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久住女中本舗

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2009年 12月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 『ツルゲーネフによろしく ~Give my love to Turgenev!』

フリーサウンドノベルレビュー 『ツルゲーネフによろしく ~Give my love to Turgenev!』_b0110969_238458.jpg

今日の副題 「タイトルワークが光る一作」

※吟醸
ジャンル:恋愛ノベルゲーム(?)
プレイ時間:小一時間程度(オマケまで含めて)。
その他:選択肢なし一本道。但しオマケ多し。
システム:NScripter

制作年:2009/11/27
容量(圧縮時):152 MB(製作年、容量共に、Ver.2.00にて)



道玄斎です、こんばんは。
今日はタイトルで凄い気になっていた作品がついに一般向けにリリース(って書き方でいいのかな?)されたので、昨晩ダウンロードしてつい今し方読了した所です。
こっちが恥ずかしくなってしまうような甘酸っぱい要素もあって、素敵な作品だったのではないでしょうか?
というわけで、今回は「3 on 10」さんの『ツルゲーネフによろしく ~Give my love to Turgenev!』です。
ちなみに、スクリーンショットは上下逆じゃないですよ?w 
良かった点

・何と云っても目を惹くタイトルワーク。

・ツン過ぎないツンが、ヒロインの好感度を上げているような。


気になった点

・オマケ分のシナリオは、本編に統合しちゃった方が良いかも?

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
――俺は今日、学園のアイドルに告白する。
容姿端麗? 文武両道? 成績優秀? だから、俺とは不釣合い?

――そんなもの、関係ない。
俺は彼女に告白する……しなければ、ならない。

そして、運命の昼休み――俺は、彼女を屋上へと呼び出して、俺の思いの丈をぶつけた。

「俺と付き合ってくれ」

「……嫌よ」

あ、振られた。

こんなストーリーになっています。
って、これはストーリーじゃなくて導入部分ですね……。ストーリーに関しては追々書いていくとして、本作、以前取り上げた事のある『Might -I think of you as yourself.-』をお作りになられた方の作品です。前作よりも爽やかで、軽快な恋愛ゲームという印象です。

ちなみに、本作は「One dot contest」なるゲームコンテストの応募作で、一位になられた作品でもあります。コンテストそれ自体はレギュレーションがあったようで、今回プレイしたものはver.2.00。オマケシナリオが追加されたりヒロインがフルボイス化されたりと、豪華仕様になっています。

兎にも角にもタイトルが良かったですね。
思わず、プレイしたくなっちゃうような、そういうインパクトがあり、且つ作品内容に期待を寄せてしまうようなタイトルワークでした。
女の子の立ち絵があって、恐らく恋愛モノだと予想がついて、尚かつツルゲーネフですから何となく、ね、物語の核心というか、そういう所は分かっちゃう部分はあるのですけれども。


さて、ストーリーを補足しつつ、またいつものように語っていきましょう。
最初に示したストーリーは、言わば物語の導入部分です。実際は、主人公まーくんは、学園のアイドルである女の子の事を好きでもなんでもなく、「一ヶ月学食タダ」という仲間内の告白コンテストみたいのに参加しただけですw 
で、例によってあっさりと袖にされるんですが、「一ヶ月学食タダ」の話をまーくんがし出すと相手の女の子もノッてきて、ウソ彼女になってくれる、みたいな、そういうストーリー。ちょっぴり導入的な意味では『おためし、かのじょ』っぽい感じがしないでもないかも。

一応、学校のアイドルの女の子が(ウソでも)付き合ってくれる事になった訳ですが、まーくんは彼女の名前を知りません。っていうか告白する時にどうやって呼び出したんだ? とか、告白コンテストの概要は彼女の名前を出さずに公表されたのか、とか色々な疑問があるわけですが、「がっついていない」タイプの男の子として、中々好感の持てるタイプでした。
ちょっぴり、この手のゲームではお馴染みの「お馬鹿属性」も持っていて、安心感がある主人公というかそういうタイプ。

例のアイドルの方は、告白してきたまーくんが自分の名前すら知らない事を知り、「ツルゲーネフ」と呼びなさい、と云ってきます。私なんぞはここらへんで、色々気づく事があったんですけれども、そういう予備知識による気づきみたいなものが無くても、良い引っ張り方だったと思います。
あんまり、作品の中で、謎の上に謎が積み上がる、みたいなタイプだとこちらもジレてきちゃうんですが、「彼女の名前は不明。だけれどもツルゲーネフと呼ぶ」という、ちょっとした謎というか秘密的な部分は、作品全体の内容と相俟って、良い塩梅でした。

ツルゲーネフさんは、強引に分類すれば所謂「ツンデレ」という事になるんですけれども、ツンの度合いが激しくないというか、寧ろツンではなくて「お澄まし」しているくらいの描写だったので、個人的に好感度が高かったです。やっぱり、あんまりツンツンされちゃうと後でデレるのが分かっていても、「何か厭なヤツ……」ってなっちゃいますからねぇ。

