2011年 07月 13日
今日の副題 「裏返しのタイトルワーク」 ジャンル:死生観サウンドノベル プレイ時間:~3時間程度 その他:選択肢なし、一本道 システム:Live Maker 制作年:2011/7/7 容量(圧縮時):58.0MB 道玄斎です、こんにちは。 明日、朝一番に診察があって、それで再度入院するかどうか(考えたくない……)決定する為、今日はのんびり過ごしています。 にしても、帰宅した途端に寝付きが異常なまでに悪くなったのは、何か住環境が悪いんじゃないか、とか色々考えてしまいますね……。 で、久しぶりに読みでのあるノベルゲームをプレイしてみたい、と思い検索してみたら、心惹かれる作品を見つけました。 というわけで、今回は「INFERIOR」さんの『自殺請負人』です。 良かった点 ストーリーはふりーむの方から引用しておきましょう。 『人の幸せって、誰が決めるのかな』 こんな感じ。 いや、ここ数ヶ月、かなりスローペースでノベルゲームをプレイしているのですけれども、どうにも不満に思っていた事があって。 というのは「死」という或る意味、一大イベントに焦点を当てていく作品は割と数は多いんですが、本作のジャンルのように「死生観」なんて「死」は「生」と対にして語られるものですよね。 しかしながら、「生きている」という当たり前だけれども、半分奇跡みたいな「生」を描く作品は驚くほど少ないんです。 「死」に関する作品が増えた背景に、やはり『ナルキッソス』の影響を見ないわけにはいかないでしょう。 『ナルキッソス』も「死」というものが、物凄くフィーチャーされていくわけですが、一方で、「死ななかった人」を描く側面もあります。 死んでしまった人と、残された人、みたいなね。 だけれども、その『ナルキッソス』のインパクトの強い「死」の部分……が一人歩きして、色んな制作者に影響を与えてしまったような、そんな印象を一ノベルゲーマーとして思ったりするんですが、如何でしょう? その極端な形は、たまに使う私用語で云えば「ヒロイン殺し」ですよね。 作品を紡ぐ因果関係の結果、ヒロイン乃至主人公が死亡する、のではなく、「ヒロインが死ぬ」というのが前提にある作品、というと一番誤解を招かないかもしれないですね。 もうちょっと俗っぽい云い方をすると、「感動させる為にヒロインを殺す」って感じでしょうか。 確かに、それが新しかった時期もあるし、感動出来た事も正直あるんだけれども、そろそろお腹いっぱい、という感じなんですよねぇ。 そこで、「死」だけじゃない「生」について踏み込んでくれるような、そんな作品を求めていたのですが、本作はそういう意味で、満足感、そして納得感が強いものになっていました。 主人公洋介は、昼は高校生、夜になると「自殺請負人」として、自殺幇助……というか、死を望む人を殺す事で生活しています。 又、同居している優子は、洋介のお姉さん役(?)であり、洋介の仕事をサポートする情報屋としての側面も持っています。 この辺り、ちょっとリアリティが無いというか、「いかにも」な感じはするんですが、本作に於いて、そうした部分は気になった点、として取り上げませんでした。 というのも、私が感じる作品の焦点はそこに無かったから、です。 さて、ここいらで、自殺請負人についての説明に移行しましょう。 自殺志願者は、自殺請負人に「殺して欲しい」旨、メールを送る。すると自殺請負人こと洋介がやって来て、一週間後まで、その人のやりたいこと、やり残したこと望むものを一緒に手伝ってくれます。 そして、一週間後、依頼人の気が変わらなければ、銃で殺してくれる……。 こんな因果な商売です。 こういう設定、あの名作『シティーハンター』とちょっと似ている気がしませんか? 表沙汰に出来ない以来をする為に新宿東口の掲示板に「xyz」と連絡先を書くと、シティーハンターと呼ばれるスイーパーから連絡が入り、事件を解決してくれる……。 些か脱線しますが、こうした「依頼モノ」みたいのにも、伝統があるような気がしますよ。 今挙げた『シティーハンター』もそうだし、私が大好きだった『地獄少女』というアニメもそうだし、本作も又然り。 話を戻して……。 本作は、とある少女からの依頼を受け、その依頼を遂行するまでを描く作品……というのが端的な纏めでしょうか? ただ、プレイしていて思ったのは、やっぱり自殺請負人として、人を殺す主人公が高校生なのは、どうかなぁ? っと。というのは、やっぱりまだ高校生だと、人格的に完成していないわけで、クライアントの依頼に応える事が困難なケースも出てきますし、プレイすれば分かるんですが、結構感情の起伏が激しいんですよね。 『シティーハンター』が名作たりえているのは、主人公たる冴羽獠が酸いも甘いも噛み分けた大人の男、だからなんですよね。 そういう部分で、情緒が安定していない高校生が自殺請負人をやっている、というのはもしかしたら引っかかる人がいるかもしれませんね。 でも。 自殺請負人、なんてちょっと「悪者です!」