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久住女中本舗

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2010年 04月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『悲しみに二つの祝福を』

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今日の副題 「切って結んで、捻って結ぶ」

※吟醸
ジャンル:
プレイ時間:~3時間程度
その他:一周目、固定エンド。二周目以降エンド分岐。全部で5エンド。
システム:NScripter

制作年:2010/3/31
容量(圧縮時):33.7MB(ver2.00)




道玄斎です、こんばんは。
東京は晴れたり雨が降ったりが交互に繰り返されており、非常に気分が悪いですw そういう時にはノベルゲームで憂さを晴らそうと思って、また一本プレイ致しました。過去に一度取り上げた事のある作者様の作品ですね。
というわけで、今回は「ReIce -second-」さんの『悲しみに二つの祝福を』です。

ちなみに、NaGISA netの NaGISAさんをゲストにお招きしたオフ会を5/29(土)に予定しています。
ノベルゲーム愛好家、レビュワー、制作者色んな方に来て頂いて、楽しくお話出来ればいいな、と思っております。詳細はこちらから
開催の日が近づきましたら、又改めて告知を致します。どうぞ宜しくお願い致します。
良かった点

・良い意味で「らしい」作品になっている。文章もより読みやすくなった気がします。

・幸せな結末じゃなきゃ厭、という人の為のグランドエンディング完備w


気になった点

・予備情報が無いと、初回で止めてしまう人もいるのでは?

ストーリーは、100%ふりげストアの紹介文を引用しておきましょう。
未来を知ってしまった者の抗いの物語。
姉の帰郷の報は、修一(しゅういち)の日常を一変させた。
幼馴染である華鏡(かきょう)、友人である佐久斗(さくと)、メール友達である『未来さん』、そして、姉の楓(かえで)。
彼らと共に変化はしながらも、続いていく平穏な日常。
しかし、未来さんから届いた一通のメールが全てを変えていく。


プレイ時間は3時間前後です。
ver2.00より5エンディング、1ルートが追加されました。
2週目より選択肢が追加され、分岐します。
過去2作と同様にシリアスな展開が好きな人にお勧めです。

こんな感じです。

ゲーム掲載サイトに載っている説明文。
それを読まないと、損をしてしまう、という好例にもなりそうな作品(?)でした。

そう、最初に気になった点について述べるのですけれども、もしかしたら条件反射的にダウンロードしてしまった人は、本作は「2周目以降」がある、と気がつかないかもしれません。
それは裏を返せば、「1周目」だけでも十分楽しめる、という事でもあります。

一応、私は、ノベルゲームをダウンロードする際には、ざっとでも説明文に目を通したりしますねぇ。
先日も書いた気がするのですが、「どういう作品なのか?」をてっとり早く把握する為に、それがやはり一番効果的ですよね。
だからこそ、逆にそうしたデータを意図的に排除して興味を惹かせるような、そういう細工も活きてくる訳です。

普通に、昨日からプレイしていて、今日1周目のエンディングを見たわけですが、ふっと違和感があって、「そういえば……エンドがいくつかあるって書いて無かったっけ?」と思い、もう一回タイトル画面のSTARRTを押してみたら案の定……という。
人によっては2周目がある事、気がつかない人もいるんじゃないかな? このシステム的な部分で「まだ2周目以降がありますよ!」と読者(プレイヤー)にお知らせする何かがあっても良かったかな? という事でした。


さて、中身の方なのですが、『White Epilogue』、『終わりに見えた白い明日』で有名な作者様の作品です。これで、今までリリースされた作品は全てプレイしている事になるわけですが、その作者さん「らしい」部分、それは同じ作者さんの作ったゲームを複数作プレイしていると分かってきます。

本作も凄く良い意味で、その作者さん「らしい」ストーリーだったのではないでしょうか?
マンネリとか、そういう事を云う人はいつの時代もいるものですが、そうした「違う作品を創っていても出てきてしまうカラー」こそが、個性やオリジナリティの一つの正体だと私は思いますよ。
何となく、の感覚で申し訳ないのですが、「ノベルゲーム」の文章、というよりは「ライトノベル」の文章に近いかな? と思います。

これも一つの「見る」というよりも、「読ませる」タイプの文章ですよね。
ちょい上から目線ですが、文章も洗練されてきて、独自の雰囲気は持ちつつも、『終わりに見えた~』の時よりも読みやすくなっていて良かったですよ。
パパっと「見る」ように読んでいくと、何が何だか分からなくなってしまうかもしれませんw って、これはちゃっちゃかとクリックするクセのある自分への戒めでもありますw
「読んで」「考えて」「理解して」、作品と向かい合う。プレイする側にもそうしたプロセスを要求してくるような凝ったストーリー、設定はこの作者さんの持ち味だと思いますし、私はそこが凄く好きです。


