2011年 09月 14日
今日の副題 「考える選択肢」 ジャンル:無力感系恋愛アドベンチャー(?) プレイ時間:コンプリートまで2時間程度。 その他:選択肢アリ。三個にエンド分岐。 システム:吉里吉里/KAG 制作年:2011/04/29(ver. 1.01) 容量(圧縮時):21.4MB 道玄斎です、こんばんは。 今日も1作品プレイ致しました。私が責任者になっているNovelers' Materialの素材を多く使って下さった作品でした。 というわけで、今回は「SULPTENON」さんの『ヒツゼンセイ』です。 良かった点 ストーリーは、作者さんのサイトから引用しておきましょう。 「ハッピーエンドは俺も好きだ。そしてそれは、物語の中だけに留まらない」 こんな感じ。 大抵の恋愛系の作品は、「如何にお目当ての娘を彼女にするか」が最終目標な事が殆どです。 二人は結ばれてメデタシメデタシ……。なんですが、本作の場合、プレイ開始直後に、主人公とヒロインはカップルになってしまうんですよ。主人公の告白に、表情一つ変えずに「はい」と答えるヒロイン。 現実の恋愛がそうであるように、本作の主眼の一つは「付き合ってからどうするのか?」みたいな、所にあるわけです。 今回はのっけから脱線しますけれども、無表情系文系少女みたいなヒロインが出てきた瞬間に、「これは地雷かもしれん……」と思いましたw 勿論、作品の善し悪し、についてではありません。私の個人的な体験に接触してしまうのではないか? という懸念ですw 結論から云ってしまうと、結構近い所ありましたね……。 端から見ると、無表情系の女の子に結構尽くす私が居て(そう、尽くすタイプなんです!)、けど、向こうのリアクションは意外と薄くて、何だか自分だけが空回りしているような、空虚感。 ただ、慌てて付け加えておきますが、私の場合、向こうが「デレ」てくれる瞬間があって(半年に一度くらい)、そういう意味では、本作の主人公と私は異なりますw さて、どうでもいい脱線はこのくらいにして、中身に入っていきましょう。 作品を読み進めていく中で、「中々いいぞ」と思った点は、結構リアルな高校生活を描いている、という点です。 例えば、恋愛モノの作品が一本あったとして、作品の焦点は先にお話したように、「恋愛」、もっと云ってしまえば「如何にその娘と付き合うか」に絞り込まれていきます。 合間合間に、試験の描写が入ったりもしますが、飽くまでそれはスパイス程度のものですよね。 ところが、本作の場合、文芸部部長としての主人公の生活と、ヒロイン百合花の彼氏としての主人公の生活が並行して語られているんです。 本物の高校生は、きっと六時間や場合によっては七時間の授業(私は七時間授業でした)に耐えながら、部活をやり、バイトをしたり、さらに恋愛をしたり……と多面的な生活を送っているハズです。 それが、恋愛に焦点が絞られてしまうと、恋愛以外の要素はスパイスとして機能する事はあっても、「欠くべからざる生活の一部」としての他の要素がするりと抜けてしまうんですよ。 ですので、文芸部部長の顔と、百合花の彼氏としての顔が、並行して語られている点、多面的な凄くリアルな高校生を感じさせるものになっていました。 一方で、気になった点もここに関わるのですが、あまりにも文芸部ルートと恋愛ルートばブツッと分断され過ぎている……と感じたのも亦事実。 本来ならば、その両者の面を描きながらも螺旋を描くように、その二つのルートは絡み合い、最終的なテーマに向かっていく……というのが理想的なあり方だったかな? とちょっと感じましたね。 あまりにも、ブツッとこの二つが分けられすぎていたかな? という事ですね。二つのルートが交互に描写されている、みたいな。 主人公と百合花の間には、生徒会という一つの接点があって、そこらへんの設定を上手く活かしながら、両者の描写がもっと絡み合って存在していても良かったような。 あと、これは特筆すべき点だと思うのですが、選択肢、が兎に角珍しいタイプです。 大体、選択肢って私は大まかに、ですけれども、二つに分けられると思っています。 それは「選択すべきポイントが分かる型」と「分からない型」です。例えば、恋愛作品ですと(今日はステレオタイプな恋愛作品の出番が多いなぁ……)、基本、お目当ての女の子になるべく接触していくようにすれば、恐らくかなりの高確率で、その娘のルートに入っていく事が可能です。 