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久住女中本舗

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2009年 04月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『想いよ届け! 校内放送にのせて――』

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今日の副題 「一日でゲームが出来ちゃった!?」

ジャンル:放送部青春モノ(?)
プレイ時間:30分程度。
その他:一本道、選択肢なし。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2009/4/5(?)
容量(圧縮時):16.9MB



道玄斎です、こんばんは。
そろそろ櫻も満開を過ぎ、徐々に散りだしているようです。花は盛りに、月はくまなきをのみみるものかは、と申しますし、そもそも櫻って花は、散っていく姿こそ美しい。そんな事をつらつら考える今日この頃で御座いますが、今日はちょっと季節に微妙に合っているような、ちょっぴり初々しい学園ノベルのご紹介。
というわけで、今回は「Lens*Type」さんの『想いよ届け! 校内放送にのせて――』です。何と、一日で作られた作品だそうです。今回は少し辛口になってしまっているのですが、一日という製作期間でここまでのものが作れるというのは、掛け値なしに凄いと想いましたよ?
良かった点

・ラストの甘酸っぱく、ちょっと意外な展開が中々良い(気になった部分でもあるので後述)。

・短編作品を作り慣れている印象が……。


気になった点

・作中の事件と、作品のラストにもう少し繋がりが欲しい。現状ではやや乖離している印象がある。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
校内放送、それはお昼に情報を提供する放送部の日課だった。
俺と胡桃は、いつも通り放送を続けていた。
「何か新しいネタ、欲しいね」
きっかけはその一言だった。模索する二人、そんなとき事件は起こる。
「女子の制服が無くなったんだって」
外部の仕業かそれとも内部班か。放送を通じ、犯人に迫る。

と、こんな感じ。

或る意味で久々に、学園青春ノベルとでもカテゴライズされる作品をプレイ致しました。
事件あり、恋愛ありと、短い中に色々詰まっている印象。

ちょっと見、新たに結成されたサークルさんの処女作と思しいわけですが、実は、シナリオの方は、こうした短編を書き慣れている気配がヒシヒシとしています。詳しい言及は避けますけれども。。
文章の書き方、というか「一般的な」(飽くまで一般的という意味です。絶対解ではありません)文章の規則も守ろうとなさっている感じでした。
何度か、こうした場で、書いてきている事ですが、「!」「?」の後は一字空け、「…」の三点リーダは二つ続けて「……」と使う、なんて規則が一応あるんですよね。ただ、少しこうした規則に則っておりながら、中にはその規則に準拠しないような、そうした表現もあって(「!」の後に一字空けをしていない等)、もう少し徹底して使った方が良いと思いました。

で、少し珍しい、放送部員の活躍を描いた作品でした。
何気ない、放送部の活動シーンから始まり、体操服が盗まれるという事件が勃発し、放送部員らしい手段で以てそれを解決する、という云ってみれば分かりやすく、されど危なげなく読んでいけるような、そういう作品でしたね。

ちょっと変則的に、気になった点から述べていく事にしましょう。
実は、誤字の類が結構気になりました。本作は最初に述べた通り、「一日でノベルゲームを作ってみよう」的なコンセプトで作られたものらしいのですが、結構クリティカルな誤字があったのは確か。
先にストーリー紹介を挙げたのですが、「内部犯」とすべきところが「内部班」になっていたり。と、このくらいは別に問題はないのですが、致命的だったのは、「人物名」の誤字です。
ストーリーの中盤から、体操服(及び、制服。勿論女子の、だ)を盗んだ犯人を見た、という情報提供者が現れます。彼女の名前は新城さん。一年生の女の子です。
この新城さんの情報提供が一つのきっかけとなって、ストーリーが進展していくわけですが、後半、彼女は「新庄」さんと中盤と表記が異なってしまっています。ここは、やはり、チェックすべき所でしょう。
検索を掛けたり、表記揺れをチェックすると、きっとこの手のミスは激減するはずですので、是非是非やってみて下さい。一度、ワードとか一太郎とか、「校正機能」が付いているものにコピーしてやってみるのも手ですよ。

本作の最大に気になった場所は、良かった点で挙げた点と表裏一体にあります。
無事に犯人が見つかり、事件は解決するわけですが(推理とか、犯人の挙動とか、はたまた情報提供者の動きに不自然さというか、甘さがあるのはそれはそれとして)、ラストはちょっと驚きの展開があって、しかも私が意外と好きな甘酸っぱい展開まで持っていたんですよね。
そういう意味で「意外性」のあるラストで、それは良かったのですが、本作の一つの柱となっているのは、やはり「体操服盗難事件」です。その事件の解決と、ラストのちょっと意外な結末には、実は直接的な関係がありません。

私なら、ですけれども、例の「恋する乙女さん」が、事件と関わりがあるような、そういう描写や勘違いを持ってきたかな、と。どこかで、本作の山場である事件と「恋する乙女さん」の話を連結させないと、ラストがどうしてもそれまでの作品の流れと乖離してしまうわけで。
テンポの良さが重視されている事は分かるのですが、もう少し細部を膨らませていく事で、作品全体ももう一段階膨らませる事が出来るのではないかと、愚かしくも思った次第であります。
他にも、例えば、情報提供者の新城さんの登場シーンなんかもね、正に水が流れるように彼女が現れて、ストーリーが進展していっちゃうけれども、例えば彼女が「キョロキョロしていた」とか「怯えていた」とかそういう描写を出して、寧ろこっちから(プレイヤー側から)「何か事件と関わりがあるのでは?」と感づかせるくらいの方が良かったのかもしれません。


結構辛口になってしまいましたが、すらっと流れていくようなテンポの良さが遊びやすさ、或いは作品の持ち味になっている部分でもあるので、気になった方は是非プレイしてみて下さい。
何はともあれ、一日でこれだけのものを作れるというのは凄い! もう少しじっくり作ってみると、きっともっと良いものになるんじゃないかと。今後も期待しています。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2009-04-08 23:42 | サウンドノベル | Comments(0)
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