2023年 07月 26日
道玄斎です、こんばんは。 大変ご無沙汰しております。 もうかれこれ3年程度、このブログを放置していたわけですけれども、いつも気にしてはいたのです。 けれども、移り変わりの激しいこの世界、「今のノベルゲームの世界はどうなっているのか?」、「自分のようなロートルは出る幕がないんじゃないか?」云々。 まぁ、今日はそういうノベルゲームの話ではなくて。 今まで、生きてきて最大限に悲しいことがあったということ。 ノベルゲームなんてプレイしていると、結構悲惨な結末を迎える作品ってあるんだけれども(2023年の今はどう?)、 その悲惨さって、私は割と「リアリティ」と結び付けて書いてきたような気がしていて。 人生とはままならぬもの。 どう足掻いても避けようのない悲惨な結末はある。 そう思って、そういうことを過去に書いてきた記憶もあるんです。 けれども、自分がその当事者になると、何とも言えず辛いですね……。 これは書いたことがあったかな? 昔、知り合いの女性が自死してしまったことがあったんです。 その時、彼女には婚約者もおり、結婚まで秒読みのような状況だったはずなんです。 けれども、社会生活の中でどうしても辛くなり……という。 私はその時、「あぁ、婚約者とか結婚とかそういうものは、ストッパーにならないんだ……」と、 物凄く衝撃を受けたんですね。 どう考えても、「そんなんだったら、とっとと会社辞めて結婚して、しばらく休んでなよ!」って言って あげたいし、当時もそう思いました。 自分の中で膨らんでいく「なんでだろう?」「なんで死を選ぶ必要があったのか?」という問いは、自死の ニュースや、話を聞くたびにいつも思い出していたのです。 けれども、現実って本当にそういう風に出来ていて。 自分が当事者になってしまうと、悲しくて悲しくて。けど、今は悲しいより寂しいが勝っているという感じ。 あっ、念のため書いておくと、私が自死をしたというわけではありません。 そうであるならば、これは幽霊が書いていることになっちゃいますからね。 今日は、本当は本当にグッと短く、「最悪のことがあった」くらいの本当に一言で〆ようと思っていたくらい だったのです。 けれども、久しぶりにこの場で何かを書いていると、少し昔の感覚が蘇って、無駄に長く書いてしまうという。 今、私がこれを読んでくれている人(いるのかなぁ?)に伝えたいことはただ一つ。 大切な人が生きているうちに、変な意地を張ったりせずに、時には本音で「君が大切なんだ」ってことを伝えて あげて欲しい、ということ。 ただ、ひたすら寂しい。 本当にそれだけ。
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by s-kuzumi
| 2023-07-26 23:56
| 日々之雑記
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2020年 08月 15日
![]() 今日の副題「“種”としてのノベルゲーム」 ジャンル:少し悲惨な純愛(?)ノベルゲーム プレイ時間:30分前後 その他:選択肢なし、一本道。15禁 システム:ティラノビルダー 制作年:2020/8/10 容量(圧縮時:108MB 道玄斎です、こんばんは。 今日はタイトルと、そしてイラストに惹かれた作品をプレイしてみました。 予想していたよりも尺が短く、また物語内容も少し悲惨なものでしたので、取り上げようか迷ったのですが、なんかノベルゲームそのものや、リアルな世界、あるいはそれを創作としてどう加工するのか、といったようなところを話す土台として、凄く適している作品なんじゃないかな、と思ったので通常の枠で取り上げようと思います。 というわけで、今回は霜枯草さんの『吹き溜まりの彼女』です。
ストーリーは、今回は私が簡単にまとめておきましょう。
と、こんな感じ。 すごくシンプルなスーリーを持った作品です。 生き別れの少女との出会い、同棲、そして別離、と、少女を軸にして三段階で内容を示せるくらい。 けど、のりしろというか、膨らませ方がたくさんあるなぁ、という可能性を感じます。 例えば、作中ではさらっと、自分と少女の過去が描写されるだけですが、そこにもっと筆を割くことで、物語全体の厚みを増すことが出来ます。 なぜ、主人公があれほどまで、彼女を想っていたのか? その説明を補強してあげるだけでも、作品はグッと締ってきますし、ちょっと病的なまでの主人公の思い入れの説明にもつながります。 実際のところ、10年離れていた女性と出会って、すぐにそれと分かるのかどうか。 相手が中学生の頃に離れているわけですから、女性のそこからの10年って物凄い変化がありますよね。 