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2013年 05月 06日

フリーサウンドノベルレビュー 『箱弐伍遺体』

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今日の副題 「ノベルゲームで2ch系ホラー」

ジャンル:(2ch系)現代ホラー
プレイ時間:本編2時間半~、オマケまで入れると3時間程度。
その他:選択肢無し、一本道。※15歳以上推奨
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2012/09/22(ver.1.01)
容量(圧縮時):181MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、本当に久々のノベルゲームのレビューになります。一応、このブログの本筋って事なんですが、ここ数ヶ月、どうにもこうにも、本筋の活動が停滞していたので、こうして作品をご紹介出来る事、嬉しく思っています。
というわけで、今回は、「箱弐伍遺体」製作委員会さんの『箱弐伍遺体』です。
良かった点

・気合いの入った演出。特にOPムービーは必見!

・自殺志願者達が、各々の事情(秘密)を語っていく、という趣向が興味深い。


気になった点

・2ch系の怖い話に親しんでいると、恐さが半減する。

・結構難しい言葉がサラッと出てきたりする。もう少し易しい表現でも良かったかも。

ストーリーは、公式サイトの方から引用しておきましょう。
季節は秋。
ネット上の掲示板を介して、とある場所へと集まった自殺志願者達。
「他人を詮索しない」ことをルールに集まった彼女らだったが、実行場所として選んだマンションのエレベーターが突如停電で停止してしまう。
 システムの復旧を待ちつつ全員が暇を持て余す中、痺れを切らしたメンバーの一人が沈黙を破る。
「ねえ、みんなさ、今まで誰にも言えなかった秘密、とかって…ないの?」
「私はあるよ。どうせみんな死ぬんだし、墓まで持っていくくらいなら今ここで語っちゃわない?」
 一人を皮切りに、重い雰囲気の中、それぞれがそれぞれの秘密を騙り始める。

こんな感じです。

さて、本作、プレイしてすぐに気付くのは、演出の細やかさです。
冒頭は、インターネットの自殺志願者をターゲットにした、所謂「自殺チャット」でのチャット場面なんですが、これがまた非常に良く出来ていて、「良く作り込んであるなぁ……」と感心しました。
チャット場面を作り込んだ作品というと、『ブラックオクトウバー』がありましたが、あれともまた少し違った感じ。どちらかと云えば、最近巷で大人気の無料通話/無料メールアプリのLINEのように、ポップアップみたいな感じで、フキダシが出てそこにメッセージが記されている、という、そういうタイプですね。

冒頭から10分くらいは、ずっとこのチャット画面で、物語が進行していくわけですが、自殺チャットですから、チャットメンバーは自殺の段取りっていうか、そういうのを話し合っていくわけで、単調になりがちな場面も刺激的で、飽きずに読んでいく事が出来ます。
そして、更に話が進んだ所で、OPムービーが入るんですが、これが気合いの入った、良いムービーだったと思います。所謂ギャルゲーのそれとは違って、ホラーである事をヒシヒシと感じさせるような不吉で歪な感じで、このOPは必見ですよ。


登場人物達は、飛び降り自殺をする為に入り込んだマンションのエレベーターの中に閉じこめられてしまいます。そこで、それぞれの抱えている秘密、もっと云ってしまえば、自殺を決心するに至った経緯を語り合っていく……というのがストーリーの芯の部分になります。

何て云うのかな、こういう、秘密の告白とか、或いは懺悔みたいなものをのぞき見する、っていうのは、人間の好奇心を刺激する設定ですよね。日本に於ける源流を辿っていけば、室町時代に成立したとされる『三人法師』とかね、その辺りに行き着くんじゃないかな? なんて思っています。

ともあれ、こうした自殺志願者という、ワケアリの登場人物達の秘密を見ていく、という趣向が、この作品の眼目の一つである事は間違いなく、非常に個性的なものになっていたと思います。


一方、語られていくそれぞれの秘密の中身に関しては、怪談・ホラー・都市伝説みたいなものが好きな人だと、あまり恐さを感じないかもしれません。
というのも、それぞれの女の子の語る秘密の話には、それ系が好きな人にとってはお馴染みのネタが多く使用されているからです。そもそも冒頭のチャット時から、「ryomen」(リョウメンスクナ)、「8shaku」(八尺様)、「kisaragi」(きさらぎ駅)、「kashima」(かしまさん)といった具合に、2ch系の怪談に詳しい人ならピンと来るハンドルネームが使用されていました。

まぁ、本作は「2ch発の怖い話を題材にしたノベルゲーム」って事なので、そこを突くのはどうか、という気はしますが、告白の中身である、その怖い話がお馴染みのものだという事で、恐さが半減してしまうというのは、ちょっと勿体ない部分ではあります。

もう一点、気になった点を挙げるとすれば、普段、あまり使わないような言葉が結構出てきて、何となくのレベルですが、文章のテンポを妨げていたかもなぁ、という辺りでしょうか。例えば「能弁」とかですけど、この手の言葉ってあまり普段は使いませんよねぇ?
一応、若い女の子達の語りなわけですから、そこらへんは、もう少し砕けた感じにしても良かったのかな、と。


大体、こんな所でしょうか? 
あっ、そうだ。オマケについても言及しないと。本編を読了すると、オマケのシナリオ(?)を読む事が出来るのですが、何と9つもの怪談(や、心霊のいい話)が収録されています。これも、「洒落こわ」とかを見ていると、「ああ、あの話ね」とすぐに分かっちゃうんですが、スレッドで語られた話を少しアレンジしてあるものもあったりして、お腹いっぱいになります。
個人的に好きなのは「天使です、これは」というお話。全然怖くない、いい話系で、どなたにも安心して勧める事が出来ます。

日頃から、「洒落こわ」を見ていたり、それ系のまとめサイトとかを見て回っていたりすると、恐さが半減してしまう、という問題も持っていますが、逆に、2ch系の怪談に詳しくない、という人がプレイすると、作品の魅力が十二分に引き出されるような気がします。とはいへ、元ネタを知っている人でも、ムービーとか力が入っている作品だと思うので、是非是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2013-05-06 20:36 | サウンドノベル | Comments(0)
2013年 02月 11日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『入試直前対策ソフト』

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道玄斎です、こんにちは。
また、ちょっと間が空いてしまいましたね。今日は、今の季節にピッタリ(?)な作品を見つけてきました。プレイ時間は凡そ十分程度ですので、番外編に。
というわけで、今回は「rebeist」さんの『入試直前対策ソフト』です。作者さんのサイトが見つからない為、ベクターのリンクを張っておきます。



