2010年 04月 09日
今日の副題 「剣の徳に魂魄は」 ジャンル:現代狐憑伝綺話 プレイ時間:~3時間 その他:選択肢なし、一本道。 システム:YU-RIS 制作年:2010/4/2(フリー配布) 容量(圧縮時):288MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、チマチマとプレイしていた作品を遂に読み終えましたので、それをご紹介。 まだ、プレイしよう、と思っている作品は一杯あるんですが、少しづつペースを取り戻せていけたら、と。 というわけで、今回は「花を吐く抄女」さんの『カムガカリ、子狐丸宗近』です。 良かった点 ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。 こちらからどうぞ。 というわけで、「花を吐く抄女」さんの新作をプレイ致しました。 何度か書いていますが、イベントなどの即売会にて頒布されている同人ゲーム、を作っていらっしゃる作者様です。が、イベント後、暫くすると音声や画質などを落としたヴァージョンをフリーにして配布して下さる、というとても嬉しい事をやって下さっています。 今回も、そうして配布して下さった「フリー版」のレビューとなっております。 上手くイベントに行ける時は、購入しちゃうのですが、中々日程等が合わず買い逃してしまう事も屡々。 同人ゲームとの出会いは一期一会的な、そういう部分もあるわけですが、兎にも角にもフリー版を作り、配布して下さっている事に先ずは感謝を。 さて、今回レビューを書くに当たり、ジャンルの項目は作者様のサイトからそのままもってきました。 「現代狐憑伝綺話」という言葉がそれです。そう、本作は「伝奇」というジャンルなんですよね。 伝奇と聞くと、どういうイメージを皆様は持たれるでしょうか? 銃やミサイルと云った兵器があるのにも関わらず、妙に原始的な剣(その多くは日本刀)でチャンチャンバラバラやっていたり、或いは、「こっちの世界」と「あっちの世界」(妖怪とか幽霊とかそっちの世界だ)があって、その二つの世界の境界で押し合いへし合いやってる、とか、ガワの部分だけ採りだしてみると、そんなイメージがありますよねぇ。 そうした部分で、苦手って人が居る一方で、溜まらなく好き、という人もいる、そんなジャンルが伝奇じゃないかと私は思っています。私ですか? モノによりますけれども結構普通に好きですw 少なくとも伝奇というジャンルで尻込みはしませんw 少し古めの作品だと『Midnight Celebration』とか『紅刻の唄』(完結を願ってます)とか凄く好きですし。 本作に於いて、「チャンチャンバラバラ」っていうのは一面正しい、と思います。 普通に日本刀を携えた女の子のイラストが、サイトの方に載っている、という事でご理解いただけるのではないかと。 だけれども、ともすれば、そうした「バトルシーン」が重視される傾向がある(気がしません?)伝奇にあって、本作はかなり異色です。 それは、「バトルシーン」がメイン、というのではなくて、やっぱりキャラクター同士の掛け合いや、その人間関係、或いはそこから生まれる感情とか感慨、そうしたものに力点が置かれている気がするからです。 何度も何度も書いてアレなんですけれども、キャラクター同士のちょいと粋な言葉のやり取り、そこが凄くこの作者様の作品を特徴づけているんですよね。 本作に於いても例外ではなく、バトル的な場面は本当に要所要所、という感じで、それが「メイン」とか「ウリ」という印象ではありませんでした。 私は、その絶妙なやり取りが溜まらなく好きなので、そう感じてしまうのかもしれませんがw さて、ここらへんで脱線を一本入れておきましょう。 もう、勘の良い方はお気づきの通り、本作の発想の源の一つに、能の『小鍛冶』がある事、ほぼ間違いないと思います。多分……有名な能の作品ですよね、私が知っているくらいなのでw しかし、悲しい哉、私はこの『小鍛冶』を生で見たことも無ければ、DVD等で見たこともありませんw 漠然と内容だけ知っている、という感じです(というか、予備知識が無く、初見で能を見て内容を理解出来る人が居たら見てみたい……)。 別に『小鍛冶』について知っている必要も無く、私のように、刀とお稲荷様のお話だよね? くらいの認識でも本作をプレイするに当たり、全く支障は生じません。 今回、割とチマチマと小刻みにプレイしていたので、合間合間に、本作にまつわる(?)事柄を勉強する事が出来ました。 私の調査に拠るとお稲荷様を祀った神社が、様々な神様を祀る神社の中で日本で一番多い、という事になるわけですが、何となく納得出来そうじゃありません?w 皆さんの街にも一つや二つくらい「○○稲荷」とか「○○稲荷神社」とかあるんじゃないでしょうか? 個人で祀っている方もいらっしゃいますよね。敷地の中に小さなお稲荷様の社を建てている家とかね。 そうした信仰の背景には、江戸時代くらいに爆発的に稲荷信仰がブームになった事があるそうな。云われてみると江戸時代とお稲荷様って相性が良い気が……。 そろそろ、本題に戻りましょうw 中身の解説に入りますが、相も変わらずキャスティングというか声優さんが凄いですよね。 