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2008年 07月 15日

フリーサウンドノベルレビュー 『黄昏の白い靴』

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今日の副題 「じっくりと読みたい名作」

※大吟醸
ジャンル:フィレンツェを舞台にした恋愛モノ。
プレイ時間:2時間くらい
その他:選択肢無し、一本道。
システム:Yuuki! Novel

制作年:?/?/?
容量(圧縮時):48.2MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は凄い掘り出し物を見つけてしまいました。私の好みは、結構イロモノっぽいと一般で言われているようなものだったりするのですが、今回はかなり渋い、それでいてじんわりとくる名作だったと思っています。
というわけで、今回は「Tomiji」さん(でいいのかしら?)の『黄昏の白い靴』です。作者様のサイトが無くなって(もう一人の方はサイトを立ち上げられたようなのですが)いましたので、ベクターのリンクを張っておきます。こちらからどうぞ。
良かった点

・派手さこそないものの、じっくりと心に染み渡るようなストーリーが秀逸。

・ちょっとしたフィレンツェ観光の気分も味わえる。

・ギャグなども一切無し、或る意味でとても硬派なノベル作品。


気になった点

・システムがYuuki! Novelなので操作性が……。

ストーリーはベクターの紹介文から引用しておきましょう。
花の都、フィレンツェ――。

仕事に未来を見出せず、日々を無為に送っていた俺は、ある日白いワンピースを着た貴婦人と出会った。
「白い靴を磨いてもらえないかしら」
その言葉に俺は失笑し、無理である事を伝えると彼女はやわらかく笑って去っていった。

……夜、酒場でワインを飲みながら今日の話をマスターに聞かせていると、彼は言葉を詰まらせ、真面目な顔をして言った。
「伝説の靴磨き屋は、白い靴を磨きました」
俺は驚いていると、カウンターの隅で黙っていた老人が遠い目をして、昔話を始めた。
「そう、あれは30歳の時だったから、今から丁度30年前になる……」老人は昔の記憶を、昨日のことのように鮮明に語り出した。

30年前に出会った女性との話を。
白い靴を磨いた話を。
そして、白い女性を、愛した話を。

こんなストーリーになっています。


大吟醸は久々です。
こういう作品を求めていた、という感じですね。恋愛ものなんですが、高校生の青年と幼なじみの女の子ってな定番ではなくて、舞台はイタリアでかなり渋い純愛を描いた作品でした。
最近、こういう恋愛モノにとても飢えていて、そうした私の飢えを満たしてくれるような、滋味溢れる作品だったように思います。微妙に通好みの作品かもしれませんね。

立ち絵無し、一枚絵無しとビジュアル的にも派手さはありません。
ですが、中盤くらいからフィレンツェの町並みの背景写真、或いは有名な美術品(絵画含む)が背景として使われ、尚かつその解説まで作中で行ってくれるというわけで、なんだかちょっと得した気分になりました。

先ほど、プレイし終えたわけですが、まだ作品の余韻が頭の中に残っています。
とってもいい作品でした。
で、又私流の解説になってしまうのですが、本作は「サンドウィッチ型」です。現在の時間が過去の時間を挟むようにしているタイプの作品ですね。
まさに現代のイタリアらしく、通貨もユーロ。そんな近代化した都市で靴磨きをやっている青年が、酒場で歳を取った「元靴磨き」のじいさんの思い出話を聞く、というのが大まかな流れ。
本作の凄い所は、頭の中で「ああ、サンドウィッチだな」と分かっていても、過去の時間として語られる物語が優しく染み渡り、すっかりとその世界に入ってしまうので、或る瞬間に現代の時間軸に戻ると「あー、そういえばサンドウィッチだったな……」と感じてしまう所にあったりもします。そのくらいの没入度を見せてくれるわけです。

