2011年 09月 22日
今日の副題 「自殺っていけない事?」 ジャンル:ビジュアルノベル(ボーイズラブ) プレイ時間:凡そ1時間程度。 その他:良識のある12歳以上推奨、少々インモラルな表現・死ネタ含む システム:NScripter 制作年:2011/9/7 容量(圧縮時):33.1MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、ちょっと重ためのテーマを持った作品を選んできました。こうしたテーマを持った作品は、ちらほら散見されるのですが、着地点が他の作品と一味違っていたかな? という印象。 というわけで、今回は「mint wings」さんの『ジサツ志願者同盟』です。 良かった点 ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。 集団自殺しませんか――。 こんな感じ。 凡そ、自殺・不治の病の類の作品を作るのは、現在に於いて結構困難です。 個人的な感触だと『ナルキッソス』以降、急速にそうした作品が増えて、一つの潮流というか、ブームを作ってしまったように感じています。 無情にも死んでしまう主人公乃至ヒロイン。 死しか選択し得ない状況。 そして、そこに底流する「感動」。 正直に云うと、そこで感動出来た時期も確かにあったんです。だけれども、何故か死ぬ事ばかりがフィーチャーされてしまって、本来ならば「死」と対になっているハズの「生」がお座なりになってしまう作品が多かったような……。 この辺りの事情は、『自殺請負人』のレビューでも書きましたね。 生があってこその死ですし、逆も又然り。 こうした状況の中で、どれだけ説得力のあるストーリーが紡げるか、がこうした自殺モノ・不治の病モノの課題になっているように思っています。 ただ、本作のレビューは結構難しいんですよね。 というのも、自殺(ジサツ)とタイトルに付いているわけで、自殺についての言及無しにレビューを書くことが出来ないから、です。 それは、つまり、レビューを書く私の―大袈裟に云えば―、死生観だったり自殺に対する思想、みたいなものを出さざるを得ないんです。 なので、この作品を取り上げるかどうか、ちょっぴり悩みました。 実際、プレイすると分かるんですが、颯太なり奈央なりの自殺の理由は、いい歳した私から見れば「そんなことで?」とちょっと思ってしまったんです。 瑞希に対しては、「さもありなん……」という感じだったんですけれどもね。 でも、自殺したい、と思う程苦しい状況って、他者が理解出来る程簡単なものじゃないですよね。 他の人には、或いは世間一般の人には何てこと無い状況なのかもしれない。けれども、本人はそれによって生きられなくなってきている、って事ですから。 そう考え直した時に、やっと作品の中身が浸透してきたような、そんな感触はありました。 「自殺、良くない!」って云うのは簡単です。 けど、実際公表されているだけで3万人以上の自殺者が居る国で、そんな言葉がどれだけ役に立つのか、と。だからこそ、自殺をテーマにした作品が存在して、一定以上の人気を誇っている、と思うのです。 人間生きていれば、死にたくなる事の一つや二つ、あったりしますけれども(私も十回くらい死にたい!)、中には、本当に「やっちゃう」人もいるんです。 お為ごかしで「自殺良くない」って云ったり、或いは「死ぬ死ぬ云うヤツは、生きたいと思っているけど死んでしまう人に失礼」とか、云うのは私は個人的にピンときません。 死を前にして生きたいと願っている人と、生きていけないと思う程に疲弊した人を比較した時に、敢えて変な尺度を使いますけれども、どちらが可哀想か、って決めにくいと思うのです。 何で、変な尺度、ってわざわざ云ったのか、っていうと、先ほどの「死んでしまう人に失礼」に対して、予防線を張っただけです。失礼って云い方が既に「憐憫」を示してるようで、私は、先の言葉は何だか綺麗な言葉に巧妙に隠された意図が見えてくるような……って穿った見方ですか?w さて、大幅に脱線しましたが、大体、私の自殺観ってこんな感じです。 やっちゃう人には、どんな言葉も無意味だよね……、と。けど、やっちゃう前なら……自殺のサインを出している時なら……少しでも手助け出来るんじゃないか、と。 肯定派か否定派か、で聞かれたら、肯定派、なんですけれどもね……。それが最後の砦、って人も絶対にいるハズですから……。 で、作中の人物も、私達からしたらちっぽけに見えるかもしれない、悩みを抱えて集団自殺を決行しようとします。 ただ、暗いトーンに為らなかったのは、颯太の「死ぬ前にやりたい事リスト」の存在が大きいですね。集団自殺の人間が落ち合って自殺してお終い、じゃストーリーになりませんしw 死ぬ前に、やりたい事を思いっきりやっておく、その背後には死という暗い影がありながらも、明るい一面もあり、テンポも上々でした。 テンポ、という事で云えば、大体1時間くらいの作品ですが、全部で13章に区切られており、それが不思議と五月蠅くなく、プレイし易いものになっていた、というのは大いに評価すべき点でしょう。 サラリと通り過ぎる章もあれば、驚きの事実(?)が明らかになる章があり、ちょっとじっくり読ませる章があり、とメリハリも効いていたと思います。 あとは、やっぱり、結末……というか後半ですね。 死んでお終い。或いは死ななくてお終い。じゃない、今まであまり目にしたことが無いエンドを創り上げていた所が、本作の最大の特徴かもしれません。 ややネタバレになっちゃいますが、死ぬ人がいて、死なない人がいる。まぁ、そういう事です。 それに、ちょっとしたトリックが効いていて、そこがラストを盛り上げてくれましたね。これ以上は流石にネタバレ出来ませんw 気になった点としては、その死ぬ人が出てから後、が割とストンと落ちていっちゃったかな、と。 死の恐さ、みたいなものも描写されるのですが、割とあっさり風味なんですよね。やっぱり、死と生は対になってますから、もう少し死の恐さを描いた上でのあのエンドでもアリかな? っと個人的に思いました。 あとは、舞台設定が夏、との事ですけれども、あまり季節感が無かったような……。 もうちょっと夏ならではの、要素が入っていたら、もっともっと重層的な作品になった……かもしれません。 今日は私の駄弁が多くなりましたが、作品の紹介としてはこんな所、かな。 後半でちょいBLっぽい要素は入りますけれども、死について、生について或いは自殺について考えさせられるノベルゲームである事は間違いないので、そういうのを考える材料として読んでみるのも一興ですよ。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2011-09-22 20:34
| サウンドノベル
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