非常にありがちだと思いますが、最初は「あれ……なんだか誰かに似ている……」くらいにしておいて、過去のエピソードで出てきた、たとえばほくろの位置とか、あるいは主人公が彼女を守ろうと決心するきっかけになった怪我の痕とか、そういうのを出して、「目の前の女性は、あの子なんだ」というのを確定させる、という手があります。 で、女の子のほうは、最初から主人公のことに気が付いていた、とかね。 なので、過去のエピソードを厚くすることで、現在の物語も平坦ではなく、少し起伏を持たせながら肉付けしていくことが出来るというわけです。 ふりーむの説明書きには、約小一時間~一時間くらいの尺が示されていましたが、実際は30分程度。 しかし、そうした必要な部分でのエピソードの追加や、描写の追加を入れてあげれば、一時間半、あるいは二時間近くの物語に変化させられ得る、そういう可能性を感じました。 作品自体は、割と悲惨でw 救いようのないエンドを迎えるわけですが、どうしようもない不条理さみたいなものはヒリヒリと伝わってくるんですよね。 特に女性との関わりで男性に訪れる「どうしようもない現実」というやつです。 一方で、「その悲惨さをそのまま悲惨なまま作品にしちゃう」というのも、せっかくのノベルゲームという媒体にしている意味が薄れてしまうような気がします。 これもよくあることですが、一回目は悲惨なままのエンド。 二回目以降、随所に選択肢が出てきて、幸せになる道が拓かれていくとかがポピュラーな形でしょう。 ノベルゲームだからこそ、「読み物」としての存在を保持しながら、選択肢を提示して、それを回避していく道も模索出来るという。 いや、もちろん、悲惨なものは悲惨なものとしてそのまま提示するという方法もあるんです(私がそういうのが好きだっていうのも、みなさんご存知でしょう?)。 が、そこには一工夫あってもいいわけで、本作の場合ですと、作中でちょこちょこっと顔を出すあるアイテムがあります。 それはサボテン。就活が上手くいかない主人公の心情に対応するかのように元気のないそのサボテンを上手く活用してやれば、より印象に残るエンタメ作品としての締め方も出来るんじゃないかな? と愚案する次第。 私がパッと思いついたのは、サボテンをヒロインが世話し始める、みたいな回想が入るんですよね。 主人公の世話の仕方が悪かったのか、その元気のないサボテンが、ヒロインの手によって元気を取り戻していくみたいな描写をちょろっと入れておくんです。 そして、悲惨な結末を迎え、最後の最後の場面で、無人の部屋の中、夜にサボテンが花を咲かせる……。みたいなね。 理屈はともあれ、なんか「締め!」って感じはしますでしょう? こういうことを上から目線でつらつらっと書いてしまうくらい、「色んな可能性にあふれた作品だなぁ」という印象があったのです。 現段階でもいいものがある、というのが分かるものの、まだそれは種や、枠組みといった感じ。 本当に、本作をもっと肉付けして、厚みを増したものを読んでみたいという気がしますね。 イラストも愛らしいですし、今後大きく伸びていかれる作者さんではないかと思います。 そんなわけで、今回はこの辺で。 ちょっと上から目線で書いちゃったなと反省はしています。 けど、少しでも本作が気になった方は、是非プレイしてみてください。今のうちから目をつけておくといい作者さんだと思いますよ。 ※そういえば、タイトル画面に「吹き溜まり」に相当するであろうshady pleceという言葉があるんですが、shady placeではないでしょうか? 蛇足。
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by s-kuzumi
| 2020-08-15 23:18
| サウンドノベル
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2020年 05月 04日
![]() 道玄斎です、こんにちは。 連休……というか、自粛期間中ということで今日も日がな一日家に閉じこもっています。 ちょくちょく書いているような気がしますが、別に私はこのブログを閉じたわけでもなく、ノベルゲームを楽しむことも、レビューを書くこともやめたわけではないので、こうしてシレっと更新することがあるのです。 今日はふりーむの「ノベルゲーム」カテゴリから作品を見つけてきました。 そういえば、少しノベルゲームの世界から離れていると、また色々な変化があるようです。制作エンジンの主流は完全にティラノスクリプトとなり、パッケージとしてリリースされるものだけではなく、ブラウザでプレイすることが可能になっていたり(本作はブラウザでのプレイ。実はティラノはスマホのアプリとしてパッケージングも出来るはず。ただし、あんまり使用されてないと思う。なぜなら……みたいな話はまた今度)、極端に尺の短い作品がリストのかなりを占めていたり。 