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久住女中本舗

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2011年 05月 06日

フリーサウンドノベルレビュー 『正義の味方ギガトラスト』

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今日の副題 「唸れ! 魔拳ボルケイノッ!」

※大吟醸
ジャンル:感動系ヒーロー伝奇もの(?)
プレイ時間:一話につきおよそ1時間程度。合計で17時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:Live Maker

制作年:?/?/?
容量(圧縮時):359MB


道玄斎です、こんばんは。
ずっとこちらの更新が滞っていたのですが、一本作品をプレイしたのでレビューを。
お勧め頂いた作品だったのですが、完全に見逃していましたね……。超久々の大吟醸。
というわけで、「サークルゴリッチュ」さんの『正義の味方ギガトラスト』です。
良かった点

・一話一話に強烈な盛り上がりが存在し、次の話へプレイヤーを上手く引っ張っていく作り。

・脇役を上手く活かした色々などんでん返しがあり、プレイしていて飽きる事が無い。


気になった点

・全編に渉って出てくる、(微妙に下ネタを伴った)ギャグが時にテンポを悪くしてしまっている所が。

ストーリーは、作者さんのサイトへのリンクを張っておきましょう。こちらからどうぞ。



いやぁ、こんな作品があったとは、完全に見逃してましたね。
タイトルからしてみると、ちょっとイロモノ……? なんて思う方がいらっしゃるかもしれませんが、本作もフリーのノベルゲームに於いて傑作の一つに数えられて良かろう、とそういう作品だったと思います。

本作の感触を伝える事は中々困難で、最初は『突撃家政婦ドリス』のノリかと思いきや(ってこの例えで分かる人居る?)、ストーリーはシリアスに加速していきます。
所謂伝奇っぽい要素なんかも含みながらも、人と人との関わり、その中で生まれる情っていうのかな、そういうテーマが主軸になって後半は進んでいくことに。

一応、ヒーローモノって括りなのかなぁ……?
実際プレイしてみると分かるのですが、まぁ、悪の組織があって、困っている人の前に忽然と姿を現し事件を解決する、というタイプのヒーローではないんですよね。
なので、本作のジャンルとかを「感動系ヒーローモノ」とかにしてしまうのは、些かの抵抗があるわけなんですが……。

敢えて、似た作品……を探してみると、昔プレイしたことのある(レビューは書いてないハズ)、『白のなんとか』ってタイトルの作品にちょっぴり似てる、かな? なんとか、って書いてますから正式名称を失念しているわけですw 主人公が居て、ヒロインが居て、剣を使うんだ。これ、タイトルが思い出せない……。
いや、ストーリーが似てるっていうよりも、作品の雰囲気っていうか、ちょっと共通する要素があるような。

で、本作の特に優れた点、としては「無駄なキャラクターが存在しない」という点が挙げられます。
一見するとモブキャラっぽいヤツが何人も出てくるんですが、いづれの人物もちゃんと『正義の味方ギガトラスト』という作品に於いて、然るべきポジションにあり、時に主人公すら凌駕する程の「熱さ」を見せてくれたりします。

という事は、脇役の活かし方、が凄く上手いんですよね。
主人公、或いはヒロインが作中で一定以上の存在感を持っている、というのは或る意味当たり前。
でも、何気ない脇役のキャラクターが活き活きとしていると、自ずからストーリーに厚みが加わります。いや、寧ろ、脇役がその作中世界を支えている、と云ってもいいんじゃないかと思います。

私と貴女の二人の世界、で完結する作品があっても勿論いいけれども、そこに美味しい脇役が入り込む事で「世界」が拓けてきます。作中の世界が本当の意味で生きてくる、のは、やはり脇役があってこそ、だと思います。

本作の場合、当初脇役、だと思っていた人物が実はキーパーソンであったり(まぁ、これは割と良くある手法……かな? だけれども非常に効果的)、本当にただのモブキャラだと思っていた人物が最後の最後でその存在感を増したり、と兎に角プレイしていて飽きる事がありません。
寧ろ……主人公の存在が薄いかも……と思えるくらいでw 
あっ、ちなみに絵柄は「スルメタイプ」。最初は何となく垢抜けなさを感じるんですが、段々「このイラストしかない!」と思えるような、そういうタイプです。

