2009年 06月 04日
今日の副題 「目立たないけど、名作です」 ※吟醸 ジャンル:微伝奇(ファンタジー)風ノベル プレイ時間:一直線で2時間半くらい。 その他:選択肢アリ、エンドは四つに分岐。 システム:NScripter 制作年:2004/?/? 容量(圧縮時):45.2MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は久々にゲームのプレイ。もう大分掘り尽くしたと思っていた、「懐かしの一本」の中からのご紹介です。いやぁ、すっかり忘れていました。この作者様の作品には、他にも『Crimson Ring』という名作もあるわけで、無視しちゃいけなかったのですが、すっかり忘れてしまっていました。 というわけで、今回は「phylector」さんの『Succession of the Life』です。 良かった点 ストーリーは、作者様のサイトから引用しておきましょう。 地方歴史学を専攻している研究生の克巳。 こんなストーリーになっています。 大体、本作がリリースされたのは2004年の事と思しいですから、もう5年も前の作品です。 って云っても、五年って昔なのかそうでないのか、微妙に判断に迷う所がありますね。このフリーノベルゲーム業界の速度を考えると、昔とも云えるし、そんなに前じゃない、という感覚的なものもあったりします。 ともあれ、現代的な感覚で云えば、「少し古いかな?」と感じるような要素はいくつかあります。 一番はやはり、イラスト面でしょうか? あまり上手なイラストでこそないんですが、だからこそのヒロイン(の一人)巳鵜の素朴な感じが表現出来ていたりするので、そこは欠点じゃないんですよね。 個人的に「もうちょっと何とかならなかったのか?」と感じたのは、実は背景ですw 写真素材とか、トレースとかそういったものじゃなくて、基本的に書き下ろし。 ですが、ちょっっと、ねぇ?w 障子の取っ手がゆがんでいたり、左右の窓の大きさが微妙に違っていたり、本作に於いての重要な場所である村を見下ろせる丘の背景とかも、何て云うか……ちょっと、ねw まぁ、正直、気になった点というのは、このくらいのものでして、ストーリーの運び方、その中身なんかは文句はありません。大吟醸にしようかどうか、迷ったのですが、大吟醸に近い吟醸、という事でお願い致します。 さて、ストーリーの方に踏み込んでいきたいと思うのですが、ちょっぴり伝奇(ファンタジー?)風味。 それは、本作の仕掛けの部分とも絡んでくる所ですけれども、「その村に伝わる伝承」というか、そういう部分ですので、「俺の第三の目が開く時、貴様等は滅びる事になるであろう」的なものじゃありませんw タイトルは『Succession of the Life』。successionというと、最近死亡した忌野清志郎の『RCサクセション』を想起してしまうのですが、タイトルを訳すと「生の継承」という事に。 successionは連続、なんて意味もあるんですけれども、どっちをとっても、ちゃんと意味は通りますね。 で、主人公が調査の為に訪れた村には「生の継承」と呼ばれる秘技(?)が存在していて、死亡しても、魂だけの状態になり、その後誰かを「殺し」、その生を奪えば復活出来る、という、そういう呪いのようなものが存在しています。ちょっぴり伝奇っぽい感じ、あるでしょ? ただ、いくつか条件があって、 ・24年間以内に、生の継承を行わなければならない。 ・必要に応じて、魂は実体化出来るが、その期間は大凡2週間程度。 ・24歳以上の人間を殺し、生の継承を行う事は出来ない。 ・肉親を殺し、生の継承を行う事は出来ない。 と云った、ルールがあります。 で、何だか人も来ないような山奥の村みたいな、所が舞台ですから、隠微な感じが全開かと思いきや、実はそうでもなくて、幽霊モノ(?)で云えば『ゆうとっぷ』とか或いは『Moonlight Blue』みたいな、そういうちょっとほのぼのとした空気を持った場面、はたまた、直球におどろおどろしさや、緊張感を感じさせるような場面なんかが、上手に一つの作品の中に取り込まれ消化されている印象です。 ちなみに、全部で4章+α仕立てになっており、かなりテンポよくプレイする事が出来るのではないでしょうか。 そういえば、4章は「第四章その一」「第四章その二」のようになっており、全部で四つのエンドがあります。この4章でエンドが分岐します。 つまり、「第四章その一」は最終的なエンド1、「第四章その二」は最終的なエンド2、といった具合です。この中に、巳鵜のノーマルエンド、トゥルーエンド、そして沙良のノーマルエンド、トゥルーエンドがそれぞれ入っています。 巳鵜と沙良という二人の女の子が、本作に於けるヒロインという事になりますが、私が今回プレイしたのは「フルボイス版」。つまり、この二人のキャラに限っては台詞に全てボイスが付いています。 ちょっと音量小さめで聞き取りにくいかもしれないので、設定画面でBGMの音量を下げつつ、ボイス音量を上げるなどの工夫をすると良い感じに。 ボイスの演技自体は、そんなに上手という感じではないのですが(録音状態の関係もありそうです)、その良い意味での拙さが、作風や、或いは巳鵜と云ったキャラに良く合っており、中々好印象でした。 こういう作品をプレイすると、いつも思うのですが、やっぱり「ゲームってバランスなんだなぁ」と。 例えば、本作で、本職の声優さんがお声を当てていたとしたら、きっと途端に違和感が出てきちゃうと思うのですよ。或いは、本作の立ち絵やBGM、ボイスなどはそのままで、背景だけプロが手がけたりしても、やっぱり本作に於いてそれは、「歪み」になってしまうように思います。 まぁ、背景に関しては前述の通り、もうちょっと改善の余地はあるように思うのですが……w ですので、本作は、或る意味で凄いバランス感によって作品が支えられているような、そんな感触もあったりします。