ストーリーの中身そのもので云えば、そこまで新味は無いのですが、タイトルやタイトルを活かした描写、そしてヒロインの感じの良さ(ボイスもかなりグーでした)で、素敵な作品として仕上がっていたんじゃないかと思います。本編(これが元々のコンテスト出展分の分量と思しい)だけなら10分程度で読めちゃいますから、今回はネタバレはしない方向で。

あっ、そういえば、割と古典文学(日本の、ね)からのフレーズの引用があったような。
古典文学っていうか和歌なんですけれども。個人的には結構古典文学好きですし、たまに旧仮名遣いと現代仮名遣いを混同してしまうくらいなので、ちょっと良いスパイスになっていたんじゃないかと思いました。

文学と云えば、本作の場合、ストレートにツルゲーネフという事に。私も若い頃何冊か読んだ記憶がありますが、やっぱり一番印象に残っているのは『はつ恋』という作品です(私が読んだのは多分新潮文庫で、そこではタイトルが『初恋』ではなく『はつ恋』であったと記憶しています)。
ロシアの青年が、年上のちょっときらびやかな感じの女性に恋をするんですが、悲しい哉、実はその初恋の女性は自分の実のオヤジとデキていたという、なんかアレな感じの名作(?)w 念のため云っておきますが、本作はそんなドロドロな展開はないのでご安心あれ。


さて、一方気になった点、ですが、コンテスト出展作に+α(というには豪華すぎる)の内容を加えてver.2.00としてリリースなさっているのですが、オマケシナリオも「本編」(コンテスト出展分と思しき部分)とリンクしたものなので、オマケの幾つかを本編に纏めちゃっても良かったんじゃないかな? という。
というのは、本編は本編で見せ場があって、エンドがあるわけです。で、やっぱりオマケも本編の裏側を見ていくような部分がありつつも、やっぱり見せ場があり、本編と直に繋がっていくわけですから、「本編+オマケシナリオ1+オマケシナリオ2+……」みたいな感じの見せ方にすると、少しブツ切り感があるんじゃないかな、と思います。
思い切って、オマケシナリオの幾つかを本編に組み込んだ方が、一本の作品としての纏まり感はあると、私は感じました。


大体こんな所でしょうか?
ストーリーそのものは、先にも書きましたようにそこまで目新しい所はないのですが、素敵なタイトル、そして爽やかで丁寧に作られた作品でしたので、少し甘めですけれども今回は吟醸で。
そう考えると、タイトルって結構重要な部分なんだなぁ、と改めて感じますねぇ……。

ロシア文学好きでなくとも、気軽に楽しめる良作だと思います。
本編そのものは10分なので、是非プレイしてみて下さい。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2009-12-02 23:09 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by めそ@3 on 10 at 2009-12-05 17:42 x
久住さん……いえ、久住さまとお呼びしましょう。
久住さま、初めまして。同人ゲームサークル「3 on 10」のめそです。

前作「Might」に引き続き「ツルよろ」もレビューして下さって、感激することしきりです。
こうしてレビューをいただくのは製作者として本当に励みになります。ありがとうございます。


レビューでご指摘いただいた通り、この作品にはストーリー自体にさほど目新しい所はありません。
よくあるキャラによくあるキャラがよくあるパターンでよくある告白の末、よくある形に落ち着きます。

これが非常によくある話で、だからこそ、よくわかる萌えを提供できたのではないかと、そんな風に思います。


ご興味があれば、「One dot contest」の他のサークルさんの出品作品も是非プレイしてみて下さい。

特に「白桃花-hakutouka-」さんの【Braver's tail】と
「イノセントウイングス」さんの【その物語の主人公】はおすすめです。

それではブログコメントの字数制限に引っかかりましたので、今回はこれにて。
久住さまのブログはこれからも、一読者として毎回楽しみにさせていただきます。
Commented by s-kuzumi at 2009-12-08 00:35
>>めそ@3 on 10さん

こんばんは。
こちらこそどうもです。あっ、どうか「さま」付けはご勘弁下さいましw 

『ツルよろ』、タイトルワークが凄く素敵で、例のコンテストに出品(?)されていた時から、「これはプレイしたいな」と思っていたので(確か公開期間がありましたよ、ね?)、豪華ヴァージョンのver.2.0を出して下さり、嬉しく思います。

多分……多くの人が(って敷衍していいのかどうか、分かりませんが)、オーソドックスだから良くないとか、そういう事は考えていないのだと思います。或る意味、その分かりやすさの括りとしてジャンルってものがありますからねぇ……。

私なんかは、オーソドックスで一見目新しい所がなくとも、それが丁寧に描かれていたり、他のそれと重ならないはみ出た部分(=個性)が、出ていればそれは作品として立派に存在しているし、何かに似たような結末であったとしても名作は存在するんじゃないかな、なんて思っていたりします。


作品までご紹介頂き感謝です。
お返事が遅れました事、お詫び申し上げます。
それでは、失礼致します。
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