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久住女中本舗

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2009年 04月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 『風のように、花のように。』

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今日の副題 「調味料が決め手」

※吟醸
ジャンル:ファンタジック感動ノベル(?)
プレイ時間:1時間程度。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2009/?/?
容量(圧縮時):30.9MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は昨日からちょこちょこプレイしていた作品のご紹介。久々の作品リリースという事で(と云っても、本作が第二作目に)私も楽しみにしておりました。
というわけで、今回は「妹れっぐぅおーまー」さんの『風のように、花のように。』です。
良かった点

・ヒロインが魅力的。

・設定などはオーソドックスながら、調味料の使い方がグー。


気になった点

ラストに、もうちょっとフォローがあったら……。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
――もしも願いが何でも叶うとしたら。

なんでも願い事を叶えてくれる悪魔さんを、
偶然呼び出した人間の女の子。
願ったのは突拍子も無い、だけどありふれた願い。
『恋の相談相手になってくれませんか?』
その日から始まった、二人の生活。
それはありふれた、かけがえの無い日々でした。

こんな感じです。


ストーリーを見て頂ければ分かるように、意外とオーソドックスな感じのファンタジックな作品でした。
ファンタジックとは云え、超自然的な力がバシバシ出てきたり、或いはそれによってご都合主義的に物事が解決するという事もなくて、作品の持つ底力があったように思います。

本作は、前作である所の『be alive』と違って、全年齢対象になっていますし、そうしたシーンも当然無し。だけれどもジワッと来るものがある。そんな感じです。ちなみに、舞台は昭和の終わり頃だそうです。懐かしい単語とか、色々出てきちょっと面白いですよ。

さて、恒例の脱線に入りますが、私自身、懐古趣味ってんじゃなくて、やっぱり昭和の終わり頃が一番良い時代だったなぁ、なんて思ったりしています。ダイヤル式の電話に、インベーダーゲーム、原宿が最高にナウい街だった、そんな旧き良き時代が本作の舞台です。
昔、私、東京のど真ん中の某区に住んでいた事があります。勿論、昭和の終わり頃ね。芸能人の家とかも近くに結構あって、所謂住宅街だったんですが、今でも覚えているのは、五月だ六月だって時期に雨が降ると、道の脇に水溜まりが出来るんですよね。あっ、いくら昔とはいえ、ちゃんとコンクリで舗装されていた……ハズです……。で、その水溜まり、雨の次の日とかに見てみると、カエルの卵が入っていたりね。んでもって、その近くの茂みにはオンブバッタが居たり、バナナ虫なんて呼ばれる虫がいたりしたものです。
今じゃ、こんな光景は見られないんだろうなぁ、なんて思いますねぇ。東京にもそういう、自然がまだ一部とはいえ残っていた時代があったのです。

本作は、割と頭の中身がハッピーな、風花と、偶然風花によって召還された悪魔であるアリア(当然の如く、ちょっと冷めているキャラ)の同居生活とその顛末を描いたもの。っと、頭の中身がハッピーなんて云っちゃ失礼ですね。すっごいお人好しで、落ち着きがなく、23歳なのに、妙に子供じみている、と、そういう感じでしょうか。

そういう意味で、前半から中盤に掛けてはかなりコミカルなやりとりが主体になって、話が進んでいく事になります。が、それが不思議とそんなに五月蠅く感じないんですよね。普通、ここまで外連味たっぷりの設定だと、「うっ……辛いぜ……」とか思ったりする事も屡々なのですが、本当にテンポ良く読めて、且つくどさを必要以上に感じる事が無かったわけです。
多分、これは、風花というメインキャラ(ヒロイン?)そのものが、その属性を含めてちゃんと「一人の人間」になっているというか、設定に振り回されるのではなくて、その設定が風花という人物の、良き調味料になっているという、そういう具合だったのではないかと思います。

例によって、例の如く、その風花のお人良しにあてられて、アリアの方も、随分と丸くなって、悪魔に対してこういう云い方はどうかと思うのですが、人間らしくなっていく。中盤くらいからこの女二人の、ちょっと変わった同居生活、そしてその二人の友情を描く、そんな作品になっていきました。

