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2014年 05月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『メモリア-day of memory-』

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今日の副題 「超王道に癒されろ!」

ジャンル:学園恋愛ノベル
プレイ時間:5時間程度。
その他:選択肢アリ。されど、メインのストーリーには変化無し。15禁。
システム:NScripter

制作年:2014/3/3(ふりーむ公開時)
容量(圧縮時):250MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、連休中にちまちまプレイしていた作品のご紹介。非常に王道的な作品ではあるものの、しっかりと作られた作品でしたよ。
というわけで、今回は「エロゲ道は一日にして成らず」さんの『メモリア-day of memory-』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・こっちが恥ずかしくなってしまうような甘酸っぱいシーンが大目。

・テンポの良さはかなりのもの。五時間のプレイが比較的楽。

・愛らしいヒロインに癒される。


気になった点

・ヒロインである所の愛が、喋られない、という設定に、もう一工夫欲しかった。

・悪友竜司の扱いがひどいw

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
―日常系恋愛アドベンチャーゲーム―
桜が咲き乱れる四月。亀岡高校二年生になった赤坂天馬はバカな悪友、戸塚竜司。天敵の華山明日香。そしてしゃべれない友人、神山愛と同じクラスになる。
そんなある日、天馬はひょんなことから愛と一緒に学級代表をやることになる。 スケッチブックでしか会話できない愛と悪戦苦闘しながらなんとかクラスをまとめる毎日。 そんな矢先、学級代表としての一番初めの大きな仕事、春の文化祭が迫って来ていた。
問題ばかりの日常。動き出す青春。はたして天馬たちは文化祭を成功させることが出来るのか。
――思い出に残る日常が今、始まる。

こんな感じです。


いきなり脱線しますけど、一昔前は、ノベルゲームのコンテストっていうと、ふりーむのゲームコンテストか、或いはVectorのレビュー(厳密にはコンテストではないけど)で取り上げられる、くらいしかありませんでした。
中には、主催者がいて、レギュレーション有りの小規模なコンテストが行われる、なんて事もありましたけどもね。

でも、私もちょこちょこ言及していますけど、最近、「ゲームの実況」というあり方が一般的になってきてまして、そうした状況もあって、ニコニコ動画の方でゲームのコンテストが行われているようです。「ニコニコ自作ゲームフェス」ってヤツですけども、ご存じの方も多いのでは?
私も、今、ちょっとその規約なんかを見てみたんですが、かなりユルいです。紹介動画を作るスキルさえあれば(まぁ、他の人に頼んでもいいわけですが)、結構気軽に応募出来るみたいです。

一方、昔からある、ふりーむのゲームコンテストは、「ふりーむ以外の場所にゲームを置く事」が禁じられてしまいました。自分のサイトであってもダメ、という結構厳しい条件です。。
しかし……「ニコニコ自作ゲームフェス」の協力企業に、ふりーむが入っているという謎……w

と、のっけから大幅脱線しましたが、本作『メモリア-day of memory-』もニコニコ自作ゲームフェスに登録されている作品です。

ストーリーは、先ほど引用した通り。
更に「学園恋愛モノ」「文化祭を一つのテーマとする」「悪友がいる」「暴力癖がある女の子アリ」なんて、特徴を挙げていけば、自ずと「ああ、このタイプね」と分かってしまうような、超王道作品だとひとまず云えましょう。

一応、選択肢があり、選択肢直後の文章は多少変化するのですが、実はヒロイン固定の一本道です。
ヒロインは、喋る事が出来ない大人しめの少女、愛です。スケッチブックに素早く文字を書き込む事で、他の人との会話を成り立たせているという設定ですw

本作の魅力を支えているのは、この愛のキャラクターなのかもしれません。
大人しめだけれども、実は芯にシッカリしたものを持っている。何と云っても可愛い。そして主人公に無限の愛情を注いでくれます。大人しめ、或いは無口系ヒロインの系譜を引いているわけですが、非常に魅力的で、安心感を持ってプレイ出来ます。やっぱり、ゲームの中でくらい、思いっきり愛されたいもんね……。

で、お馴染みの悪友ポジションの竜司、そして愛の親友で暴力癖のある女の子明日香が、主人公天馬、そして愛を取り巻く主要人物です。

ちょっとこの悪友については、考えたい事もあるので、また日を改めて何か書きましょう。。
本作と関係のある所で、少しだけ言及するとすれば、「ちょっと、この手のキャラは不遇すぎるんじゃないかなぁ?」という、素朴な疑問があったりするのですw

主人公と一緒になってバカをやる。これも悪友の典型的なパターンですけど、もう一つの軸があって、それは「とにかく、主人公(やヒロイン達)からイジられる」という、そういう役目です。
イジりと、イジメの境界線って凄い難しいと思うのですけど、「これは、もうイジメの域に入ってるよなぁ」なんて感じる事も屡々です。本作をプレイしていても、ちょっと思いましたw
脇役が単なるバカキャラ、そしてイジられキャラを越えた存在感を発揮する時……その作品は、一味違うものになるのではないか、と思うのです。


ま、それはさておき、ストーリーは非常にスムーズに進んでいきます。
冒頭部で示される、愛と天馬が、学級代表になって、クラスをまとめていく、みたいな下りは、物語の始発部としていい感じです。
天馬は、所謂「女心に鈍感」なタイプなのですが、主人公らしい熱さを持ったヤツで、グイグイと愛、そして物語を引っ張っていきます。

愛と天馬は、学級代表になり、文化祭を成功させるべく動く中で、例によって例の如く、恋仲になっていくわけですが、その、意識し合う二人のやり取りが、きゅんきゅんしちゃうんですよねw 甘酸っぱさ全開で、読んでいるこっちが恥ずかしいというw 何て言うか、少女漫画を読んでいて、一人で「うわー!」とか叫んじゃう感覚に似ていますw

オーソドックスだけれども、こういう時代が変わっても楽しめるポイント、っていうのは多分存在していて、そういうのが、王道の持つ力の一端なのかもしれませんね。

ちなみに、このきゅんきゅん具合は、天馬と愛のやり取りだけではありません。
本作に於ける名脇役、明日香の立ち位置や言動が、またきゅんきゅんしちゃうんですよ。私は、どっちかっていうと、愛よりも、明日香の方が好きだったなぁ……。詳しくは是非、プレイして確かめてみて下さい。


さて、気になった点の最大のものは、愛の「喋る事が出来ない」という設定です。
その設定が、実はキャラの味付け以上の意味があまり無い、という所なのです。別に愛を、「非常に無口な女の子」にしても、実はストーリー的な破綻は起きないんですよね。
確かに、スケッチブックを介してのやり取り、みたいなものが、後半の見せ場になっている部分はあります。が、これもちょっと他の小道具を使うなり、工夫してやれば破綻は起こらない。

愛が喋られない、という一つの大きな特徴が、グッと活きてきて、この物語独自の良さや面白さをもっと見せてくれたら、と思うわけです。


そういえば、本作は15禁でした。
イラスト的なアレでしたら、せいぜい下着姿くらい。描写的なアレでしたら、せいぜいディープキスくらいなので、実はそこまでエロくありません。ちょっと際どい単語が出てきたりはしますけどもねw


非常に良く目にするタイプの、王道学園恋愛ノベルです。
15禁になっていたり、ヒロインが喋られない、なんて特徴はありますが、奇を衒ったものではなく、王道を昇華させていったような、そういう作風だったと思います。
凝った物語が作れる、というのが同人ゲームの一つの面白さではあると思うのですが、一方で、安心感のある作品もやっぱり、みんなが好むものの一つの方向性なのでした。

ちょっぴり尺は長目ですが、テンポは良いので、意外とサクサク読めると思います。
ストレートできゅんきゅんしちゃう恋愛物語に是非、癒されて下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-05-08 20:31 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 05月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『明日へ踏み出す、僕の物語』

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道玄斎です、こんにちは。
今日は、ちょっと気になっていた短編作品をプレイしました。プレイ時間が凡そ20分程度でしたので、いつものように番外編で。
というわけで、今回は「Project TKM」さんの『明日へ踏み出す、僕の物語』です。ダウンロードはこちらのページから指示に従って下さい。

