2010年 10月 11日
今日の副題 「ボリューム多めの“正統派”」 ※吟醸 ジャンル:少し不思議な恋愛シミュレーションアドベンチャーゲーム プレイ時間:1ルート1時間半程度。エンドリストコンプリートまで4~5時間くらい? その他:選択肢アリ、ヒロイン毎にトゥルーエンドとそれ以外のエンドに分岐。 システム:NScripter 制作年:2005/8/? 容量(圧縮時):356MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、前回の日々之雑記でチラリと触れていた作品のご紹介。今改めて情報を整理してみると、何と5年以上前に制作された作品のようです。 元々は所謂「同人ソフト」として頒布されていたものを、2008年にフリーで公開して下さった、という形ですね。 中々気合いが入った良い作品だったんじゃないかな? というのが偽らざる所感。 というわけで、今回は「CHRONOGATE」さんの『fragments』です。 良かった点 ストーリーは、ベクターの紹介文から引用しておきましょう。 『山と海に囲まれた小さな町、八木山町―― こんな感じです。 いや、これは良い作品でした。 個人的な感触ですと、あの名作『I'm』にちょっと近い感触があるかな? という感じですね。ただ単に、女の子と接近して、仲良くなって付き合ってお終い、という感じではなくて、主人公の抱えている問題だったりがフィーチャーされてくる辺り「っぽい」かな、っと。 久々の大作なので、どこから書こうか、ちょっと迷ってしまいますが、概略的な所から行こうかな。 基本は、普通のノベルゲーム/サウンドノベルと全く同じで、文章を読み、選択肢を選び、エンディングを見ていく……と非常にオーソドックスな作りです。 先に『I'm』っぽいと書きましたが、内容的にもそういうオーソドックスさを持っています。 が、それがありきたりに終わらない、「美味しさ」もしっかり持っていて、非常に好印象でした。 この世界(?)、話題作が出ると、その後追いというか、似たような作品が相次いでリリースされたりするわけですが、後追い作品って、割とtoo muchになっていっちゃう部分があるような気がします。 それは、特にキャラクターの性格付けの部分で、なんですけれども、ドンドン過剰になっていってしまう、みたいなw 或る食べ物に異常なまでの執着を示す、とかねw かと云って、キャラが薄味過ぎると物足りなくなってしまうわけで、そこの所のさじ加減は非常に難しいというか、繊細さが要求されたりします。 本作をプレイして先ず感じたのは、かなり「ナチュラル」なキャラクター造型なんですよね。けれども、「薄くない」という絶妙なバランスで以て成り立っていたのではないかと。 プレイすれば分かるんですが、主人公の、そして主人公とヒロインの関係に於けるバックグラウンドがしっかりしているんです。 主人公雄治は、帰宅部寄りの美術部員でしてw 毎日部活には顔を出さないけれども、一応美術部に所属しており、絵を描くことが嫌いではない、という、ともすれば、サラリと流れてしまうような設定が、最後の最後までちゃんと効いていて、そういう部分で「これは……」と思わされる所が多かったですねぇ。 美術部であるというフレーバーが最後まで活きてくるのは、美術部部長奈留美先輩のルートと、クラスメイトの紗依のルートですかね。美術部の部長のルートで絵を描くこと、が活きてくるのは当然だとしても、クラスメイトの紗依のルートにまで、そうした細かい設定が活きていて、これはいいな、と思いましたよ。 こういう、ちょっとしたディティールというか、フレーバーを最後まで活かすか、或いは流してしまうか、で作品全体の印象は結構変わるんですよね。 又、持病の心臓病と、作中で語られる不思議な現象との絡みも上々で、凄く丁寧な作りを感じさせました。 所で、皆様は、ヒロインが複数出てくる恋愛ゲームの場合、攻略順って気にしたりします? 私は……結構気にしてますね。私の場合、最初に頭と尻尾を決めちゃう事が多いです。頭に当たるのは、所謂「幼なじみ」や「クラスメイト」的なキャラクターで、尻尾に当たるのは、作品の謎の部分を担当するミステリアス系のヒロインというかw 具体的な作品名を出して、解説すると分かりやすくなるかな? 『ノトス水上紀行』という作品があって、私の場合だったら最初に手を出すヒロインは「亜子」で、最後に攻略するのは「ヒカリ」だという事です。ってこの喩えで分かるかなぁ?w 本作のプレイに於いても、そうなるように、ちょっと意識してみたのですが、予定は大幅に狂いましたw 最初は、普通にクラスメイトの紗依を攻略しようと思っていたのですが、何と……14歳のヒロインが出てくるじゃないですか!w 急遽、14歳のヒロインこと百合子に照準を合わせてそのルートに入っていってしまいましたw 百合子のルートを丁度クリアした後に聞いたのですが、「百合子のルートは入りにくい」んだそうですよ。 そんなに難しい……かなぁ? 