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2015年 08月 24日

フリーサウンドノベルレビュー 『Lost order ~Last Smile~』

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今日の副題 「この終わりの世界で生きていく」

※大吟醸
ジャンル:女性向け頽廃世界分岐ノベル
プレイ時間:1章3時間程度。合計で10時間ほど
その他:選択肢アリ(後述)、18禁。注意書きを読んだ上でのプレイすること。
システム:LiveMaker

制作年:2014/8/28
容量(圧縮時):92.5MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、人から勧められた作品をご紹介。
最初は、「女性向け」ということで、ちょっと身構えていたのですが、プレイしてみるととっても面白いですし、内容もとても上質だったのです。
というわけで、今回は「Imitation gallerY」さんの『Lost order ~Last Smile~』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・どのキャラクターにも魅力が感じられる丁寧な描写と物語構成。

・暗めの世界観だが、その中でも前向きで上質なエンド。


気になった点

・残酷、グロ描写など苦手な人は要注意。

・いささか誤字の類が多かった気が。


さて、ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。
こちらからどうぞ。



というわけで、久々にプレイのし応えのある長尺のものをプレイしました。

最初は、女性向けということでしたから、ある種のセオリー通りに話が進むのかと思いきや、全くそんなことはなく(主人公の女性に個性がありますし)、開始直後から良い意味で裏切られた作品でした。

というのも、舞台は架空の近未来。
奇病の蔓延により、ゆっくりと人類が滅亡していく、そんな退廃的な世界が舞台で、少し暗いトーンのストーリー展開があったからです。

そして、その世界を牛耳る怪しげな民間組織の下級構成員が主人公のトート(名前変更可)。
彼女を軸にして、物語が進んでいきます。


良いな、と思えたのは、主人公が下級構成員であるが故に、上層部からのミッションをこなしていかないといけない、というところ。
そして、そのミッションに沿う形で、それぞれのキャラへの掘り下げがあり、ストーリーが前進していく構成がとても良かったです。

キャラクターの描写も本当に丁寧で、脇役が本当に魅力ある存在となっているのです。
これは中々出来ることじゃありません。
後書きを読むと、「群像劇」を意識された、とのことですが、なるほど納得です。

主人公とその相手(今回は、女性向けなので男性キャラということになります)だけが焦点化されていくのではなく、脇役には脇役の人生や行動の指針がちゃんとあって、それがメインのストーリーにしっかりと結びついている作りは、王道を踏まえながら、そこに丁寧な物語作りを感じさせてくれます。
そういった意味で、名作『TRUE REMEMBRANCE』に通じる部分もあると思います。どちらも、少しファンタジックな世界を持っていますしね。

個人的なお気に入りは、主人公トートの姉貴分、ヴォルガーレです。
どうしてお気に入りなのか……というのは、プレイして頂ければ分かると思いますw 凄く魅力あるキャラクターですよ。


さて、本作は選択肢ありの作品なのですが、選択肢の使われ方とでもいいましょうか、そうしたものがちょっと独特なので、ここで解説しておきましょう。

第1章から選択肢が出て、ストーリーが分岐していくのですが、それぞれの章によって主人公と結ばれる相手が違います。

例えば、第1章ではチェシャ、第2章ではギル、といったように。
第1章で、チェシャの個別ルートに入ってしまえば、第1章が終わった時点で物語がおわります。
逆に、チェシャの個別ルートに入らなかった場合、ストーリーは第2章へと続き、またギルとの個別ルートに入るか入らないかを、選択肢で選んでいくことになるのです。

ちょっと変わっていますよね。


一つ、言えるのは、「どのエンドも完璧なハッピーエンドではない」ということです。
それは、最終章のトゥルーエンドでもそうです。

何しろ、世界規模で人類が滅亡しつつあるわけで、そうした世紀末的な退廃的なトーンが本作の魅力の1つでした。そして、そのトーンは最後まで失われることはありません。

しかし、そうした世界の中で得られる幸せ、目標、そうした希望(というとあまりに安直ですが)を微かに感じさせる、暗いトーンの中だからこそ活きるエンドはしっかりと描かれています。
これは、安易な形でのハッピーエンドよりも、遙かに説得力があるのです。


上手く説明出来ないのですが、私が凄く好きだった80年代後半~90年代中盤頃のジュブナイル小説(ラノベっていうと、ちょっと違う雰囲気が出てしまうので)に近い雰囲気を持っている作品でした。

そうした小説の中には、ただ単に明るい楽しい話だけではなく、ちょっと渋いというか深みを感じさせる作品があって、それに非常に手触りが似ているのです。
作家の名前まで出しちゃうと、「小林めぐみ」や「冴木忍」(のシリアス作品)あたり、というと伝わる人も多いかと思います。


気になった点は、先に挙げた通りです。
ストーリー的な部分では、何も言うことがありません。

強いて言うならば、サクレのキャラクターは、第1章、第2章でもうちょい主張があっても良かったかな、というくらいです。


長いプレイ時間が全然苦にならない丁寧な構成と、キャラクターの掘り下げが本当に見事な作品です。
女性向け、ということではありますが、男性がプレイしても全く問題がない……というより、是非プレイしてもらいたい作品になっています。

本当に最近は、女性向けのゲームで素晴らしいものが増えてきました。
ちょっと甘いかな、と思いながら、今回は大吟醸です!



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by s-kuzumi | 2015-08-24 19:48 | サウンドノベル | Comments(0)
2015年 08月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『かげぼうし』

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道玄斎です、こんばんは。
今日は短編作品のご紹介。10分くらいの尺ですが、温かい雰囲気が活きている作品だったと思います。
というわけで、今回は「現屋」さんの『かげぼうし』です。



現屋さんと言えば、ここでもレビューした『喉の渇くその前に』、あるいは『よんひくいちは』といった作品がありまして、プレイヤーに考えさせるというか、少しヒネリの効いたストーリーが魅力でした。

ですが、本作は、それらの作品と比べるとかなりストレート。
男子小学生アカリとクラスメイトのアザミ、その二人の交流譚とまとめてしまうことも可能です。


物語の中に「ここが一番の見せ場だな」というような場面が設定してあり、その場面こそがタイトルである「かげぼうし」になっている、ということなのですが、これは、「焦点化」という手法だと言えましょう。

その場面、その瞬間を描くために物語がある、というようなタイプです。


ですから、アカリがアザミに好意を抱くようになったきっかけ、或いは、アザミを取り巻く環境の謎みたいなものは作中では明らかにされないのです。

これは一見すると、いかにも不自然なようですが、焦点化がシッカリと出来ている為、実はそこまで気になりませんでした。


ここ数年、こうした非常に短い作品のリリースが、フリーのノベルゲームの世界で目立つのですが、個人的な感触としては、最初はそうでもなかったものが、段々と「見せたいもの」「描きたいもの」「伝えたいもの」が分からなくなり、ただただリリースされる、というようなものが増えてきていた時期があったように思います。

作品をリリースする、ということ自体、凄いことではあるのですが、「作品を出すこと」そのものが目的となってしまっていたケースというのも、あるのではないでしょうか?