ノベルゲームは、割と季節の運行に敏感なゲームジャンルで、バレンタイン、クリスマス、エイプリルフール、ハロウィン……等々、その時々の定番イベントを踏まえた作品がリリースされたりするのですが、入試をテーマにした作品は驚くほど少ないです。管見の及ぶ限りでは皆無、と云っても良いくらい。
そんな滅多にゲームで取り扱われる事がない、入試をテーマにしたのが本作です。

ゲームの内容としては、日本一の西大を受験する為、一年の浪人期間を経た主人公が、受験に立ち向かっていく、というもので、「入試直前対策」になるような、裏技(?)の紹介があるわけでも、勉強のおさらいが出来る、という訳でもありませんw

試験官の教授、准教授、おじいさんの受験生など、キャラクターは意外と多彩で、しかもギャグっぽいテキストで進んでいくわけですが、受験生らしい緊張感は保持されたままです。私もプレイしながら、少し背筋が伸びるような……そんな感覚を感じてしまいました。

ちょっとした笑い所はあるわけですが、単純に受験を終えるまでを描くのであれば、わざわざ取り上げなかったと思います。本作には、もう一本、前年度に先に合格してしまった(そして、現在疎遠になっている)友人、という軸が存在していて、それがストーリーに奥行きを与えています。
何のために浪人したのか? 何故、その西大を受験しようとしたのか……。そういう所が、回想シーンを通じて語られ、単純な受験追体験ノベルとは一線を画している印象。

ただ、もう少し、ラストに工夫があっても良かったかな、という気はしますね。
読了すると、そのまま余韻も何もないままに、終了してしまうタイプのシステムなので、せめてタイトルに戻るようにする、とか。
内容的な部分で云えば、ほんの少しアフターストリーが付いていたりとか、主人公と友人の関係をもう少しフォローするような、そんな文脈があれば、より完成度が高くなっていたような気がしています。


大体10分程度で読了出来る作品です。
受験生は、ゲームをプレイするヒマがあったら最後の追い込み、頑張りましょうw
受験なんてとっくのとうに終わってしまった私達は、あの頃を少し思い出してみるのも悪くないかもしれません。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2013-02-11 14:32 | サウンドノベル | Comments(0)
2013年 01月 14日

フリーサウンドノベルレビュー 『い~びる☆あいっ!』

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今日の副題 「彼女の瞳はイービルアイ!?」

ジャンル:中二病お嬢様ラブコメAVG
プレイ時間:一ルート3時間半~4時間程度。コンプリートまで10時間ほど。
その他:選択肢アリ、バッドエンドも搭載。ヒロイン六人。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2013/1/11
容量(圧縮時):428MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、私も完成を楽しみにしていた作品のご紹介。例によってVIP系の作品ですよ。
というわけで、今回は、「い~びる☆あいっ製作委員会」さんの『い~びる☆あいっ!』です。
良かった点

・VIP系ならではの、手堅いクオリティ。

・寮長のキャラクターが、ごちゃごちゃしがちな前半~中盤にかけて、一服の清涼剤に。


気になった点

・作品の特徴とも云うべき中二病がイマイチ活きてこなかった。

・前半~中盤がやや疲れる。

ストーリーはサイトから引用しておきましょう。
主人公こと要 真緒(かなめ まお)は大学出たての教師。
教職浪人していたが、コネで臨時採用の教師としてとある巨大お嬢様学園に赴任することになった。
念願の教師になれたことを喜ぶ主人公。しかし彼の採用には条件があった。
それはとある共通の問題を抱えた生徒を集めた寮の監督をすること。
その問題とは・・・みんな重度の『中二病』だということっ!
お嬢様の財力とぶっ飛んだ言動で中二病を現実にしようとする彼女たち。
果たして彼の教師生活はどうなってしまうのか!?

こんなストーリーになっています。


さて、楽しみにしていた作品がついにリリースされていたので、脇目もふらずにプレイしていました。
VIP系の作品は、企画段階で物凄く楽しそう、面白そうな作品が多いのですが、如何せん、完成しない、という事が多々あるので、ヒヤヒヤしながら見守っていたわけですが、ついに満を持してのリリースです。

ストーリーを見て頂ければ分かる通り、新任非常勤講師の主人公と、中二病お嬢様達のラブコメ、というのが本作の端的な纏めになりましょう。
このヒロイン達が中二病、というのが本作の大きな特徴なわけですが、「雷の使い手」、「冥界の騎士」、「自称ヤンキー」、「自称男」、「ロックじゃないし」が口癖の子など、バラエティに富んでいます。
しかし、自称ヤンキーってかなり痛いですよねw 私は高校の時のクラスメイトH君を思い出してしまったのですが、それは又別の話……w

ちなみに、みんな大好き「阿部さん」も、ちゃんと出てきます。しかもヒロインの一人として。
彼女が「自称男」ですね。「阿部さん」は、VIP系の作品の定番ネタですけれども、一発ネタではなくて、ちゃんと一人のヒロインとして造型されているのは珍しいかもしれません。

全体的なクオリティも流石の一言。
イラストも可愛いですし、OPムービーも凝ってます。少なくともガワだけ見れば文句無しの作品です。そういえば、タイトル画面をずっと放置しておくと、ちょっとした変化が。こういう所の作り込みも面白いですね。


さて、本作は、中二病のキャラクターがわらわら出てきて、みんな主人公大好きでまとわりついてくるわけですので、全体的にかなり賑やかな感じです。
ただ、気になった点とも、ここは関わってきます。というのも、キャラの掛け合いを推進力にしてストーリーが進んでいくタイプですので、結構、そのやり取りで疲れてしまうんですよね。共通ルートも長目ですし、「ストーリーがどこに向かおうとしているのか?」が分からないままに、キャラクターの掛け合いが延々と続くと、プレイしていて少しフラストレーションが溜まるというか、焦れったくなってきてしまいます。途中で出てくるシューベルトの『魔王』のネタには思わず笑ってしまいましたがw

しかし、救いも当然あって、それは寮の中での唯一まともな女の子、寮長の存在です。
彼女のしっかり者でみんなのお姉さん的な存在が、暴走寸前のストーリーに歯止めを掛けてくれます。この寮長のキャラクターは安心感があって良いものでした。彼女のルートはちょっとぶっ飛んでましたけどw