過去に、このサークルさんの『forever more ~俺と彼女の、奇跡の5日間~』を取り上げた事もありました。また、レビューこそしていないものの、『夏色流星群』という作品もプレイしています。
このサークルさんの特徴は、「新王道宣言」なるものがなされている事からも分かる通り、王道の良さや面白さを追求していく、そういう作風のようです。

が、本作『明日へ踏み出す、僕の物語』は、実験的な要素もあるようで、王道とは違う、暗めのストーリーとなっています。いや、もっと云ってしまえば、「ストーリー」というよりは、その一部のような手触りです。

主人公は所謂引き籠もり。
大学三年時に、或る事件があって以来、人間不信に陥り、部屋から出る事が出来なくなってしまいます。そんな彼が、何とか引き籠もりからの脱出するきっかけを見つけた……という所で、物語は終了です。
もう少し長い物語でしたら、本作の内容は「序章」や「第一章」に相当するような、そういう感じでしょうね。

何とか引き籠もり脱出のきっかけを見つけた主人公が、これから奮闘して、少しづつ大袈裟な云い方で云えば、社会復帰を目指していく。ただ、その道は順風満帆ではなく、色々な困難を伴ったものである……。
みたいな、全体のストーリーがひとまず想定されるのですが、本作はそうした大きな物語の一部、という印象があります。

故に、この作品が、何か未完成のダメな作品か、って云ったら、それも違うなぁ、と思うのです。
確かに実験的だと思いますし、起承転結(や、序破急)みたいなストーリーの流れも薄め。
けど、主人公が悩む事となる、過去の出来事に関する描写が限りなくリアル。「こ、これはもしや実体験なのでは……」と思わず考え込んでしまうような説得力が存在しています。

主人公の身に降りかかった出来事とは、ご多分に漏れず「女性絡み」の問題です。
この主人公の過去の回想が兎に角リアルで、「いや、こういう事ってマジで良くあるよな……」とw
そして、男の方は、女性から手ひどく袖にされると、結構傷つくものなんです。半年とか一年くらい、それを引きずるなんて当たり前。数年引きずってしまう、なんて事だって良くあるんです。

大体……女性の方から別れを切り出される時って、女性の方には次の相手が既にしているんですよねw だから安心感を持って、今付き合っている相手を捨てる事が出来る。一方、男の方は、別れ話が青天の霹靂なわけで、取り乱して、醜態をさらす事に。男ってバカな生き物です……。

でも……。そんなに何年も引きずってしまうくらい相手の事が好きだった。その気持ちくらいは自分で褒めてやってもいいんじゃないでしょうか? 世の中には女と男がいるわけで、そういう手ひどい振られ方、なんてのも実は割とありふれたものです。

女性みたいに直ぐに気持ちが切り替えられる、っていうのは、ちょっと羨ましい気はしますけれども、そう出来ない以上は、何とかそれでやっていくしかないわけで。
そこまで相手の事を好きでいられた自分、を肯定してやる、っていうのは意外と大事なのかもしれませんよ。勿論、ストーカーとかになっちゃダメですけどw

こういう問題って、女性の側にも当然問題があって、既に新しい相手がいて、早く目の前にいる男と縁を切りたいのは分かるんだけど、なんつーのかな、とりつく島がなさ過ぎるというか。
新しい相手を作る前に、ちゃんと別れるというプロセスを経て、それから次に別のヤツと付き合えばいいじゃないか、と。そして、或る程度納得感というか、「別れる」という合意を形成して欲しいですねぇ。

本作のように、別れ際になって、今までの不満をぶちまけられたり、こちらの話を100%聞いて貰えない、なんて状況になったら、本当に男は多大なダメージを負ってしまうのです!
そういう時に、方便というか、「優しい嘘」というのも大事なんだと思いますよ。何も今までの恨み辛みを云わなくたって、円満に別れる方向っていうのも残ってると思うのです。優しい嘘が、男女を救うのではないかと、私は思ってますw


と、まぁ、ど派手に脱線しましたけれども、主人公の過去の重さ、そしてそのリアリティが、プレイヤーに何かを突きつけてくるような、そういう激しい何かを感じさせてくれる、という点で本作を取り上げる事にしました。
「こんな酷い体験した事ねーよ!」って人もいるでしょうし、「俺は別に女に袖にされたからって引きずらん!」って人もいるでしょう。

けど、ある種の人には、物凄く響く作品だったのも、亦確かな事だと思うのです。たまには、一般的な意味での「面白い作品」ではなく、こういう、人を選ぶかもしれない作品も紹介したいですよね(ちょくちょくやってるつもりなんですけどもね)。

こうした実験的な作品を経て、次にリリースされる作品がどんな「王道」になっているか、今から楽しみにしています。女性……にはあまり響かないと思うのですが、恋愛で苦い経験のある男性は、ちょっと痛いかもしれませんが、プレイしてみると面白いと思いますよ。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-05-03 17:49 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 04月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『未来都市2』

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今日の副題 「今度は王道、宇宙のSF」

※吟醸
ジャンル:SFアドベンチャー
プレイ時間:~3時間程度
その他:選択肢が一箇所アリ。内容自体はそこまで変わらない。
システム:NScripter

制作年:2012/10/24(Ver.1.00)
容量(圧縮時):119MB




道玄斎です、こんばんは。
大分、体調も良くなりまして、今日からまたボチボチ、積んでいたゲームを消化していこう、と思ってます。
取り敢えず、手始めに、私の好きなSFモノから行こうかな、という事で本作をチョイス。
というわけで、今回は「WORLD COMICS」(Twi☆Light)さんの『未来都市2』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・一章が程よい長さで区切られている為、サクサクとテンポ良く読んでいく事が出来る。

・90年代のアニメの様なイラスト。私は凄い好みです。

・或る意味で直球のSF作品、宇宙モノが好きなら是非どうぞ。


気になった点

・ラストが妙にあっさり。選択肢に拠る分岐と併せて、もうちょい余韻を残してくれたら良かった。

・もう少し掘り下げて欲しいキャラも居たり……。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
未来世界を描いたSFノベル第2弾。
今作では舞台を宇宙へ移し、最後に残された
人類の選択が描かれる。

時は宇宙開拓時代―。
新たに開拓された惑星で安住していた人類だが
ある日、惑星崩壊という不吉な噂が流れる。
そんなフロンティアへ現れた青年イツキは
とある少女を助けた事で壮大な運命へと
巻き込まれてゆく…。

前作とは世界観のつながりはあるものの、
独立したストーリーなので初めて読まれる
方も問題ありません。

という事で、以前、私も取り上げた事のある『未来都市』の第二弾です。
ストーリー説明に書いてある通り、本作『未来都市2』は、「2」という表記ではあるのですが、実質的に続編という形ではなく、独立したストーリーになっています。なので、本作から読み始めても、全く問題ありません。

さて、『未来都市』が、海底のSFという、比較的地味な(けど、物凄くSFらしい)舞台だったのに対して、本作では、舞台が宇宙に移ります。
舞台背景としては、今から数千年先の未来。人類は地球を捨て宇宙に飛び出してきました。そして、ある星に定住する事になるのですが、その星も崩壊の危機が迫っており……。

と、これまた物凄くSFらしい設定で、特に宇宙モノが好きな人にとってはたまらないんじゃないでしょうか?
何度も書いてますが、私もSFって凄く好きなんですよ。かなり懐の広いジャンルでしょう? 本作のような宇宙を舞台とするようなSFがあるかと思えば(ハードなものも、『スターウォーズ』のようなスペースオペラもある)、ミステリーと意外なほど親和性が高かったり、近年リバイバルしているクトゥルフ神話のような、ホラーとも仲良く出来る。

本作は、かなり「分かりやすいSF」である事は確かです。
その星の人間を全て収容出来るような、巨大な母艦があったり、ちょっと『マクロス』っぽいかもしれませんね。本作にも、世界のアイドル的な女の子いますし、ね。

本作をプレイして、すぐに気付くのは、そのテンポの良さです。
最終話を入れて、全部で9章あるんですけど、8章までは、一つの章の長さが15~20分程度なんです。最終話は流石にちょっと長いんですけど、一つ一つのチャプターが凄い計算されて作られてるな、という感じがしますね。

ストーリーも無駄がなく、引き締まっていたと思います。
主人公イツキのキャラも厭味がなく、云ってしまえばありがちな造型ではあるんですが、好漢。
それなりに登場人物が多いんですが、どのキャラクターも魅力的ですよね。イツキと同居する事になる、ヒロコとマコトを始め、チーフのアキ、超お嬢様兼アイドルのユミもいい味出してます。

スクリーンショットを見て頂ければ分かるように、90年代のアニメのような雰囲気のイラストが、キャラクターの魅力を増してます。
ちなみに……作中で、ブラウン管のテレビだとか、結構レトロなモノも出てきますが、それはヒロコとマコトの趣味という事になってます。宇宙開拓時代のSFには合わないような気もするんですが、そこら辺は恐らく、素材調達の関係でしょうね……。そうした点を以て、「SFらしからぬ!」と云うのは簡単なんですが、そのくらいは目をつぶらないと……とも思います。皆様はどう思います??