そうした作品と比べた時、本作は、放置されている謎などはあれど、やはり頭一つ抜けている印象を受けるのです。

また、その「描きたい部分」」をより印象付けるような演出も巧みでした。
全体的に柔らかく、温かみのある雰囲気、そしてそれを後押ししてくれるようなイラストが、作品の魅力を最大限に押し上げていたように思います。


10分程度ではありますが、密度の高い作品でした。
ちょっと温かい気持ちになれる、素敵な短編作品です。
是非、プレイしてみて下さい。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2015-08-12 18:51 | サウンドノベル | Comments(0)
2015年 07月 30日

フリーサウンドノベルレビュー 『ココロ、そらいろ。』

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今日の副題 「子どもを描くからこそ描ける物語」

※吟醸
ジャンル:少年少女のハートウォーミングストーリー。
プレイ時間:40~45分程度。
その他:選択肢なし、
システム:NScripter

制作年:2015/4/9
容量(圧縮時):32.9MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、久々のノベルゲームレビュー。
思春期の少年少女に焦点をあてた作品を多く作られている作者さんの作品のご紹介。
というわけで、今回は「mint wings」さんの『ココロ、そらいろ。』です。
良かった点

・短いエピソードを重ねていく形式で読みやすく、それ故の効果も出ている。

・小学校高学年という年齢設定が絶妙。


気になった点

・主人公いつきの問題に関しては、ちょいあっさりかも。

・物語の締め方が個人的にちょっと気になった。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
"君島 樹(きみじま いつき)" は不登校の男の子。
ある日、担任の勧めから "保健室登校" を始め、新たな世界へ踏み出すことに…。

1番最初に出会ったのは "前川 柚子(まえかわ ゆず)" という女の子。
人に合わせるのが苦手で、友達から仲間外れにされてしまったらしい。

しばらくしてやってきた "藤堂 元成(とうどう もとなり)" はクールな男の子。
クラスに上手く馴染めず、ずっと1人だった。いつも無表情で笑わない子。


そんな彼らと過ごす日々は、様々に色を変えて積み重ねられていく…。
――そう、まるであの空の色のように。

このようなストーリーになっています。



mint wingsさん12作目の作品です。
この作者さんは、「思春期」の少年少女を描くのが本当に上手いですね。

その時期特有の不安定さや、脆さ、残酷さ、そして素直さや優しさ……そういったものを上手く折り込みながら、物語が進む作品が多いのですが、本作も例外ではありません。

今回は「思春期前期」とでもいいましょうか、小学校の高学年という年齢設定にまず惹かれました。

ノベルゲームの場合、だいたいが「高校生」を主人公としているわけで、ちょっと年齢をズラしてやるだけでも、まだまだ色々な物語の可能性があるわけです。
さらに、思春期の入り口、といった年齢ですから、そこに他の作品にはない「面白さ」や「深み」を感じることが出来ます。


物語は、短いエピソードを選択し、それらを順に読んでいく、という形で進行します。
それによって、一話一話が読みやすくなっていると共に、それ故の効果が出ていました。

どういう事かと申しますと、エピソード間にはそれなりの「空白の時間」が存在しているのです。
だいたい、数週間~一月程度のブランクが、各エピソードの間にあるんですね。

で、あるエピソードを読んだ後、次のエピソードにいくと、ちょっと人間関係が変化しているんです。
最初は、少しおっかなびっくりコミュニケーションをとっていた、主人公いつきと、やはり保健室登校のゆずが、大分うちとけた感じで会話していたり。

それはいつきとゆずだけでなく、もとなりに関してもそうでした。
エピソードの空白時間に、ちゃんとお互いの距離が縮まったり、あるいは、もやもやとしたものを感じたり……。そういう部分がキチンと次のエピソードで描写され作品に溶け込んでいる、というのがとても良かったです。

そういう意味で、とても丁寧に紡がれた作品、だということが出来ましょう。


思春期前期の子ども達を通して描かれる物語は、読者である私達にも改めて考えないといけない問題を提示してくれていたりもします。

ゆずの抱えていた問題、「自分の気持ちはそのままで、それでいて他者とうまくやっていく」、なんかはその最たるものでしょう。

気に入らないからケンカをふっかける。
あるいは、好きだから全てを肯定してしまう。

そういうことって、大人でもありますよね。
そうじゃなくて、「気に入らなくても、ケンカしない」、「ケンカにならない云い方をする」、「好きであっても、ダメだったらばちゃんと云う」。そういうことって、やっぱりとっても大切だけど、いざ実践するとなると、結構難しいところがあったりして……。


ですので、子ども達を描きつつも、「子供向け」で終わらない深みが物語にはあるんですよね。
もしかすると、それは「子供と大人の淡い」にある、思春期の子ども達を描くからこそ、出せるテーマなのかもしれませんね。


気になった点としては、主人公いつきの問題とその解決のパートが、ゆずやもとなりと比して、ややあっさり風味だったのかな、と。

ゆずやもとなりは、ハッキリとした理由・原因があって「保健室登校」をしているわけで、いつきはそこが「何となく」なんですよね。

ラスト付近で、いつきが自分の問題を自覚し、それに立ち向かう描写こそありますが、それも比較的あっさりしていたかなぁ、と。
多分……ゆずやもとなりが物凄くキャラが立っているので、そういう風に見えてしまう、というのもあるんじゃないかと思いますね。


もう一点は、ラストです。
ここは、本当に「個人的に」気になった、という感じなのですが、たとえば、「3人のその後」の一枚絵が出て終わるとかね、そういうのでも良かったんじゃないかな、なんて。

現行の終わり方も決して悪い、というわけではなく、そこに込められた意図や、その終わり方の良さも勿論、感じることが出来ます。
ただ、個人的には、3人が積み上げてきた友情をしっかりと描写した上で終わって欲しかったな、ということなんです。

ここは、単純に好みの箇所ですから、あまり気にしないで下さい。



さて、mint wingsさんは本作を以て、サークル活動を一時中止されるようです。
エイプリルフールなどのイベント時にはゲームを作る、ということですが、とにかく一度、活動は休止ということのようです。

私も、mint wingsさんの作品、何本もプレイしてきましたし、レビューでも何度となく取り上げさせていただきました。
12本、という作品数は本当に凄いと思いますし、フリーのノベルゲームの世界に残した影響は決して少なくなかった、と思います。

今まで、本当にお疲れ様でした。
また、活動が復活し、新しい素敵な作品を読める日を楽しみにしております。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-07-30 20:48 | サウンドノベル | Comments(2)
2015年 06月 07日

フリーサウンドノベルレビュー 『真帆とはじめてのTRPG』

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今日の副題 「ノベルゲームはリプレイ向きかも!」

ジャンル:クトゥルフTRPGリプレイノベル
プレイ時間:一時間半程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2015/5/20
容量(圧縮時)89.5MB



道玄斎です、こんばんは。
ちょいと、また間が空いてしまいましたが、意欲的な作品を見つけたのでレビューを更新致します。
いやぁ、本当にありそうでなかったタイプの作品ですよ。
というわけで、今回は「NoFace管理事務所」さんの『真帆とはじめてのTRPG』です。猶、本作は同サークルさんの『Mたちの調律』の番外編的な位置づけですが、単独で遊べる作品になっています。
良かった点

・ありそうで無かったTRPGとノベルゲームの融合。

・リプレイとして気軽に読め、クトゥルフ神話のちょっとした入門にもなっている。


気になった点

・単発のシナリオなので「ゲーム感」があっても良かったかも。

ストーリーは、サイトのほうから引用しておきましょう。
「透也くん、TRPGしようよ」
いつもの放課後、いつものように、真帆の突拍子がない提案が教室内に響き渡った。
TRPGってなんだよ? それって、どういう風に遊ぶんだよ?
初心者でも大丈夫か? ルールとかわからないし、なんだか難しそうだぞ?

そんな心配に対して、真帆はいつもの台詞を笑顔で言った。

「大丈夫だよ。透也くん」

本作を端的に述べるならば、「TRPGのリプレイノベル」ということになりましょう。
この説明で分かる方なら、きっとTRPGの歴戦のゲーマーのはずですから、本作を楽しめること請け合いです。

一方、この説明でピンと来ない方の為に、若干、TRPGについて説明しておきましょう。
私達は、「RPG」と聞くと、何の疑いもなしに、「Final Fantasy」とか「ドラゴンクエスト」なんかを思い浮かべたりするのですが、元々、RPGとはサイコロ片手に遊ぶ、アナログゲームだったのです。

TRPGの「T」とは、「table talk」の略でして、まぁ、「テーブルを囲んでわいわいやりながら遊ぶ」くらいの意味ですね。

FFやドラクエなどのコンピュータRPGとの違いは、ズバリそこにあります。
つまり、プログラムで制御されたシナリオ、ではなく、TRPGは、「テーブルを囲んだ仲間達の行動によって、いくらでもシナリオが変化していく」のです。

コンピュータRPGの場合、何かイベントやフラグの設定がプログラムに組み込まれていない場合、そこを調べても何も出てきません。無味乾燥な「なにもなかった」というようなメッセージが出ておしまいです。