上手く、中二病と女の子の抱える問題がリンクしていたシナリオは、主人公の幼なじみ莉緒のシナリオでした。莉緒の抱えるトラウマや中二病が、ちゃんと過去とリンクし、個別ルートに入ってからの推進力になっていたわけで、これは中々良いシナリオでした。阿部さん……じゃなかった阿部高さんのルートもそういう部分はありましたけどね。
一方で、他のヒロインのルートは、どちらかと云うと、中二病という設定が女の子の属性というか、フレーバーの一つ、という感じに留まっていたので、ちょっと残念でした。

中二病を扱った作品としては、『電波電波カプリッチョ!』というものがありましたが、そちらは、中二病の描写そのものが面白く笑えるものになっていたのに加えて、その中二病が、ヒロイン固有のルートへ上手く繋がるような、そんな作りになっていて、非常に巧みでした。
やはり、中二病というヒロインの一大特徴が、シナリオの核心へ繋がっていくような……そんな作りの方が、中二病のノベルゲームとしては正統派(?)な気がしています。とはいえ、本作をギャルゲーとして捉えれば、賑やかなヒロイン達ですし、中二病のやり取りもフレーバーとはいえ結構楽しめるものになっているはずです。

ちなみに、私が攻略した順番は、芽衣子→和→奏→せえら→莉緒→寮長でした。一番好きなタイプは……芽衣子ですね、やっぱりw


大体こんなところでしょうか。
長尺でプレイのしがいもある作品です。オマケを含めてコンプリートまで凡そ10時間。
ちょっと共通ルートが怠いかもしれませんが、是非全員のルートをコンプリートしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2013-01-14 16:30 | サウンドノベル | Comments(0)
2013年 01月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『非常口さんと恋する女の子』

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道玄斎です、こんにちは。
新年一発目のレビューです。最近、この界隈で元気の良い作者さんの作品。
というわけで、今回は「Tears Lab.」さんの『非常口さんと恋する女の子』です。


最近、ふりーむ! を中心に凄く元気の良い作者さんが居ます。
それが本作『非常口さんと恋する女の子』の作者、Tears Lab.さんです。精力的に作品をリリースしており、私も『ブランコ日和』なんかはプレイしていたりします。

さて、本作ですが、一見すると「ネタゲーか!?」と思えてしまうような、インパクトのある設定が特徴の短編恋愛ノベルゲーム。
主人公の女の子は、どこかの企業でバイトをしているという設定。そして、そこで働いている非常口さん(非常口のピクトグラムの擬人化)に惹かれていき、恋をしていく……というお話です。

話の進行、流れとしては、非常にオーソドックスな恋愛ゲームのそれなのですが、憧れの相手がピクトグラム、という所で物凄い差別化が図られていますw
途中で御手洗さんという、女子トイレのピクトグラムのライバル(?)が登場してきたりと、ちょっと笑えるところも。こういう所でピクトグラムが単なる一発ネタで終わらないのもいいですよね。非常口さんだけがピクトグラムだけよりも、他にもピクトグラムのキャラが出て来る事で、作品を貫くアイデアが活きてくるわけです。

本作の一番光っていた点は、やはりこのピクトグラムに恋をする、という設定でしょうね。
これが、ピクトグラムではなく、普通の人間であれば、全く普通のヒネリのない恋愛ノベルゲームになってしまっていたハズです。
それが、ピクトグラムという記号のようなものに恋する事によって、ともすれば表出してしまう「生臭さ」みたいなものを感じる事がありません。

これが人間同士の恋愛であれば、(例えどんなに相手が美形であろうとも)そこにクサさとかが現れてしまったり、或いは、先に述べたように、生臭さを感じてしまうこともあるでしょう。
キャラクターの造型としても、非常口さんは、良い人だけれども無味無臭のような設定になっています。非常口さんがピクトグラムでなければ、絶対に「薄い」キャラになっていたはずです。しかし、その薄さをピクトグラムである、という個性が補強しており、且つ、ピクトグラム故の薄味具合が、やり取りや、恋愛に於ける生臭さを感じさせない、という絶妙なバランスなのです。

内容としては、非常にシンプルな作品なのですが、恋の相手が非常口、という設定が強いインパクトを残し、ありふれた物語にアクセントを加えています。極限まで個性が排除されたピクトグラムが相手だからこそ、逆に個性が出ている、というちょっと変わった構造で面白いですね。
一見ネタゲーかと思いきや、これは中々したたかに計算された作品になっていますよ。


大凡、こんなところでしょうか。
内容だけ抜き出してみれば非常にシンプル且つ、ありふれた恋愛モノなのですが、意外と楽しく読めてしまう仕掛けに脱帽です。
プレイ時間は10分程度。サクッと楽しんでみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2013-01-02 15:44 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 12月 21日

フリーサウンドノベルレビュー 『Subito Quartet』

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今日の副題 「美少女達と夢の四重奏」

ジャンル:学園恋愛ADV
プレイ時間:一ルート1時間半くらい。コンプリートまで三時間くらい。
その他:選択肢アリ。初回はルートが限定される。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2012/12/15(Ver.1.01)
容量(圧縮時):47.0 MB




道玄斎です、こんばんは。
大分ご無沙汰してしまいました。色々と忙しかったりで、中々ゲームプレイの時間が取れなかったのですが、何とか、久々一本作品をプレイ致しました。
というわけで、今回は「ノンリニア」さんの『Subito Quartet』です。音楽が一つの主題になっている、少し珍しいタイプの作品かもしれません。
良かった点

・昨今珍しい、超甘々な恋愛ノベル。好きな人には堪りません(但し、気になった点とも関わる。後述)

・舞台設定や、四重奏と云った、「音楽」が絡む事により、普通の恋愛ゲームと差異化が図られている。


気になった点

・強烈に事件らしい事件は起こらない。割と淡泊に進行していく。

・微妙にテキスト表示などの詰めが甘い部分が。

ストーリーは、フリーゲーム夢現から引用しておきましょう。
―――ねぇ、知ってる?
 うさぎは、さみしいと生きていけないんだよ――

幼い日に出会った少女の夢は、
   何かの始まりを予感させた。

「失礼しますっ!!!
   私達と一緒に、四重奏(カルテット)をやってください!!」

突然開け放たれた扉は、
   新たな日常の訪れをもたらした。

とびっきりにぎやかで、ちょっぴり切ない恋物語
選択式学園ほのぼの恋愛ノベルゲーム "Subito Quartet"

―――君は、ボクを見つけられるかな?―――

こんな感じのストーリーになっています。


久々にそれなりの尺を持った作品をプレイしたわけですが、意外な程オーソドックスな作品だな、というのが第一印象です。イントロ部分で、ヒロインの一人花音から、「四重奏をやろう!」と持ちかけられる下りなんかは、独自性があって上々の出だしだとは思うのですが、読み進めていくと、割とありがちなとこに落ち着いちゃってるのかな? という印象が。