イツキが成長していく姿(勿論、ライバルもいる)や、人類存亡の危機など、見所も多くて、普通に面白い作品ですよね。今回は、何の迷いも無く、「吟醸」です。

一方で、ちょいと不満に思う所もありました。
一つは、ラストがかなりあっさり風味だという事。少しづつストーリーが盛り上がって、ちゃんと山場があって、じゃあ、どう纏まるんだ? って時に、割とあっさりと終わってしまった感が。

これは、単にラストの締め方だけの問題ではなく、八章目で出てくる選択肢の問題とも関わりがありそうです。最後の山場を前にして、選択肢が出てきます。つまり、「ヒロイン」の中から一人を選ぶ、という事なのですが、実は、ここで誰を選んでも、その後のストーリーに変化はありません。
勿論、選んだヒロインとの固有の会話がちょっと入る……んですが、変化といえばそのくらい。その選択によってラストが変わるとか、そういうのではないんですよね。

折角、魅力的なヒロインが居て、「ルート分岐」と思しき選択肢が提示されるのに、それがラストに影響を全く持たないわけで、ちょっとそこが残念でしたね。
もう少しでいいので、ヒロイン固有のルート感が出て、そうした形でラストが示されれば、もっと納得感があったんじゃないかな、と思います。

更に、主人公のライバルの黒田カズキも、初登場時は、単なる厭なキャラ、という感じだったのですが、ストーリーが進むにつれ、その魅力が明らかになってきます。
で、彼とヒロコの間にある問題は、その全貌が分からないまま、何となく流れてしまいました。後半でカズキは物凄く魅力を増すいいキャラなわけですが、もうちょい掘り下げてあげると良かったかな、という気が。


大体、こんな所なんですが、実は、本作で描かれている人類の生き残りは、「日本人」という事になっています。どうも、我々が住む現代から見て、未来に(作中では遙か昔に)、例によって世界大戦のようなものが勃発したらしいんですよね(第三次世界大戦も、SFでは定番のネタですよね)。
で、日本人は「戦わない」という選択を採る事で、生き延び、宇宙に住処を求めていった……という事らしいのですが、この辺り、未来を舞台としていながらも、現代に生きる我々へのメッセージのようなものを感じる所でもあります。

専守防衛というのが、果たしていいのかどうか……。
本作で描かれるように、それが一つの美徳であり、それによって明るい未来が開けるのかどうか……それは正直良く分かりません。専守防衛の立場を取っている国が戦わないといけない時って、既に戦いが本土に及んでるって事ですからねぇ……。侵略させない、という意味で、或る程度の軍事力の強化、充実は必要になるんじゃないかなぁ……なんて思ったりするんですが。

ともかく、架空の未来を描きながらも、実は、現代に生きる我々へのメッセージ性みたいなものを、その裏側に秘めている。こうした作りもSFらしいですよね。
本作の発している、一つのメッセージについての賛否はありましょうが、本作が、凄くテンポ良く楽しめる良質のSF作品だというのも、亦事実です。

三時間程度と、少し長目の尺ですが、SFがお好きなら是非プレイしてみて下さい。
それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-04-26 20:33 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 04月 05日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『ネームテイカー』

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道玄斎です、こんばんは。
今日は、さりげなく積んであった作品をプレイしてみたら、尺が10~15分くらいの短いもので、且つ、ちょっと笑えるものでしたので、番外編にてご紹介。
というわけで、今回は「がっかり亭」さんの『ネームテイカー』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。


「がっかり亭」さんと云うと、例の『無理やり主人公』の作者さんです。
今回も、軽妙で楽しい物語になっていたと思いますよ。

さて、中身の方ですが、舞台はファンタジックな世界。
主人公の女の子の名前は、何と、「ゼムギルガン」。およそ女の子の名前とは程遠いものですw
彼女は、もっと女の子らしい可愛い名前に改名しようと、彼女の住む国の首都までやってきたのだが……。

というが、簡単なストーリーの纏めになりましょうか。
つまり、主人公ゼムギルガンが改名を果たす、というのが、この作品の一つの目的です。
ストーリーのテンポは良すぎるくらい良いですし、本当にサクサクとプレイ出来て、合間合間にちょっと笑えるネタ(勿論、名前絡み)が入ってきます。

私がプレイして気になったのは、ストーリーというよりも、この作品の持つ、一つのテーマというか、そういう部分だったりします。
それは、所謂「キラキラネーム」(別名:DQNネーム)がハバを効かせている昨今の、現代社会を反映させているのかな? という辺りです。

とんでもない当て字系のもの、女の子なのに男の名前が付いている、もはや意味が分からないもの……沢山のキラキラネームがあります。
本作は、ファンタジー世界が舞台ですが、「男の名前が付けられた女の子」が主人公です。彼女の葛藤や苦悩、そしてそれが故に生み出される爆発力(とギャグ)を軽妙に描きながらも、ちょっと、そうした名前を巡る問題に踏み込もうとしているのかな、という印象でした。

今、検索して出てきたんですが、「恋恋愛(れんれこ)」やら、「振門体(ふるもんてぃ)」なんて名前もあるそうです。ホントかなぁ。
ともあれ、私が、キラキラネームに関して、物凄く気になっているのは、「その子が、歳をとった時にどうなるのか?」という事ですw

例えば、今の例ですと、「恋恋愛ばあさん」とか「振門体じいさん」とかに、最終的にはなっちゃうわけですよねw それはちょっと、いくらなんでもおかしいだろう、と思うわけですよw
赤ちゃんだったら、ちょっと変な名前を付けても、何となく馴染んじゃうような部分ってあるのかもしれないですけど、子供も成長して、老いて、やがては死んでいきますからね……。


というわけで、かなり短めのギャグノベル(一箇所選択肢アリ)なのですが、内側には、ちょっと、キラキラネームに対しての主張というか、問題提起というか、そういうものも持った作品だったのではないかと思います(そこが選択肢になっているのが、またいい感じ)。

ちょっと笑える部分もあり、名前について考えさせられる部分もあります。
短い作品ですから、サクッとプレイしてみて下さい。



それでは、また。



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只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。

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by s-kuzumi | 2014-04-05 17:57 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 04月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 『喉の渇くその前に』

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今日の副題 「主軸に寄り添う、もう一本」

ジャンル:死後の世界での問答ノベル(?)
プレイ時間:1時間程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2013/10/12
容量(圧縮時):59.5MB




道玄斎です、こんばんは。
ついに新年度、突入ですね。進学や就職、色々あるかと思いますが、ゲームを楽しむくらいの余裕は欲しいものです。今日は、前回レビューした作品『よんひくいちは』の作者さんの処女作です。あれをプレイしちゃったら、前作がどんなのだったのか、気になりますからね。
というわけで、今回は「現屋」さんの『喉の渇くその前に」です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・「思い込み」という、ちょっと変わったテーマの作品。

・予想以上に、密度が濃いストーリーと、何とも云えない不思議な読後感。


気になった点

・もうちょっと易しく表現出来る部分は、易しくした方が、全体が理解しやすいかも。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
――ここは死後の世界へ誘う空間。
真っ白な世界には、イスとティーカップと、番人。
どこまでも孤独な、一縷の幸福を祈る番人。

こんな感じ。

って、これだけじゃ、ちょっと物足りないので、私が補足しておきましょう。
主人公は、日々の生活に疲れ、自殺を決行……したものの、気がつけば、真っ白な世界で倒れていた。その世界には、扉のようなものがあり、倒れている主人公に声を掛ける人物もいる。
声を掛けてきたのは、イノという名前の性別不明の子供。イノは、どうやらこの空間の番人で、イノとの問答によって、「天国」か「地獄」に行くかが決まるらしいのだが……。


