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久住女中本舗

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2010年 08月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『ユーマを抱きしめて』

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今日の副題 「美味しさをギュッと濃縮120分」

※吟醸
ジャンル:感動系ノベルゲーム(?)
プレイ時間:2時間くらい。
その他:選択肢無し、一本道。ちょっぴり嬉しいフルボイス。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2010/7/29
容量(圧縮時):487MB




道玄斎です、こんばんは。
何だかんだで、夏、あまりゲームがプレイ出来ませんでしたねぇ。本当はホラーとかね、沢山プレイしたかったのですが、中々めぼしいものが無かったりして。
で、今回は久しぶりにご紹介頂いた作品をプレイしてみました。やっぱり自分一人でゲームを探すと、どうしてもある種の偏りは出てきてしまいます。そういう時に誰かからお勧めを頂くと、自分のレーダーでは掴みきれなかった作品が出てきて面白いですね。
というわけで、今回は「UHMA Project」さんの『ユーマを抱きしめて』です。
良かった点

・泣かせてくれる演出多し。ボイスも良い演技で作品に合っていたと思います。

・脇役が良い味を出しており、作品の中でちゃんと一定の存在感を持っていた。


気になった点

・もう少し、ラストで結論的なものが出てきても良かったかも。

ストーリーに関しては、サイトへのリンクを張っておく事に致しましょう。こちらからどうぞ。


何となく、の私の感触なんですが、ここ最近のフリーのノベルゲーム/サウンドノベルって、「大作指向」か或いは「或る一定の制限の下で制作されるコンテスト指向」に別れるような気がします。
勿論、そうでない作品も多くあるんでしょうけれども、目に付く限りでは、大凡そういう傾向が見受けられるように思います。

いや、勿論、それが「良い」とか「悪い」とか、そういう価値判断はさて擱いて、という事ですけれども。
で、「大作指向」と一口に云っても、「尺が長い」とか「容量が大きい」とか、色々な観点があるわけですけれども、本作も「大作指向」って云ってもいいのかな? と思います。

容量もかなり大きいですし、グラフィックや音声など、拘って制作された事、想像に難くありません。
しかしながら、尺という事で云えば、予想していたよりも短くて、2時間くらいで読了出来る物語の中に、「大作」的な要素がギュッと詰まっている。そういう印象ですね。

中だるみみたいな部分も無く、素直に読んでいけるタイプで、好感が持てました。
商業の作品に近づけよう、とする「大作」の動きがある一方で、こういう密度を高める、的な「大作指向」は意外な程無いんじゃないかと。
そういう意味で、満足度の高い作品でしたし、ちょっとこれからのフリーのノベルゲーム/サウンドノベルの方向性の一つを見せてくれたようにも思います。


そういえば、少し変わっているな、と思ったのが、「明確な主人公」というのが中々措定しにくい、というスタイルです。各章各章、或いは場面場面で、語り手が変わっていくわけです。
これは、ややもせば、文章として落ち着かない感じになってしまったり、或いは視点がごちゃごちゃして読みにくくなってしたりするのですが、本作の場合、そういう感触はありませんでした。

寧ろ、「主人公色」を強烈に打ち出さない事で、各キャラが独立して存在来たんじゃないか、とすら思えます。一応、便宜上、主人公を玲奈としておきますが、刑事さんや勇也が視点人物、つまり語り手となる事で、「脇役」となりがちなキャラもしっかり存在感を出せたのではないでしょうか。

個人的には、刑事さんと勇也がベスト脇役賞だと思いますねぇ。
どちらもタイプは違えど、良い意味での「男らしさ」を持っていて、読んでいて気持ちよかったです。
メインというか、そういうのはやっぱり玲奈と貴由なんでしょうけれども、ストーリーを支える脇役が居てこそ、メインのキャラも映える訳ですから、ね。


ストーリーについても少し語っておきましょう。
基本、特殊な病に冒されて、死期を待つばかりの玲奈を巡る物語、と纏めてしまっても良さそうなんですが、所謂「病院モノ」とか「不治の病モノ」とはちょっぴり違います。
それは、玲奈を蝕む病の特殊な設定があるからこそ、です。普通、「病に冒されている女の子を巡るストーリー」なんて云うと、色白で大人しい感じの女の子なんかを、半ば無条件的に想定してしまうのですが、玲奈はアホみたいに力強い子ですw
それは、病気のせい……なのですが、そこらへんの詳しい事情は本編に譲ることに致します。ただ、あれだけの筋力が出ちゃうと、逆にフレーム……というか骨格だったり関節がぶっ壊れそうな気もするんですけれども、そこを突っ込むのは無粋というヤツですね。

最後の最後まで、どういう所に着地するのか? が分からなかったのも、印象的でしたね。
想像もしなかったハッピーなエンドを迎えて、私もホッとしましたw 
玲奈と周りの人たち(特に貴由)の友情というか、そういう所に着地していったわけですけれども、何となくラストが少し物足りなかったかも? と個人的には思います。
良く、ノベルゲームについて語る際に、自分基準の術語を生み出して使ったりするんですけれども(Ex:ぼたんゆき型)、作品の〆についてもいくつか、自分用語を持っていて、うんと大まかで粗雑なものですが「結論型
」と「余韻型」というものですw

読んで字の如し、という感じですけれども、「結論型」は、ラストで何かしらの結論が出て綺麗に締まる、という感じで、「余韻型」は明確な結論なりは出ないけれども、作品の雰囲気や余韻を棚引かせながら綺麗にフェードアウトしていく、みたいな。

そういう切り口で本作を見てみると、「結論型」というには些か弱い気もするし、「余韻型」でもないような。本当に個人的な好みになっちゃいますけれども、本作の場合「結論型」寄りで終わった方が良かったかなぁ? なんて。
或いは、やっぱり個人的に好きな方法として、EDのエンドロールとかで画像を表示させたりして言外に「その後」を示してくれる、なんてのもあります。そういう処理でも良いですよね。

あっ、これは蛇足かもしれないのですが、一応。
先に、語り手が次々と変わる、というような事を書きましたが、やっぱり玲奈やそのクラスメイトがメインの語り手になります。
で、一人称的に出来事を見ていったり、或いは回想していくんですが、「これは高校生の語彙じゃないだろ」みたいなものがチラホラ出てきますw 「睥睨」とか、中々高校生で使いませんよねぇw 気になったって程じゃないのですが、一応。



大凡、こんな所でしょうか?
「大作指向」っぽさを持ちながらも、その良さが2時間くらいの尺の中にギュッと濃縮されたような、そういう作品でした。これは本当に見逃していましたねぇ……。
ラスト付近に、凄い熱い見せ場もありますし、感動的なシーンも勿論完備。脇役もオイシイので、今回は吟醸に。気になった方がいらしたら、是非プレイしてみて下さい。


それでは、また。

by s-kuzumi | 2010-08-20 21:24 | サウンドノベル | Comments(0)
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