ただ、女の子(ヒロイン)と音楽という二つの方向性がちゃんと絡み合っているので、意外な程テンポ良く楽しく読めるのも事実です。
そう、多くの恋愛ノベルゲームがそうであるように、本作も亦、ヒロイン一人一人が抱えている問題、があるわけです。そしてそれが、四重奏をやる上で避けて通れないような、「音楽絡み」の問題を抱えているという点、オーソドックスながらも、基本を踏まえた作りで安心感を持ってプレイ出来ます。

ヒロインの女の子も、一番ヒロイン然としているチェロ担当の花音、男の子口調の元気少女でヴィオラ担当の由美、ツンデレ生徒会長にしてヴァイオリン担当の凜と、定番の布陣ですが、中々ヴァリエーション豊かで、掛け合いのシーンなんかも割と賑やかで良い雰囲気です。
個人的に好きなのは、由美のシナリオかな?
彼女のルートが、一番「音楽と自分」みたいな部分での葛藤が描かれていて、作品のテーマに沿っていた印象があります。

勿論、主人公奏は、彼女達に寄り添うようにして、問題を解決してやって、無事四重奏を成功させるべく頑張るわけですけれども、そこまで強烈な事件が起こらないので、何て言うか、奏が云い方は悪いですけれども、口車の乗せて、ちょっと女の子達の後押しをしてやる、みたいな、そのくらいの役割で留まっていました。もう少し、各女の子の問題を解決していく中で、奏も成長していくような、そんな事件があっても良かったかな? という気はします。恋愛の甘さは凄く良く伝わるんですけれども、そっちに重心が傾き過ぎちゃったかな、という感じ。

ちなみに、どうやら初回は、花音ルートしか入れないようです。
花音ルートを見た後は、選択肢が増えて、由美や凜のルートに入っていく事が可能になります。それぞれのルートは、一応、グッドエンド、ノーマルエンド(但しバッドエンド寄り)、バッドエンドといった種類があるようです(その他、みたいなルートもありますが)。
歴戦のノベルゲーマーならば、ルートに入るのも、そしてグッドエンドを見るのもお手の物だと思います。選択肢がそれほど難しく無い、というのも一つ評価できるポイントかもしれません。
一方で、ノーマル(?)、バッドのエンドの方は、後味悪い感じでしたw 逆に、ノーマル、バッドは無くてもいいんじゃ? という気は少ししますねぇ……。綺麗にルートに別れる、くらいでも、全然アリだったのではないかと。

ルートの問題に触れたので、少し補足しておくと、多分、ヒロイン三人のグッドエンドを見ると、選択肢が更に増えます。そして、もう一度ストーリーを御覧頂きたいのですが、ちょっと意味深な言葉が書かれてますよね? それを補足するような第四のルートに入る事も出来ます。
が、これが、意外や意外、淡泊だったんですよね。一応、他のヒロインでは曲がりなりにも事件は起きるのですが、この意味深なルートでは、事件も特に起きず、割とサラッと流れて、「え?」とちょっと置いてけぼりを食らってしまいましたw

大体、こういう裏ヒロインっていうんでしょうか? そういうキャラのルートって、作品の真相や、主人公の内面に大きく踏み込んでいくようなルートが多いんですけれども、そういう感じでも無かったので、そこはちょっと残念でした。


奇を衒わないタイプの、シンプルな学園恋愛ノベルゲームですが、時にはこうした作品もちょっとホッと出来ていいですよね。音楽という要素が、上手くプレイヤーを物語に引き込む為の装置になっている点も良かったですよね。
若干、各女の子のルートの中で発生する事件については、薄味なものの、逆に、凝りに凝った、ややもせば疲れてしまうような(憂鬱になっちゃったりとかね)、そういう事件や出来事が発生する昨今のゲーム事情を勘案すると、意外と貴重な作品なのかもしれません。
そういう意味で、テンポも良いですし、遊びやすいと思うので、是非、気軽にプレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-12-21 18:25 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 11月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『SOLAR POWER』

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今日の副題 「あなたに太陽は昇りましたか?」

ジャンル:女の子同居型恋愛ノベルゲーム(?)
プレイ時間:一時間半。
その他:選択肢アリ。バッドエンドあり。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2012/11/16
容量(圧縮時):159MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、久しぶりにノベルゲームのご紹介。兎にも角にも、「色々やってみた」感が凄い作品だったと思います。
というわけで、今回は「ヒビキソラ」さんの『SOLAR POWER』です。
良かった点

・色々と試行錯誤の様子が伺え、意欲的な作品となっている。

・ありがちながらも、キチンとしたラスト。


気になった点

・夏がテーマ、ではあるものの、あまり夏を感じられない。

・全体的に展開が強引。

ストーリーは、作者さんのサイトから引用しておきましょう。
自然豊かな、とある小さな村に住む、中学生の少年(佐渡 誠)は夏休み前日に、夏目 空と名乗る一人の少女と出会う。
   
変わった雰囲気はあるが、明るく活発で太陽のような少女。
そんな彼女に次第に心惹かれていくが、彼女には……ある秘密があった。
その秘密を知った時、少年の人生と世界は大きく変貌を遂げる。
   
「あなたに、大切な人はいますか?」
   
これは誰にでも有るけど、誰にでも無い。
   
そんな、ひと夏の、どこか懐かしくて切ない"喪失"と"出会い"の物語。

こんな感じのストーリーになっています。


本作を端的に表すことは中々難しいです。
謎の少女との同居モノ。確かにそうした面もあります。又、プレイするとすぐに分かるのですが、所謂サンドウィッチ型の構造も持っています。SF(というか伝奇か?)要素や、恋愛要素もあるし、感動モノとしての要素も持っている。中々欲張りな作品なんですよねw

ストーリーを補足しておくと、主人公の誠が、お気に入りの草原に行くと、そこに謎の少女が居るわけです。それがヒロインの空。何か目的があって、主人公の住む町に来た事は分かるのですが、どうにもそこがはっきりしない。
ともあれ、誠と空は仲良くなって、例によって例の如く、空は誠の家に転がり込むわけですw
この前半のツカミの部分、これは非常に良く目にするタイプの出だしですよね。
割と最近プレイした中だと、『forever more ~俺と彼女の、奇跡の5日間~』なんかが、この類型です。このタイプは、本当に良く目にするもので、「同居型」という、ノベルゲームの一大ジャンルを築いているのですw