TRPGの場合ですと、ゲームの進行役(GM=ゲームマスター)、そしてプレイしているメンバーの裁量やアドリブで、いくらでも内容が変化していくのです。
元々、シナリオ上では何も設定していない場所があったとしても、「そこを調べたい」と言えば、勿論プレイヤーはそこを調べることが出来ますし、「ここで事件を起こしたほうが面白いな」とゲームマスターが思えば、急遽アドリブで、そこからアイテムを入手させたり、イベントを起こしたり、ということが可能になるのです。

TRPGを巡る言説で良く言われるのが、「TRPGの魅力は、その自由度の高さにある」というものです。
「ゲーム」ということをあまり意識せず、会話の雰囲気を楽しんだり、逆にガチガチでシステマティックなゲームにして遊ぶことも自由なのです。

けど、「何でも出来る、超自由なRPGなんだよ!」っていうと、やっぱり語弊はあるんです。
結局のところ、TRPGはゲームマスターの用意したお話に乗っかっていかないと、先に進めません。
また、プレイヤーがそれぞれ、ゲーム内のキャラクターを演じるという関係上、「キャラクターとして相応しい行動」を求められる部分もあります。

まぁ、言ってしまえば、かなり「ツウ好み」の遊びです。
日本では、80年代中頃から90年代中頃にかけて、このTRPGの一大ブームがあったのですが、そこまで一般に浸透しませんでした。

一つ、当時は「オタク」に対する世間の目があまりにも厳しく、TRPGのようなディープな遊びは、オタクの気持ち悪さを表すものとして、揶揄される風潮がありました。

一つ、また、女性受けが大層悪く、TRPGなんてやっていようものなら、蛇蝎の如く嫌われたものです。アニメファンも同様でした。そして、世間はやはり「女性」を少しは取り込まないと、「まともな趣味」として見てくれないのです。


このような状況があり、専門誌こそ存在していたものの、TRPGの世界はかなりディープな方ディープな方に潜伏していったのですが、近年、また大きな盛り上がりを見せています。

アニメを始めとする「オタクのもの」として嫌われていた趣味が、急に「クールジャパン」などと名付けられ、日の目を見るようになってきました。
女性のアニメファン、ゲームファンも増え、ここにきてようやく、オタク趣味が「揶揄の対象」ではなく、一つの文化として認められるに至ったのです。


……と、ここまででかなり書いてしまったので、もうそろそろTRPGの概略はやめにしましょう。
ともあれ、近年、またTRPGのブームが起こっており、その中でも、昔は「上級者向け」のディープなTRPGであった『クトゥルフ神話TRPG』に人気が集まっています。

さて、「クトゥルフ神話」ですが、これは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
アメリカのラヴクラフトさんが生み出した、宇宙的恐怖(コズミックホラー)が大きな特徴の恐怖小説です。
実は、最近、私は「無料ゲーム.com」さんにて、ゲームのコラムを書かせて頂いているのですが、その第十一回目に、クトゥルフ神話については書いているので、もしよろしければ、そちらの方をご覧下さい。


前置きがやたらと長くなってしまいましたが、本作は「ノベルゲームの中で、キャラクター達がクトゥルフ神話TRPGで遊ぶ様子」を描いた作品となっています。

TRPGを遊んだ様子をまとめたものを「リプレイ」と呼ぶのですが、本作はまさにそのリプレイと言っても差し支えないでしょう。
リプレイは基本「本」という媒体で出版されるものです。それを読むと、ゲームのルールや雰囲気、そして物語そのものが楽しめる、というとても優れたフォーマットなのですが、よくよく考えてみれば、ノベルゲームという媒体との相性は、物凄くいいんですよね。

リプレイは当然「サウンド」は付いてきません(ですので、擬音で表現したりするわけです)。
さらに、ビジュアル面も、表紙や挿絵くらいなものですから、十分とは言えません。

対して、ノベルゲームは、サウンドノベルとも呼ばれることがあるくらいですから、「サウンド」を付けることが出来る。また、立ち絵、一枚絵という形でビジュアル面を補うことが出来るのです。
そして、勿論、文章を読ませるという基本がありますから、リプレイの「内容」を記述することはお手の物なのです。

どうです?
これは相性が抜群ですよ。ですので、本作もクトゥルフ神話TRPGのルールを知らなくても、「読み物」として全然楽しめてしまいます。途中で「ダイスを振り判定をする」演出などもありますが、ルールに興味がなければ、「成功したか/失敗したか」だけ把握しておけばよく、それでも十分楽しめます。


本作の持つ、TRPGに由来する面白さはこんなところでしょうか。
一方で、中身(つまり、ここではTRPGのプレイ内容)も、シンプルな設定ながら、クトゥルフ感が出てて面白かったです。「あの」教団の名前が出てきた時には、思わず吹いてしましましたw

舞台こそ日本ですが、クトゥルフ初心者に、「クトゥルフの怖さってこういう感じなんだよ」と伝えることに成功していると言えるでしょう。プレイの雰囲気なんかも、かなりリアルですし、「わいわいやっている感じ」が良く出ていましたね。


さて、気になった点なのですが、これは難しい問題です。
本作のように「単発」の冒険の場合、「ゲームっぽさ」というのがあっても良かったのではないか、という点です。

つまり、ゲームの要所で、「選択肢」を出して、バッドエンドとグッドエンドに分岐するくらいはあっても良かったかもな、ということです。
TRPGは、プレイヤーの思わぬ不注意でキャラクターが死亡したり、ミッションが未達成になってしまうことがあります(特にクトゥルフの場合には!)。

そこも紛れもなくTRPGの要素なので、今度は「ノベルゲームの側の特徴」、つまり選択肢によるルート分岐で、そういうプレイの可能性を見せるって方法もゲームっぽくてアリなんじゃないかな、ということですね。

例えば、同一のキャラクターを使い、何度も冒険や物語を重ねていくパターンを「キャンペーン」とか「キャンペーンシナリオ」なんて呼びますが、この形式ですと選択肢分岐は制作側に大きな負担となります。
しかし、「単発」シナリオの場合ですと、比較的それがやりやすいのです。そして、そこでミッション未達成だと、どういうエンドになるか、逆に成功だと、それがどのように変わるのか、が見えると、既存のリプレイの枠を越えた表現が出来るかな、と愚案する次第です。


とはいえ、TRPGのリプレイとノベルゲームが、ここまで相性がいいとは思いませんでした。
これは、もしかしたら、新しいノベルゲームの一つの潮流になる可能性がありますねぇ。

TRPGファンは勿論、ノベルゲームファンも、ちょっと本作に注目してみて下さい。
ノベルゲームの新しい可能性が、本作に秘められていると思いますよ。



作品の本筋とはあまり関係がないTRPGについて大分書いてしまいましたが、今回はこの辺で。
それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-06-07 18:59 | サウンドノベル | Comments(0)
2015年 04月 22日

フリーサウンドノベルレビュー 『かたわ少女』

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今日の副題 「本質はタイトルではなくシナリオにアリ」

ジャンル:障害を抱えた主人公及びヒロイン達の恋愛アドベンチャー。
プレイ時間:18~20時間程度。
その他:選択肢アリ、バッドエンドや各ルートにバッドエンドやグッドエンドが設定。18禁。
システム:Ren'Py

制作年:2015/4/1(日本語版リリース)
容量(圧縮時):432MB




道玄斎です、こんばんは。
もう何年も前に、本作の英語ベータ版をプレイして記事を書いた記憶があります。
ついに、その「日本語版」が出たと聞き、プレイしてみた次第です。実際、日本でもニュースサイトなどを中心に話題になった作品ですから、それ以上の説明は不要でしょう。
というわけで、今回は「Four Leaf Studios」さんの『かたわ少女』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・実は凄く普通の恋愛ノベルゲームだった(後述)。

・アニメーションや演出がシームレスな感じで作品に上手く溶け込んでいた。

・非常に上質なルートがある。


気になった点

・文字表示領域限界まで、文字が表示されるので、割と窮屈。

・ルートによっては消化不良な部分もある。

ストーリーは、公式サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。



非常にショッキングなタイトルがついた作品です。
日本国内であれば、放送・出版コードにひっかかる「かたわ」という言葉が、この作品に注目を集めるのに一役買っているのは間違いないでしょう。
同時に、やはり差別的・侮蔑的なニュアンスがある事から、反感を持つ人もいると思われます。

