人気ブログランキング | 話題のタグを見る

久住女中本舗

kuzumi.exblog.jp
ブログトップ
2009年 12月 25日

フリーサウンドノベルレビュー 『年末年始の恋模様』

フリーサウンドノベルレビュー 『年末年始の恋模様』_b0110969_1194657.jpg

今日の副題 「はじめて手を繋いだ日のこと、覚えてますか」

ジャンル:恋愛ノベル
プレイ時間:30分程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2009/12/?
容量(圧縮時):5.82MB




道玄斎です、こんばんは。今日、というかもう昨日になっていますが、クリスマスイブでした。そして今日はクリスマス。皆様は如何お過ごしでしょうか? 私は普通に酒呑みになっていますw クリスマス絡みの騒ぎを見るにつけ、どこかそこに「白々しさ」を感じ取ってしまう私は、もう枯れてしまったのかw
今日は、まさにそんな年末年始を意識した青春恋愛ストーリーをプレイ。ゲームの中でくらいは青春したって構わないでしょう……。
というわけで、今回は「九州壇氏」さんの『年末年始の恋模様』です。
良かった点

・ノベルゲーム「らしさ」が大分表に出てきて、具体的なストーリーの展開があり成長が見て取れる(って、ちょっと上から目線でスミマセン……)。

・ちょっぴりツンな主人公の女の子がいい感じ。


気になった点

・些かオーソドックス過ぎたかも?

ストーリーは今回は、久々に私が纏めてみましょう。
受験を控えた高校三年生の冬。高野みやびは受験と幼なじみのマサルへの思いで、心が乱れていた。
そんなある日、マサルから「彼女が出来た」と告げられて……。

と、このくらいにしておきましょう。

今まで、この作者様の作品は全てプレイしてきています。
本作は三作目。コンスタントに作品を創る事、それはとても難しいわけで、凄いなぁ……と思う事頻り。
一作目は比喩というか、割と抽象的な事柄を描いたもので、二作目はそれをより具体化したようなものだったわけですが、三作目にして、はっきりと分かるストーリーを持った作品が出てきました。

良かった点とも気になった点とも関わる問題ですが、凄く堅実な作り込みだったと思います。
どのキャラクターにも厭味が無いですし、恋愛モノではともすれば「そこに居てギャグを連発する役」になりがちな「親友キャラ」も凄く良い子で、ホッと出来るような、そういう部分がありました。

そうそう、ちなみに主人公は女の子。
主人公が女の子で、ギャグを連発するような親友が居たらそれはそれで、なんかアンバランスな気もしますねw
女性向けと限定しなければ、主人公は多くの場合男の子ですから、そうした主人公の性別という意味でも既存の恋愛作品と少し差異化が為されているという感じ。

で、まさに十二月二十四日に千々に乱れる乙女心を描いた作品でした。
今日はもう、お酒入ってますから脱線しまくるんですが、高校三年生で受験を控えており、且つ恋愛事情にも頭を悩ます。今だから云えるんですが、それって「高校生の特権」みたいなものですよね。
私も18歳の時そうでしたもんw 受験があって勉強しなきゃいけなくて、だけれども付き合っていた相手とは音信不通、みたいなw 本作に於いては、主人公みやびは、マサルと付き合ってる訳じゃないんだけれどもね。

センター試験対策の勉強とかが作中で出てきて、何だか久しぶりに色々思い出しました。
まぁ、センター試験って半分「条件反射」で解答していく、という感じだった気がしますねぇ。難易度の高い所謂「悪問」みたいのは御法度ですから、ちゃっちゃかちゃっちゃか解答出来なきゃ駄目だった記憶があります。けれども、私、センター試験の成績そんなに良くなかったんですよね。受験した教科を平均してみると8割五分くらいだったと思います。しかも、どの教科が足を引っ張っていたのかってーと、実は国語でしてw 170/200くらいだった気が……。一見すると八割五分って良さそうに見えるでしょ? けれども、センター試験って9割取れていると安心、なんて当時から云われてましたから結構微妙なラインだったんですよね。結局センターを使って合格した国公立大学には行かず、普通の私大に行ったわけですけれども。

それは兎も角、結構そういう受験の緊張感みたいのもしっかり描かれていたんじゃないかな、と思うわけです。図書館で勉強とか、誰しも経験あるんじゃないでしょうか? しかもそこには幼なじみとか友達もゾロゾロ居て結局、勉強にならなかったり、とかねw

ただでさえ、受験という一大事が控えているのに、そこに恋愛という或る意味で受験と相反する要素が入り込むと、本当に大変な事になります。恋愛の進捗状況が勉強にも影響を与えてしまうわけですよね。一方で、恋愛が上手く行きすぎてラブラブ一直線でもそれはそれでマズイ。
そういう場合、結果、大抵「女の子だけが合格」という事が多いんですよw いや現実の世界での話ですw 多分……ですけれども、女の子の方がメンタル的に強い部分ってあるような気がしますね。