そんな中で、ちょっとピンとくる作品を見つけてプレイしてみたのですが、短い尺とはいえ密度を感じさせる作品でした。 文字数からは想像も出来ないほど、プレイヤーに「考えさせてくれる」作品、とでも言いましょうか。 というわけで、今回は「冬紀」さんの『ともだちは子ネコ』です。 ふりーむのページは、こちらとなります。 てっきり私、最初、「主人公である雪音さんからは、子ネコが人間の形に見える」とか、あるいは「読者(プレイヤー)の認知として、子ネコが人間として表現されている」とか、そういうものだと信じて疑いませんでした。 多分、この辺りはミスリード的なものを狙っていると思うのですが(“ネコ”って表記とかね)、見事な仕掛けだと思います。 ですので、説明文にあるような「地域ネコ」、あるいは「野良ネコ」なんてキーワードから、猫の話だと思っているとその仕掛けにびっくりします。 ところで、地域猫ってご存知でしょうか? 作中にも出てくる、「片耳をカットされた野良猫」のことなんですが、猫の耳をちょいとカットすることで、桜の花びらのように見えることから、「サクラ耳」なんて呼ばれたりもします。 野良猫が増えすぎると色んな問題が起こります。 季節によっては、夜、猫の鳴き声や叫び声が聞こえる。 街中を猫がウロウロしており、ゴミ箱を荒らしたりする。 交通事故などで、猫の死体を目にする機会が増えたりする。 野良の猫は汚いから嫌いという人もいる。 どうしてたって猫が嫌いな人もいる。 …………。 ……。 まぁ、色々な理由によって野良猫が増えるのが望ましくない、って考えがあり、「じゃあどうすんのよ?」って時に、「野良猫を去勢して繁殖出来ないようにする。しかる後に、その猫たちは地域の人たちで責任を持って世話をしてあげる」という対策が「地域猫活動」と呼ばれるものです。 その活動も、まずは猫をトラップを用いて捕獲するところから始まり……と話し出すと脱線のし過ぎなのでそこはちょいと自重しましょう。 猫と人間が共存するための方策の一つが地域猫活動である、ということは出来るんですが、そこにも色々な問題があります。 地域猫活動は、野良猫を去勢して繁殖を防ぐということに一つの目的があるわけなんですけれども、野良猫を見つけると、とにもかくにも餌をあげてしまって、結果猫を増やしてしまう人というのもいたりします。 また、去勢された猫のエサ場を作ってやり、そこでご飯をあげて面倒をみる、という行為にも「お金」がかかるわけです。また、エサ場には猫が集まるわけですから、猫が嫌いだという人の賛同も得られにくい。いや、そもそも去勢だってお金が掛かります(最近、補助金が出る自治体も多いですけど)。 もっと根本的なことを言ってしまうと、「人間と猫が共存するため」と言いましたが、あまりに人間主体の「共存」の在り方なんじゃないかな? という問題だって実は孕んでいます。 だって、天然記念物である動物なんかは、例えば「人間が彼らに近づかない」など、人間が譲歩する形で繁殖を促し、保護をしているわけですよね。 けれども、猫の場合は人間が積極的に彼らの繁殖能力を奪った上で、保護をするということになっています(絶対にないけれども、地域猫活動が大成功をして野良猫がいなくなったら、猫そのものが世界からいなくなるわけですよね。ペットショップなどで売られる血統書付きの猫以外は)。 天然記念物は希少だというのは分かるんですけれども、「命は尊い」とか「命は平等」とか言いつつも、そうして命に優劣をつける行為はどうなのか……ちょっと青臭いかもしれないけれども、私はなんだかすごく考えこんでしまうのです。猫と人間は生活領域が重なるとか、そういう事情の違いが天然記念物たちと違って存在するのは分かっているけれども、ね。 で、本作の私がグッとくるポイントがまさに、そういうことを考えさせてくれる作品だった、というわけです(あー、やっと本題に戻った!)。 ネコ(≠猫)の世界をパン屋のお姉さんとの交流を通じて描くことで、実は「その世界の問題点」を描いているわけです。 しかも、最初っから「そういう世界なんだ」と気づかせずに、「ネコ=猫」だというミスリードをしていくあたり、巧みな物語の作り方と言えましょう。 物語の中で、「じゃあ、どうするの?」といった問題に対する答えは出ません。 けれども、その何か燻るような想いを包み込んだまま、どこか優しい余韻を残して物語は幕を下ろします。 何か結論が出るわけではなく、「雰囲気」や「気配」を残して作品が終わる。 そういうパターンってノベルゲームでも結構あると思うのですが、本当に「雰囲気」が活きた作品は案外少ない気がします。 今までの経験上、最初っから「雰囲気ゲーにしてやろう!」みたいなパターンだと失敗することが多いようなw しっかりとした物語の世界を積み上げた先、「それ以上はもう語れず、雰囲気で感じ取ってもらうしかない」という状態になると、よい結果になることが多いんじゃないかと思います。 尺としては10~15分程度のかなりの短編ではありますが、少しづつ世界を明らかにしていく巧みな作り、ラストの余韻や、読後も続く「色々思いを致してしまう」ような深みを持った作品です。 ネコが好きな方は、是非ご一読あれ。 それでは、また。