これがもし、「disabled girls」であったり、「challenged girls」なんてタイトルであるのならば、(特に後者であるならば)恐らく、少なくともタイトルに関しては問題視されることはないはずです。

しかし……差別や侮蔑の本質っていうのは「言葉」ではない事が殆どです。
言葉は全く無関係ではない、とは勿論云えませんけれども、本質は「個々人の気持ち」というか精神の部分であって、それが言葉などの形で出た時、差別や侮蔑が表に分かりやすい形で出てくるんじゃないでしょうか。

とは云え、私もこの「かたわ」というタイトルは「ちょっとやべーよな……」とは思っています。
障害というものに対して、私達は時に必要以上にセンシティブでナーバスになってしまうようです。
上記の「差別の本質は、言葉じゃなくて、精神だろ」という私の考えも、例えば、障害を持つ人が発言するのならば許容され、そうでない人が云ったのならば、「何を知ったような口を!」と怒られてしまう可能性も多々あるわけです。
問題は結構複雑なのです。

……と、ちょいと堅苦しい感じで書き出してしまったのですけど、そうした「障害」というものに積極的に挑んでいく作品、それが『かたわ少女』である、という事は間違いなく云えるでしょう。

ヒロイン達は、目が見えない、足がない、ひどい火傷を負っている……など、見た目にも分かりやすい障害を抱えています。
しかし、本作のユニークな所は、主人公久夫も、心臓の病気を抱え、今後その病気と生涯を共にしなければならないという設定にあるように思えます。

主人公の持つ、分かりにくいけど確かに存在する病との付き合い、そして見た目に分かりやすい障害と、目に見えない葛藤を持つヒロイン達との交流、そこが本作のキモの部分ではないでしょうか。


今回、「良かった点」にて、「実は普通の恋愛ゲーム」と書きましたが、そこにこそ、本作の特徴があるように私には思えるのです。
私達が普段プレイする恋愛ノベルゲームも、「主人公も、そしてヒロインも問題を抱えており、何とかそれを乗り越えていく」というタイプのものが多いですよね。

本作も、実はそれと全く同じです。
例えば、芸術家肌のヒロイン、琳のルートでは、「琳が両手を失っている事」は殆ど問題にならないのです。寧ろ、話の焦点は「芸術家として生きること」、「芸術とは何か」というような問題に移行していきます。

火傷を負っている女の子、華子のルートもそうです。
確かに、火傷(やそれにまつわるエピソード)が華子の性格に与えた影響は大きいのです。しかし、それは「きっかけ」というようなものであって、シナリオの焦点は、「華子が精神的に強くなる」という部分にあるのでしょう。

本作に於いて、障害というのは「今のヒロイン達」を形作るきっかけの一つであって、その障害そのものが問題になるわけではなく、「私達が誰でも抱える可能性のある問題」にこそストーリーの焦点はあるのです。

ですので、「障害」という部分を除いてみれば、非常にオーソドックスな恋愛ノベルゲームになっている、と感じたのです。
そして、それは「障害を持っているから特別なエピソードが必要なんだ」というものではなく、「障害を持っていようといまいと、俺たちは同じような悩みを持つんだ」という、制作者側のメッセージなんじゃないかな、と私は感じました。
つまり、障害があるから、それを「特別扱い」にするのではなく、その障害を「ニュートラル」に捉えていく、とでも云いましょうか。


一方で、障害が「ただのフレーバー」になっている感じ、がしないのも、本作の良いところでしょう。
例えば、聴覚障害のある静音のルートでは、ミーシャが手話と発話によって、主人公と静音の会話を翻訳し、取り持つわけですが、「どこまでが静音の発言で、どこまでが“翻訳者としてのミーシャとしての発言”なのか、が分かりにくい」という描写によって、聴覚障害や、そこに生じるディスコミュニケーションの問題に踏み込んでいます。


さて、気になった点ですが、上に書いた通りです。
所謂メッセージウインドウの限界ギリギリまで文字を表示して、次の行に折り返して……という形で、文章が表示され窮屈さを感じますし、改行が積極的になされていないので、読みにくくなっている部分もあります。

あとは、ルートによって「ん? じゃあこの後はどうなるんだ?」という感じで終わってしまうものもありました。
そこは個々人の趣味の領域かもしれませんが、私はちょいと気になりました。


ルート、ということで云えば、私は断然、リリーのルートが好きですね。
体験版をプレイした時も「リリーが気になる……」と書いたような気もしますし、ね。

そうそう、本作は、個性豊かな脇役達も見所で、各ルートに入ってもしっかりとした存在感があります。
また、ルートに入っても「そのヒロインだけ」に焦点が当たっていくのではなく、ちゃんと他のヒロインなどのキャラクターとの関わりが描かれているところは、丁寧な作りである、と云っても良いでしょう。


一方、「普通の恋愛モノ」として見た場合、ちょっと物足りない……というか薄味な部分も感じます。
気がつけば久夫は、ヒロインに惚れてしまっていますし、恋愛が成就するまで、が淡泊なのです。これは、作品の作りとも関係がありますね。

この作品は、謂わば共通ルートとでも云うべきルートがあって、それは「学園祭」まで。
その後、各ヒロインのルートに入って、「恋愛が成就するまで」、「ヒロインとの間で問題が起きるまで」、「問題を解決しエンディングまで」と、大体4区分に分けられていました。

やはり焦点は「恋愛そのもの」ではなく、「ヒロインとの問題の解決」にあるわけですから、それで恋愛部分は薄めなんでしょうね。
とは云え、その問題の発生とその解決のパートも少し淡泊な印象はあります。



大体、こんなところでしょうか。
本作は、非常に難しい問題に、実は「真っ正面から」取り組んだ、そんな作品だったのではないかと思います。障害そのものを特別扱いせず、一人の人間の人生の過渡期を描いた作品、ということです。

タイトルがショッキングではあるのですが、無心に読んでみると、色々考えさせられる作品なんじゃないかと思います。

ボリュームが多くて大変ですが、是非、全ルート(リリーのルートも忘れずに!)読んでみて下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-04-22 16:59 | サウンドノベル | Comments(4)
2015年 03月 22日

フリーサウンドノベルレビュー 『爆音の世代、沈黙の世界』

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今日の副題 「考える作品」

ジャンル:強気っ子大集合・バイオレンス・アドベンチャー
プレイ時間:合計で9時間半程度。
その他:選択肢アリ。全四章(オマケルートあり)の作りになっている。18禁。
システム:らのべえ

制作年:2013/4/15(フリー公開)
容量(圧縮時):978MB




道玄斎です、こんにちは。
ここんとこずっとプレイしていた作品のご紹介。ジャンルには「強気っ子大集合・バイオレンス・アドベンチャー」なんてありますが、物語のテーマ(の一つ)として、民族問題があったりと実はかなりの社会派作品でした。
というわけで、今回は「Cosmillica」さんの『爆音の世代、沈黙の世界』です。ダウンロードはこのページからどうぞ。
良かった点

・同人ならではの、強烈なテーマ設定。

・物語が進むにつれ、色々と考えさせられる部分あり。


気になった点

・後半に行けばいくほどテーマがブレてくるような。

・主人公がほぼ無力(但し、考えを改めた部分もある。後述)。

ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。

少しだけ味気ないので、補足しておきましょう。
民族問題で紛糾する社会、主人公とその仲間達の生活は危ういバランスによって、その平和が保たれていた。しかし、ある事件をきっかけにその平和は失われ、誰しもがこの国の抱える問題について無縁ではいられなくなる。その状況で果たして主人公、そしてヒロイン達はどのような選択をしていくのか……。

というような感じでしょうか。
一応、架空の国名や固有名詞を使って「現実社会とは関係がない」と主張しているのですが、明らかに本作の舞台設定は「日本」です。
そして、在日外国人の問題というのが大きくフィーチャーされてきます。何しろ、ヒロインの一人が在日外国人(というか、在日韓国人を模した在日外国人)なのですから、社会派というか、もの凄い攻めの姿勢を感じます。


