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久住女中本舗

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2010年 04月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『Wonderful Wonderland』

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道玄斎です、こんばんは。
今日も尺が短めな番外編。大体、全部で20~30分と云った所でしょうか。
というわけで、今回は「+tics」さんの『Wonderful Wonderland』です。お馴染みのお話を少し変化させて……というタイプの作品。



ちなみに、NaGISA netの NaGISAさんをゲストにお招きしたオフ会を5/29(土)に予定しています。
ノベルゲーム愛好家、レビュワー、制作者色んな方に来て頂いて、楽しくお話出来ればいいな、と思っております。詳細はこちらから
開催の日が近づきましたら、又改めて告知を致します。どうぞ宜しくお願い致します。



さて、起動してみればすぐに分かるように、お馴染みの童話をモチーフとした作品群となっています。
『赤頭巾』『眠れる森の美女』『白雪姫』『ヘンゼルとグレーテル』……どなたもご存じの童話だと思います。ですので、作品の「内容」は既に示されているも同然なのです。
が、「シナリオ」という事に関しては、やっぱり一ひねりあって良かったなぁ、と思います。

改めて、私の考える「内容」と「シナリオ」についても触れておきましょう。
そうですね……『赤頭巾』を例にしてみると、赤頭巾ちゃんが具合の悪いおばあさんの所へ荷物を届けに行く、という作品の大きな枠組みが「内容」です。
一方、赤頭巾ちゃんが出発するに当たり、母親から何をどう言い含められたのか、おばあさんの家に行く途中でどんな出来事があるのか、どういう結末を迎えるのか、という個々のエピソード。それが「シナリオ」なのではないかと。

今、仮に何人か人が居て、誰かから「赤頭巾を小説にしてよ」って云われたとしましょう。
内容はみんな知っています。幸い、文章を書く事そのものも苦でないその何人かは、小一時間くらい掛けて「小説版赤頭巾」を書き上げるはずです。
さて、ここで出来上がったものを見てみると、それぞれが「同一の内容」を描いているのにも関わらず、その描き方が異なるものが出来ているんじゃないでしょうか。

ある人は一人称で「小説版赤頭巾」を書き、またある人は三人称でそれを書きます。
人称の問題に留まらず、人によっては、赤頭巾とお母さんの会話に力を入れる人もいるでしょうし、オオカミとのやり取りを軽やかにさらりと書く人いないとも限らない。
つまり、物語のフレームは同一でも、微妙な差異が生じるわけです。

だからこそ、誰もが知ってる童話、から題材を採った本作のような作品、私は大好きなんですよね。
大体、昔話の類って、ヴァリアントで構成されているって云ってもそんなに外れてはいなくて、微妙な差異はありつつも、「大筋で殆ど同じ話」がどこかで見つかります。
日本の昔話にそっくりな昔話が、海外で見つかる、なんて事もあるわけですが、それは集合的無意識ってなものでして……ってこれは昔話というより神話、ですかね。

話を単純化すると、「赤頭巾」というフレームそれは材料なんです。
問題はその材料にどうやって包丁を入れるのか? という切り方や、調理の仕方によって、内容こそ同じでもガラッと異なった印象を与えるような……そんな作品が出来上がる可能性があるわけです。
そういう意味で、本作に出てくるお馴染みの昔話。良い調理の仕方をしていたなぁ、と感心します。さらっと流れていくような、素直なものもあれば、一ひねり加えてあって、元々の原作に無いようなフレーバーを加えているものもあって、内容は知っているもののやっぱり楽しめちゃいます。
微弱な差異を楽しむ、ってのは割と退廃的なのかもしれませんけれども、私は好きですねぇ……。

ちなみに、尺との兼ね合いで見れば、割と選択肢の数は多めかな?
各話に3回くらい選択肢が出てくるので、都合12個くらい選択肢がある感じ。
実は、エンド、という事では結構なヴァリエーションがありました。「赤頭巾」なんかは、普通にバッドエンド風味のものがあったりする一方で、原作には無いけれども、納得感のあるエンドが付いていたりね。

個人的に一番好きなのは「Snow White」、つまり「白雪姫」です。
ネタバレは避けますが、結構読ませてくれるっていうか、良い意味で意表を突くようなエンドがあり、満足致しました。


あー、番外編なのに、また長々と……。
内容自体はお馴染みの作品ですが、切り口を変えて表現されると、意外な程に新鮮に、そしてかなり楽しめちゃうのではないでしょうか? 
イラストも素敵なものが多いので、お勧め。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2010-04-16 22:12 | サウンドノベル | Comments(0)
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