という所でしょうか?
「死んだらどうなるのか?」というのは、宗教の根本的なテーマです。
兎にも角にも、人間は「死」に対する興味関心が強いようで、ノベルゲームの場合なんかだと、本作でも描かれる「自殺」に焦点を当てたものも、結構良く目にします。

これは、やっぱり、『ナルキッソス』という作品が与えたインパクトが大きかったのかな、と思いますね。
『ナルキッソス』以降、似たような手触りを持つ作品が多数出てきたように思います。
単なる『ナルキッソス』の亜流、みたいな作品もあれば、そこから一歩進んでオリジナリティを出している作品もあって、ノベルゲームに於ける「死」、特に「自死」は、今なお、メジャーなテーマであり得ています。

本作も亦、「自殺」が描写されますが、所謂「死後の世界」と現世の中間地点みたいな所が舞台となっており、『ナルキッソス』の流れを汲むもの、とは一線を画しています。
何にせよ、『よんひくいちは』の作者さんの作品ですから、一ひねりあるんだろうなぁ、と思いながらプレイしていったら、案の定、「生死」、或いは「自殺」の問題ではなく、「思い込み」という、非常に変わったテーマを主軸にしていた、というわけです。

イノの力によって、主人公は、自らの過去と向き合う事になるわけですが、どうも彼は生前、思い込みによって、随分と損をしてしまったようです。
この主人公というのは、もしかすると「この物語の主人公」なのではなく、プレイする私達自身なのかもしれませんよ。

私達も、絶えず、思い込みをしながら生活をしています。
「思い込みなんてしないよ」と云う人ほど、「思い込みをしないという思い込み」があったりするわけです。
思い込みとは、一面的なモノの見方、と言い換える事も出来ます。例えば、ネット上ではHNだけで、性別が分からない、なんてケースがありますよね? その人の文体とか内容とか、或いは顔文字の頻度なんかを見て、勝手に「あいつは女」とか、逆に「あいつは男」なんて思ったり。

或いは、一旦嫌いになっちゃうと、その人がその後、どんなに良い事を云ったり、善行を積んでいても、その人の厭な部分、つまり「嫌い」の面しか見えなくなっちゃうとか。


作中でも描かれますが、自分の中で完結しているような、思い込みなら、まだいいんです。
問題は、対人関係に於ける思い込み、だったりします。
誰かの行動、言動に対して、自分の中で、最初っから枠組みを作ってしまって、その裏側にある真意や、事象に気付かず、後々悔いるような事をしてしまう。身に覚え、ありませんか? 私はいっぱいありますw

ともあれ、こうした「思い込み」に関するテーマを掘り下げていったのが、本作『喉の渇くその前に』という事になりましょうか。
自殺をして、一度死んでから、自分のそれまでの人生を振り返ってみると、何と、不必要な思い込みが強かった事か。主人公を通じて、私達は、それに気付く事になるわけです。


かくして、「一面的なモノの見方は良くないよな」と改めて気付かせられるんですが、この作品の魅力は、その「思い込み」を推進力とするストーリーで50%です。
もう半分は、白い空間の番人ことイノと、主人公の不思議なやり取り、そして彼らの間に芽生える、友情……というのはちょっと違うのですが、不思議な関係です。

友情でも愛情でもピンと来ない、何とも云えない不思議な、魅力ある関係が、ストーリーの進捗と共に描かれていきます。そして、ちょっとフワフワっとした、捉え所が難しいけれども、優しい手触りのエンディングへと繋がっていきます。


この作者さんは、ちょっと、プレイヤーに考えさせるような、そういう懐の深いテーマの作品を作っていますよね。
この作者さんが作った二作品に共通しているのは、表面上の事象というか、テーマみたいなものは、比較的くみ取りやすい。けれども、もう一本、フワフワっとしたもう一つのテーマが寄り添うような形で、一つの作品として纏まっている。そんな印象があります。

前回取り上げた、『よんひくいちは』でも書きましたが、ちょっと文章表現が難しくて、その「もう一本の軸」が見えにくい部分はあるのかな、という気はします。
例えば「穎悟」なんて言葉、私は生まれてこの方、使った事がありませんw 主人公の心中と同化した地の文でも、かなり凝った文章ですので、サラッと読めるわけではないんですよね。

勿論、凝った文章が悪いとか、そういう事が云いたいんじゃありません。
こうした、「小説寄り」の文章のノベルゲームがある事、それ自体は、寧ろいい事だと思います。サウンドノベルにせよノベルゲームにせよ、「ノベル」という文字が入るわけで、文章に凝る、というのは非常に大事な事だと思うのです。
その方向が、「より読みやすい」方に向くのか、「じっくり読む」方に向くか、とザックリ二つに分けられそうですけれども、後者の「読ませるタイプ」の文章を持った作品があってもいいんじゃないか、と思いますよ。ライトなものもいいけれど、それだけだと物足りなくなっちゃいますからね。

ただ、それでも、「易しく表現/表記出来る所は易しくする」というのも、亦大事な事だと思うのです(「亦」なんて漢字を使ってる私が云うなって話ですけどw)。
作品の雰囲気や、世界を壊さない範囲で、もう少しだけ平易な言葉に置き換えてみる。それだけで、グッと読みやすくなりますし、この作者さんの場合で云うと、「もう一本の軸」がより明瞭になるような気がします。


最後に、一個、脱線を。
作品中に「信号の『進め』を、青という人もいるし緑だという人もいる」みたいな文章が出てくるんですけれども、これ、実は日本語の問題なんです。日本は古来から、「緑のものを青と呼ぶ」ケースが結構あって、野菜を「青物」とか云ったりしますよね? あれなんかは、その典型的です。色と言語って結構密接に繋がってるんですよ。良く聞くのが「虹の色」。私達は疑いなく、虹を七色って云いますけれど、世界には、三色だとか二色だとか、云う所もありますよね。あれも、或る色に相当する言葉が存在するか否か、って問題と繋がってきます。


というわけで、いつものクセで長々と書いてしまいましたが、この作者さんの独特な作品の雰囲気は、やっぱりプレイしてみないと分かりづらいと思います。
少し、読みにくい所はありますけれども、フリーのノベルゲームを探してて良かった、と思えるような、そんな作品である事、間違いないと思いますよ。一時間くらいのものですから、気になったら是非、気軽にプレイしてみて下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-04-03 17:34 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 03月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『よんひくいちは』

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今日の副題 「期待の地平を裏切る名作」

ジャンル:未来予知が可能な少年が主人公のノベル(?)
プレイ時間:1時間半ほど。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2014/3/2
容量(圧縮時):121MB




道玄斎です、こんばんは。
日々、「あの時、ああすればよかった」と悩んでいる私ですが、もし、私に未来予知があれば、そうした後悔はしないで済んだのか? 或いは別の悩みが生じてしまっていたのか、とにかく、そんな事を考えさせられる作品のご紹介。
というわけで、今回は「現屋」さんの『よんひくいちは』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・1時間半の中に密度の濃い物語が詰め込まれている。

・場面場面で、プレイヤーに考えを促すような、不思議な作品内容。


気になった点

・割と難しい表現を使う為、分かりにくい部分がある。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
ある日不思議な力を手に入れた男子高校生。
「自分は、未来予知ができる。」
その力で彼は、何を掴むのか。
その力で彼は、何を失うのか。

雨の日を境に何かを失った彼が、
いつもの非日常のなか、生き抜くお話。

大雑把ですけど、面白いノベルゲームって二種類に分けられると思うのです。
それは、プレイを開始して、少しづつストーリーが盛り上がっていって、最後に「ああ、面白かった」と終わるタイプ。今一つは、プレイを開始して幾ばくも経たぬ内に「お! これは面白いぞ……」と気付くタイプ。

あんまりにも、単純で一面的な切り分け方ですけれども、経験ありませんか?
本作、『よんひくいちは』は、まさにこの後者のタイプでした。プレイして、10分くらいで「あ、凄い面白いじゃん!」と感じたのです。
でも、一方で、ラストまで読んでみると、最初に感じた面白さとは別の種類の面白さがある事にも気付く。そういう作品でした。