っと、流石に軌道修正をしておかないと……。
みやびは、片思いをしている幼なじみで隣の家に住んでいるマサルから「彼女が出来た」という話をされて落ち込んでしまいます。この辺り、胸が痛いんだけれども、親友キャラがダウナーになった主人公を一生懸命支えてくれていて、ちょっと良い感じでもありました。


とはいへ、全体を通してみてみると、かなりオーソドックスな恋愛モノなんですよね。
オチみたいな部分は、すぐに推測可能ですし、造型としては良くあるタイプ。音楽素材が耳慣れたものが多かったのも、オーソドックス感を感じさせる一因かな。
受験の問題、或いは主人公が女の子、といった部分で差異はあれど、もう一押し、「この作品ならでは」の要素が欲しかったです。
これも、何度も書いてますがオーソドックスなものをオーソドックスに作る、というのは実は難しいと思いますし、完成品をお作りになられている、という時点で十分敬意を表すに値するのですけれども、オーソドックスだからこそにじみ出てくる「持ち味」というか個性みたいな部分が見えても良かったかな、と。

そういえば、親友キャラだけでなく、主人公の「ちょっぴりツン」な感じは良かったですね。
あんまりツンケンされても困っちゃうし、表面的には「リアル感」のあるツンで、心は乙女、みたいな主人公は中々魅力的でした。
キャラクターで云えば、出番はほんの少しですけれども、みやびの父親がいい味出してましたねw あのお父さん私は大好きです。もし、私が結婚して、女の子が出来たとして、その子が年頃になって泣きはらした顔をしていたら、きっと佐々木光太郎宜しく「誰に泣かされたんだ!」とか何とか云って、刀を掴むくらいの事はしちゃいそうw 
本当に本作でのお父さんの出番は少ないんですけれども、年頃の娘を持った父親のオロオロした感じが素敵で、キラリと光っていたのではないかとw


今回、脱線しまくった挙げ句若干辛口になってますけれども、ラストは凄くいいですよね。
しっかり着地しているというか、「ああ、良かったなぁ」と素直に思え、又ちょっとニヤニヤっとしてしまういい落とし方だったと思います。
オーソドックス、という事でこの手のノベルゲームを散々プレイしている方からすれば、少し物足りない部分はあると思いますが、逆にオーソドックスの利点で、入門者(?)には向いているかもしれません。もし、あまり直球の恋愛タイプの作品をあまりプレイした事が無い、なんて方が居たら是非プレイしてみて下さい。

それでは、また。

by s-kuzumi | 2009-12-25 01:19 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by 九州壇氏 at 2009-12-31 18:35 x
お世話になっております。この度は「年末年始の恋模様」を取り上げて下さりありがとうございました。もったいないお言葉までいただき、恐縮しております。
オードソックス過ぎる、というのはかなりしっくりきました。展開が完全に読めるのもあって、読者に退屈な印象を与えてしまったかもしれません。ご意見、ありがとうございました!

ついでのようで申し訳ないのですが、今昔物語集の現代語訳版(福永武彦訳ではない)を購入しました。すごく面白いです。福永武彦さんの現代語訳との比較が目的であったはずですが、目的そっちのけで楽しんでいます(笑)
事実だけを書く淡々とした物語の中に、等身大の人間の感情が見え隠れする。古典は想像の余地が大きいので、物語を読むたびに止まって考えてしまいます。古典に触れたのは授業の時だけでしたが、今はその楽しさに夢中です(笑) お勧めして下さり、ありがとうございました! 近いうち、福永武彦訳でも読んでみます。
昨日は四回も更新されていましたね。道玄斎さんのパワフルさに改めて脱帽です(笑) 来年も脱線をまじえた記事を楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。
長々と失礼しました。良いお年を。
Commented by s-kuzumi at 2010-01-02 00:44
>>九州壇氏さん

こんばんは。
オーソドックスというのは、良い部分でも勿論ありますよ。オーソドックスをオーソドックスに描けるというのは、やっぱり中々難しいものだと思います。
失礼かもしれませんが、少し堅め(と思う人もいるかもしれない)の文体も、最近あまり見かけないもので、そこは個性というか持ち味になっているのかな? と思ったりもして……。

で……。
『今昔』面白いですよね???w
恥ずかしながら、私は全然「天竺部」とかは読んでないんですよw 「本朝世俗部」ばかりで。
けど、本当にテンポが良くて想像の余地もあって、滅茶苦茶面白いですよねー。

こういう昔話とか、もうちっと専門的な言葉を使えば「説話」って凄く好きで、和洋問わず読んでいます。『グリム童話』なんかもノリは近いので、是非そちらのほうも。

本当は全然パワフルじゃない、虚弱体質なんですけれどもw まぁ、今年も脱線しつつ、いきつもどりつしながらマイペースに更新出来たらいいな、と思っています。
どうぞ、本年も宜しくお願い申し上げます。
名前
URL
削除用パスワード


<< なんてことない日々之雑記vol...      フリーサウンドノベルレビュー ... >>