2009年 03月 22日
今日の副題 「海のような女の子と」 ジャンル:冬の日の恋愛モノ(微鉄道要素あり)? プレイ時間:一時間程度。 その他:選択場面はあるが、ゲーム自体は一本道。18禁。18歳未満の方はプレイしないように。 システム:NScripter 制作年:2009/3/10(?) 容量(圧縮時):62.0MB 道玄斎です、こんにちは。 今日も一本、ゲームをプレイしました。昨晩、久々にゲームを探してフラフラと情報サイトを巡っていたら、何となくゆかしい作品を発見。どうも鉄道オタクとか、高全(高専の事か?)とか、変わった設定があったのでプレイしてみました。 というわけで、今回は「3 on 10 -サンオントウ- 」さんの『Might -I think of ys yourself.-』です。 良かった点 最初は、ちょっと変わった設定は持つモノのオーソドックスな学園恋愛アドベンチャーかと思いきや、後半で18禁のシーンが出てきて面食らいました。 18禁の部分を抜かして考えると、割と尺自体は短めですが、ポイントポイントは押さえてあって、中々良いものがあるのでは? ストーリーは、サイトのページへリンクを張っておきましょう。こちらからどうぞ。まぁ、一言で纏めると「鉄道オタクの男と、やけに家庭的な女が、出会って、歩いて、話して、結ばれるお話」(作者様ブログより)という事になるわけです。ってちょっとこれじゃ身も蓋もない感じですけれどもw というわけで、いつものように解説に入っていきましょう。 先ず、主人公優と、ヒロインの麻衣は「高全」の生徒。高全ってのは実在するのか、ちょっと分からなかったのですが、大凡「高専」と同じモノと考えて差し支えなさそうです。普通の中等教育とは違い、五年間、技術を習得する為通う学校ですね。工業系がメインという事でいいのかな? 昔知り合いがそこで先生をやっていました。 工業系という事で、男の子が多いというか、女の子は殆どいない、というのが現状のようです。まぁ、アレですよ。文学部には女の子の方が多いけれども、理工学部では女の子は十人に一人くらいの割合でしか存在しない、というそういう感じ。そんな高全の中にあって、珍しい女子生徒がヒロイン麻衣。主人公は機械系の学科で麻衣は建築の方。あまり接点こそないものの、会えば挨拶はし、ちょっとした世間話をしたりするくらいの、普通のお友達、くらいの関係。 さて、物語は、駅のホームにて眠っていた優を、麻衣が通りかかって起こす所から始まります。 そして、あれよあれよという間に、何故か電車に乗って麻衣を家に送る事になって、ご飯までごちそうになって(食後の珈琲付き)……と。この電車に乗る所のシーンは、なんかリリカルで凄く印象的でした。 前半部では、割と鉄道というか、そういう「鉄道オタク」っぽい要素が入ってきて、これはこれで面白いですよね。本物の鉄道オタクの人が見たら、ぼやけた加工をしてある背景画像であっても、それが何の電車かきっと一発で分かるんでしょうw 鉄道がらみの効果音などはリアルで良いものを使っていると思います。 ですから、最初は鉄道と恋愛が絡んでくるような、「鉄道オタク賛歌」的なお話だと思っていたんですよw しかし、徐々に読み進めていく内に、所謂「恋愛」とか或いは「感動」とかね、そっちの方にウェイトが置かれた話である事が明らかに。 その問題については、後述するとして、本作の最大のポイントは、ヒロイン麻衣のノベルゲーム史上に於いて、最高峰とも言える優しさ、包容力でしょう。「現実にはいねぇよ!」なんて思ってしまいますが、一方で「こういう人がいたならば、人生変わっていたかもな……」と思う人も多いのでは? 何かこう、自分一人しかいない家に、男の子を招待してご飯を食べさせちゃうなんて、警戒心がないんだか、世間知らずなのか分からない麻衣ですが、そんな些末な部分は実はどうでもよくって、無限大の優しさが、彼女の好感度を劇的に向上させています。 こんな優しい女の子、私は今まで出会った事がない(ゲームだから当たり前なんですが)。 こんな赦してくれる女の子、私は今まで見たことが無い(ゲームだから……以下略)。 ノベルゲームは数多くあれど、ここまで究極的に「優しい女の子」を描いた作品は珍しいのでは? 昨今ではちょっとツンツンしたタイプの娘の人気が高いわけですけれども、もっとおっとりしていて、それ故のリアリティがあって非常に好感度が高いヒロインでした。 ヘンテコな口調や怪しげな特徴(異常な食欲など)ではなく、飽くまで内面の優しさを描写する事で、キャラを特徴付けていく、というのは私は大好きですし、それが王道的なものだと思っています。や、うぐぅとかも嫌いじゃないけれどさ! 何故、彼女がこんなに「優しく見えるのか?」というのは、クリア後に、おまけのページなどからその理由が分かります。同時に作品のコンセプトとか、そういう部分も語られていたりするので、やや蛇足かも、と思いつつも興味のある人は読んでみると良いと思います。 ただ、麻衣の麻衣のバックグラウンドは上手く、本編に絡めた方が良かったんじゃないか、と思わないでもないですよね。ここらへんはネタバレになりますから、このくらいで。 で、本作のコンセプトというか描きたい事が、実はタイトルと絡み合っている事も示されるわけですが、もし、そうだったら「I think of myself as you」の方が正しいんじゃないかなぁ? 私、英語苦手だからアレなんですけれども。thinkという動詞について、ちょっと辞書を引いてみた方がいいかもしれません。 ちょっと蛇足ですが、意外とこういう基本的な動詞こそが、難しいんですよね。think ofなのか、think aboutなのか、はたまたthink toなのか、とかね。 気になった点ですが、先ず18禁は無くてもよかったのでは? と思わないでもない。 やっぱりあった方が、「ウケ」みたいのは良くなるしプレイしてくれる人は増えると思うのですが、ちょっとこう良い感じの純愛路線? みたいなものが展開されるので、そこでえっちぃシーンが挿入されると、私は少し違和感が。というか、私は商業のものも含め、ノベルゲームにえっちぃシーンは必須ではない、と考えているので、そういう偏向はあるんですけれども。 もう一点は、折角「鉄道オタク」的な側面、そして「高全」という普通のハイスクールとは違う設定が為されているわけですから、そこらへんを作品にもっと結びつけても良かったのではないかと。 具体的に云えば、恐らく優が機械系の学科にいる事と、鉄道オタクであるという事は、きっとどこかで結びついていると思われますし(勿論、鉄道オタクには本作の根幹に関わる部分でもあるのですが)、そうした学校の描写なんかがゼロに等しいので、もうちょっとそこらへんの「主人公、ヒロインの日常」を描くと、作品にもっと厚みが出るんじゃないでしょうか。 大体、こんな所かな? 一風変わった設定と、(個人的に)ヒロインが滅茶苦茶魅力的な作品でした。 冬の名残がまだあるうちにプレイしてみて下さい。 どうやら本作が処女作らしいのですが、今後が期待出来る作者様です。次回作も楽しみにしています。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2009-03-22 14:33
| サウンドノベル
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