主人公、宥大(ゆうた)には、所謂予知能力が備わっています。
その予知とは、予知の対象となる、人物・内容・場所・期間が分かるというもの。但し、人物・内容は必ず分かるものの、残りの二つは振れ幅があり、分かる時と分からない時、或る程度の制限が付くもの(期間なら、一週間以内、など)がある。

そんな宥大が、ある日、クラスメイトの男子が「主人公になる」という予知を得てしまうのです。
そこが、この物語のスタート地点と云っても差し支えないでしょう。面白そうでしょ? 「主人公」という、小説とか、ゲームの中にしか存在しないであろう漠然とした存在に、クラスメイトがなってしまう。そんな予知を得て、この物語が動き出します。

そして、その予知をきっかけとして、宥大は、凌太(これが主人公になる、と予知されたクラスメイト)、寛、そしてどこか不思議な黒助という友人に恵まれて生活をしていくのだが……という感じ。

宥大の予知能力者故の苦悩、みたいなものを孕みながらも物語は進んでいくわけですが、本作の凄い所は、そうした予知能力だけを推進力にしているわけではない、という点です。
詳述は避けますが、ホラーの雰囲気を持つパートがあったり(今日のスクリーンショットはそこからです)、超自然的な要素(まぁ、予知もそうなんですが……)が、物語に大きく関わっていたり、見所がたっぷりで、密度を感じるのです。

故に、最初の10分かそこらで予想する、ゲームの雰囲気というか、色がコロコロ変わっていく。そんな印象もありました。だからこそ、今日は「ジャンル」がかなり苦しい書き方になってしまったのですw
ともあれ、そこを、この作品の欠点と見るか、或いは面白い所と見るか、意見は分かれそうですが、私は後者の立場です。予知能力だけじゃない、と、書きましたが、そこがやはり、一つの芯になっている部分はありますしね。


全部プレイすると、ちょっと不思議なタイトル『よんひくいちは』の意味も分かるのですが、そうした、物語の謂わば焦点、と共に私が気になったのは、宥大の母親の存在でした。
何も、この作品に限りませんけれども、ゲームに於ける母親の存在、ってのも、ちょっと考えていくと面白いテーマなのかもしれません。商業作品なんかだと『Kanon』の秋子さんとか、凄い人気ですし、魅力がありますよね。

宥大の母親に、話を戻して。
母親らしい、慈愛に満ちあふれた存在なのは間違いないのですが、その母親の持つ優しさや、「信じる」という事が、やっぱり、物語の焦点や核心に届いている気がするのです。そんなに作品中で沢山描写されるキャラクターではないのですが、だからこそ、凄く印象深く、いいキャラクターだったなぁ、と思います。


ちなみに、文章そのものは比較的読みやすい、と云ってもいいのですが、使っている漢字や言い回しに難しいものがあったりして、実は「すんなり読めない」という印象です。例えば、「落暉」なんて言葉を私は、生まれてこの方使った事がありませんw
一つは、宥大の心中思惟を、結構緻密に描いているから、という事はひとまず云えそうなのですが、高校生の男の子がこんな言葉を使って思考するかなぁ? とか、いや、けど、「小説」だったら、そういうのも全然アリなんだよな……とか、色んな事を考えてしまいます。

作品や、その内容を、じっくりと反芻して、ノベルゲームから「考える事」を引き出したいプレイヤーっていますよね。私の知り合いにもいますw 「多分、作者はそんな事考えてないよ」ってな事でも、真剣に考えちゃう。
下手な考え休むに似たり、ってことわざもありますけれども、そういう人は、頭がいい人が多いんですよねぇ。
そういう人にとって、この作品の持つ、「読みにくさ」っていうのは、寧ろ逆にプラスに働くのかもしれません。

まぁ、私は馬鹿で、考えるのがニガテなので、難解な漢字や表現によって、ストーリーをストレートに読み解きにくいという所で、「気になった点」として挙げましたが、こういう作品が出てくるから、ノベルゲーム漁りが止められないんですよw



大体、こんなところでしょうか?
最初の10分で感じる「面白い!」という感触と、プレイしていく内にその「面白さ」の内実が変化していく、密度の濃いストーリーが光る作品でした。一応、無印にしてはいるのですが、ちょっとまだ、吟醸にしようかどうか、迷っていますw もう一度くらいプレイしてみて、最終判断をしますw
短すぎず、長すぎない尺で、良い作品を探している人には、断然お勧め致しますよ!



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-03-20 20:02 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 03月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『femme fatale』

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今日の副題 「運命の女は悪女でもある」

ジャンル:浪漫ミステリー(?)
プレイ時間:4時間半程度。
その他:選択肢アリ、間違った選択肢はバッドエンド直行。18禁。
システム:?(独自システムと思しい)

制作年:元々2001年にリリースされたものを、2006年にリニューアル。
容量(圧縮時):181 MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、ちょっと朝からのんびりしています。ここ数ヶ月、色々と忙しくてため込んでいた作品を少しづつ消化中。今日は、商業ブランドから期間限定という事でリニューアルし、配布された作品のご紹介。
というわけで、今回は「inspire」さんの、『femme fatale』です。ダウンロードはサイトに入って、一番したのミラーサイト一覧にて、mirror.fuzzy2.comからどうぞ(直リンク出来ませんでした)。
良かった点

・大正時代を舞台としている為、ちょっとレトロな雰囲気が味わえる。

・淡々と進むストーリーが、意外にもプレイヤーを離さない。

・今でも十分通用するイラストと、ちょっと嬉しい女性フルボイス。


気になった点

・ミステリーではあるものの、最後までプレイしてもスッキリ感はあまりない。

・システムにバグがあり、ハマると先に進めない(後述)。

・タイトルと関係のある女性が、もっと表に出てきても良かったのかも。

今回、ストーリーは私が纏めておきましょう。
時は大正時代。東京で探偵業を営む八神は、一時、郷里に戻ってきた。
そこで、父の代から知り合いである警部に、ある事件の調査を秘密裏に依頼される。その事件とは、八神の妹鈴花が通う、ミッション系学校で起きた女生徒の不審な死に関するものであった。
八神は、妹鈴花、そして元許嫁の聖美と生活を共にしながら、事件の真相を探っていくのだが……。

といったところ。

正直な所、私はあまりハードボイルド系のミステリーを読んだりした事がないので、アレなんですが、どうやら本作は、そうした系統の作品のようですね。

舞台は、大正時代。
それぞれのキャラクターの発話、或いは地の文なんかも、「現代モノ」のそれと比べると、なんだか古めかしい言葉遣いで雰囲気が出ていました。ただ、正直、読めない漢字が一箇所、二箇所くらいありましてw ルビを振ってくれてたらなぁ……なんて。

如何せん、古い作品ですから、そこらへんに文句をつけてもしょうがない部分はあるのですが、2006年にリメイクされているのならば、もうちょっと遊びやすいシステムだったらな、という部分は色々ありました。
文字表示も、クリック待ちカーソルが出るとか、表示速度とか、そういうのは一切なくて、クリックすると、一気にずらっと文章が表示される形式。実はそれなりにバッドエンドがあるのに、セーブスロットの数が少なく、またセーブ(及びロード)出来るタイミングが限られている、等々。

そうした面がある事は確かなのですが、一方で、イラストが今でも十分通じる綺麗なものであったり、女性キャラはフルボイスなど、嬉しい部分も。


ところで、本作のタイトル、「ファムファタール」ですけれども、タイトルだけ聞いて、皆さんはどのようなイメージを持たれました?
私は、と云うと「運命の女(ひと)」という、邦訳がありますから「なんだか、ロマンチックな、そういう話なのかな?」と思っていました。ところが、プレイしていくと、探偵業(?)がメインであるわけで、あんまり、そういうロマンチックな方向には話が進んでいかないんですよね。

不審に思って、ちょっと調べてみたら、どうやら「ファムファタール」には、もう一つ意味があって、そちらは「男を破滅に導く魔性の女」という意味だったんです。
で、本作のタイトルの意味する所も、そっちの方だったというわけです。


一応、本作をノベルゲームと位置づけてレビューしているわけですが、ちょっと独特なシステムもあるので、その辺りの解説も入れていきましょう。

本作は、クリッカブルマップによって物語を進行させていく形式、といって差し支えないと思います。
一日の始めに、マップが表示され、行くことの出来る場所が示されます(場合によっては複数の中から選択する事に)。そして、その場所に出向いて、事件を調査するわけです。
そして、一日の終わりには、自宅書斎にて、「思索」というコマンドを選択し、昼間の活動で得た情報を整理していきます。選択肢は、この「思索」の中に出てきます。更に、必要があれば「呼鈴」なるコマンドで、鈴花乃至聖美と会話をして、「就寝」コマンドで次の日に……。