ですので、設定とか、そうしたものは割とオーソドックス。
だけれども、普通だったら本作のアリア的なポジションに居るのは、「無愛想系の高校男子」だったりするわけですがw ボーイミーツガールにならず、友情を描いた事、そこが良かったんじゃないかと思っています。
本当に、オーソドックスなものでも、調味料の使い方で、かなり美味しく頂く事が出来る、という一つの証明ですね。後、やはり文章も上手だと思いますね。極度に「ギャルゲ」っぽいわけでもないし、かといって「妙に淡々としている」わけでもなく、すんなりと入ってくる、そういう良質の文章だったのでは?
文章力の高さは、後半、風花が妊娠している事が発覚するのですが、普通だったら結構唐突な出来事なのに、何故か唐突感をあまり感じないというか、ちゃんと前段階でのちょっとした描写が踏まえられているわけで、軽い驚きを感じつつも、それは違和感までいかない。そんな文章表現の巧みさもありました。


さて、一方の気になった点ですが、実はラストです。
後書きの方を、少し読んでみると、私が感じた「気になった部分」に関しての説明がついていました。
というのは、本作は「完成品の未完成作品」という事になっているわけです。敢えて云えば未完成という事に。
そう、ラストが少し、物足りなかったんですよね。

中盤以降、話は少し重めの展開に。
だけれども、あっさりとしつつも、風花とアリアの間にある確かな信頼関係や友情を軸にしつつ、やっぱり、オーソドックス感は否めないのですが、感動的なものになっています。
で、本当に最後の辺りで、ジワッと涙が出そうになって、「どうなった?」と思っていたら、エンドロールが流れて終了してしまう、と。ぶっちゃけていうと、バッドエンドなのかハッピーエンドなのかどうか、分からないんですよね。

ですので、最後の部分で、少し読後感が良くないというか、未消化な部分がある事は確か。
もし、可能ならば、エンドロールの所に、「その後の二人(或いは風花)」を暗示するような、そういう一枚絵を数枚見せて、想像力を補完しても良かったのかも、と。
些か脱線になりますが、最近、ちょっと思ったのですが、「ラストの感動シーン」って、ちょっと過剰に思うくらいあれこれ涙腺崩壊装置を発動させるくらいで、丁度いいんじゃないかな、と。ともすれば、少しあっさり流してしまったりしがちな部分でもあるわけですが、いやって程、感動的なBGMとか感動的な一枚絵とか、メッセージだって、いつもの表示領域じゃなくて、浮かんで消えるヤツ(分かるよね?)にするとか、書いてる本人も赤面してしまうくらいのとっておきのセリフを喋らせたり……。
そのくらい、ちょっと過剰とも思えるくらいにやった方が、結果的には良さそうな気がしています。って、別に根拠はなくて、色々ゲームをプレイしていて思っただけなんですが……。例外は常にあれど、大凡フリーのものであれ、同人のものであれ、はたまた商業のものであれ、人気の高いものって、そのラストシーンへの注力が凄いんじゃないかと思った次第。


大体、こんな所でしょうか?
底力のある作者様だと思いますし、オーソドックスなものを調味料で別物に変えてしまう手腕は見事です。
是非、今後も良質の作品をリリースして欲しいと思います。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2009-04-10 23:05 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by Low at 2013-12-17 00:05 x
読んでいて あれ? と思い 最初の画面(上のSS)が出て ああと 思いました。 TVが昔のだ。そのくらいの時代のことなんだと。

こんばんは お邪魔いたします 道玄斎 殿。

風花ちゃんが なんとも。 彼女にしたいというよりも  おお 同胞という感じだな^^  すっごく かわいいなあと思うけど わたしには 受けきれないだろうと。 アリアくらいの意識でないと。

終わり方は 気になりますね。あの後どうなったんだろうと・・・・

でも 読者に任せてるのかな。 その後の話は・・・

さて 私の性格だと 感動エンド(悲しい)? はっぴいえんど?

風花の娘が(子供は娘!) アリアと会う場面を 想像(妄想?)した・・・
Commented by s-kuzumi at 2013-12-27 20:18
>>Lowさん

こんばんは。
これも、もう大分前にプレイした作品ですね。

一応……或る意味で幸せなエンドではあるものの、そこに苦みがあるような、少し物悲しいエンドは、ちょっといいですよね。

単純にハッピー! っていう作品も勿論、凄く好きなんですが、ちょっとプレイ後に、余韻に浸れるような、そういう部分があると、何年経っても、印象に残りますねー。
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