まずは、概略的なところですが、本作は全部で四章の構成です。
選択肢もあるのですが、章とヒロインの女の子というのがセットになっています。
例えば、第一章ではジェシカのルート、第二章ではサクラのルート、というような感じです。恐らく、「一章から順番に見ていく」ような作りになっている為、バッドエンドは存在しても、選択肢の捌き方によって、いきなりサクラルート(第二章)から攻略していく、というのは出来ない……んじゃないかと思います。

当然、第一章でのエンドより、第二章、第二章より第三章のエンドの方が、物語全体のテーマ(これも、ちょっと作中でブレてるような気がするのですが)に近づいていく。そうした感触があります。


最初、私はプレイしながら、「ちょっと馴染めないな……」と思っていました。
というのは、前半部は割と古風なギャグテイストのテキストで、妙にテンポが悪くなってしまっている部分がある、ということ。そして、なにより、主人公の「みんな同じ人間なのに何故憎みあうんだ」的な、云ってしまえばお花畑思考に対して、軽くイライラしてしまったのです。

どちらの側にもそれなりの「正義」とか「大義」があるからこそ、対立が起こるし、それぞれがそれぞれに対して不平や不満を覚えるというのも、極々自然なことだと思うのです。
兎に角、対立というのは、それぞれの背景があって起こるわけですが、その背景にある問題というのが作品のテーマでありながら、割と軽く扱われており、しかも主人公は、ほぼ自動的に「在日外国人」の立場に拠って立っている、という状況なので「これはこれで一面的なものの見方なんじゃない?」と思ってしまった、ということです。


と、まぁ、そんな具合で、正直、あまり良い印象ではなかった作品だったのですが、読み進めていくうちに、少しづつ考えが変わってきました。
というのも、第一章や第二章をエンドというのは、「まだまだ問題が残っている」というのが前提となるエンドで、それに対しても自覚的だったからです。

作品タイトルの一部でもあり、作中で繰り返される「沈黙」という言葉ですが、「どうしようもない現実に対しての諦念」というような意味合いがあったはずです。
取り敢えずの表面的な問題は解決したように思えるけれども、実は根本的には解決されていない、あるいは解決が先送りになってしまっている……そうした状況が作中で幾度も描かれますが、そういう時に「沈黙」という言葉が出てくるのです。

だから、対になる「爆音」がまだ残っているんだな、と期待が持て、その「爆音」こそが最終章だったのです。
そうした意味では、実は結構凝った作りになっている、と云ってもいいと思いますし、章が進むにつれテーマが深くなっていく、というのは王道的でもあり、安心感が持てるものでした。


作品の中には、色々なテーマが入り込んでいるのですが、主人公を軸にして考えて、オーソドックスに「主人公の成長物語」と捉えていくことも勿論可能です。
最終章以前の主人公は、ラストに至っても「社会というシステムの中に呑み込まれていく個人」という枠の中に収まっているんですよね。

「大人になる」って色んな考え方、捉え方があるわけですけど、皮肉な見方をすれば「物わかりが良くなる」というか、「割り切りが出来るようになる」とか、そういう部分ってありますよね。
先に述べた「諦念」とも一脈通じてるわけで、そこで、「俺は俺のやりたいようにやる」とか、「自分が今感じている気持ちに素直でいたい」とか、少年漫画の主人公宜しく頑張っちゃうと、「青臭い」とか「子供っぽい」とか、はたまた「現実が見えてない」とか云われちゃう。

で、そういう「気持ち」だけでは何も解決しない、というのもまた事実なんです。自分の出来る事/出来ない事に境界線を設けないと、自分がボロボロになっちゃいます。
けど、ゲームの中でも「物わかりの良い大人」になってしまうっていうのも、またつまらない部分ってきっとあります(逆の方向性で、そういうのに主人公が呑み込まれていく作品っていうのも、また面白そうな気もするんですが)。

最終章の最後の最後では、主人公も頑張ってくれるんです。
物語の主人公らしくなる、と言い換えてもいいのですが、それ以前は、「ヒロイン」こそが主役に相応しい描かれ方をしているんですよね。
結局主人公には、何の力もなく、女の子達の闘いにただ巻き込まれていく感じ。結局、この物語世界を動かしているのは、メインとなる女の子達だけなのだ、と思わず云いたくなってしまうような……。

そんな主人公ですが、最後の最後で主人公らしくなる。
それを「成長」と捉えていいのかどうか、という問題もありますが、少なくとも「ノベルゲームの主人公らしく」なる、というのは間違いないでしょう。


それはさておき、この無力な主人公に対しても、私は「なんか主人公っぽくないなぁ」なんて思っていました。
実際に行動を起こし、世界を変えていこうとするのはヒロインであり、謂わば、主人公は「優しさはあれど、無力な市井の一人」だったわけで、だったからです。

よくあるタイプのノベルゲームでは、主人公はバカだけども、気持ちだけは熱い。
で、ヒロインの女の子は、何かをその心の中に抱え込んでいるけど、行動を起こすのを躊躇っている。そこに主人公が持ち前の熱さで彼女を感化させ、二人は幸せに……みたいなのってありますよね。

この男女を逆にしたパターンが、本作の主人公とヒロインに近いのかな、と考えたら、それはそれで「アリ」なんじゃないかな、逆にその主人公の「普通さ」が、ヒロインの癒しになって、間接的に手助けしているんじゃないかな、なんて考えるようになりました。

ですので、「主人公があまりにヘタレ」という批判は、本作に対してあると思うのですが、私は段々その部分は気にならなくなっていったのでした。


ただし、物語が進むにつれて、テーマがブレて分かりにくくなっていったというのは恐らく多くの方が感じると思います。
物語の冒頭部、前半部ではやはり「民族問題」が押し出されていき、「共存」の方法を探るというか、そういうテーマを持って進んでいたはずが、途中で『ガンスリンガーガール』的な話と混ざっていき……焦点がボケてしまったような部分があります。

特に、ストーリーのターニングポイントとなる事件の真相で、「え?」と思わず口にしてしまいましたw
これは、好意的に考えるならば、「現実の複雑さを描こうとした」のかもしれません。現実はストーリーの思惑を越えて、意外な所から意外なことが起こるんだ、というメッセージを感じ取ることも出来るわけですよね。

ただ、段々と複雑になっていくストーリーで、拠って立つ足場のようなものが、現実と同じような不安定感を持っていると、読みづらさを感じてしまうし、逆にストーリーの焦点が分かりにくくなってしまうこともあります。
そうしたものを、分かりやすく納得のいく形で描ける人がいたら、その人は物凄い上手な描き手なんだろうな、とも。


長々と私自身も纏まりのないまま書いてきましたが、向き合い甲斐のある作品だと思います。
今も私は「こっちとこっちが和解して共存の道を歩むのはいいのだけど、その為に共通の敵、別のターゲットを策定しなきゃいけないっていうのは、なんかなぁ」なんて、グジュグジュ考えていますw

本作の主張に賛同する人もいるだろうし、逆に「ただの理想論じゃねーか!」と寧ろ、怒ってしまう人だって多いと思うのです。
それでも、この作品が、現代社会を考えるにあたって、一つの機会を提供してくれる、というのも亦間違いない事実であって、本作が同人ゲームたる所以なのでしょう。

社会派で、重めのテーマを持った作品です。
合う/合わないは物凄く別れるとおもいますが、無心に向き合ってみる価値はある、そんな作品だと思いますよ。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2015-03-22 16:05 | サウンドノベル | Comments(0)
2015年 03月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 『一生に一度の、』

b0110969_19562062.jpg

今日の副題 「神様らしさが決め手です」

※吟醸
ジャンル:神様と生活するノベル(?)
プレイ時間:1時間ちょいといった所。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2015/2/23(ふりーむ登録)
容量(圧縮時):98.0MB




道玄斎です、こんばんは。
今日はタイトルがとても素敵だったので、ダウンロードしておいた作品をプレイ。
勿論、タイトルだけでなく、作品内容もとっても良いものでした。というわけで、今回は「都築製作所」さんの『一生に一度の、』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・神様のキャラクターが非常に良かった(後述)。