と、まぁ、こういう流れになるわけです。
セーブ/ロードのタイミングも、クリッカブルマップ選択時か、自宅書斎に居るときに限定されています。
ある種の単調さは感じるものの、特に迷う事なくプレイ出来るのは好印象です。「思索」や「呼鈴」で、全ての情報を見ないと「就寝」出来ないので、情報の取りこぼしは起こらないんですよね。

今、ある種の単調さ、と書きましたが、ストーリーの進み方も、少しづつ盛り上がって……というよりは、淡々と描写されていき、事件の真相付近まで近付いても、そんな雰囲気は変わりません。ラストに至っても「淡々」という感じですからw ミステリーに「謎の解明」というスッキリ感を求める人には、ちょっと物足りないかもしれません。
じゃあ、盛り上がりがなくて、更にスッキリしたエンドじゃないなら面白くないのかよ? と云われれば、「いや、それは違う」と云いたいのです。

盛り上がりや、その盛り上がりを際だたせる為の日常パートが、ノベルゲームには大事、と、私は良く書いているのですが、本作の場合、それは当てはまらないのかもしれません。
一つは、あまり「ノベルゲームの文章」というよりは、「小説」の方に近い文章を採っているせいだと思います。今では使わないような、ちょっぴりレトロな言葉遣いが多用される、というのは先にも書きましたよね。逆に云えば、ノベルゲームに小説っぽさを求める人には、結構満足出来る作品ではないかと。

で、淡々としてはいるのですが、ちゃんとストーリーは進んでいきますし、別の人物から別の依頼をされ、それが追っているヤマに繋がっていったり、と、プレイしていて飽きる、という事がありません。すっごい派手な事件とかは起こらないのに、プレイヤーを離さない。見習うべき部分が多い作品だと思いましたよ。

バッドエンドはありますが、基本一本道、と考えてもいいと思います。
何故ならば、誤った選択肢を採ると、即バッドエンドに向かってしまうからです。ちなみにエッチシーンはこのバッドエンドに集中しています。
正規のルートでも、イベントとして、エッチなシーンが入る事は勿論ありますが、総量から見れば、大した事はありません。


気になった点の中で最大のものは、「バグがある」という部分でしょう。
尤も、本作はWindows XP用なので、Windowsのバージョンの違いでバグが起きてる可能性も否定出来ないのですが……。
そのバグというのは、「思索」から人物や場所を選択して情報を整理していると、突然、別のシーン(前日のシーンとか)に切り替わってしまう、というものです。

これも先に書きましたが、全ての「思索」を終えなければ「就寝」出来ず、従って、ゲームを続行する事が出来ません。
対応策としては、「何度も、繰り返し、同じ『思索』をし続けるしかない」という、ちょっと後ろ向きなものしか発見出来ませんでした。

何かのタイミングで、シーンの切り替わりが起こったり起こらなかったりするので、ひたすら、ループして、正しく判定され「就寝」出来るまで、頑張るしかない、という事になります……。これが、本作の最大のマイナスポイントでしょうか……。


話を戻して。
調査を進めていくと、学園の理事長が数年前変わった事や、その理事長がかなり胡散臭い人物である事、更に学園の外国人女教師にもよからぬ噂がある事などが分かってきます。

そうした情報が、調査の中で少しづつ判明していくのは、それが一本道であっても、結構楽しいものです。情報を提供してくれる酒場の主人だったり、古書店店主とのやり取りは、本作に於ける主人公の立場を明らかにしてくれますし(八神の父の代で家が没落、されど地元では顔が利く)、学園に通う女の子達との接触も、スリルを感じるものや、微笑ましいものまで色々あります。

登場する女の子はみんな可愛いですね。
ミッション系の学校での事件だけあって、登場する女の子は、レイチェル、カレンと、外国の子も多いのです。個人的には、一番可愛いのは、やっぱり妹の鈴花って事になっちゃうんですけどもねw 

さて、問題は、タイトルの「ファムファタール」だと推測される、外国人教師フレイアです。
本作に底流しているのは、云ってしまえば、男尊女卑的な思想で、「女性として生きるという事」みたいなものが一つのテーマとなっているようです。
主人公の元許嫁の聖美や妹鈴花、カレン、中国人女性ツェイリン、そしてフレイアを巡る問題には、その「女性として生きる」問題がつきまといます。

そうした、事件の中に潜んでいるテーマ性みたいなものが、作品に深みを与えている事、間違いないのですが、フレイアに関しては、ちょっと不足を感じる部分があります。事件の真相と関わりがあるので、詳述は避けますが、もう少し、フレイアが表に出てきて、作品を貫くものを、より強く意識させてくれたらなぁ、と、思うのでした。


本作は、どうやら、『エーデルヴァイス』という商業ゲームの前史に当たる作品のようです。
フリー化されたのは、その『エーデルヴァイス』のプロモーション用って事になりましょうか。しかし、単独で十分楽しめるものですし、以前からお勧めされていた事もあって、今回取り上げてみました。

システム的に使いにくい部分や、バグがあったりはするのですが、大正時代のレトロな雰囲気を味わったり、どちらかと云えば小説に近い、ハードボイルド路線を楽しんでみたり、と、見所は結構あります。
最新のWindowsでは動かないかもしれませんが、プレイ出来るようなら、是非ご一読あれ。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-03-12 17:45 | サウンドノベル | Comments(2)
2014年 03月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『Summer Girl ―夏の少女とボク―』

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道玄斎です、こんばんは。
やっとこさ、少し色々とゆとりが出来たので、プレイしようとため込んでいた作品を遊んでいます。今日は、その中でも、かなり短めの作品ですね。
というわけで、今回は「mint wings」さんの『Summer Girl ―夏の少女とボク―』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。



今回は、凡そ20分程度で読了してしまったので番外編です。
主人公大輔が、幼い頃に体験した、ちょっと不思議な出会いを描く、ノスタルジック短編作品。ふりーむの一言作品紹介欄に「心ほぐす 一般向けビジュアルノベル」と、書いてあるのも頷けます。

皆さんがフリーのノベルゲームに求めるもの、って何でしょう?
ゲーム性? ストーリーの良さ? イラストの良さ? それとも、どれだけ商業作品に近付いているか?
様々なご意見、あるかと思います。ちょっと、最近、色々な人との関わりの中で、そうした「フリーのノベルゲームに求めるもの」を意識してしまう場面がありました。

まぁ、別に「フリーの」と限定しなくてもいいっちゃいいんですが、兎にも角にも、色んな人が、色んなものをゲームに求めているわけですよね。ストーリーは二の次で、エロ要素が強けりゃいい、なんて人もいるわけですしw

たまに目にしたりするのが、「俺は○○という立場で、ノベルゲームを捉えている。よって、そこからはみ出たものは認めない!」「ノベルゲームは△△じゃなければいけない!」なんてタイプの人。一本、自分の意見を持っていて、そういう所は素晴らしいと思う一方で、私は、どうにも、そうした意見には賛同出来なかったりします。

私は本当にいい加減なので、「その時その時、自分が楽しんでプレイ出来て、何か心に残るものがあれば、それでいい」みたいな考え方です。
同じ作品をプレイするにしても、プレイする時間帯とか、その時の自分の精神状態とか、或いは、自分の身辺の事情とか、そういったファクターで個々の作品は、結構色が変わって見えたりします。

うんと単純な話だと、失恋した直後に、失恋の悲しみを描くような作品をプレイしたとしたら、それが割とありきたりな演出だったり、よく耳にするお馴染みのBGMを使っていた作品だとしても、結構グッとくるんじゃないでしょうか?