と喧伝するような、タイトルが付いていると、ついつい、ピカレスクロマンみたいな作品かな? と思ってしまうわけですが、自殺請負人とは、本当は「自殺したい程苦しんでいる人を助けてあげる」商売だったのです。 こうした、自殺請負人の内実が分かった段階で、「これはいいぞ」と私は思いましたよw 勿論、ここで云う「助ける」は一発ぶち込んで楽にしてやる、って事じゃなくて、「死なないで済む」よう、依頼者に寄り添って彼/彼女を受け止めてやる、という、とても優しい仕事なのです。 作品では、自殺への是非は語られません。 けれども、死ぬ、という事と同じくらいに、生きる、という事に取り組んで制作された作品、だという事は分かりますし、私は、本作のキモがそこにあるんじゃないかと、思っています。 気になった点は、やはり、もう少しハッピー風味があっても良かったかな? という所ですかね……。 いや、決して本作はバッドエンドじゃないと思うんですけれども、ちょっとプレイしていて辛い所があったのは確か。 根本的な所を云えば、洋介の母親がちょっとむごい仕打ちをしすぎているような気が……。そして、ラストのあのトリック、あれは不可能じゃないかとw 三日で音を上げてぶっ倒れた私が請け合いますw もう一点は、良かった点と一緒に語りましょう。 本作、割と人物の発話が長かったりします。所謂「ビジュアルノベル」式の表示なんですが、スキマ無くずらっとテキストが表示されてしまうと、やっぱり読みにくいです。 しかし、適度にブランク行を作ったりしていて、読み手(プレイヤー)に配慮した作りになっています。細かい所ですが、こういう所、評価したいですね。 小説とサウンドノベル/ノベルゲームは似ている部分はあれど、異なる部分もあるわけで。 読みやすさ=プレイのし易さ、を考えると、多分……良い結果が生まれるハズ。 で、一方の気になった点は、「どっちが正しいのか?」が分からない表記があった辺りでしょうか? 気になった、というか、個人的に気になる、というレベルですよね。 例えば「早起きは三文の徳」ということわざが出てきます。問題は「徳」なのか「得」なのか、という部分。今、ATOKで打ち込んだら「早起きは三文の得」と自動補完してくれましたが、辞書によっては「徳」にしているものもあるそうな……。 こういう時こそ、『日本国語大辞典 第二版』ですねぇ。生憎持ってないのでアレですけれどもw 字の問題という事で云えば、漢字変換を多用するこのブログで云うなって話ですけれども、「漢字を開いた方がいい場合もある」んじゃないかと。 開く、というのは、ひらながにする、という事。 「ご飯を装う」という言葉が出ていたのですが、しゃもじでお釜から茶碗にご飯を移す動作、ですよね。この「よそう」は漢字表記にすれば「装う」でいいらしいのですが、こんなのは平仮名にしちゃって「ご飯をよそう」でいいんじゃないかな、っと。 なんだかんだでゲームなので、あまり難しい漢字を使わないでもいいかな? っと私なんかは思うのでした。 大体……こんなところかな? 「死ぬ」という事ばかりがフィーチャーされる昨今のノベルゲーム業界にあって、一石を投じてくれた作品で、満足感がありました。 結構悩んだのですが、取り敢えず無印、で。 けど、「ヒロイン殺しにはもう飽きたぜ!」って人には是非、プレイして貰いたい、そんな作品になっています。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2011-07-13 13:39
| サウンドノベル
|
Comments(2)
毎回感想ありがとうございます。インフィアリアのさっちんです。この作品は原案は、私が物語りを書き始めた頃のもので、その頃から大まかなストーリは変えていません。
ん~~~、これからの課題が見えたような見えないような。だけど、感想を拝見して、伝えたいことはどうにか伝わったように思います。自分でも書ききれるか際どい作品だったので(汗) なんにせよ、ありがとうございました。これを糧に、これからも頑張って作っていきたいと思います。
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s-kuzumi at 2011-07-14 20:10
>>さっちんさん(でいいのかな?)
わざわざ書き込み下さり、有り難う御座いました。 えっと……んもう、何て云うか、私の書いた感想は……本当に個人的なもので、それが万人の所感と一致するかどうかといったら、やっぱり微妙なわけでw 多分、私の感想は気にしないのが一番だと思いますw けれども、作品が描こうとしていたもの、その一端は何とか捕まえられたみたいで、私も書き込みを見てホッとしております。 これからも、是非素敵な作品を作って下さいませ。 私も一プレイヤーとして新作をプレイ出来る日を楽しみにしています。 |
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