・伏線などはあるが、基本、素直な作りでそれ故の良さが十全に発揮されていた。


気になった点

・げんこつシーンが多少くどいかも。

・ワイド画面でなくても良かったような……。


ストーリーは今回は私が簡単にまとめておきましょう。
会社をクビになり、ニート生活を送るも、藤吉郎は、今、運気の絶好調にあった。
賭け事では大勝ちし、高級な弁当をタダでもらう……。
人里離れた場所で、その弁当をビールと共に楽しもうとした瞬間、藤吉郎は、そこにあった祠を壊してしまう。そして、その「祠の神様」を自称する女の子が現れ、「祠を建て直せ!」と要求してくるのだが……。

大体、このようなストーリーになっています。


久々に、物凄くグッとくる作品をプレイしたように思います。
冒頭でも書きましたが、何と云ってもタイトルが既に素敵なんですよね。『一生に一度の、』なんて、中々出てくるタイトルじゃありません。
或る意味では、シンプルなタイトルワークでもあると思うのですが、「、」と、少し含みを持たせている所とか、「一生に一度」という言葉の持つ力強さが、プレイする前から期待感を煽ってくれます。

作品内容の方も、とっても素敵で、私好みのものでした。
序盤は比較的賑やかというか、ギャグっぽいテイストですが、徐々にシリアスになっていく、というような流れもしっかりしていますし、強烈で刺激的などんでん返しこそないものの、伏線が張られ、それがラストにちゃんと結びつく作りは、本作が丁寧に作られた事を感じさせます。

又、一時間ちょい(私がプレイした所、一時間15分でした)という尺も良かったですね。
変な引き延ばしや、よどみがなく、すんなりと読了出来てしまいます。
これは、「祠を建て直す」という目的が明確に示されているからでしょう。この目的の遂行に沿う形で、藤吉郎、そして「神様」との同居生活があり、その果てに「一生に一度の願いを叶える」という神様の約束が示されるわけです。


こうした物語の仕掛けも良かったのですが、何より、私が気に入ってしまったのは、神様のキャラクターそのものです。
外見が可愛い、とかそういうのも勿論ありますが、印象的なセリフ(これが後々効いてくるんです)もありますし、藤吉郎とバカをやったりしつつも、そこに「神様らしさ」を凄く感じさせてくれる、そこが何より良かったと思います。

作品のキモとも云える一生に一度の願いに関しても、それがどんな利己的なものであれ受け入れる。
神様という、人間よりも(まぁ、表現するのが難しいのですが)「上」の存在であるにも関わらず、上から目線ではなく、「神様としての目線」に立ち続けるというか。
そういう、一本筋が通った、人間っぽくても、やはり人間とは違う神様のスタンスがこそが、彼女の本当の魅力だったのではないか、と愚案する次第です。


後半からラストに掛けて、それまでに張られていた伏線が回収されていったりと、物語的に展開があるわけですが、それは、奇を衒ったようなものではなく、寧ろ或る意味では予定調和的とも云えるものになっています。
そして、私は個人的に、その予定調和が非常に好ましく感じたのです。

ノベルゲームも段々と進化してくると、所謂(定義は非常に難しいですが)オーソドックスなシナリオに対する抵抗感というのも生まれてきます。
プレイする側からすれば「またこのパターンかよ」という反応だったり、作る側に立てば「このシナリオで受け入れてもらえるだろうか?」という不安が生まれる、とでも云いましょうか。
故にそこに、ヒネリを加えるという事が行われるわけですけど、それもまたいつしか飽和していき、限りなくtoo muchになっていく……。

けど、オーソドックスなものも、ヒネリを加えたものも実は表裏一体なのです。
オーソドックスな作品という基盤があるからこそ、ヒネリを効かせたものが存在感を持つし、逆も又然り、というわけです。

それに、ノベルゲームに限りませんが、ヒネリの効いたものばかり読んだり見ていたりすると、それはそれで飽きてしまうのです。
そうした時、オーソドックスの良さが再認識されたりする事が多いですね。オーソドックスというか、そのオーソドックスさを作った元祖的なものというか。そうしたオーソドックスではあれど「力のある」物語を皆が求める時期っていうのもあるんじゃないでしょうか。

……と、随分脱線してしまいましたが、本作の場合、私は変にひねったものよりも、断然、現在の結末の方がいいと思ってます。例えそれが予定調和的なものであっても、丁寧に積み重ねられた物語は、ちゃんと感動を与えてくれるのです。


気になった点に関しては、先に挙げた通りなのですが、割と、神様と藤吉郎がじゃれ合うというか、そういうシーンが多くて、しょっちゅう藤吉郎は余計な一言を口に出して、神様に殴られてますw
中盤くらいまで、二人が会話すれば殴られる、という状況が続くわけで、ちょっとくどいかも、と思ったのが一点。

もう一点は、ワイド画面の問題です。
ワイド画面を採用しているのですが、スクリーンショットをご覧頂ければ分かる通り、メッセージウインドウはその「枠」と比してかなり小さいですし、そのワイドさが物語に寄与している部分は、あまり無かったんじゃないかな、と。それならば普通に800×600でも良かったような……といういつもの私の主張ですw


つらつらと書いてきましたが、こういう作品に対しては、自分の考えたことや、その良さを言葉を尽くして書こうとすればするほど、その本質から離れていってしまうような、そんなもどかしさを感じる事があります。
ひとへに、私の文章能力の稚拙さに拠るものですが、「考えるんじゃない、感じるんだ」というようなタイプの作品もやはり、あると思いますし、本作はまさにそれだとも思っています。

とってもお勧めの作品です。
一応、吟醸ではあるのですが、もう少し考えて、大吟醸にするかもしれません。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2015-03-09 19:56 | サウンドノベル | Comments(2)
2015年 03月 06日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『昼の国、夜の国』

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道玄斎です、こんばんは。
今日はリハビリがてらに、気になっていた作品をプレイしてみました。
尺こそ15分程度ですが、15分という尺の中に考える材料というか、言い換えるならば、テーマがギュッとつまっていた、そんな印象があります。
というわけで、今回は「晴れ時々グラタン」さんの『昼の国、夜の国』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。


一言で云ってしまえば「荘子的」というか、或いはSFに詳しい方なら『高い城の男』的な世界です。
それ故、舞台は西洋なのですが、どこか微かに東洋的なミステリアスさのある作品になっていたんじゃないかと思います。

冒頭部で語られる主人公の状況は、「妻の忘れ形見の娘が死んでしまった」、というもの。
主人公はこれから一人で生きていかなければいけないわけです。

更に、主人公を気遣ってくれる友人とのやり取りを通して、主人公が「不思議な夢を見ている」という事が明かされます。

タイトルに顕著なように、ここに「二つの世界」が現出する事になるわけです。
つまり、「娘が死んでしまった世界」、そして「娘が生きている世界」です。それをそれぞれ「昼の国」「夜の国」としている、という構造です。


この作品の面白さの一つは、その「昼の世界」「夜の世界」に主従関係が見られないところにあるんじゃないかな? と思いました。
普通、こうした云ってしまえば「パラレルワールド」があるような作品って、割とそれと分かるような感じで「基本の世界」というか、「主」の世界があって、それとは別の「もう一つの世界」(=従の世界)がある、という語られ方をするモノが多いのですが、本作の場合、読み進めていく内に、どっちがどっちなのか、分からなくなってしまうようなところがあるのです。

勿論、冒頭で示された、娘が死んでしまって呆然としている、という状況あってこその物語の展開ですから、その意味で、「昼の世界」が「主」の世界なんだ、と云う事も出来るわけです。
しかし、読み進める内に、そうした最初の状況設定そのものも、何だかあやふやで捉え所がないように思えてくるから不思議です。


また、ラストが他のパラレルワールドモノ(と云ってもいいのかどうか、少し躊躇いはありますが……)とは、一味違っていたという点も大事でしょう。
それぞれの世界の不確かさというか不安定さを以て、「どっちが本当の世界なんだろうね?」と、問い掛けを残しつつ、その余韻を楽しませる、という作品が多いような気がしているのですが、本作はそのタイプではありません。