そうやって考えていくと、或る意味で、ありきたりな、オーソドックスな作品っていうのも、それが「オーソドックスだから」という理由で排除される謂われはないんじゃないかな、と。
オーソドックスな作品に対して、個人的な楽しさなんかをもっと積極的に見いだしてもいいんじゃないか? なんて思っています。それでも「ちょっとこれはなぁ……」と思う作品があれば、言及しなきゃいいだけですしw


と、いつにも増して前置きが長くなりましたが、本作も亦、割とオーソドックスな手触りを持つ作品です。
祖母の住む田舎にやってきた、主人公大輔が、駄菓子屋さんで働く一人の不思議な少女と出会い、少しづつ惹かれていく……というもので、「(主人公にとって非日常的な)田舎での出会い」「不思議な少女」など、部分部分を切り出してみれば、きっと、目にしたことのある設定だと思います。

又、舞台が夏である為、少女の衣装も白のワンピース。
少女らしさと、夏っぽさ、そして微かなまぶしさを感じさせてくれます。

そういえば、大輔と、不思議な少女のぞみは、年齢差がちょっとあるようです。
大輔の方が幼くて、のぞみは大輔にとってお姉さん、という位置づけです。この年齢差が、実は作品のノスタルジック感を増して、素敵なものにしていたと思いますよ。
これが、同い年の少女で、例によって例の如く、彼女にハッキリと恋心をおぼえてしまう……なんて事になっちゃうと、この尺だと、流石にちょっとね。そういうストーリーがあっても当然いい訳ですけど、そこに説得力を持たせる為には、もう少しエピソードを積み上げた方がいいのは、云うまでもありません。

大輔の、のぞみに対する、恋未満の、ほのかな憧れ、みたいな雰囲気がラストまで効いています。
作品を彩るBGMの選曲も、とても良かったと思います。確かにノスタルジックな雰囲気が出てますし、夏のまぶしさの中にある翳りのようなものも感じさせてくれます。

20分くらいの短めの作品ですし、今は、春なのでちょっと季節はずれているのですが、私は、本作を何だかとっても気に入ってしまいました。作品全体を包み込む、優しい手触りも魅力的です。
最近、忙しさなどで、固くなっていた私の心も、少しほぐれた気がします。

良い作品だと思うので、是非遊んでみて下さい。
ダウンロードだけしておいて、夏にプレイしてみる、なんてのも乙かもしれませんよ。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-03-09 18:03 | サウンドノベル | Comments(6)
2014年 02月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『ゴス道の乙女たち』

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今日の副題 「惚れた女がたまたまゴスロリだっただけ!」

※吟醸
ジャンル:ゴス伝奇アドベンチャー(18禁)
プレイ時間:8時間半~9時間程度。
その他:選択肢アリ。全部で4ルートに分岐。18禁、残酷描写アリ。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2008/8/1(発売)、2011/7/16(フリー配布)
容量(圧縮時):415 MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、前回、かるーく予告しておいた作品のご紹介。元々は所謂同人シェアゲーだったものですね。
時間が経つと、昔発売していた作品をフリー公開する、というのはたまに目にするのですが、これも色々議論があるみたいですね。本作の場合ですと、2011/7/16にフリー公開が始まったのですが、例えば、2011/7/15に本作を購入しちゃった人がいたら、その人は損した気分になる、というヤツです。
そうした議論があるのは承知しているのですが、基本フリー作品を取り上げる、というスタンスの私からしてみれば、何はともあれフリーでプレイ出来る、というのは最高に有り難いのです。
特にシェアのものをフリー化して下さると、普段、あまり馴染みのないシェアゲームの世界にも触れられますしね。
というわけで、今回は「01-Torte」さんの『ゴス道の乙女たち』です。ダウンロードはこちらから
良かった点

・中盤以降、ストーリーのテンポが上がり、ギャグも冴えてくる。

・物語内歴史がバックグラウンドにあり、それが作品に奥行きと重さを与えている。

・3Dアニメーションなど、意外と凝っている部分も。


気になった点

・割と気怠い前半部。

・ちょっと投げやりなエンドを持つヒロインが一人w

・賛否が分かれるトゥルーエンド。

ストーリーは、公式サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。



休日、間違って原宿駅で降りてしまって、街行く人を眺めてみれば、「霞ヶ関で同じ格好してたら、好奇の目に晒される事間違いなし!」ってな感じの服装をした若者達が大勢います。
沢山のレースが付いているスカートは、中に骨が入っている為、ふっくらと形を保ったまま。「歩きにくくないのかよ……」と思わず心配してしまうような、厚底の編み上げブーツ。頭には、やっぱりコサージュとかレースが沢山ついたヘッドドレス。

そう、ゴスロリです。
っと、ここで短絡的にゴスロリというと、私の見識が疑われてしまうので、ちょい補足をしておきましょう。
上記に挙げたような服装は「ロリータ系」という大きな括りに入れられる事は多分間違いないのですが、ジャンルは細分化されています。白やピンクを基調にした「甘めのロリータ」もあるし、モノトーンがベースの「ゴシック系」もある。

随分と前置きが長くなっちゃいましたけど、本作は「ロリータ系」の格好をした女の子達をヒロインに据えた野心作です。
いやぁ、意外とありそうで無かった、って感じですけど、「意味はないけど、ゴスロリ書きたかったんで……」っていうわけでもなく、そこには必然性があり、そういう部分も込みで面白かったです。
メインヒロイン、エリカは、ハサミを持ち歩くちょっと危ないゴスロリ少女ですけど、凄い可愛いです。ちなみにスクリーンショットはエリカです。
その他にも、パンクの要素が入った服装のミサや、甘ロリ一直線みたいなアンリ、と、多様なロリータをヒロイン達がカバーしています!

さてさて、公式のサイトを見てみると、ちらほら目にする著名なゲームレビュワーさん達の賛辞の言葉が載っています。
そこに書かれている事に頷ける部分もあるのですが、全面的に肯定出来るわけでもありません。ま、こっちは、フリーメインのレビューなので、見方が違うって事で、そこらへんの違和感を先ずは追っていきましょう。


前述のメッセージの中に、スピード感がある、というような事が書かれていたりするわけですが、個人的にはそのスピード感を楽しめるようになったのは、前半分が終わってから、という印象です。
ストーリー的な部分で云うと、主人公直都が、エリカを助手にし、ようやく「ゴス狩り」への調査を本格的に行っていく、という辺りからでしょうか?

それ以前は、「ゴス狩り」事件の概要であったり、主人公周辺のキャラクターの紹介などのパート、と云ってもいいのかな。要所要所で、ギャグっぽいテキストが入り込むんですが、個人的にはそこまで笑えなかったかなぁ……。

ただ、中盤以降から、ストーリーが加速していきながらも、やっぱりギャグっぽいやり取りや、おふざけシーンなんかも入ってくるんですが、何故か質的には変わってないはずなのに、そっちの方は思わず笑ってしまう事があったんですよね。
どうも、私は、ストーリーが進捗している、という状況があって初めて、ギャグを楽しめるようですw やっぱりストーリー的な進展がないと、ちょっと焦れてきちゃいますからね。そういう状況下でギャグが出てきても、「ギャグはいいから、ストーリー進めてくれよ」って云いたくなってしまうというか。

で、中盤以降のストーリーのスピード感は、物凄く良かったですね。
今まで朧気だった事件の輪郭が少しづつ見えてきて、色んな事実も判明してくる。「事件の真相に近付いていく感触」が気持ちよく味わえます。バトルシーンもあって(主人公は、特殊な訓練を受けてる設定ですw)、そういう所も熱いですよね。とっても面白くプレイ出来ました。

結構、人死にが出たり、悲惨な状況、残酷な描写が続出するのにも関わらず、そこで湿っぽくならない軽妙さも併せ持っていて、バランス感も良かったと思います。
所々で、3Dアニメーションが出てくるんですが、これもさりげなく凄い事をやってる気がしますよ。


「ゴス狩り」の調査をし、真相を突き止め事件を(取り敢えず)解決するまでを前半、それ以降を後半と位置づける事も可能です。
私は、最初の2時間くらいで、エリカと共に「ゴス狩り」事件の調査を本格的に開始するまでを前半、事件を解決するまでを中盤、それ以降を後半と勝手に決めているんですが、そんなのは、各人がそれぞれ決めればいいわけで、当然、ザックリと前半・後半と決めてもいいのです。

で、どの区分けをしても、後半に当たるパートは、所謂「ヒロインの個別ルート」に相当します。
私が最初にプレイしていたら、どうやらエリカのルートに入っていったようでした。メインのゴスロリ娘ですし、個人的にも一番好きなタイプなので、無意識的に選択肢を捌いていたのでしょうw
ちなみに、選択肢の数はそこまで多くありません。よって、四つのエンドを見るのも多分、そんなに苦労しないはずです。

