2011年 03月 27日
今日の副題 「“裏”に回れば意外な真実……」 ジャンル:ホラー(?) プレイ時間:本編1時間、外伝などで合計2時間程度 その他:選択肢無し、一本道。推奨年齢15歳以上、心臓の弱い人は要注意。 システム:吉里吉里/KAG 制作年:2010/10/6 容量(圧縮時):131MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は珍しく、一日二本レビューです。色々と雑事に取り紛れていたノベルゲームへの情熱が再び蘇ってきたといいましょうか。尺も2時間程度のボリュームのある作品も一気に読めてしまいました。 というわけで、今回は「NonLinear」さんの『赤い女の子』です。 良かった点 ストーリーは作者さんのページへリンクを張っておきましょう。こちらからどうぞ。 というわけで、久々に尺の長目の作品、プレイしてみました。 一応ホラーなんですが、readmeを読むと、15歳以上推奨となっております。そこまで劇的に恐いとか、心臓に悪い、とかは無いとは思うのですが、ホラーが苦手な方、或いは心臓が弱い方はご注意下さいませ。 さて、何だか久々に三人称の作品に出会った気がします。 ノベルゲームでは、かなり多くの場合、主人公の一人称の語りで、ストーリーが紡がれていきます。が、時々三人称を使った、云ってしまえば「小説」に近い文章を目にする事もあって、本作はまさにそのタイプでしたね。 個人的な感想、なんですが、最初は凄く取っつきにくかったんですよね。この文章。 というのは、三人称の語り、という少し珍しい形式を採っており、且つ、登場人物を全てフルネームにて記述する、という独特のスタイルで、尚かつ、登場するキャラクターが多いわけですから、「こりゃ、最後まで読み通せるかなぁ?」と少し不安になりました。 が、プレイをしていく内に、ドンドン文章が良くなっていったんです。 最初の20分くらいまでは、まだ固さが残っているような、そういう文章だったわけですが、徐々に読みやすく、そしてテンポの良い記述になって、後半はグイグイと前のめりで読む事が出来ました。 高校の天文部の合宿、という事で、部長の祖母の住む田舎へ向かう、そんな車中の描写からストーリーは始まります。 ドドドっと、人物が出てくるので、最初は誰が誰だか分からず、一瞬混乱してしまったのですが、これは前述の通りでプレイしていく内に解消されると思います。 それはさておき、実際に祖母の家に着いてみても、祖母の姿はなく、痴呆気味の隣家(二百メートル離れた位置にある)のおばあちゃんと、謎の少女が不気味な物語の幕開けを暗示させてくれます。 そして、そんな中、一人……また一人と……部員達は姿を消していき、彼らが居なくなった後には真っ赤な風船だけが残されている……。 こんな状況になってしまいます。 プレイしていて、ジワジワ押し寄せてくる恐さよりも、高嶺真理子の性格の悪さ、の方に集中してしまいましたw そして、それと裏返しに、真理子と付き合っている天文部部長の拓実にもイライラしてきました。「何でこんな女と付き合ってるんだ!」とw プレイしていくと、どうやら焦点を当てたいキャラクターが由紀子である、と気づくハズ。 所謂「オドオド系」のキャラクターなんですが、見ていて可哀想になってくる部分、そして一連の連続失踪事件に於いて、何か、鍵を握っている、というのがぼんやりと分かってきます。 で、一渡りプレイしてみても、いまいちピンと来ないんですよね。 何が起こったのか? という決定的な部分は謎のままです。与えられているのは、拓実の祖母の家にまつわる悲しい話、そして、その話に出てくる「赤い女の子」と思しき少女が、部員達の前に姿を見せている、という事だけです。 良く、恋愛ものの作品をレビューする時に「何故、こいつに惚れたのか?」という部分で納得感が欲しい、という事を云うわけですが、本作の場合、「何故、赤い女の子が部員を消し去っていくのか?」というクリティカルな部分は、本編では明らかになっていません。 本編は大凡、一時間で読了可能。 これは、何が起こったのか? を提示する章、と言い換えても良いんじゃないかな、と思います。で、本編を読了すると外伝が読めるようになり、外伝を読むと更に外伝が読めるようになり、最後に「赤い女の子・裏」という、言わば「解答編」にたどり着けます。 ここに来て、三人称の語りが、由紀子の一人称の語りとなり、一連の事件に関する「真実」を見ていく事が可能になります。外伝の段階で既に明かされていた事実と、この「赤い女の子・裏」のストーリーは割と密接に関わっていて、最初は厭な女だ……と思っていた真理子に対しても、又違った側面から見ていく事が出来るようになりましたね。 何故、真理子は執拗とも云えるほど、由紀子を虐めるのか、又、何で由紀子は由紀子で卑屈とも思えるような態度で甘受するのか、という部分が外伝と「赤い女の子・裏」でスッキリと見えてきます。 そして、本作の良かった点、として挙げた、「人間の心理」がぐぐっとフィーチャーされて、単なるホラーを超えた恐さだったり、悲しさを感じさせるものになっていました。 「うわっ! お化けが出たぞ!」とか「妖怪だー!」っていうのとは一味違う、苦みを伴った背後のストーリー、が本作のキモですね。 逆に言えば、この「赤い女の子・裏」が無ければ、「ただ単に恐い」で終わってしまっていた可能性もあるわけで、是非、プレイなさる方は最後の「赤い女の子・裏」まで読んでみて下さい。 単純な恐い話、の多くは、妖怪とかがどこからともなく現れ、半ば無差別に主人公達に襲いかかるんですが、本作の場合、一見無差別に見えてその実……というタイプでして、プレイヤーに我が身を振り返らせるような部分もなきにしもあらず。 とはいえ、ラストはやっぱり「ハッピーエンド」とはいかず、一抹の悲しさを感じさせる、或る意味で救いようのないエンドになってしまって、そこは少し気になりました。もう少し、でいいから何か救いがあるようなエンド……の方が本作のテイストには合っていたんじゃないかな? と個人的は思います。 ちょっとダークで救いようのないエンドって、私の好物ではあるんですが、やっぱり由紀子の方に感情移入しちゃうと、もう一匙の救いがあっても良かったかな、と。或いは、由紀子ではなくて、赤い女の子、にも、何かもう少しだけ、救いがあったらな、と感じました。 大体、こんな感じでしょうか? 夏が舞台なので、季節違いも甚だしいんですが、ボリュームもあって、ホラーとしての面白さも(単純な恐さって意味じゃなくて)味わえるようになっていると思います。ちょっと悲しい要素も多いんですが、気になった方はプレイしてみて下さい。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2011-03-27 21:05
| サウンドノベル
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