また、「従の世界」だと思っていた世界こそが実は「主の世界」だったのだ! みたいな『マトリックス』タイプとも違います。

もしかしたら、この物語には或る種の寓意があって、「選択する」ことの意味のようなものに焦点があるのかもしれませんね。流石にちょっと深読みかもですがw


というわけで、小粒ながらもちょっと考えさせられる良い作品でした。
余談ながら、私はこの作者さんの描く「女性キャラのクールな目元」が大好きですw 冷めた目をしつつも、そこに何かしらの情念のようなものが見え隠れするというか、そういう魅力がありますよね。

荘子やらパラレルワールドやらを知っていれば、より一層楽しめる、というか考える事が出来そうな作品です。尺は小粒ですから、気になった方は是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-03-06 19:31 | 日々之雑記 | Comments(0)
2015年 01月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 『チャイルドポルノ・パンデミック』

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今日の副題 「よく、ふりーむの審査を通ったなぁ……」

ジャンル:チャイルドポルノノベル(?)
プレイ時間:40分程度。
その他:選択肢なし、一本道。15禁。
システム:NScripter

制作年:2014/12/27
容量(圧縮時):95.2MB




道玄斎です、こんにちは。
年末年始の忙しさが、何とか一段落した今日この頃ですが、年末にまんざら知らない仲でもないガムベースさんが、新作をお出しになった、という話を聞きまして、恐る恐るプレイしてみた、というわけです。
というわけで、今回は「チクル妄想工房」さんの『チャイルドポルノ・パンデミック』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・「熱量」をヒシヒシと感じる。

・絵が上手くなくてもモザイクを掛ける事で、立派な「イラスト」にしてしまうなど、工夫アリ。


気になった点

・読了しても、オチの部分が分かりにくく、伝わってくるものが少ない。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
妹と暮らす男が児童ポルノの世界に生きようとする物語です。
選択肢はありません。
プレイ時間は30分~1時間です。
1作目『よみがえる思い出』から続く話です。
なので『よみがえる思い出』を先にプレイされていると、細かい所がわかりやすいかもしれません。
性描写があるので年齢制限は15歳以上。

こんな感じ。
一応、処女作『よみがえる思い出』との連続性があることが書かれているのですが、前作のプレイが「必須」かと云われれば、そんな事はないだろうな、と思います(エピソードが再生産されたり、とか見所はあるんですが)。処女作で敢えて語られなかった「結末」部分が、本作の発端部になっている、という構造ですね。
尤も、『よみがえる思い出』だけではなく、『やがて僕の訪れる公園』との微かな関連性も、亦感じる事が出来るのではないかと思います。


にしても……よくまぁ、ふりーむの審査を通ったなぁ……という気がしますw
直接的な性行描写みたいなものはないのですが、かなり際どいところまで描かれており、人を選ぶ作品である、という事はほぼ間違いなく云えると思います。

それはさておき、昨年末くらいから、創作物に対して「熱量」という言葉を以て、評価する流れがあるな、と何となく感じています。
つまり、その作品なりの巧拙ではなく、そこに込めた作者の「情熱」というか、力の入り具合を一つの評価軸にする、という潮流です。

ちょっと堅めの文学理論なんかでは、「作者」というものを考慮しない、というのが一般的だと思うのですが、「熱量」という概念は、どうしたって作者と結びついてしまいます。
作者というものの存在抜きには、「そこに込めた情熱」=「熱量」は語れないからです。

文学の研究では、作者は死んでいるか、或いは、自分達とは距離のある所にいるわけですから、作者を考慮しない、という策が採れる一方で、フリーのノベルゲームの場合、作者とプレイヤーの垣根が非常に低いんですよね。
作者自らが、サイトやブログ、或いは近年ではツイッターなどで作品について、自身の口からそのテーマを述べたり、という事は良くあります。
私なんかも経験があるのですが、或る作品についてレビューを書いた後で、「あの作者さんは、ブログで○○って云ってたから、あれは違うんじゃない?」と教えて貰ったり、或いは、作者さんその人から、「実はあそこの部分は○○で」とメールを頂く事も屡々あるわけです。

この、作り手と受け手の距離が極端に近い、というのが、フリーのノベルゲームの大きな特徴の一つだと思います。受け手としてゲームを楽しんでいた人が、ある日発奮して作り手に回る、という事もよくありますしね。
ともあれ、本作『チャイルドポルノ・パンデミック』では、作者ガムベースさんの熱量が、厭という程伝わってきます。

この作品が、何をテーマにしているのか? 何を訴えたいのか? そういう事は良く分からないにしても、です。
「良く分からないけど、なんか凄い力が入ってる……」
それが、私の、本作をプレイしての感想でした。文章は読みやすく、ストーリーの流れも一応追っていける。しかし、ラストシーンが何だか腑に落ちない、というか、良く分からない。けど、強烈なインパクトがそこにはあり、独特の引力も存在している、と思うのです。


ちなみに、作中で主人公が展開する思考は、所謂「抑止論」です。
つまり、「チャイルドポルノを供給し、欲望の捌け口を作ってやる事で、『実際の犯罪』を抑止しているんだ」という考えです。

冷静に考えれば、これには問題があります。
「確かに、チャイルドポルノの供給により、実際の犯罪は抑止出来るかもしれない。しかし、そのチャイルドポルノの被写体の女の子は、みんなの犠牲になるって事なんじゃないの?」というような、問題点です。

救われる人数が多ければ、多少の犠牲は無視しても構わない、という事なのか、それとも、主人公自身が、こうした議論の可能性を考慮出来ない程、何か追い詰められているという状況なのか……決定的な答えは出せないのですが、読んだ人間に対して、何かモヤモヤっとさせる、そういう作りになっている事は確かでしょう。


掲示板なのかツイッターなのか定かではないのですが、主人公が自身の行動や考えを表明する場があり、それに対して、レスをつける人がいる、という場面が何度か出てきます。
そのレスというのが、また困った事に、「妹を無理やり犯して屈服させちまえ!」というようなものでしてw
で、現実の掲示板とかでも、そういう事を書く人っていますよね。けど、それって「ギャグ」で書いてるんじゃないでしょうか? それに対して、「妹にんな事できねーよwww」みたいな、そういうレスが来る事を折り込み済みで、謂わば「遊び」としてのやり取り、だと思うんです。

しかし、本作の主人公は、そこで、そういうレスに対して、一々真面目に受け取り、考え込んじゃうんですよ。
ギャグとしての発話に対し、シリアスに受け止めていく……こういう認識のズレが、作品の(ギャグ的な)面白さであると同時に、主人公の性格的というか内的な問題をあぶり出しているような、そんな気がしました。


色々気に掛かる部分はあるんです。
例えば、主人公の妹「ありさ」は、小学五年生、六年生でありながら、その発話はかなり大人びたものですし、小学生じゃ使わない(使えない)ような言葉もポンポン使って、兄貴を罵倒します。
こういう部分から、妹ありさの存在に、何かを見いだそうとするのも一つの作品の楽しみ方だとは思うのですが、私の手には余るので、深入りは避けましょうw


もしかすると、「チャイルドポルノ」は表象というか、いくらでも付け替え可能な「服」みたいなもので、根本に、チャイルドポルノも包含する、何か「本当に描きたいもの」「本当に主張したい何か」があるのかな? なんて事は考えましたね。


云ってしまえば、良く分からない作品です。
そして、強烈に人を選ぶ作品でもあります。
けれども、他にあまり類を見ない、熱量と、インパクトを持った作品でもあります。

本当に、「一般的な評価」を下しにくい作品で、読者がそれぞれ、感じたものが、それぞれの評価になる、という、ちょっと逃げを打って、本稿を〆たいと思いますw



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-01-10 15:46 | サウンドノベル | Comments(4)
2014年 12月 19日

フリーサウンドノベルレビュー 『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』

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今日の副題 「魔女は飛ぶものです!」

ジャンル:ファンタジックADV
プレイ時間:初回は20分程度。トータルで1時間くらい。
その他:選択肢アリ(但し、実質一本道みたいなもの)
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2011/5/14(Ver.1.00、本レビューはVer.2.02にて)
容量(圧縮時):59.0MB




