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久住女中本舗

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2009年 10月 23日

フリーサウンドノベルレビュー 『ゆき☆おん!』

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今日の副題 「昔話のどんでん返し」

ジャンル:ちょっぴりファンタジック恋愛アドベンチャー
プレイ時間:1ルート1時間半くらい。セーブ/ロードを上手く使えば全てのエンドを見ても2時間程度。
その他:選択肢アリ、複数のバッドエンドと正規エンド三つ。
システム:Live Maker

制作年:2009/10/17
容量(圧縮時):48.9MB



道玄斎です、こんばんは。
大分調子の方も戻ってきました。 明日はNaGISAさんのラジオもあるし、またボチボチ色んな作品をプレイしていきたいですね。
というわけで、今回は「ゆき☆おん!企画」さんの『ゆき☆おん!』です。製作速報VIP発のゲームですよ。
良かった点

・意外性の演出が上手い。

・シリアスな部分は結構引き込まれます。


気になった点

・千鶴ルートにももうちょっと起伏があると良かった。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
主人公である角谷総司は、幼少時に毘父村で鶴と亀を助ける。
さらにその日、雪女に父親を殺されてしまう。
その後、転校した先の小学校に雪娘そっくりの白髪の女の子がやってくる。果たしてその娘の正体とは……?
さらに大学に入学した総司の前に、鶴と亀の化身と思われる娘達も現れる。
そしてこの夏、偶然なのか何者かの意思なのか、全員で毘父村へ旅行することに……。
3人の娘の正体は? 総司は誰を恋人に選ぶのか?

こんなストーリーになってます。


何だか久々にゲームをプレイしたような気がします。
全体的に軽快な恋愛モノで、気軽にプレイ出来、リハビリというか、そういうのに最適だったように思えます。

さて、タイトルを見ると『らき☆すた』と『けいおん!』を足して二で割ったような感触がありますが、あんまりタイトルと中身は関係がない、というのが正直な所……。あっ、もしかして「ゆき」「おん(な)」って事なのかな?

ともあれ、OPムービーも付いていたりして、中々凝った作りになっていたんじゃないかな、と思います。
最初、起動した時の雰囲気は『Kanon』や『SNOW』のそれに近い感触がしたりして。
これは余談ですけれども、最近Live Maker製のゲームをプレイすると、ちょっとカクカクとした動きになってしまいます。常駐しているウイルスソフトの類をオフにしてやると大分改善されますので、同様の症状(?)が出た方は是非おためし下さい。

ストーリーをご覧頂ければ分かるように、雪女伝説が作品を貫く一つの柱になっています。
今更解説するまでもないのですが(作中でも語られますし)、ざっと雪女伝説について、述べておきましょう。

大凡、イメージとしては江戸時代くらいでしょうか?
男の子が父親と一緒に雪山に登り、山小屋で一晩過ごしていると、夜中白い着物を着た女が現れ父親を殺してしまいます。そして、息子にも魔の手を伸ばしてくるのですが、「お前は若いから見逃してやろう。ただし、この事を他言したら命はないものと思え」とか何とか云って去ってしまう。
その後、男の子は成人し、お嫁さんを貰うのですが、父親が殺された日のような吹雪の夜に、「そういえば昔……」と嫁さんに向かって、雪女の事を語ってしまいます。
すると嫁さんは、正に昔見た雪女の姿になって「あれほど他言無用と云ったのに……本当はお前の命を奪わねばならないのだけれど、子供に免じて許してやる」と言い残していづかたともなく居なくなってしまう。

と、大体こんな話です。
有名な『遠野物語』にも、雪女の話は出ていますよね。但し、『遠野物語』に出てくる雪女は、今確認してみた所、子供を連れて出てきたりするようです。

それはさておき、こうした雪女の伝説、そしてお馴染みの「鶴の恩返し」「浦島太郎」的な昔話が、作品のベースやヒロインのバックグラウンド(?)になっており、ルートによって予定調和的なものを迎えたり、或いは予想を良い意味で裏切るような展開があったり、中々面白い仕掛けとなっています。