今回は、やはり主人公の向日葵役の声優さんが凄くいい演技だったんじゃないかと思います。 幼さが残っていて(12歳の設定だ)、それで居て祖母と神社で暮らしている為か、妙に老成しているような所もあったりして、声優さんの演技と相俟って魅力的でした。 狐に憑かれて「東京二十四区」なる霊場にて、鬼退治をする事になった主人公の向日葵。鬼退治の先輩達との共同生活を通じて、目的となる99匹の鬼を倒すべく修行したり、ご飯を作ったり、鬼退治をしたりするわけです。 テキストの分量でも、多分、鬼退治ではなくて、この「共同生活」というか、生活実感みたいな所に重点が置かれているかな? と私なんかは感じてしまいます。 やっぱり、ちょいと難しい(というか古めかしい)雰囲気の言葉が出てきて読みづらい部分はある、のですが、その何気ない「普段のやりとり」が、やっぱり一番面白いんですよね。 そうそう、テキストの読みやすさが前作よりもアップしていました(上からモノを云うようで申し訳ない……)。 多分……前作は、割と長目の文章がずらっとワンクリックで表示されていたと思うのですが、本作では文章表示は割と小刻みに。個人的に凄く読みやすくなったな、と感じましたよ。 ほら、画面が細長いですし、割と一行の文字数も多めなんです。それで、一回クリックしただけで7行とか表示されちゃうと、圧迫感というか、ちょっと読みづらさがあったのですが、本作では3行くらいなので、かなり読みやすくなったかな、と。 そういえば、本作ではそれぞれの狐憑きが持つ刀も亦喋ります。というかパーソナリティがある、という感じ。 ですので、掛け合いの多様さとかそういうのは、過去の作品の中でも随一かもしれませんね。 気になった点……は声優さんの誤読(?)とか色々あるわけですが、それは一旦擱いておいて。 何より一番気になったところは、世界観とストーリーが必ずしも密接に繋がっていない、という感触。 ・世の中には鬼、が存在していて、それを退治する役目のものが居る。 ・そして、その鬼を退治させようとする組織が存在する。 ・鬼を退治する役目の者は、狐に憑かれた狐憑きの状態になるが、99匹の鬼を切ったら狐憑きは落ちて人間に戻れる。 こういう設定が私の言う所の世界観です。 作品世界を構成している「最重要要素」っていうか、そういう感じです。 ざっくり、本作の世界観をざっくり三つに分けてみたわけですが、三つ目はちゃんとストーリーで消化され、ラスト、そしてエンディングへ繋がっていくのですが、上二つの部分で若干消化不良が。 ネタバレを回避しつつ語ると、向日葵は自分の役目を果たしたかもしれないけれども、鬼との闘い、という根本的な部分で決着が付いたのかどうか、って事なんです。 もうちょっと、そこらへんで話が膨らませられたり、何かしらの結論を与える事は可能……だったんじゃないかな? という。 マクロな目的の為、ミクロで戦っている人たちが居て、ミクロの中の構成要因たる向日葵の目的は達せられたけれども、マクロな問題が置き去りにされちゃったかな、という感触。 あっ、念のために云っておきますが、本作のエンディングは中々良いものでしたよ! どちらかと云えば「余韻タイプ」かも。或いは、向日葵の物語はあそこで終わったかもしれないけれども、まだ東京二十四区で戦っている人たちが居る……という、そういう「余白」を敢えて持たせた意図的なエンディングだったのかも。 ともあれ、読み応えはあり、小粋な会話の掛け合いは楽しく満足感のある作品でした。 伝奇好きなら勿論の事、この作者様のファンや、お稲荷様というキーワードでピンとくる人はプレイしてみるといいと思いますよ。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2010-04-09 00:50
| サウンドノベル
|
Comments(2)
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ddd
at 2013-05-23 21:14
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鬼は実在していて、山の神だ
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s-kuzumi at 2013-05-23 23:03
>>dddさん
こんばんは、はじめまして。 寡聞にして、私は鬼の実在を証拠付けるような資料等を見たことがありません。鬼のミイラ? のようなものは、以前写真で見た事はあるのですが、どうにも胡散臭くて……。何か、面白い資料なんかがあったら、是非教えて下さい。 鬼が、人里に平然といたら、確かにオカシイですからねぇ。その意味で山の神っていうのは、何となく納得は出来ます。 ただ、柳田国男とかの本によれば、山人や、一般の権力の及ぶ範囲にないもの、みたいな事は読んだ事あるのですが、神様、というのは、どこから出てきた説なのでしょうか? これももし良かったら教えて下さい。単純に興味があります! |
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