巧さ、或いは拙さっていう観点はあるわけですけれども、必ずしも「巧かったら、美麗だったら良い」という訳でもなくて、そこらへんは本当にバランスの問題になるように思いますよ。 兎に角、本作に関しては、この立ち絵、この音楽、このボイスがばっちり合っていたように感じるのでした。 さて、本作の良かった点のもう一つ、ラストに関して、です。 全部で四つのエンドがあるのは先にお話した通り。一応ノーマルエンド、トゥルーエンドとそれぞれ二種類あるわけですけれども、どのエンドが良いか? っていうのは好みの問題かもしれません。 私は、意外と巳鵜のノーマルエンド、好きなんですよね……。 まぁ、私の好みは兎も角、私が今回「をを!」と思ったのは、トゥルーエンドの処理の仕方です。 本作や、多くのノベルゲームの様に、ヒロインが二人出てきてしまうと、「一方は幸せになるけれども、もう一方はどうなるか分からない」というようなそういう感触ってあると思うのですよ。 強く恋愛的な要素を打ち出してしまえば、二股なんて或る意味でもってのほかですから、最低一人、「振られる」娘が出てきますw 中には、ちゃんと「振られた」娘のフォローもしてくれるような、作品もあるのですが、何となくねぇ……。 脱線しちゃいますけれども、一般的な恋愛ゲームの場合、主人公(=男)は、ヒロイン軍団の中から伴侶を選ばなければいけません。 現行の結婚制度、或いは社会通念に照らし合わせてみると、選べる女の子は一人。残りは「振られて」しまう、というのはお話した通り。 で、中には、その、「振られた」娘が、主人公に振られた後、あっという間に別の彼氏を作っちゃった、なんて場面、見たことありません? 私、アレが嫌いでねぇw そういうシーンを見る度、「きっとこいつと付き合ったとしても、いづれ一方的に別れを切り出されるのは目に見えているんだから、俺(=主人公)は正しい選択をした……」と自分に言い聞かせますw 話を元に戻しましょう。 本作の場合、どちらのトゥルーエンドを見たとしても、「誰も不幸にならない」という素晴らしいシステムがw どっちかに比重が偏る(まぁ、巳鵜寄りなのは認めますけれども)事のない作りで、且つちゃんとそれぞれのエンドがしっかりしており、とても良かったと思います。 敢えて云えば、もうちょっと演出面とかでも、グワッと感動を演出してくれると、より良かったのではないかと。 ただ、沙良のトゥルーエンドだけ見ると、「え? なんで?」となるハズですので、オススメの攻略順としては、巳鵜ノーマル→巳鵜トゥルー→沙良ノーマル→沙良トゥルーとなります。 どうやって、「生の継承」という、長年続いてきた忌まわしい習俗(?)を主人公が打破するのか? そこが一つのクライマックスですが、その方法の良い意味での盲点というかシンプルさも非常に良かったです。ちゃんと伏線が張ってあるんですけれども、そこまで進む頃にはすっかり忘れてしまっているという。 最後に攻略情報を少し載っけておきましょう。 本作では、選択肢が発生するのは第二章からです。一度通過した章は、最初の画面からすぐにアクセス出来ますから、第四章で四つのシナリオが表示されるまで、第二章から開始して、選択肢をあれこれ試して、その後、第三章でもやっぱり選択肢を色々試して、とやれば、第四章の不足分のシナリオが表示されると思います。 別段、選択肢選びに難しい所はないと思います。オーソドックスな選び方をしていけば目当てのエンドに到達出来るハズです(例えば、あるヒロインの好感度が最大になるような選択をすれば、そのヒロインのトゥルーエンドに行ける、など)。 大体こんな所でしょうか? 久々に思い出して、やってみた甲斐がありました。多分、コアなノベルゲームファン以外には、あんまり知名度の無い目立たない作品なんですが、是非プレイしてもらいたい作品です。 『Crimson Ring』もその内プレイしなおしますよ? それでは、また。
by s-kuzumi
| 2009-06-04 19:56
| サウンドノベル
|
Comments(2)
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NaGISA
at 2009-06-04 21:13
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これは、私一押しの作品です。
辛口レビューを連発する私には珍しく、作者さんにメールまで 書いてしまったくらいですから。地味ですが、正統派な作りの 素晴らしい作品だと思います。あとは「手作り風の作品が好き」な 私の、琴線に触れたと言いますか(笑)。 私は伝奇が苦手なんですが、この作品は伝奇の良いところは取り、 そうでないところは上手くほのぼの路線に忍ばせて、隠し味の如く 扱っている点が、特筆できる点です。この作者さんの新作を 期待しているんですが、出ませんかねえ……。
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s-kuzumi at 2009-06-05 20:15
>>NaGISAさん
こんばんは。 仰る通りで、この絶妙な「手作り感」がとっても、作品にマッチしていて良かったですね。 私もどうも、最近の作品よりも、少し前の手作り感が、或る意味で、一種のクセのように残っている作品を割と推す傾向があるようです。 この作者さんの新作……は……、昨年の終わり頃に一回HPの更新があったみたいなので、意外と、ひょっこりリリースするんじゃないかな? と私は思っています。出てくれたら……私も嬉しいんですが……。 |
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