本作をプレイしていて、先ず感じたのは、テンポの良さと、それと引き替えにして説得力が失われている部分がある、という事でした。
そもそもの誠と空の出会いのシーンから、テンポは抜群に良いのです。けれども、見ず知らずの人同士が、あれだけのセンテンスのやり取りだけで、「じゃあ、うちに来るか?」って事になるかっていったら、絶対にならないんですよね。
『forever more ~俺と彼女の、奇跡の5日間~』の場合、ヒロインは行き倒れですから、同じ同居型でも、自然にヒロインが主人公宅に居着く(?)事が出来ていました。

本作の場合は、途中のやり取りをすっ飛ばすような、少々強引な引っ張り方をして、ストーリーを前進させていくタイプ、と云うと分かりやすいかもしれません。
本作、冒頭でいくつか該当する型を挙げましたが、「カレンダー消化型」でもあって、一日一日がかなりの速度で過ぎていきます。
テンポの良さは評価したい所なんですが、あまりに各エピソードがサラッとしているので、後半で感情移入がしづらいんです。具体的には誠が空の事を好きだと気づくシーンがあるのですが、そこがやはり、唐突に思えてしまうわけです。

それは、作品のテーマの一つでもある「夏」をあまり感じられなかった、のと不可分ではありません。
誠が空と過ごす日々、それが夏の日であり、二人の思い出なんですけれども、どのエピソードもサラリと流れていく為に、「夏」の印象は薄いんですよね。確かにセミの声が流れてきたり、海に云ったり、お祭りがあったり、と夏の演出をしよう、という意図は感じさせるものの、結果として、「夏の物語」という印象は薄くなってしまっていました。

又、後半に選択肢が表示され、一瞬推理モノの様相を見せるのですが、その謎の真相も割と強引な気がしますw 間違えても(多分、一回は間違えると思います)選択肢直前に戻る親切な機能も付いているのですが、一発で真相を推理出来る人はいないのでは?
後書きを見ると、ここでミスディレクションをさせたかった、との事ですが、ミスディレクションそのものは、上手くいっていたと思います。だけれども、真相の方にもう少し説得力――伏線――があれば、もっと納得感があったはずです。


……と、ここまでかなり辛口なんですが、実は本作、どうやら処女作だそうです。
そして、一本のゲームの中で、色々な試みをしている事が、プレイしていてすぐに分かるのです。こういう手間暇を掛けた感触、試行錯誤している感じは、読み手に伝わります。

ザッと、私が感じ取ったものを挙げていっても、「文字の大きさを変化させる」「選択肢を付ける」「ビジュアルノベルスタイルとメッセージウインドウタイプの同居」「文字をバラけて表示させる」「縦書きの使用」「ムービーの挿入」等々、ノベルゲームで出来る事をこれでもか、というくらい詰め込んでいます。
こういう、意欲が全面に出てきている作品は、本当に久々です。

そして、ラストは、こういうタイプの作品では割とありがちな所だとは思うのですが、印象的なセリフが上手く使われ、綺麗に纏まっていたと思います。
多分、本作は、後書きにも書いてありましたが、二回目、三回目のプレイをする事で改めて、色々な事に気づく事が出来る、そんなタイプの作品でもあるようです。一回目でちゃんと分からせる、というのも大事な事なのですが、二度目の読みによって、作品の捉え方、見方が変わるという事は良くある事ですから、是非、ザラッとでも良いので、本作読了後、二度目のプレイをお勧めしておきます。



大体、書きたい事は書いた気がします。あとは、『Kanon』の秋子さんみたいな、お母さんキャラ、早苗さんは結構好きでした、というくらいかな。
レビューと云っても、今回のは、「これ、ちょっと面白いからやってみて!」というよりは、「凄い意欲的な作者さんが出てきたから、注目して!」というような意味合いが強いですけれどもねw



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-11-26 19:51 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 10月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 『左前の彼女』

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今日の副題 「一歩進んで、君の隣へ」

ジャンル:学園恋愛ノベル
プレイ時間:1時間程度。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:YU-RIS

制作年:2012/?/?
容量(圧縮時):30.6MB



道玄斎です、こんにちは。
今日は、時間がちょっと空いたので、気になっていた作品をプレイ。一時間ほどで読了出来る、スッキリとした作品でした。というわけで、今回は「同人ゲームサークルalpha」さんの『左前の彼女』です。
良かった点

・オーソドックスな安心感がある。

・ちょっとしたギャグを織り交ぜながらテンポ良く進むストーリー。


気になった点

・主人公がヘタレすぎ。

・何か、もう一つ、主人公成長の為の事件があって欲しかった。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
彼女はいつも僕の左前にいる。
ただ左前の席にいるというだけじゃなくて、
人としての存在もまた僕よりもずっと前にいるように感じる。

そんな彼女と僕は同じクラスになったものの、
当然話したりすることもなく、それぞれ日々を過ごしていた。
ある日、クラスの係決めで学級委員長になった彼女。
その彼女になぜか僕は副委員長に指名されて……。

こんな感じ。



最初、「左前」なんて言葉が出てきたので、私はてっきり本作を、「幽霊少女との恋愛モノ」だと思っていましたw この「左前」にはさして深い意味は無くて、物理的に左前の席にいる、そして心理的な距離感も自分より前にいる、程度の意味です。

ストーリーを少し補足しておきましょう。
クラス委員長奈津により、主人公良樹は副委員長に指名されてしまいます。悩んだ末に副委員長を引き受け、学園祭を成功させるべく、奈津と一緒にクラス委員の仕事をするのだが……という感じです。

学園祭の準備期間で芽生える恋……何だかとってもクラシカルです。
文化祭といったイベントもこの手のノベルゲームに於いては、超が付くほど定番です。恋愛の描写も、何か「この作品ならでは」といった、インパクトがあるわけでもない、或る意味で手垢にまみれたものになっています。
けれども、サクサクと読めるテンポの良さは上々で、プレイしていて退屈さを感じる事はありません。間に挟まるギャグ(ゲイや妹ネタ)も、読了して振り返ってみると、案外悪くなかったかな、と。
BGMなんかも、お馴染みのものが多いのですが、場面に良く合っていて、全体的な雰囲気も結構好みのものでした。

オーソドックスな作品の安心感というものは確かにあるんですけれども、やっぱり少し物足りなかったのは事実。
本作の場合、主人公がヘタレ過ぎる……というのが、気になった点として挙げられます。女の子の好意に普通なら気づいてもいいハズなのに、致命的に鈍い為、それに気づかず女の子――ヒロイン奈津ですが――をやきもきさせるわけです。この手の主人公造型は、そろそろ限界かなぁ……という気はしますね。これも又、非常に良く目にするタイプの主人公像ですから。