ただ、これも今まで何度となく話してますが、「フラグがリセットされない」なんて事がたまにあって、違う選択肢を選び続けているのにも関わらず、同じルートに入り込んで抜けれなくなってしまう、という事がありました。
そういう時は、サックリ本体を再起動してやれば、フラグがリセットされます。

エリカのシナリオは、中盤までの流れを汲みつつ、物語内で語られる歴史的背景がグッとせり出してきて、物語に奥行きと重みを与えています。
結局、歴史は繰り返すというか、過去を或る意味でなぞっている……という仕掛けは、この作品固有のものではないにせよ、やっぱり物凄く有効な手法だと思いました。
ループというのとは、また違うんですよね。ループは飽くまで同一人物がある時間内を何度もやり直す、っていうのが、簡潔な説明だと思うのですが、これは、時代を超えて、図らずも同じような事が起こり、同じような事を別の誰かが繰り返してしまう、というような、そういうものです。

うんと分かりやすい例を挙げると、やっぱり『源氏物語』とかになるのかなぁ。
光源氏って男がいて、オヤジさん(天皇)のお后様(自分の義母)と密通してしまうんですよね。結果、光源氏の子供が、オヤジさんの子供として生まれてくる事に。

で、光源氏自体が、そういう悪い事してるわけですから、「俺も同じ事されんじゃねーの?」って恐怖があるんですよね。よって、自分の息子の夕霧には、奥さんの一人であり、寵愛の紫の上を近づけなかったんです。その代わりに容姿の劣る花散里という女性を、養母にしています(夕霧の実母は、彼を産んですぐに死んでしまっています)。

で、時代が過ぎて、光源氏は、女三宮なる皇女と結婚せざるを得なくなってしまうのです。血筋的に考えれば、女三宮は、自分の兄貴の娘だから、姪に当たるわけで、そこらへんの感覚の違いは現代と昔では大きく違いますからスルーしてしまいましょう。
ともあれ、幼さの目立つ女三宮を娶ったはいいけれども、今度は、その女三宮が夕霧の友人でもある柏木という男と密通をしてしまい、懐妊。
生まれてきた子は、柏木の子ではなく、光源氏の子として育てられる事に……。

……と、まぁ、こんな感じで、歴史は繰り返すというか、因果が回ってくるというか……そういう、歴史的バックグラウンドに支えられた、奥行きのあるシナリオになっていくわけです。

エリカの場合は、メインヒロインですから、エンドが二種類です。トゥルーとハッピーの二つ。
最初、「絶対にハッピーの方がいいや」って思ってたんですが……そういう物語内歴史の輪みたいなものを強く感じさせ、又それを次世代に継いでいくかのような、トゥルーエンドも捨てがたいぞ、と。
今、エリカのエンドで、好きなものを一つだけ選べ、と云われたら、私は、迷ってしまいます。トゥルーは普通の恋愛アドベンチャーを望む人にとっては、バッドエンド風味な部分もあります。けれども、寧ろ、そのトゥルーの方が、この物語に通底している歴史の論理には合致するんじゃないか? と、そう考えてしまうわけですね。

ちなみに、ミサのエンドも、エリカのトゥルーエンドを見ていると、多分、その「歴史の論理」みたいなものが感じられると思います。
直都とミサも、自分たちの気持ちで、事件を解決し、処理したはずが、実はそれは……みたいな。やっぱり、そうした部分で深みが出てますよね。ただ、ミサの場合は、死体消失の謎が放置されていたような……。

一方、甘ロリのアンリですが、上記の二人と違って、物語の「歴史の論理」による束縛を受けないキャラクターなんです。ロリロリで可愛らしい子なんですが、エンドも、他の二人と違ってちょっとだけ投げやり感がw 投げやりっていうと言葉が悪いかもしれませんが、ちょっとギャグで逃げちゃった、みたいなw
その意味では、作品の持つ「重さ」を感じずに、素直に楽しむことが出来るキャラ、とも云う事が出来るかもしれませんね。



大体こんな所でしょうか?
久々に、歯ごたえがある、しかも野心的な作品をプレイ出来て、本当に楽しかったです。
中盤からの面白さは、本当に気持ちの良いものですし(凄惨な場面とかはありますけど)、ゴスロリも堪能出来ますし、ちょっとフッと怖さを残すエリカのトゥルーエンドも、賛否はありましょうが、絶対に入ってて良かった、と思います。

ゴスロリとか、ミステリー風味とか、恋愛とか、色んな要素の入っています。
ちょっとでも興味を持ったら、是非プレイしてもらいたい、そんな作品です。というわけで、今回は吟醸。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2014-02-12 23:00 | サウンドノベル | Comments(0)
2014年 01月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『闘う男のミカタ★恋するほぐシャキ体験キャンペーン』

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道玄斎です、こんにちは。
今日は、ちょっとイロモノゲームのご紹介。以前、『ペヤングどらま館』という作品(?)がありましたが、本作も、企業によって作られたプロモーション用のゲーム。
というわけで、今回は「花王株式会社」さんの『闘う男のミカタ★恋するほぐシャキ体験キャンペーン』です。プレイはこちらのページからどうぞ。



ゲームの女の子のタイプって、ザックリと二分割出来ると思いませんか?
「可愛い系」と「綺麗系」。勿論、それに当てはまらないタイプもいますし、中には「可愛さもあるし、綺麗さも併せ持っている」なんてハイブリッド型もあったりしますが。

本作(?)は、先ず、「あなたの属性を選んでください」と言われ、「学生」若しくは「社会人」を選択します。
すると、学生の場合は、「城貴優」、「穂久下こころ」の二人が表示、社会人の場合は、「城貴あい」、「穂久下サキ」の二人が表示され、要はヒロインを選択せよ、というわけです。

どうも……この四人のヒロインの苗字から察するに、城貴優とあい、そして、穂久下こころとサキは姉妹という設定のようですねぇ。城貴が蒸気、穂久下が気分を「ほぐす」と掛かっている事は云うまでもありません。

で、名は体を表す、というわけで、城貴姉妹が「可愛い系」、穂久下姉妹は「綺麗系」の造型です(「こころ」ってのは、「可愛い系」の名前なんですけどもね)。言動もやはり、そうしたタイプにキッチリ分けられています。ちなみにスクリーンショットは城貴優です。

ブラウザで遊べるノベルゲーム、なんですが、BGMがついてないのがどうにも寂しい気がします。
1ルート、2分もあれば終わってしまう作品とはいへ、やはり、無音なのはなぁ、とw ゲームのラストで、ヒロイン達がじゃじゃーん、と「蒸気でホットアイマスク」を主人公に差し出すんですが、その時も効果音くらいあっても良いかもしれませんね。

内容としては、至ってオーソドックスなノベルゲームの体裁です。
ただ、前提として、ヒロインは主人公の事を一定以上気に掛けてくれている、というか、好意を持ってくれている、という状態w
ヒロイン達の質問に選択肢で答えていくと、お勧めのホットアイマスクを教えてくれる……そんな作品です。

結構笑えるのが、選択肢で「ダメな答え」をしても、ヒロイン達は全く意に介さず、「そういえば」と、ホットアイマスクを勧めてくるところですw このちょっぴり強引な所が妙に面白さを誘いますねぇw
又、「ダメな答え」を選び続けても、半ば強引に話が進んでいき、所謂バッドエンドは存在しません! ヒロイン達は最後の最後まで、主人公(私達)に好意を持ってくれたまま、アイマスクを勧めてくれるのです!

本当に1ルート2分もあれば終わってしまうような、そんな作品ですが、企業がこうした「ノベルタイプ」のゲームを、プロモーションに使っている、というのが面白いですね。
先にも述べましたが、BGMやSEを入れてみたり、ダメな答えを選び続けたら、ヒロイン達が拗ねたりする、といったアクションや、エンドを用意すれば、もっと(ギャグ的な意味ではない)面白さが増すんじゃないかな、と愚案致します。


最近では、フリーのノベルゲームも尺の長いものが増えてきましたよね。
そんなゲームとゲームの合間に、ホットアイマスクでリフレッシュしてみてはどうでしょう?w



新年一発目のレビューが、ちょいイロモノですが、今日はこの辺で。
それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-01-26 16:00 | サウンドノベル | Comments(2)