これは、「分かりやすい選択肢」ですよね。 一方、ホラー作品なんかにありがちなのは、深夜の一時過ぎ……静まりかえった校舎の二階。何か人為らざるものに追いかけられる主人公。そこで選択肢が登場して「3Fに移動する」「1Fに移動する」なんて選択肢が出てきたら、どっちが正解なのか、は即答出来ません。どちらかを選び、結果としてバッドエンドになってしまったら、他のルートを試す……という「分からない選択肢」です。 本作、選択肢の数は割と多め……ではあるのですが、この両者にも当てはまらないような、ちょっと特殊な選択肢が用意されていて、そこは素直に唸らされました。 つまり、「ノベルゲーム的に正しい選択肢」が分からないんです。「この選択肢を選べば問題ないだろう」とか、総当たりでやっていくしかない、とか、そういうタイプではなくて、寧ろプレイヤーが我が身に擬えて、「お前だったらどっちを選ぶ?」と、或る意味読者、プレイヤーに対して問い掛けてくるようなものであって、私なんかは結構悩みながら選択肢を選んでいきました。 何か、男としての度量(?)を試されるような選択肢すらあって、五分くらい考え込んでしまいましたからねぇ……。ある選択肢を採る事は非常に易しい。けれども、もう一方で提示される選択肢も、自分としてはアリだと思う。 そういう時に、どの選択肢を採ればいいのか……凄く悩みます。 こういう選択肢の出し方、何だか物凄く新鮮で、本作の一つの特徴……と云ってもいいかもしれませんね。この「プレイヤーに考えさせる」選択肢のシステムは新しい選択肢のあり方、を示してくれる、というような意味で、私的には面白いな、と思いましたね。 そういえば、多分、初見でハッピーエンドを見る事は恐らく非常に困難です。 多分、一度、バッドエンド風味のエンドを見る事になります。そして、既読スキップなどを使いながら、真逆の選択肢を採っていけば、又別のバッドエンド風味のエンドに到達出来ます。 そうすると、タイトル画面の「オプション」から、必須選択肢、回避すべき選択肢の表示/非表示が選べるようになるので、勿論。「表示」にしてやって、必須選択肢のみを選んでいけば、問題なくハッピーエンドのルートに入れるハズ。 ちょっと、どのルートでも主人公に絡んでくるカズの存在が、何か厭な立ち位置だったりするわけですが、ハッピーエンドのルートに入ってから、畳み掛けるように、物語がジクジクと内包していたものが一気に放出されます。ただ、このラストパートに、色々詰め込みすぎかな……? という気もします。 主にヒロインの謎について、なんですが、物語前半ではそれを示唆する描写が少し出てきていたのですが、中盤になると、一気にそうした描写は激減します。 でも、ハッピーエンドのルートに入った途端に、主人公は覚醒して凄い熱血野郎になってしまうのでしたw 正直、結構ありがちなパターンになっちゃったかな? と感じる部分もあったりして、もう少し中盤くらいからも、ヒロインにまつわる謎、について少しづつ開示していっても良かったかな? とは思いましたね。 そして積み上げた伏線をラストで爆発させる。 やはり、この辺りがノベルゲームの王道とも云える状態でしょう。 ちょっとラストに詰め込みすぎたかな? という所です。 だけれども、或る意味ありきたりなエンドは、やはりそれはそれ、評価すべきでしょう。 中々素敵なエンドで、分かっちゃいるけど、やっぱり感動出来ます。 そういうある種、押しつけがましい感動、に過敏に反応しちゃう人も中にはいるでしょうが、基本のものを基本通りに終わらせる、というのは、ノベルゲームでは避けて通れない道ですから! あとは、敢えて述べるとすれば、開始直後は人員の紹介が多くて、誰が誰か分からない、という状態もややありました。読み進めていくと、又、ちゃんと印象は変わるんですけれどもね。 傲慢な云い方かもしれませんが、やっぱり作品が進むにつれ、どんどん文章のテンポも良くなっている感じがします。 大体、こんな所でしょうか? 割とありがち……なラストではあるのですが、考えさせられる選択肢、是非楽しんでみて下さい。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2011-09-14 19:08
| サウンドノベル
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