もう一点は、主人公良樹の成長を描くような、そんな事件があれば、この作品ならではの味が生み出せたのではないか、という事。
良樹は、何でも出来てしまう奈津の後追いをしている感じですし、奈津は奈津でこれといって隙、みたいなものがないので、何となくバランスが悪いような。奈津には何か弱点みたいなものが設定されていた方が、キャラクターとしての魅力は増したように思えます。
一応、良樹も後半では、主体的に動いて成長の姿を見せるんですが、ちょっと弱かったかな、と。奈津との関係に於いて、もう一事件起これば、恋愛面にも説得力が出てきたかもしれません。良樹が奈津の事を好きになるのも、何だか唐突な気がしますし。


と、今日はちょっと辛口なんですが、少ししっとりとして、胸がきゅんきゅんするような恋愛作品を探している方にはお勧め出来そうです。
パーツは割とありきたりでも、全体の雰囲気としては良いものを持っていますし、正直な事を言うと、この手の作品は私、結構好きだったりしますw 
奈津には、ウィークポイントが設定されていれば、より魅力的だったかも、と先に書きましたが、彼女の様に引っ張っていってくれる女の子だと、男としては楽だなぁ……と思ったりw


大体、こんなところでしょうか?
危なげなくプレイ出来る作品です。若干の物足りなさはどうしても感じてしまうのですが、シンプルな恋愛モノが好きな方にはお勧め出来ます。



ということで、今日はこのへんで。
それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-10-04 15:44 | サウンドノベル | Comments(0)
2012年 09月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『俺のレビューが単なる悪口のわけない』

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道玄斎です、こんばんは。
何となくめぼしい作品がないなぁ……と呻いていたところ、「これは取り上げないと!」という作品を発見しました。そのものズバリ、「ゲームのレビュー」をテーマとした作品です。
というわけで、今回は「たけのこそふと」さんの『俺のレビューが単なる悪口のわけない』です。



本作、ノベルゲームに詳しい人ならば、ピンと来るかもしれませんね。
というのも、『とあるノベルのレビューサイト』という作品と枠組みがかなり似ているから、です。というよりも、『とある~』に対するアンサーゲーム、というそういう趣でしょう。舞台の背景素材も同じですしw
そこに、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のタイトルをもじって一本の作品に仕立て上げた、という感じ。

友人がRPGゲームを制作したのをきっかけに、ゲームレビューの道へと入り込む主人公。
そんな主人公がとあるゲーム作者の注意書きを見て激怒し、鉄槌を下すべく、巧妙に偽装された実は辛辣なレビューを書く。しかし、そんな主人公も自分の撮影した写真素材に対して、悪口を云うサイトを見つけてしまい……。

こんな感じでストーリーは進んでいきます。
ストーリーそれ自体は、短編ながらもメリハリが効いており、上手く作ってあるな、と思います。
『とある~』がそうであったように、「レビューを開始する→レビューを巡ってトラブルが起きる→事件が収束する」という流れですが、『とある~』より、ストーリー的な深みがある、と云って差し支えないでしょう。

小粒の作品ですし、ネタバレを配慮しちゃうと、書きにくくなっちゃうので、敢えて書きますが、本作の一つのテーマは「悪口を書きたいだけのレビュワーに天誅を下す」というもののようです。
その「悪いレビュワー」に自分が入っていない事を願うのみですが、ノベルゲームのレビューに限らず、問題は結構大きなものを孕んでいます。

それは『とある~』でも示された著作権法に関してです。
『とある~』は、著作権法第三二条①を以て、スクリーンショットを撮る事の合法性を作中で描いていたのですが、本作はそれに疑問を突きつけます。
つまり、現実問題として「フリーゲームのスクリーンショットを巡る裁判の判例がない」為に、「本当に合法かどうか分からない」という問題の提起ですね。

そして、著作権法の第一条、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」を引き、フリーゲームの文化の発展とならないような、スクリーンショット等の引用を含む形での悪口のレビューは、著作権法に示される「文化の発展」の条件を満たさない為、その合法性に疑問を呈するわけです。

さて、難しいのが、「何を以て悪口とするのか」という問題です。
本作の場合、主人公が「本当は悪意があって、貶める為のレビューを書いた」と口を割ってしまうのですけれども、実際問題、ある表現が悪口か否か、この判断は非常に難しいと云わざるを得ない。「これクソゲー。プレイしない方がいいよ!」なんて書いてあったら、そりゃ悪口ですけれどもねw

本作では、繰り返し「悪口」という言葉が出てきますが、ある表現を例えばAさんが見たとして「何の問題もない」と思う一方で、Bさんから見れば「これは悪口」と思う事も十分ありえます。
世の中にいる人全てに配慮する事なんて不可能ですけど(どんなに穏当な表現を使っても、そこに引っかかる人は一人や二人いるでしょう)、その中で悪口にならないように、多くのレビュワーが苦心していると思います。
私も……なるべく気をつけている積もりではあるのですけれども、人によっては「悪口」だと思えるものを書いているのかもしれませんね。勿論、そうした部分気をつけたいと思う反面、べた褒めしかしないようなレビューは私はまっぴらですね。

取り上げたい、と思った作品を取り上げる場合、良い点と気になった点を挙げる(番外編では列挙はしません)。それを軸にしながらレビューを書いていく。
これが私のスタイルですけれども、寧ろ、最近ちょっと甘めかなぁ……なんて思ったりもしていますw 甘いか辛いかも、本当に個々の基準に拠るものなんですけれどもね。良い点だけ挙げるのも、悪い点だけ挙げるのも公平な態度とは云えないでしょう。どんな作品にだって良い点と悪い点があるはずです。人間が作るものですから、完全な作品なんてあり得ません。
その、悪い部分、或いは気になった部分への言及を以て、「悪口」と即断するのは(或いは、されてしまうのは)どうなのかなぁ、と思うわけです。


そして、本作最大の主張と云えるのが、「ゲーム作者なくしてフリーゲーム界はなりたたないが、レビュワーはいなくてもフリーゲーム界は成り立つ」というものです。
ここは、やはり、フリーのノベルゲームのレビューをしている私は、反論したいところです。

