2012年 02月 20日
道玄斎です、こんにちは。 今日は、例のサンダーボルト三部作と並んで人気の高い、女教師美喜シリーズのご紹介。 今回、レビューで使用したヴァージョンは、総集編という事で、全三話(だったかな?)の物語を一本に纏めたものです。内容的に変化はありませんから、これからプレイする、という方は、この総集編をダウンロードするといいですね。 というわけで、今回は「Project Lips」さんの『女教師・美喜 ~濡れて揺れる禁断の総集編~』です。 サンダーボルト三部作のレビューでも書きましたが、サンダーボルト三部作が世に出てから、多くのフォロワーが生まれました。つい最近まで「新作」として、その系譜を引き継ぐ作品がリリースされていたわけで(もしかしたら、今後また出てくるかも)、その影響力の強さを認めない訳にはいきません。 そうしたフォロワー的作品の中で、頭一つ飛び出ているのが、本作、女教師美喜シリーズです。 これも以前書きましたが、サンダーボルトとの合作も行われていたはずで、単なるフォローを超えている感触すらあります。 敢えていうのならば、女教師美喜シリーズは、サンダーボルト三部作の「オマージュ」、もしくは「インスパイア」された作品、と云う事が出来るでしょう。 最近、どこかで見たのですが、「パクリ」とは、「ばれちゃマズイ」もので、「オマージュ」は寧ろ、「元ネタが分かるとより一層楽しめる」というようなことが云われていました。 なるほど、むべなるかな、という感じですが、本作も亦、サンダーボルト三部作をプレイしていると、楽しさが倍加します。 教師という枠組み、シュールな動きを使ったギャグ、不条理なバッドエンド……。 こうした作品のフレームは、まさにサンダーボルトそのまま。挙げ句、音楽まで同じものを使用しているという徹底ぶりです。 そこまで、作品を重ねてしまうとどういう事が起こるのか、というと、「作中世界が重なり響きあい、重層的になる」んです。 本作の、例えばバトルシーンで流れる音楽。 あれはサンダーボルトそのままでしたよね。すると、プレイヤーは、女教師美喜をプレイしていながらも、サンダーボルトの場面や状況が脳裏をかすめます。 そうなると、一つの作品をプレイしているハズなのに、二つの作品が同時に頭の中で再生される、という特殊な現象が起こるわけです。 こういう状況を“引用”で片付ける事も可能なのですが、本作の場合、積極的にサンダーボルトを摂取していこう、という姿勢が見えます。 そうした時、それは“引用”を超えて“物語取り”と呼ばれるものになるのではないかと思います。 ある作品が、ある作品を積極的に摂取する事で、自身の作品世界を豊かなものにしている……そうした場合、単なるパクりや引用を超えて、それを“物語取り”と呼んだりするわけです。 さて、随分ご託が長くなってしまいましたが、サンダーボルトと本作の大きな違いは、意外にもちゃんとしたストーリーが付いている、という点です。 規則がやたらと厳しい吉槌学園に、新任教諭としてやってきた美樹。しかし、あまりにも(不条理で)厳しい教育のあり方に疑問を持ち、同士と共に戦っていく……。 と、書いてしまうと、凄くまともなストーリーに見えますが、基本はシュールギャグ路線です。更に云ってしまえば割と勢い重視型w とはいえ、一応まがりなりにも、こうしたストーリーの流れがある事で、全体の統一感が適度に保たれている点、評価出来ると思います。 あとは、選択肢の出し方も、ちょっと変わっていますね。 サンダーボルトが、どっちを選んだらいいか分からない、私が云う所の「分からない選択肢」を採っていたのに対し、本作では「ストーリー的に正解」な選択肢がすぐに分かってしまいます(後半、一箇所悩む所はあるのですが)。 この選択肢の出し方は、プレイヤーを「誘っている」のか……。 個人的には、こうしたシュールな作品は「分からない選択肢」を採用した方が面白いのかな、という気はしますね。一見、まともに見える選択を選んだ結果、シュールなバッドエンドを迎える。その落差が面白さに一役買っている、という部分は絶対にあると思いますから。 大凡、こんなところでしょうか。 サンダーボルトとの比較論、みたいな感じになってしまいましたが、それも、サンダーボルトと併せてプレイする事で、本作がより面白くなると云いたいから、です。 影絵ノベルの二大巨頭の一つとも云える作品なので、是非プレイしてみて下さい。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2012-02-20 14:12
| サウンドノベル
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