB




道玄斎です、こんばんは。
ずぅーっと更新していませんでしたが、今日は久々にノベルゲームのレビューの更新です。
なかなか今年は忙しかったりして、全然ゲームをプレイしていなかったのですが(特に「読む」ことにウェイトがあるノベルゲームってプレイに時間的・精神的な余裕が必要でしょう?)、今年も終わりになって、とても良い作品と出会えました。



というわけで、今回は九州壇氏さんの『眠れない夜に』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・クラシカルなノベルゲームの面白さ、良さが詰まってる

・しかも、そのクラシックなパターンでニヤリと出来る

・「選択肢」を残したラストの雰囲気がたまらない


気になった点

・Nscripterデフォルト(?)のインターフェイスやシステム回りに多少の古さが(私がしばらくノベルゲームから離れていたからかも?)

・個人的に、ビジュアルノベルスタイルや、「発話者を明示しないタイプ」のほうが合っていたような

ストーリーはふりーむの方から引用しておきましょう。
舞台は、秋の福岡。
なんとなく眠れない夜を過ごしていた俺は、彼女をドライブに誘う。
彼女は苦笑しながらも了承してくれた。

こうして、僕と彼女の一夜の物語が始まった。
願わくばこの先に、彼女の笑顔がありますように。

さて、九州壇氏さんの7作目の作品です。
早いもので、前作からもう5年経っているわけで、私もびっくりです。
私がこのブログを始めたのが2007年だった気がしますから、もうノベルゲームの世界に耽溺すること10年になるわけで、いやはや、月日が経つのは本当に早いなぁ、と。


本作はタイトルが『眠れない夜に』ということですが、タイトル、あるいは先ほど引用した紹介文を読んで、皆さまはどんなイメージを作品に持たれますでしょうか?


私は……「ストーリー的にあまり起伏はなく、まったりとした温かみのあるちょっと大人な物語」だとずっと思っていました。
結果、予想は見事に裏切られることになるわけですw


先程、私がこのブログを始めて10年近くになる、という話を書きましたが、まさに10年くらい前によく見られたような、そういうクラシカルな手触りを持った作品で、とても嬉しくなりました。


何がクラシカルなのか? というと、「あっ、このパターンはもしや……?」と、一世を風靡した作品とつながる物語の展開が「読めて」しまうんです。
これだけ聞くと、「よくあるパターンなのか」と短所に思えてしまうのですが、さにあらず。


「あー……これか……」と思って読み進めていくと、実はそのパターンは最初に頭に描いたパターンではなく、別の一世を風靡した作品のパターンだと分かっていったりするんです。


分かりやすくいえば、クラシカルな物語の仕掛けをつかったミスリードの方法が優れているのです。
「こっちじゃなくて、あっちのパターンだったか!」とニヤリと出来ますし、どちらのパターンも、(特にフリーの)ノベルゲームではクラシックともいえるパターンですから、私のようなオールドファンはなんだかんだで楽しめちゃいますし、そこでもニヤリと出来る。


まさか、2016年も終わりになって「あのパターン」にお目にかかるとは思いませんでした。
2004~2007年くらいの時期にちょくちょく目にしたパターンで、私も勝手に名前を付けて呼んでいた、「あのパターン」です。



今日は少しネタバレを押さえて書きますが、ラストもとっても良かったんですよねぇ。
作品そのものに「選択肢」はないんですが、物語内で「最終的にどうなるか?」という選択肢ともいうべき未来が提示されている気がします。


そこには、クラシカルな作品に屡々見られたようなハッピーエンドでなく、寧ろ、どちらの未来への可能性も残しつつ終わるという、人間や人生の複雑さ、あるいはほろ苦さのような味わいがあります。
しかも、それを柔らかく、暖かく見守るような文章となっていて、そこは作者の九州壇氏さんの作品の大きな魅力でもあります。



一方気になった点ですが、一個目はちょっと言いがかりに近いものです。
本当に久しぶりにノベルゲームをプレイしてみて(しかもマシンも変わってる)、Nscripterデフォルト感溢れるインターフェイスに、「え? こんなだっけ?」と思ってしまったのですw


ただ、一点言わせていただくとすれば、こういうしっとりとした物語ですから、フォントなどの「物語の埒外にあるもの」に少しこだわってみて、雰囲気を後押ししてもよかったのかな? という気はします。
二点目の気になった点とも、これは関わってくる問題かもしれません。


本作は、立ち絵も表示されますし、画面の上側に背景・立ち絵が表示され、メッセージウインドウに「文章」が表示される形式を採っています。
一方で、物語そのものは、テンポのよい軽快なやり取りを読ませていくというよりは、小説に近い「味わって読んでいく」タイプ。


すると、たとえば、


  私
  「……それは何?」


みたいな、「発話者」が明示されちゃうと、ちょっと雰囲気を損ねるような気もするんですよね。
もちろん、あった方が分かりやすい。けれども、ビジュアルノベルのような全画面方式や、あるいは発話者を明示しない形での会話文のほうが合っていたように思えるのです。


この辺りも好みの問題かもしれませんが、一応ということで。



決して派手さや人目を惹く演出などはありませんが、じんわりとしみ込んでくるような物語は、むしろ今だからこそ、とても価値のあるものに思えます。
物語や、その内容、雰囲気で勝負する、という本来的なノベルゲームの良さがギュッと詰まった作品です。ぜひ、プレイしてみてくださいね。
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by s-kuzumi | 2016-12-27 19:08 | サウンドノベル | Comments(4)