ヒロインは三人。
幸村雪乃、船場千鶴、竜宮姫子となっていて、名は体を表すというかw
その中でも異色のヒロインが姫子です。ちょっとビジュアルがアレな感じで、「ちゃんとしたヒロイン」ではなくて「ギャグ要員」的なw 
雪乃エンド、千鶴エンド、そして姫子エンドの三種類が、所謂「正規エンド」という事になりましょうか。その一方で意外とバッドエンドの数も多い(回避はそんなに難しくありません)のが印象的でした。
明らかに「選んじゃ駄目」な選択肢があって、そういうのを選ぶとバッドエンドを見ることが出来ます。ちょっぴり迷う箇所がない訳じゃないけれども、普通にプレイしている限りではバッドエンドはあまり見ないで済むかもしれませんね。

まぁ、大凡、誰が「メイン」のヒロインなのか、はお分かりかと思いますw
ただ、その雪乃のシナリオ、良かったんですよね。随所随所にギャグ的な要素が入り込むんですけれども、主人公と雪乃の恋愛の進捗状況は絶妙なリアリティがあり、雪女を巡るやりとりでは適度な緊張感があったりと、プレイしていて飽きる事がありません。

これは些か脱線しますけれども、ノベルゲーム/サウンドノベルに於ける「リアリティ」ってのは、現実世界のそれとはやっぱり距離があるものですよね。例えば現実の恋愛のリアリティをそのまま恋愛ノベルゲームに持ち込んでしまうと、「ゲームとしての面白さ」が無くなってしまうような気がします。
それは文章として表現しづらい曖昧な雰囲気だとか、感情だとか、或いはノリみたいな要素が入り込むからなのでしょう。現実のそれをベースにしても、「ノベルゲームとしてリアルかどうか」ってのは、結構大事な部分なのかも。

話を戻して……。
で、雪乃のシナリオは緊張感を伴うシリアスな部分が、プレイしていてこちらもドキドキしてしまう感じで、良かったです。
そもそも、なんだかんだで一番女性として雪乃が魅力的に描かれている気が……って私の好みの問題ですけれども……。いや、まぁ姫子は論外でしょw で、ちょっと押しかけ女房的な所がある千鶴よりも、おしとやかな感じがして、奥ゆかしい雪乃に惹かれてしまいますよ。
作品のコアな部分とも関わりのある、雪乃のミステリアスな部分が彼女の魅力を後押ししているわけですが、ミステリアスってのは、「何だろう?」「この子は何を隠しているんだろう?」とこちらが考えてしまう、そういう魅力です。つまり、「奥が知りたい」→「奥がゆかしい」→「奥ゆかしい」という。

雪乃の秘密が明らかになった時、「ちょっと重たすぎるぞ……」と思ったのですが、ちゃんとそこはラストでフォローされていて一安心しました。あのまま終わったらどうしようかと思ったw
で、三人娘に隠された秘密の部分、これも上手なミスリードがなされていて、プレイして良い意味での「してやられた感」がありました。

冒頭部分で或る程度、ストーリーの流れや、その帰着するような所を示しておきつつも、予定調和で終わらない、どんでん返し的な部分もちゃんと存在している、という事ですね。こうした意外性の演出が上手で、本作の一つの特徴になっていたんじゃないかと思います。
そこには、結構ギャグ的な要素も多いんですけれどw


気になった部分というとちょいアレですけれども、雪乃のシナリオに比して、もう一人のヒロイン(姫子は除外するw)千鶴の扱いは若干気になりました。
割とサラリとエンドまで向かってしまって、恋愛だったり彼女の秘密なりに迫るパートでのストーリーが割と平坦だったかなあ、と。
一度盛下がりみたいな所があって、ラストに一気に盛り上がるみたいな演出がある雪乃ルートの方が、より練り込まれた感触があったのは事実。千鶴に関しても、彼女の秘密と絡めて、もう一悶着あるともっと全体としても良くなる気がしました。


割とギャグ多めで、気軽にプレイ出来る作品ではないかと思います。
そうしたプレイのし易さの一方で、良く練り込まれたシナリオがあったりと、楽しませて貰いました。
恋愛モノがお好きな方、或いは日本の伝承や昔話に興味のある方は是非プレイしてみて下さい。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2009-10-23 20:09 | サウンドノベル | Comments(0)
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