又、アニメ宜しく一話一話の構成になっているのも、いいですね。
およそ、一話につき一時間程度、という尺の安定性もプレイをする上で、気持ちよい作りになっています。勿論、後半~ラストに向けての章は一時間を超えたりするわけですけれどもね。

第五話とかかな……その辺りまでプレイした段階で「これはいいぞ……」と一人でニヤニヤしてしまいましたw
一話一話のテンポの良さ、そして、一話一話の中に存在する盛り上がり。更に、作中人物の謎が効果的に明らかにされていく、という手法には脱帽するしかありません。


さて、一方で気になった点なのですが、本作を全編に渉って彩る「ギャグ」の色彩の問題です。
激しいバトルばかりだと、当然、プレイヤーも疲れてしまいます。或いは、シリアスが連続で続いて……っていうのでも同じ。
そこに、ちょっと息抜き出来るようなギャグが入り込む事、それ自体は全く悪い事ではなく、寧ろ有り難いくらいなんです。更に困った事に、そのギャグが結構面白いんだw

ですが、ストーリーが加速して、物語の真相に迫っていく、なんてシーンもありますよね。
そこでギャグを連発されちゃうと、局所的に凄くテンポが悪くなってしまうんです。プレイヤーとしては「おいおい、どうなるんだよ……」とまさに手に汗握って画面を見つめつつクリックしているのにも関わらず、話の筋とは関係の無いギャグで何となく「焦らされて」いるような感覚を味わってしまう、という感じでしょうか?

ギャグにも、緩急、というのがやはり必要だと思います。
まぁ、例のサンダーボルト三部作みたいな、最初っから最後までギャグ、って作品だとそうはいかないんですけれども、およそ、しっかりとした骨組みがあって、語りたいメッセージがある作品の場合、ギャグの使い所は思案した方が良いかと思います。
なんてことない日常シーンであれば、ギャグを織り交ぜる事は全然OKですし、先にも云いましたが、プレイヤーとしても、少しホッと出来る部分でもあります。
が、「いよいよ真相が……」なんて緊迫した場面でギャグが連発されてしまうと、やっぱりバランスが悪いかな。

ストーリーに傾く所は、シリアスで。その他のシーンで、合間合間にギャグを入れていく。
という、言葉にすれば簡単なんですが、配分のバランス、結構難しいのかもしれませんね。


あと、もう一点、気になった点を挙げれば、「ラスト」に関わる問題ですね。
第十話辺りから、段々と話が複雑化してきて、ちょっと理解が追っつかない部分がちらほら出てきます。サクリファイス、インフェルノフレーム、ソウルアクセス……などの作中の用語が多用され、「どうなってんだ??」みたいな。
そして、結局、ラストを迎えても、「あまり状況に変化はない」んです、そして主人公はそこまで大した事をしていない……という決定的な事に気づいてしまいますw

寧ろ、「そういう役割」を担わされるとは思わなかったキャラが、主人公を或る意味で喰ってしまっているような、そんな部分がなきにしもあらず。
とはいえ、本作の主眼が「肉親同士の情」であったり「愛する人との繋がり」であるような気もするので、そういう意味で捉えれば、主人公はその接合剤としての役割、は全うしているのかなぁ? という気も。

でも、ちょっとわだかまりの残るラストではあるのですが、そこに至るまでの道筋、そして毎回出てくる熱い盛り上がり、で十分私基準の大吟醸です。
いやぁ、本当に大吟醸は久々で、私自身「次、大吟醸はいつ出るんだろう……」と半分困っていましたw


そう云えば、最近、例の生放送にて、色々ノベルゲームのお話だったりしているのですが(コメントが無いので、画面に向かって一人で喋るという、結構悲しい行為になってますw)、私の採用している「無印=純米」「吟醸」「大吟醸」という括り方は、それが乃ち「作品の評価」とイコールではない、という事を、昨日辺りにお話した記憶が……。
勿論、良い作品であれば、自ずと吟醸、大吟醸が付いたりするわけですが、完全に「良い作品だから吟醸に、或いは大吟醸にする!」っていうわけでもなくて、半分くらいは「私自身の好み」です。

なので、この三区分は、作品に対する評価、という事より、私の好み度、が反映されている、と思って頂けると有り難いです。
そもそもレビューを書いている時点で、私はその作品が「好き」なんです。嫌いな作品をわざわざレビューしたら、ただの嫌がらせみたいな文章になっちゃうし、それは、誰にとっても面白くない事だと思います。
その中で、「これは……」と自分の好みに合致するような作品に対して「吟醸」、そして「大吟醸」という区分けをしている訳ですね。