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by s-kuzumi
| 2020-05-04 18:02
| サウンドノベル
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2020年 01月 11日
![]() 道玄斎です、こんにちは。 今日は、ちょっとゲームをやろうかな、と思ってふりーむを探していたら、タイトルが気になる作品を見つけました。なんか、ポップで可愛らしい感じ。 いきなりプレイ時間の話から始めてしまいますが、普通に選択肢を選んでいけばハッピーエンドまで、ほぼ一直線でいけるはず。それでおおよそ30分程度なので今回は番外編といたしました。 ただし、ノーマルエンドと複数のバッドエンドを全部見ると、もうちょい時間はかかります。 が、それでもスキップを上手く使えば1時間かからないかな、と言う感じ。 さて、作品内容ですが、なんてことない日々を送っていた主人公・竹林透のクラスに、髪の毛を黒・白で染め分けた(?)ちょっと怖い雰囲気の女子、竹林麗乃(よしの)がやってくる、というところから始まります。 こうしたスタートの仕方はノベルゲームのド定番ともいえるもの。 タイトルワークから「よしのさんには秘密がある」ことが示されているわけですから、それを期待してプレイしていくと……よしのさんは、なんと異世界からきた「パンダ」であることが発覚します。 最初でシリアスな展開を予想させておいての、一気にテイストが変わり、しかもそこにあまり違和感を感じさせないのはお見事。 シリアスな恋愛ノベルではなく、ポップで楽しいノリの作品で、「パンダ」であったという秘密も作品全体の雰囲気と相まって「浮いた」感じではありませんでした。 随所随所に、立ち絵がちょこちょこ動いたり、マンガの吹き出しのような形でメッセージが表示されたり、手が込んでいて楽しい作品だと思います。 これは敢えて、なんだと思いますが、ワッフル屋さんやタピオカミルクティ屋さんの店員が「いらすとや」素材だったり、ちょっと笑える場所も随所にあったりしますよ。 キャラの数や選択肢は割と多いのですが、基本路線として「よしのさん」のルートがあり、その他はバッドエンド(乃至ノーマルエンド)という感じです。スキップも使えますし、攻略サイトもあり全てのエンドを見るのには苦労しないで済むはずです。 とっても楽しいノリの作品なんですが、タイトルでもある「よしのさんの秘密」とストーリーとの関わりが希薄だったところが気になるところです。 それは、作品の内容そのものがストーリーを重視していくというより、「ノリ」や「ポップさ」を重視していることと不可分ではないでしょう。 「こういうスタイルなんだ」と言ってしまえばそれまでなんですが、せっかく個性の強いキャラクターがいて、楽しくテンポもいい作品なので、もう少しストーリー的な厚みがあってもよかったかな。 たとえば、「次回作」として、本作の登場人物・影浦刃にスポットを当てた作品の存在が「おまけ」で示されていますが、それも本作そのものに十分組み込めるんじゃないかな? なんて思うわけです。 「僕とよしのさん」を中心としながらも、周辺人物の物語があり、一緒に悩んだり、行動したりする中で、友情や恋愛感情が育まれる、というほうが説得力がありますでしょう? あるいは、主人公とよしのさんが同じ「竹林」という姓なのですから、「実は主人公の先祖も、よしのさんと同じ異世界からの移住者で……」というような方向に持っていくことも出来るかな、と思ったり。 文章的なことを言うと、私は、あまり顔文字を使ったりしないほうがいいのかなぁ、なんて思ったりします。 例えば「恥ずかしい」という表現を顔文字((/ω\))で表現してしまうことで、「登場人物の発話や描写」を奪ってしまうということがある気がするから、です。 ある登場人物が恥ずかしさを覚える場面で、どういう発言をするのか、またそれをどう描写するのかは、キャラクターの個性を演出する格好の場面の一つです。 また、そうした描写が薄いと、文章全体も薄味になっていく傾向があるように思えます。 ちょっとあれこれ口出しをした感はありますが、「異世界から来た」とか、謎の魔女(?)とか、中二病の男の子、ふくよかな女の子など、個性的なキャラや設定が違和感なく存在している、楽しい作品だということ請け負います。 プレイ時間も短いので、気軽に楽しんでみてください。 それでは、また。