勿論、私がフリーのノベルゲーム文化に寄与している、とかそういう奢った考えを持っているわけではありません。NMとか、色々頑張りたいとは思っていますけれどもね。
しかし、私のレビュワーとしてのそもそもの第一歩は、「優れた作品を探す為、レビューサイトをチェックする」というところにあったりします。すぐれたレビューはすぐれた作品へのアクセスを容易にしてくれますし、レビューそのものも、読み応えがあり面白いものです。そして、何より「それじゃあ、プレイしてみようかな」という気にさせてくれるものです。
レビュワーの好みが分かれば、情報の取捨選択だって出来るしね。

私自身、多くの先達に学びつつも、まだまだその域まで達していない事、日々歯がゆく思っているわけですけれども、それがフリーのゲームであるからこそ、「レビュー」はフリーゲームに於いて、重要なものだと思うのですよ。

作品中に、商業ゲームがフリーゲームと対置されて示されますが、商業ゲームは、紹介媒体があるんですよね。専門誌やら或いは専門のサイトやら。
一方、フリーのゲームは、作者さん自らが、作品を広めていく事も勿論ありますけれども、大手の個人がやっているニュースサイト(これはどっちかっていうと同人向けかな?)や、個人で細々とやっているレビューサイトのレビューや、掲示板などでの口コミが主な宣伝媒体でしょう。

「レビュー」と「 」を付けているのは、様々な形態のレビューが想定出来るから、です。
某掲示板で簡単なテンプレと共に、ちょっとした「レビュー」が書かれる。それに興味を持った人が、その作品をプレイする。或いは、その逆だってあるでしょう。その「レビュー」のせいで「プレイしたくねぇなぁ」と思う人だって当然出てくる。

本作のまとめでは、レビューは「無くてもいいもの」として位置づけられるわけですが、口コミ形態の「レビュー」も果たして不要なのでしょうか? そういうプレイヤー側からの自然発生的な盛り上がりがあってこその、フリーゲームだと思うのですが。
どうも、この辺り、著作権の問題を孕んだ、スクリーンショット等を含むレビューと、その他のレビューがごっちゃになっている感覚があります。


勿論、作品について頷ける部分も当然あります。
例えば、「否定的な意見お断り」なんて但し書きが付いているサイトで公開されているゲームなんて、こちらも取り上げよう、とは思いません。
だからこそ、ちゃんとreadme.txtを読んだ方がいいんですよね。そして、出来れば作者さんのサイトに行ってみる。そうすると、意外と「レビューや紹介目的であれば、スクリーンショットを撮っても構わない。ただし、ネタバレはやめてくれ」なんて書いてあったりするわけです。一応……そこらへんは、私を含め、多くのレビュワーさんもチェックしている部分だと思います。
わざわざ、「否定的な意見お断り」なんて書いてあったら、そりゃこっちも取り上げませんってw

本作の主人公のように、だからといって、そうした作者さんに鉄槌を下す、なんて事になると、それはもはや、レビュー云々の問題じゃなくて、単なる感情的な問題の気がしますw


あと、今日はどうしても作品それ自体の本筋から外れてしまう事が多いのですが、云っておきたい事があります。それは「レビューサイトなんてやっていても、良い事なんてないし、ましてや信者なんて出来やしない」という事ですw

本作は、レビュワー、或いはレビューサイトを或る意味で、こき下ろす作品ですから、どうしても、そうした存在が「悪」の側に回る事はしょうがないにしても、ちょっとレビュワーやレビューサイトに夢を持ちすぎてるんじゃないかなぁ……なんて思いましたw
まがりなりにも、数年間レビューサイトをやってきましたが、私には信者なんていませんし(これは私個人の問題、かな?)、例えアクセス数が上がろうとも、良い事なんて全然ありません。
コメント欄やメールにて探していた作品に出会えたとか、紹介してくれて嬉しかったとか、そういったお声を頂くのが、唯一の報酬ですね。



大体こんなところでしょうか?
このブログは、草の根活動を標榜して、こっそりというか、ひっそりやっているわけですけれども、そんなブログを見て下さっている方は、相当なノベルゲームマニアだと思いますし、ここを含めていくつかのレビューサイトを見ているんじゃないかな? なんて思います。
ですので、レビュー、レビューサイトに真っ向から斬り込む本作も、ちょっと刺激的で十分楽しめると思いますよ。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-09-10 00:17 | サウンドノベル | Comments(6)
2012年 08月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『ファインダー越しの空』

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今日の副題 「写真が繋ぐ、二人の想い」

※吟醸
ジャンル:写真部少女の恋愛ノベル(?)
プレイ時間:凡そ一時間ほど。
その他:選択肢有り。バッドエンドも。
システム:Live Maker

制作年:2009/6/7
容量(圧縮時):24.0MB




道玄斎です、こんばんは。
昨日に引き続いて、今日もノベルゲームのレビューを。
というわけで、今回は「ぷらねたりうむ」さんの『ファインダー越しの空』です。ずっとプレイしようと思っていた作品ですね。
良かった点

・少しづつ進展していく恋愛描写に胸がキュンキュン。

・良いさじ加減のファンタジック要素。


気になった点

・バッドエンドの存在があまり意味を成していない。

・もう少し、二人を繋ぐ“写真”の存在があっても良かったのでは?

ストーリーは、サイトから引用しておきましょう。
蛍は写真部に所属する高校一年生。
高校生活初めての学園祭に出品する作品を
撮ろうと躍起になっているが、中々思うような写真は撮れずにいた。
そんなある日、蛍は旧校舎でとある少年と出会い…。

こんな感じ。



さて、本作は恐らく「乙女ゲー」と称される作品でしょう。
ゲームを立ち上げて、先ずやる事といえば、主人公(女性)の名前変更です。これは乙女ゲーに非常に多いシステムですね。恐らく、プレイヤー(女性)を主人公に投影する為の仕掛けだと思われますが、私は女性ではないので、デフォルトの潮谷蛍、という名前を使用しました。

少しだけ、ストーリーを補完しておきましょう。
とある一枚の写真を見た事で、写真部に入部した蛍は、学園祭に出す為の写真のネタを探す毎日。お堅い顧問の先生に怒られながら、自分の理想の写真を求めて悩んでいます。そんな折りに、旧校舎で一人の少年と出会い……という感じ。

本作、何が良かったのか、と云えば、恋愛の推移をちゃんと描いてくれている所です。しかも、それがキュンキュンするような、甘い切なさを伴っているので、恋愛の素敵さや、恋っていいものだよね、と再認識させてくれます。