道玄斎です、こんばんは。
忙しさがピークに達している今日この頃ですが、ノベルゲームに飢えて飢えて仕方ないので、ついに遊んじゃいました。たまたま、物凄くテンポの良い作品に出会えて、しかも、ちょっと優しい気持ちになれるような、そういう作品だったので、ご紹介致します。
というわけで、今日は「藍恋工廠」さんの『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・気持ちよくプレイ出来る抜群のテンポ感。

・しかし、意外にも重層的な物語の構造。


気になった点

・Extraのストーリーは、上手く本編に織り込んでも良かったのかも。

・テンポの良さと裏返しに、やや情緒的な面が足りない部分も。

ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。
気象を司る魔女が、気象制御中、事故で落下し、地上人に姿をさらしてしまう。
そのことが原因で左遷されるのだが、その先でまた、同じような事故が起こり……

クリア後に有効になる選択肢により、物語は二つに分岐します。
プレイ時間は全部で1時間半程度です。

こんな感じ。



さて、以前ご紹介した事がある『娘子隊皓旗』の作者さんの作品です。
ちょっとファンタジックで、心温まるような、そういう作品でした。

あとがきを読むと分かるのですが、「気象+魔女」という組み合わせの面白さを発見し、それを物語として作っていった、という事のようです。

確かに、巷に溢れる「魔女」というのは、かなりステレオタイプでして、攻撃的な超自然的な力を行使でき、退廃的だったり、妙にミステリアスな造型だったり……という事が多いのですが、本作に出てくる「気象魔女」、フィレルは明るい「女の子」というような感じですし、一般にイメージされる「魔女もの」とは一味違う作品になっている、と云えるでしょう。

この「気象魔女」が、本作のオリジナリティの柱だと思うのですが、実は「天候魔女」と呼ばれる存在は「実在」していました。
……と、この事を突き詰めていく為に、少しだけ久しぶりに脱線させて頂きますw


そもそも、魔女ってなんでしょう?
史実との接点、という所では、やはり「魔女狩り」で摘発された人々、というのが第一にイメージされてきますが、ご存じの通り、「魔女狩り」で摘発され、結果処刑されてしまった人々の中には、男もいますし、実際には冤罪だらけだったわけです(当たり前ですね)。

ただ、その初期の段階では、「こいつは、どうも魔女じゃないか?」と思われるような、疑わしい女性が摘発され、それが「魔女狩り」という大きなムーブメントになっていったわけです。
つまり、「魔“女”」ですから、最初は「女性」が魔女と目され、その後、概念が拡大していったのです。

問題は、どんな女性が魔女とされたのか、という所なんですが、これには二つの系統があります。
一つは、「薬草などの知識が豊富で、占いなども行う女性」の系統です。独自に伝承された医学的・薬学的な知識を持ち、占いなどの神秘的な分野に通じていた人々ですね。

例えば、『魔女の宅急便』の映画を見ると、キキのお母さん(彼女も亦魔女なのです)が、薬を調合しているシーンが描かれています。これは、まさに第一のタイプの魔女の姿です。

もう一方のタイプの魔女は、、「共同体の中での嫌われ者や、社会的な弱者」の系統です。
前者と比較して、「神秘=魔的」な力こそ、あまり感じさせないものの、或るコンテクストに於いて、「有害」と見なされていた人々、と云えましょう。

この二者を比較すると、私達が一般に思い浮かべる魔女は、やはり前者の魔女の系統、という事になりましょうか。


さて、肝心の天候魔女、なんですが、どうも、やはりそれも前者の系統なんじゃないかな、と思います。
本作に於ける気象魔女というのは、「自然現象」として私達が受け止めている、降雨や嵐、或いは快晴、虹などを管理する存在です。そこに「善悪」の概念は存在せず、基本としては、予定表に従い、粛々と気象を管理していく、というのがその姿のようです。
しかしながら、自分達の気象管理によって困る人々がいる、という部分で、主人公フィレル等が悩むシーンもあり、気象魔女のあり方そのものに一歩踏み込む描写もある、とお伝えしておきましょう。

それはさておき、「実在」の天候魔女とは、ズバリ、「悪天候を呼び寄せ、作物の実りを悪くしたりする存在」です。つまり、「天候魔女」という事で告発され、処刑された人もいた、という事です。
この天候魔女は、やはり天候を操る、という神秘的な力を持っている為、私は一番目のパターンの魔女のヴァリアントだと思いますよ。

長々と説明してきましたが、実は天候・気象を操るとされる「魔女」がいた、というのは事実なんですね。
ただ、まぁ、説明した通り、本作の「気象魔女」というのは、そこに「善悪」の基準や指針があって、天候を操っているわけではなく、「仕事」として天候の管理をしている、という造型で、それ故、自らの引き起こした天候によって苦しむ人々を見て、心を痛める事もあるわけです。


物語は、前述の通り、淀みなく、流れるように進んでいきます。
本当にテンポ良く、気持ちよくプレイ出来る、というのは物凄い高ポイントなんですが、一方で、「ここはもうちょいじっくりと描写しても良かったかな」と思える所もあるのです。

その一つが、今お話した、「気象を操る事によって、人々を苦しめる事がある」という問題です。
気象魔女の存在そのものに関わる重大な問題だと思うのですが、その悩みは、フィレル達の感情を揺さぶり、行動の発端にはなるんです。
けど、その問題に対して、フィレル達は何か自分なりの結論を出す、という事はないんですよね。云うなれば、その問題は、サラリと流れて行ってしまうわけです。

気象魔女というオリジナリティと、そのオリジナリティ故に生じる悩みなので、もうちょっと掘り下げて描写されても良かったかな、と。
また、悲しさなら悲しさ、嬉しさなら嬉しさを、もっとジックリと表現する部分、つまり情緒的な表現が少し物足りなかったかな。


一方で、作品は相当重層的に出来ています。
そこの厚みに関しては大いに評価したい所。
ネタバレになりそうなので、少し自粛しながら話すと、気象魔女達が積み上げてきた「物語」が、物語前史としてあって、その上に、本作の一番の主人公という立ち位置のフィレルの物語が載っかっている、という作りです。

勿論、その物語前史は、ちょくちょくと顔を出し、或いは仄めかされたりして、フィレルの物語を楽しみながら、自然と、その深さを感じられるようになっています。
で、取り敢えず本編を読了すると、Extraの一つとして、物語前史そのものを読む事が出来るようになっていました。

まさにExtraに入るに相応しいお話なんですが、私は、何となくのレベルで、「これ、本編に上手いこと溶け込ませちゃった方がグッときたかも」と思ってしまったんですよね。

本編があって、そこでの物語に決着が着く。
その本編を補完するようなExtraがある。
Extraを見ると、本編の内容が良く分かる。

って事なんですが、それだったら、最初っから本編に、Extraの内容を織り込んでしまえば、本編のラストでもっとガツンとインパクトがあったんじゃないかな、と。


私はこうやってお気楽に書き飛ばしてますけど、実際にやろうと思ったら結構大変だというのも分かりますw
だって、時間軸が違うわけですから、場面を上手く変えてやる必要があり、また主人公も違うわけで、視点の管理も必要になってきます。

上手く出来れば、効果的かもしれませんが、実際に上手く出来るかどうか、は分からない。
まぁ、何となく私が感じたこと、って事でご容赦下さいませ。


イラストはついていませんが、そこが却ってプレイヤーのイマジネーションを掻き立てますねぇ。
最近は、スマホ向けのノベルゲームなんてのも良く目にするのですが、「イラストがない」とか「イラストが綺麗じゃない」とか、そこのビジュアル部分が評価軸になっている、そうしたレビューを良く見かけます。
そうした意見だって当然あるとは思いますが、そこがそのレビューの主軸になっちゃうってのはなぁ……と、常々思っています。

優しい気持ちになれるような、そして同時にスピード感のある作品を探している方は、是非プレイしてみて下さい。


今日は脱線多めでしたけど、こんなところで。
それでは、また。



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by s-kuzumi | 2014-12-19 20:19 | サウンドノベル | Comments(2)