初回プレイした時には、結構な違和感があったんです。
ネタバレを回避しつつ書くと、本作の一つの焦点は、「姉さんが10年ぶりに帰ってくる」というもので、その事実であたふたする主人公やその周囲の人物の描写からストーリーが始まります。
何であたふたするんだ? って事を当然考えますよね。「ぶっとんだ姉ちゃん」なのかもしれないし、何かヤバげなバックグラウンドがあるのかもしれない。

けれども、蓋を開けてみると、全然普通のお姉ちゃんなんです。
まぁ、かなりブラコンっていうかそういう所はありますが、或る意味でこの手のノベルゲームやライトノベルでの王道的な感じだったんですよ。
で、いつ、お姉ちゃんのヤバい部分が出てくるのかな? と思っていたら、そのお姉ちゃんとは直接的に関係の薄そうな事件が起き、ストーリーがそちらに流れ、纏まっていき……。

っと思っていたら思わぬ急展開があって、そうした違和感を全て吹っ飛ばすような、「作品世界の仕組み」が語られていき、「をを! こりゃ凝ってるなぁ……」と思わず唸ってしまいました。
上手く説明出来ないのがもどかしいのですが、この作者さんの得意の展開ですよね。薄々、そういう仕掛けがある事を予想していても、やっぱり唸ってしまいます。
切って結んで、捻って再度結んで、みたいなw 「読み物」である事を利用した仕掛けはやっぱり美味しいです。

凄いな、と感心してしまうのは、「何でそうなったんだ?」という原理の部分をあまり意識させないで、ストーリーが成り立っているという部分です。「そういう世界」が極々自然にさらっと出てくるので、今、こうやって改めて反芻して初めてそこに気がつく、というw 
これはやはり、作品世界の作り方がしっかりとしている、という事に起因するものだと思います。「描きたいもの」が明確だという事ですね。


で、2周目で1周目(これは選択肢無し)と基本的に逆の選択を採っていけば(超重要な箇所は変えちゃ駄目)、かなりハッピーエンドに近いエンディングを見る事が可能です。
その後、チマチマと選択肢のパターンを試して試行錯誤していけば、すぐに4つエンドを回収出来ると思います。
で、その段階でまたSTARTを押して作品を開始しようとすると、最後の最後、グランドエンドとも云うべき大団円的なエンドを見ることが出来ます。それを見るとタイトル画面に初めて変化が現れます。
中々、気がつかないで、グランドエンドを見逃してしまっている方もいるんじゃないでしょうか? エンドリストとか付いていると分かりやすいんですけれどもね。

ちょっと脱線、ですが、エンド回収で詰まった時、私なりの対処法があります。いくつか示してみましょう。

1、「ロード」から始めないで、「最初からよむ」や「START」から読むようにする。

私は記憶力が凄く悪いので、自分がセーブしておいたものを勘違いしてしまう事があります。
エンドを埋める時は、選択肢の分岐を如何に変えるのか? がキモとなるわけですが、「選択肢ごとにセーブするでしょ、普通。
ですが、たまにその作業を忘れてしまって、「或る選択肢を採ったルート」をセーブして、「その選択肢を採ってないもの」としてロードしちゃうんです。凄く分かりにくいですね……w
取り敢えず、詰まったら「最初から」始めると意外とすんなり進んだりする事があります。


2、ソフトを一旦、終了させ再起動させる。場合に拠ってはOSを再起動するw

あれこれ試したけれどもどうしようもない場合、これで対処出来るケースがあります。
何かね、フラグがリセットされない、みたいなものがある感じですねぇ。
例えば、攻略情報が載っているサイトがあって、その通りにやっても出来ない場合なんかに試すとグーですよ。


何を言いたいのか、ってーと、本作の場合は、タイトル画面が変わるまででしつこく「START」で最初から読んでいくといいよ、という。
上手く選択肢の分岐が分かって、「ここでこれを選べば一個回収出来るな」って目論みが立つ時以外は、最初から読むといいですね。既読スキップもちゃんと実装されていますから楽々です。

作者さんのサイトを拝見すると、どうやら7周年だそうで、その継続力に頭が下がります。
是非、今後も素敵な作品を生み出して下さいませ。


久々に吟醸を付けた作品でした。
中々、この作品(というか、この作者様の作品)の感触を伝える事は難しいですね。凝った設定とかも多いし重要な所はネタバレしたくないし、ねw
けれども、間違いなく面白い作品だと思うので、興味があれば是非是非。1周しちゃえば、あとは既読スキップが利きますから、意外と体感時間としては短いと思いますよ。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2010-04-12 22:33 | サウンドノベル | Comments(0)
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