最近、ちょっと某女性向けゲームに少し関わっていて、その作品のレビューとかをつらつら見ているのですが、女性向けのゲームって、どうも「キャラクター」に比重が傾きがちなようです。
ストーリーの流れや、全体的な完成度、というよりは、個々のキャラクターの魅力や、キャラクター同士の掛け合い、やり取りに一つのポイントが存在しているような、そんな気がしています。
レビューを見ても、やはりそうしたキャラクターに重点を置いたレビューが多かったです。

そうした乙女ゲーの中にあって、本作はかなり丁寧に作られた作品だったのではないか、と思います。
少しづつ、蛍が先生を好きになっていく描写は、リアリティがあり(実際のリアルと、ノベルゲーム的なリアリティは別物ですが)、プレイヤーを作品に引きつけてくれます。
やはり、「何故、好きになったのか?」という理由をちゃんと見せてくれる作品はいいですね。
時間を掛けて、少しづつ二人の距離が縮まっていく様子が描写されると、恋愛描写の納得感が増しますし、甘いやり取りそのものを楽しむ事も出来るわけです。

もう一つ、これは、と思わされたのは、ファンタジーの要素が上手く作品に活かされている、という点。
これ以上ファンタジックになってはクドくなってしまう、というギリギリのバランスで作品が成り立っており、とても好印象でした。後半で、そのファンタジックな要素と、蛍の抱く恋心が上手く交差するわけで、この作品の見所の一つとなっていました。
又、スクリーンショットを見て頂ければ分かるのですが、イラストもレベルが高いですよね。文字表示にも拘りがあって、そういう所もいい感じでした。


気になった点は、やはり女性向けゲームの定めというか、あまり意味があるとも思えないバッドエンドが存在している、という点です。
このくらいの尺で、しかもちゃんと練り込まれている完成度の高い作品なのですから、最初っから一本道でも良かったのではないか? と思ってしまいます。

もう一つは、“写真”の存在が、もう少しフィーチャーされても良かったかな、という点。
確かに蛍は、学園祭に出展する為の写真を撮ろうとあれこれ苦悩するのですが、肝心の恋愛面、或いは後半に入って、謎が明らかになった場面で、もう一押し、“写真”が活きてきても良かったかな、と。
何となく、明らかになる謎と、それまで提示されていた事実に齟齬があるような場面もありました(アノ時、アノ場所でアノ人がアノ写真を撮ってないとおかしい……?)。

勿論、写真が全く活きてこない、というわけじゃなくて、ちゃんとストーリーに散りばめられていますし、重要な所では活きてきています。
だからこそ、ラスト付近の良い場面で、もう一押し、“写真”を使ったエピソードがあると、全体のグレードがアップするような、そんな気がしました。最後、恋愛描写で終わってしまうのではなく、やはり蛍が写真を撮るシーンをしっかり描写するとか(一枚絵としても美味しい場面だと思います)、写真面での決着も綺麗に付けて欲しかったな、と。


大体、こんな所でしょうか?
一応、女性向けゲーム、という括りだと思われますが、男性がプレイしても全く問題ない、良い作品でしたので、今回は久々の吟醸を。
時に、こうした女性向け/男性向けといったカテゴリに惑わされてしまう事もあるわけですが、カテゴリに囚われず、良い作品をこれからも紹介していければ、と思っています。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-08-12 20:12 | サウンドノベル | Comments(2)
2012年 08月 11日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『引きこもりと女子中学生』

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道玄斎です、こんにちは。
すっごく、間が空いてしまいましたが、ちゃんと生きています。勿論、このブログを放り出すわけもなく。
ただ、「これは!」という作品と中々出会えなかった事、個人的に色々忙しかったりしたので、一月くらい、更新がストップしてました。

今日は番外編のレビューです。比較的短時間でサックリとプレイ出来る作品のご紹介です。
というわけで、今回は「はとごろTIMES」さんの『引きこもりと女子中学生』です。



さて、最初に周辺情報ですが、本作は大凡20分程度の短編作品です。
小粒な作品、なのですが、中身はしっかりとしたものを持っている、そんな作品だったと思います。

主人公は、所謂引きこもりのニート。
しかも、重度のコミュニケーション障害(俗に云うコミュ障)の持ち主です。そんな彼がひょんな事からアパートの隣に住んでいる、女子中学生と出会い、済し崩し的に交流を持つようになる……というのが、作品の大まかな流れになりましょうか。

大体、ノベルゲームでは、主人公もそしてヒロインも高校生、というタイプが圧倒的に多いわけですけれども、ちょっとワケアリな感じの中学生、という本作のヒロイン造型は中々良かったですね。まぁ、恋愛的な要素はあまり無いので、ヒロイン、というのも少し変な気もしますが。ちなみに、彼女のグラフィックは可愛らしくて、好感が持てるものでした。

原因があれば結果があり、結果があれば原因がある、という事で、本作の主人公も、引きこもりになった原因・理由がちゃんと存在しています。
その原因に立ち向かっていく、というのは、やはりノベルゲームの王道的な展開の一つなのですが、そこにヒロインが一段上のレベルで関わってくるのが、本作の一番光っている所でしょう。
単純に、縁もゆかりもない女子中学生との関わりの中で、主人公が引きこもりを脱出する……というのではなく、ヒロインの存在基盤がシッカリしていて、自身の問題を孕みながらも、主人公の抱えている問題に、実は物凄く関わりのある存在だった、という、そういうタイプです。

これはプレイしていて、ちょっと「やられた!」と感じましたね。答えが明かされてしまえば、何てことないような気もするのですが、意外と無心にプレイしていると気がつかないわけで。
そういう意味で、一個の作品としてかなり起伏を持ちつつも、綺麗に纏まっている印象があります。


一方、気になった点なのですが、やはり、主人公とヒロインとの交流が割とあっさり描写されるので、もう少し、時間を掛けて、二人の距離が縮む様子(主人公が、徐々にコミュニケーション障害を克服していく様子)を見てみたかったな、と。
問題を抱えているのは、主人公だけではないので、ヒロインの抱える問題なんかも、もう少し日常パートの中で描く事が出来たのかもしれません。
短編と銘打ってあるので、中々難しいのかもしれませんが、中盤でサラリと流れてしまう数ヶ月を、何か一つのエピソードでもいいので、描写してやれば、満足度が更に向上するのではないかと愚案致します。


大体、こんな所でしょうか?
久しぶりに、綺麗にまとまった良質の短編作品に出会えました。
尺は短いですが、しっかりとした物語で、お勧め出来ます。手軽にプレイ出来るので是非、遊んでみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-08-11 16:30 | サウンドノベル | Comments(2)