過去の時間と現代の時間を繋ぐ、伏線なんかも非常に効果的且つさりげなく出てきて、良く練り込まれた作品である事が分かります。
イタリアの、もうちょっと局所的に言えばフィレンツェのガイドみたいな側面もあって面白いですね。ちなみに私、結構フィレンツェ詳しいですよ? というのは、某乙女の園を描いたライトノベルとか、某ゲームとかでさんざん「予習」してますからw
ちょっと特徴的な橋とかが出てきたら「これは、例の貴金属を扱う店が……」とか脳内で勝手に解説を始めるくらいで。
まぁ、イタリアは人気のある観光国ですし、ご存じの方も多いでしょう。普通に私は無知な方なので、皆さんが当然のように知っている事を知らない事が非常に多い。例えば、恥ずかしいけれども、暴露しちゃうと、「何県がどこにあるか」というのを正確に知らなかったりします。。若い頃、全く勉強しなかったツケですね。ちなみにこれは何度かお話した事があると思うのですが、私、中学三年生まで漢字って殆ど書けなかったんですよw
小学校の頃とかで作文コンクールとかあって、入賞したりとかしてたんですが、ああいうのは辞書を引きつつ書けば、ね。


また脱線してしまいました。
ともあれ、靴磨きという職業にスポットを当てるのもとても面白いですし、靴という小道具もしっかり全編を通して出てきますので、本当にしっかりとした作品だと感じます。

唯一の欠点といえば、やはりシステム面。
文字表示速度の変更とかが出来ないので、中盤で観光モードに入った時に、少しもどかしさが。
あとは、登場人物は全員イタリア人ですから、発話、或いは心の発言もみなイタリア人としてのもののハズです。
しかし、例えば「世界三大美人」なる話が出てきた際にそこに「小野小町」が入っちゃうんですよ。ご存じの通り、この世界三大美人って括り方は日本独自のものでして、だから小野小町というローカルヒロインが入っちゃうわけですw
こういう感じで、他の部分が滅茶苦茶凝ってイタリア全開で作られているので、たまーに日本的な感性が出てきちゃうと「ありゃ?」と違和感を感じる事がある。
特に心の中の発言っていうのは、その人物の思想であるとか、バックグラウンドを如実に示すものなので、そこに違和感を感じる箇所が2箇所くらいありました。
あとは、デフォルトでフルスクリーンなのはちょっと困りもの。フルスクリーンでプレイされる方も実は結構いらっしゃるみたいなのですが、私は基本ウインドウでプレイします。又、ページをまたいで文章が表示される時にちょいと工夫があっても良かったかな、と。
例えば、ずらずらと文章が続いていて、次のページに行ったら最初の一行が「た。」とかw そういう所が何カ所かありました。


私的にはとっても好きで、じっくりと読み進めるべき作品だと思うのですが、「特に何も起こらない作品」なんて感じる人もいるかもしれません。
一応、純愛ものですが、「好き」だとか「愛してる」とかそういう直接的な表現は一切使われませんし、せいぜい手に触れる程度で終わっています。そこらへんの事情は「おまけ」で読めるのですが、だからこその純愛の純度っていうのかしら、そうしたものがしっかりと保持出来ていたな、と。

本当に何度も語っているように、派手さはなくて、じわりじわりと雰囲気が読者=プレイヤーに染み渡ってくる感触。実は、ラスト付近で不覚にも涙が出てきてしまいました。
ヒロインの設定が又いいんですよ。結局最終的に「恋人になる」とか「結婚する」とかそういう関係にはならない二人なのですが、こういう女性なら男として愛する意味というか、価値があるんだろうなぁ、としみじみ感じました。


兎も角、ちょっとでも本作が気になったら、もう即このブログから立ち去って、ダウンロードして欲しいと思いますw

とっても優しくて、じんわりと心に染み渡る雰囲気を持った作品でした。
何はともあれ、是非是非プレイを。もしかしたら、ちょっとお酒を呑んだりしながらプレイしても良いかも。
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by s-kuzumi | 2008-07-15 00:10 | サウンドノベル