百合子と仲良くしていくような選択肢を選んでいけば自ずと、彼女のルートに行ける気がするんだけれども……。 逆に私の場合、百合子以外のルートに入るのに苦労しましたw 特に、紗依と真埜ですね。先輩ルートは割と入りやすいんじゃないかな? と思います。序盤のとある選択肢で彼女のルートにぐぐっと近づけますし、ね。 どのルートを選んでも、各ヒロインには最低2つはエンドがあり、内1つはトゥルーエンドという位置づけですよね。先にも述べた事と関連するのですが、ヒロイン毎の重い軽いの差が、あまり存在せず、どのルートに行っても楽しむ事が出来ます。トゥルーエンドはどれも納得感のある良いものですしね。 個人的にはやっぱり百合子のトゥルーとか好きかなぁ? キャラクターという事で云えば、先輩も好きなんですが、ラスト付近でちょっと女のズルイ部分が見え隠れするのでw ここらへんで、久しぶりに脱線を入れておきましょうかね。 本作の不思議な要素は、主人公の身に起きる「記憶喪失」です。要するに「時間が吹っ飛ぶ」わけですけれども、サークル名が「CHRONOGATE」さん、ですから、その第一弾の作品として相応しいテーマを内包していたな、と。 そう、クロノスって時間の神様がいまして、「クロノ」って言葉が時間に関わる事象の語源になっていたりします。例えば腕時計に付いてたりしません? 「クロノグラフ」ってヤツが。あと、動きが同期する事を「シンクロ」って云いますよね、この「クロ」も「クロノス」が語源みたいです。そういえば、昔『クロノトリガー』ってゲームもありました。 さて、軌道修正をしてw 今までつらつら書いてきた通り、かなりボリュームもあり、内容も丁寧で良い作品だったんです。 ですが、気になった点もやはりいくつかあります。その最大のものは「選択肢が多い!」という点に尽きるんじゃないかとw 選択肢が「ちょっと多め」とかじゃなくて、本当に「多い」ですw しかも、ルートに入るのにはかなりシビアな判定がある一方で、或る一定の所までいけば、それ以後の選択肢の意味が無かったりして……。 結構、バッドエンドを見る事になるんじゃないかな? なんて思います。私も何回見ましたかねぇ……。少なくとも10回は目にしてますねw この選択肢の多さとも関わる気になった点は、「エンディング」が飛ばせない、という問題です。エンディングっていうか所謂エンドロールですよね。イラストが配置されて、見応えのあるエンディング……という感じでもなく、黒地に白文字でスタッフロールが流れるだけ、なので何度も見ると流石に少し飽きてきちゃいます。一度見たら二回目からはスキップ出来るとプレイしやすかったかな、なんて思います。 制作されたのが2005年ですから、今からみると少し懐かしい感触があるかもしれませんね。 けれども、良い作品は年月が経っても相も変わらず「良さ」を保っているものです。コンプリートはちょっと面倒ですが、是非プレイしてもらいたい作品です。 久々にボリューム多めの作品をプレイして、私も凄く満足致しました。苦労した甲斐はありましたねw それでは、また。
by s-kuzumi
| 2010-10-11 19:45
| サウンドノベル
|
Comments(2)
管理人さま
はじめまして。CHRONOGATEの代表をしております、箕家一成と申します。もう五年も前に制作した拙作をプレイ&レビューしていただき誠にありがとうございます。 ご指摘の通り拙いところばかりでお見苦しい点も多かったかと思いますが、殊の外好意的に評価していただき、感激しております。 当時のメンバーももう日本各地に散ってしまい、第二作の予定を立てることも難しそうな現状ですが、ご評価いただけたことを早速皆に伝えたいと思います。本当にありがとうございました。 また、最後になりますが、近いうちにCHRONOGATEのホームページの方からリンクを貼らせていただきたいと思います。その際にはどうぞよろしくお願いいたします。 管理人さまのますますのご発展をお祈りしております。 長文、失礼いたしました。(何か不都合がありましたら、ご遠慮なく削除して頂いて構いません)
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s-kuzumi at 2010-10-21 21:23
>>箕家一成さん
こんばんは。 わざわざ、コメント頂き有り難うございました!! 今まで、知らずにいたのですが、凄く素敵な作品で、プレイして良かったな、と思いました。 名作だと思うのですが、意外なほどに気がつかず、日が過ぎてしまった事、後悔しております。 そして、ちょっぴり辛口になってしまった部分もあるのですが、ご容赦頂ければ幸いに存じます。。 リンクの件、了解致しました。 わざわざ有り難うございます! こちらこそ、大変有り難うございました。それでは、失礼致します。 |
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