これも、長いことノベルゲームをプレイしていると分かるんですが、ラストで大化けする、なんて作品もたまにあったりして、プレイしていて最後まで気が抜けませんw
意外とね、ラストでの爆発力、に弱いような気がします、私はw それで大吟醸を付けてしまったのが『本当の願い事』という作品でしたね。それまでの、ちょっと暗めの展開が一気にラストでパッと晴れて、思わぬ形でのエンドを見せてくれる、というわけで、お気に入りになってしまいました。



と、後半、大分脱線してしまいましたが、本作は普通に「面白い」です。
最初の一話くらいだと、まだ面白さが分からないかもしれません。是非、第四話、第五話くらいまではプレイしてみて下さい。展開と構成の妙で、きっと一気にラストまでプレイしたくなること、請け合います。



それでは、また。

by s-kuzumi | 2011-05-06 19:16 | サウンドノベル | Comments(6)
Commented by ひろひら at 2011-05-07 23:56 x
ゴリッチェ様のシェアの作品も熱血だわ、悲哀だわで、
世界観も独特の物があり、かなり面白い部類にはいるかと思います。
余裕がありましたら、是非ともプレイして見ては如何でしょうか。
ただしシェアゲームであるのと、かなり時間がかかりますが、全作お奨めです。
個人的には好きなのは「Zodiarc」泣きまくって、
「ぞでぃあーくりんぐ」でボロボロ泣くと言う感じです。

蛇足ですが、もしかしましたら『白のなんとか』は、
「白のパターナスター」のコトなのかな? と思いました。
間違っていましたら、すいません。
Commented by s-kuzumi at 2011-05-08 03:50
>>ひろひらさん

ゴリッチュさんの作品、完全に見落としていました。今回、ギガトラストをプレイして「これは、やるなぁ!」と素直に感心したので、他の作品も、是非プレイしてみたいですね(まぁ、シェアゲーム、という事で若干ハードルは高いんですけれども)。

あと、「白のなんちゃら」は、生放送中に答えを出して下さった方が居ましたw 『ケモノミチ~白の刹那~』という作品でしたね。

なんか、私なんかよりよっぽどノベルゲームに精通している人が多くて、「本当に放送の意味あるのかよ?」ってちょっと疑問が湧いたりしています……w
Commented by ひろひら at 2011-05-09 00:51 x
あー!
合点がいきました。
「白の~」で始まるタイトルかな? と思って適当に上げてみましたが、
どう考えても内容的には合いませんものね(苦笑

「ケモノミチ」もシェアで「ケモノミチ~赤の羅刹~」まで一時は出ていましたが、
「獣道 - 白ノ刹那 -」として第一章をリメークしているようです。
βテスターの募集期間が過ぎたようですので、どの程度変更があるのか解りませんが、
広告バナーには、大幅加筆、完全フルリメイクとありますので私は期待したいところです。
特に刀剣の設定が独特で二枚刃の刀などの設定が優秀でした。
…こんな事を書いていたら、再プレイしたくなりました(笑
Commented by s-kuzumi at 2011-05-09 00:59
>>ひろひらさん

こんばんは。GWが終わる事へささやかな抵抗を示している道玄斎です。

で、ちゃんとケモノミチリメイク企画の情報も、ゲットしましたよー! あの二枚刃の刀の設定、面白かったですよねー。二枚刃だから、素早く振り下ろさないといけない、って制約があったりする所とか、結構熱かったですよね。

なんか久々にプレイしたくなってきました。
多分……リメイクじゃないオリジナルの方でプレイするとは思うのですがw
Commented by とーてむ at 2012-05-22 16:00 x
ケモノミチのリメイク配布してますね。私は旧作と両方プレイしてますが、リメイクの方が圧倒的に面白くなってました。
Commented by s-kuzumi at 2012-06-02 12:09
>>とーてむさん

こんにちは。
リメイク出てますねー。旧作は大分前にプレイしたので、記憶があやふやだったりますw

リメイクの方もダウンロードはしてあるので、時間のある時にでも(確か、結構長かったですよね?)プレイしようと思います。

わざわざ、お知らせ下さってありがとうございました!!
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