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2013年 11月 27日

フリーサウンドノベルレビュー 『純白の街、灰雪の僕ら。』

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今日の副題 「創作といふものは、斯くもむつかしひものなのです」

ジャンル:頽廃電波倒錯ビジュアルノベル
プレイ時間:~2時間程度
その他:選択肢なし、一本道。対象は15歳以上
システム:Yu-ris

制作年:2013/8/24
容量(圧縮時):216MB



道玄斎です、こんばんは。
最近、めっきり寒くなりましたね。今年は、秋の時期が無く、いきなり冬がやってきたような、そんな気がします。まぁ、この時期になりますと、あまり外でアクティブに遊んだりは出来ないので、自然とノベルゲームで遊ぶ率が高くなるのでした。
というわけで、今回は、「プラスマイナスゼロ」さんの『純白の街、灰雪の僕ら。』です。ダウンロードは、こちらからどうぞ。
良かった点

・ノスタルジックな雰囲気と、SF色が混ざり合う、独特な世界観。

・創作とは何か? みたいな事を考えてしまう、懐の深さも。


気になった点

・ラストは綺麗に決まりつつも、どこか閉塞感を感じてしまう(後述)

ストーリーは、少し長目ですが、ふりーむから引用しておきましょう。
【あらすじ】
白が降る。雪が降る。だから、死体も降り注ぐ。
徹底的に漂白されていながら、死んでいるような街。
ここは、そういうところだった。

音のない白い箱に入りたかった。
人間がみんな、自分を糞袋だと認めていればどんなに良いだろうと夢想していた。

そして、今この白い街で、ひとびとは己の弱さや愚かさを素直に受け止め死んでいく。
僕の望んだ世界が、ここには在った。

この街の名前はさまざまだ。監獄都市。白ノ匣。凍花街。
そして、もっとふさわしい呼び名は――「ひと捨て場」。

そこに降ってきた少女は、奇しくも死体ではなかった。
真白の絨毯に広がる鮮紅色の長い髪はひどく美しく、そして鮮烈で――。

だから「僕」は、「彼女」を拾った。

【ゲーム概要】
基本的に読み進めるだけの、選択肢のないビジュアルノベルゲームです。
本作は性的・暴力的表現を含む十五歳以上を対象とした作品です。ご注意ください。

『Imperfect Blue』の作者さんの新作です。
『Imperfect Blue』は、比較的ストレートで、楽しい作品であったわけですが(重い部分も勿論あるんですけども)、本作は、舞台からしてちょっとヒネリが効かせてあります。

正直、あらすじを読んだ時の印象は、「『朝焼けの謳』みたいな、殺伐としたスラム的な舞台なのかな」と思っていたのですが、意外や意外、そうした雰囲気とはちょっと違いましたね。

SFっぽい作品なんだな、と分かってはいたのですが、主人公(?)テオの住居は、廃校舎である事が示され、近所には、あぜ道がある事、よろづ屋的なお店がある事が判明して、「あれ? あんまりSFっぽくないぞ……」とw
例えば、テオの服装なんかも、彼が小説家であるという事実があるにせよ、書生さんとか文士さんとか、そういうイメージで、SFに直結しないような雰囲気があります。

本作は、登場人物の語りによって進行する物語なのですが、彼らの語りも、どこか古めかしい……もっと云ってしまえば、文語的……或いは昭和初期の文学をイメージさせるような、そういう文章なんですよね。途中途中で出てくるアイキャッチにも、何か「文学っぽい」文言が書かれてますしね。
ストーリーが進むにつれ、テオ、そして、ヒロインたるコハルの事情とかも明らかになってくるんですが、そこで語られる彼らの過去も、そうした、大正の終わり~昭和初期に掛けての雰囲気を持ったもので、何とも云えないノスタルジックな気持ちにさせられます。

でも、その一方で、SF的な枠組みも当然あって、テオはロボットに食事を作らせたりしていますし、舞台となっている凍花街の市街地なんかは、現代的なんですよね。
これは、良い/悪いという問題を越えて、何だか不思議な気持ちになるような舞台設定で、この作品の大きな特徴の一つでしょう。


ストーリーの方は、飄々としてつかみ所の無い男、テオが、行き倒れ状態のコハルを拾った所から始まります。コハルは、元々テオを尋ねてきたので、正確には行き倒れではないのですが、「女の子を拾う系」のノベルゲームの系譜に入れてしまっても差し支えないでしょう。

そして、「女の子を拾う系」の常として、当然、二人は同居する事に。
基本的に、この二人の同居エピソードを通して、それぞれの抱えている問題を少しづつ意識させ、後半でそれを明らかにして……という、流れそれ自体は、オーソドックスなものです。

割と、一エピソードが短めなので、読みやすいと思います。細かい部分なのかもしれませんが、こういう部分、やっぱりゲームを作り慣れている感じがしますねぇ。これは、個人的な感触なんですが、作者が男性の場合、一つのエピソードは割と長目、作者が女性の場合、一つのエピソードは短め、という気がします。勿論、作品に合った形であれば、どちらでも困らないんですがw