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by s-kuzumi
| 2020-01-11 15:02
| サウンドノベル
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2019年 12月 22日
![]() 今日の副題「2019年ループホラーの旅」 ジャンル:ホラーテイストノベルゲーム プレイ時間:1~2時間 その他:選択肢あり。True、Happy、Badのエンドに分岐 システム:吉里吉里/KAG 制作年:2019/12/19 容量(圧縮時):125 MB 道玄斎です、こんにちは。 今日は久しぶりにホラーテイストのノベルゲームを。選択肢が多く、少し懐かしい手触りも感じる作品のご紹介。 というわけで、今日は「魚喰製作委員会」さんの『魚喰』です。
ストーリーは今回は私がまとめておきましょう。
という感じ。 少し懐かしい手触りを持ったホラー作品です。 正確にいえば「ホラーテイスト」の作品なんですが、古式ゆかしい「選択肢多め」のものになっており、私はちょっと嬉しかったです。 本作、タイトルが『魚喰』なんですが、主人公が釣り好きであり、作品の「ホラー」に関わる部分も「魚関係」、登場するキャラクターたちの名前もまた魚つながりで、テイストの一貫性を感じます。 文章も軽快で、賛否はありましょうが「ノベルゲームらしい」テキスト。読みにくいことは全くありません。 実は本作、ループものでして、何かしらのエンドにたどり着くまで、何度も同じ選択肢を選んでいくというタイプでした。 ただし、主人公はそのループをほとんど知覚しておらず、プレイヤーである私達がループであることを見抜き、ダメな選択を回避すべく主人公を導いてあげる必要があります。ループ、選択肢多めというわけで、とても懐かしい手触りを感じますよね。『ひとかた』とかね、そういうのをどうしても連想してしまうわけです。 恐らく、初回ではよいエンドには行けないと思います。 何しろ選択肢の数が多いですし、良く分からないまま、ループが開始されてそこで「あっ、ループだったか」と気づく、そういうタイプ。 少しづつ選択肢を変えていくことで、作品の背後にある「呪い」やその影響が明らかになっていく、という作りもまた、古式ゆかしいノベルゲームの伝統を引き継ぐものです。 具体的には、友人とその彼女、クラスメイトの女子とその妹、クラスメイトの女子の3者(という言い方でいいかな?)と、「どういう順番で」出会っていくのか、が攻略の鍵になります。1~2周すれば「どこに誰がいるのか」がわかるので、そうした選択肢捌きも楽になると思います。 イラストも綺麗ですし、1時間程度でおそらくトゥルーエンドが見られると思うので、プレイのしやすさもあります。ライトな感覚でホラーを楽しめる作品と、まとめることも可能でしょう。 一方、ストーリー的な部分で言うと、作品の核である「呪い」の実態とストーリーに、何かしらのつながりがあれば、あるいはそこの説明がもっとあればよかったかな、と思います。 ローカルな性質をもった昔話があり、言ってしまえば偶発的にその呪いが発動してしまうという状況なのです。 そうではなく、例えば、「呪いがあることが知られており、登場人物の誰かが自らその呪いの力を求めている」とか、あるいは偶発的に発動した呪いだとしても、その呪いの本体(よくあるのが、悲しみに捕らわれた人間の魂が呪いの本体になっており、作中では呪いを解くとともに、呪いの本体をも解放してあげる、みたいなやつ)への積極的なアプローチがあってもよかったのではないか、というあたりです。 別のアプローチとしては、「主人公がループを知覚している」という状況を作るとか。 ループものでは、この点は結構なポイントになると思います。 その自覚があると、惨劇を止めるべく主人公は「自発的」・「自覚的」な行動をとっていくわけで、そこに主人公の個性、キャラクターが立ってきますし、作品の見せ場を作ることも出来ましょうし、選択肢に意味を持たせることも出来てくるわけです。 大体こんなところでしょうか? 色々書いてしまいましたが、ちょっと惹かれる作品ですよね。女の子は可愛いですし。 歴戦のノベルゲーマーならハマること請け合いだと思います。少し懐かしく、けれども2019年の水準にモディファイされたループもののホラーストーリー、楽しんでみてください。 それでは、また。
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by s-kuzumi
| 2019-12-22 15:05
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