2009年 10月 25日
今日の副題 「セオリーを越えたセンス」 ジャンル:六畳一間同居ノベル プレイ時間:30分程度。 その他:選択肢無し、一本道。 システム:吉里吉里/KAG 制作年:2009/10/?/ 容量(圧縮時):63.4MB 道玄斎です、こんにちは。 昨日はNaGISAさんのラジオ番組がありました。温故知新的に色んな作品を振り返ったりして、私も亦プレイし直したいと思う作品を思い出したりしました。 その一方で、最近の作品で私が未チェックなものも紹介されていて、興味を持ったので早速プレイ。 というわけで、今回は「non color」さんの『彼と彼女と彼女の忠義』です。 良かった点 ストーリーは、フリーゲーム総合サイトの紹介文を引用しておきましょう。 ある日、ネコにつまずいて、 こんな感じ。 ストーリーを見て頂ければ分かるように、割と良くあるパターンが作品のベースになっています。 専門的な言葉(?)を使うと所謂「動物報恩譚」という事になりましょうか。「異類婚姻譚」みたいな要素もあって、微妙にえっちぃシーンもありますw が、18禁、或いは15禁という程でもないかな? 早速の脱線ですが、「動物報恩譚」とか「異類婚姻譚」のストーリーの型を「話型」と云ったりします。 他にも『白鳥処女譚』とかほんっと沢山、話型ってのはあるわけです。 こうした話型で、分かりやすく、且つ面白いネーミングが付いているものは『隣の爺譚』でしょうか。 『こぶとり爺さん』に顕著なように、善良な爺さんの家の隣に悪い爺さんが住んでいて、善良な爺さんの成功を模倣しようとして失敗する、という話の型です。 他にもファンタジーにありがちな、「主人公は実は高貴な生まれだけれども、それと知らず旅を続け困難の果てに正統な地位(≒王位)を獲得する」みたいな、ドラクエⅤだとかドラクエⅥだとかのストーリーの筋も、話型で云えば『貴種流離』というパターンになります。 しかし、「どんなストーリーでも何かしらの話型に当てはまるんじゃないか? とするならば、話型で分ける事に意味はあるのか?」とい疑問や批判も、話型で処理する事に対してはあります。 尤も、それは作品と向き合う読者の側の問題で、作り手からすれば話型を使えば手早くストーリーの骨子を創る事も可能で……。 ともあれ、こういうのは、文学理論って程じゃないけれども、文学作品を読み解く上での解読ツールの一つではあって、話型を見ていく事で、「ある作品が、どの作品の影響を受けて成立しているのか」を推測したりするわけです。そういう作品のルーツをそれで測定出来るとか、全て話型で処理するとかはやっぱり問題があるものの、作品を取り敢えず手っ取り早く分類したり、他の作品とクロスして論じたりする際には便利な概念だったりします。 何だかんだで私もよくやってますよね、「ぼたんゆき型」とかさw 「ぼたんゆき型」は、根っこの部分を見れば『とりかえばや』にあるような、双子の入れ替えって話のパターンとして、既にそれなりに「型」になっていますかね。多分……それっぽい専門書を書庫から取ってきて見てみれば載ってる気がする……。 っと、脱線しまくりですね。 で、ストーリーとしては、ある日、帰宅してみると、図らずも助けてしまったネコが、人間の女の子の形をして、三つ指突いて待っていた、という黄金のパターン。 作品の土台というか、ベースこそ黄金パターンですけれども、「新しさ」や「実験的」な要素を感じさせるものになっていました。一つは、地の文がト書き風だという事でしょう。 場面が変化する時に「●自室」なんて文字が出てきて、場面が変わった事をお知らせしてくれます。 亦、三人称の文章ともちょっと違って「男、そこで横になる」みたいなw 説明的なト書き調の短い文章の連続で最初、ちょっと違和感があるものの、一文一文が短くテンポ良く示されてすいすいと読んでいける感触がありました。 で、肝心のネコが家に住み着いてからの会話のテンポも上々で、気がつけば「おや? 面白いぞ……」と。 ちなみに、ヒロインのネコはボイス付きです。声は聞きやすいですし、どこか惚けた所のあるちょっと気位の高いネコとしての演技も凄く良かったですねぇ。 ちょっとかみ合わない主人公とネコの会話のやり取りも独特のセンスがあって、「ありきたり」を越えた面白さを感じる事が出来ました。タイトルもちょっと変わってますよね。「忠義」なんて前時代的な言葉が出てきちゃったりして、ちょっと気になる感じ。 そういえば、ネコ(結局、名前を付けてあげなかった!)は、懸賞に応募して、色々なものを当ててくるんですが、名前がないものだから、名字を「寝」、名前を「子」にして応募しています。 これって、ネコの語源の一つの説ですよね。ネコ、飼っている人はご存じでしょうけれども、ヤツらは結構寝てばっかりいます。大凡一日14時間くらい華胥の国にいるようで、「寝る子」だから「ネコ」になった、という説です。 それは兎も角、ネコが押しかけ女房的に家にやってきて、段々と主人公との距離を縮めていく……と思いきや、さにあらず。主人公は何だかんだでネコを煙たがっていて、「これはフラグじゃないか?」という時にあっさり、ネコを追い出そうとしますw ただ、それもあっさりと追い出せる訳でもなくて……。 かなりラストに近い部分で、主人公の脳内の成分(?)が会話する所があって、不覚にも爆笑してしまいましたw ちょっと蛇足かもしれない、と思わなくもないんですけれどもね。 で、肝心のラストは、万々歳のハッピーエンドでもなくバッドエンドって感じでもなく、そのオチはかなりセンスのある感じで、「何か新鮮だな」と。 黄金パターンをベースにしつつも、ヒネリを加えてそこに収まらないような、新しいストーリーを見せてくれる、そんな作品だったんじゃないでしょうか? 30分程度で読了可能のなかなか良質の短編作品だと思います。 ネコを飼っている人も、そうでない人も、是非プレイしてみて下さい。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2009-10-25 16:18
| サウンドノベル
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