普通に読んでいくと、「あれ? そういう設定だっけ?」と、思う箇所がぽつりぽつりと出てきます。
或いは、「これ、何かあるっぽいけど、サラッと流れちゃったぞ……」みたいな箇所も。
こうした、伏線は、ちゃんと後半~ラストにて、回収されていきます。ちょっとした違和感、謎なんかを散りばめている作品は、後半でいかに鮮やかにそれを回収するか、が一つのポイントだと思うのですが、本作は、ストーリーの加速に合わせて、そうした違和感や謎の回収をしてくれるので、中々気持ちよかったです。

エピソードの連続で物語を綴っていくわけですが、コハルがテオを好きだと気付く為の描写は、もう一押しあっても良かったかな、と。
現実の恋愛がそうであるように、何か劇的な事件があって、「ああ、この人が好きなんだ!」って気付くケースは稀なのです。何気ない日々の積み重ねの中で、或る相手が、少しづつ特別なものになっていく……そういうケースの方が多いとは思うのですが、それをノベルゲームで描写するのは、中々難しい。その微妙な淡いを描く事が出来たら、とても素晴らしい事だとは思うのですが、現実的に考えると、何か特別なエピソードで以て、分かりやすい形にしてあげる。そちらの方がお手軽ですし、プレイしていても納得感はあったりするんですよね。ここら辺は、本当に創作というものの難しさを感じます。。


そういえば、本編の直接的な内容ではないのですが、意外と、考えさせられるような、エピソードが出てくるんですよね。
その一つが、「創作ってなんだ?」とでも云うべき問題です。テオは小説家として身を立てているわけですが、別に小説を書く事に情熱を捧げている訳ではないんです。しかも、書くジャンルはてんでバラバラ。それでも、テオの小説は評価され、世の中に流通している。

前述の通り、作品そのものが文学的なテイストを漂わせているから、なのかもしれませんが、何か私には、そうしたテオの生業である小説を巡る一連の描写が、物凄く気になってしまったのです。
良くできたノベルゲームがあるとして、別に作者はそれを創り上げるのに心血注いでいたわけでもなく、「出せるから出した」とか、「何となく作ってみた」とかであった場合、何かモヤモヤしたものを感じませんか?

或いは、作者が、ブログやTwitterでは、「全力で書いてます!」とか、書きつつ、心の中では「ほんとは、テキトーに書いているだけだもんねー!」と思ってたりする場合、ともすれば評価の一つに組み込まれてしまう「作者の情熱」とか「努力の姿勢」とかってのは、全くアテにならない、って事になりますよねぇ。
結局、私達は、或る作品の由来が何であれ、作品それ自体でしか、作品を評価し得ないって事なのかなぁ。

んー、何かガラにも無く難しい世界に足を踏み入れてしまったみたいですw
こういうのは、時々考えてみると面白いんですが、私は頭が悪いので、いつも適当なトコで切り上げますw 頭痛がしてきちゃうからねw
けど、何か、そういう事を考えさせるような、深さを、この作品が持っているのは事実だと思います。何度も云いますが、作品自体に文学的な香りがしますし、それを狙っている部分も当然あるのでしょう(『ドグラ・マグラ』の引用なんか好きな人にはたまらないでしょう?)。

こういう深みにはまれる一方で、物語そのものは、スムーズに流れていく、というバランスもいいですよね。時に、そういう観念的な世界というか、そっちの方に行ったまま戻ってこない作品とかもありますしw 


……と、色々書いてきてアレなんですが、ラストまで読んで、私は、何となく閉塞感を感じてしまったんです。いや、文学が、とかそういう話じゃなくて。

後半~ラストの流れは、本作のSF的な部分が強く出ているんですが、そのSF的な枠組みに関しては、ラストまで読んでも、全くスッキリしないんです。
確かに、表面上のストーリーは収束されて、エンドロールの後の一枚絵+短い台詞で〆る、という綺麗な終わり方をするのにも関わらず、実はあまり問題は本質的に解決していないんじゃ、と思ってしまうような感じなんですよね。

ネタバレですから、詳しくは語りませんけど、そのSF設定そのものに閉塞感があるんですよね。
そして、期待するのは、その閉塞状況をブチ破るようなラストだったりしたわけで。ハッピーエンドを手放しで喜べない、みたいな感じになってしまいました。



という事で、今日はなんか余計な事を随分書いてしまった気がします。
けど、時には、あっけらかんとしたボーイミーツガール的な物語じゃなくて、もっと深く抉っていけるような、そういう物語も読みたいですし、そういう物語だったからこそ、色々余計な事を書いてしまったわけですw

2時間あれば、十分読了可能だと思います。
そこまで長くないけれども、何だか色々考えるきっかけになり得るような、そんな作品でした。後書きにもありましたが、『Imperfect Blue』と読み比べてみても面白いかもしれませんね。気になった方は、是非、プレイしてみて下さい。



それでは、また。

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by s-kuzumi | 2013-11-27 20:54 | サウンドノベル | Comments(0)