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久住女中本舗

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2012年 09月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『俺のレビューが単なる悪口のわけない』

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『俺のレビューが単なる悪口のわけない』_b0110969_0171032.jpg

道玄斎です、こんばんは。
何となくめぼしい作品がないなぁ……と呻いていたところ、「これは取り上げないと!」という作品を発見しました。そのものズバリ、「ゲームのレビュー」をテーマとした作品です。
というわけで、今回は「たけのこそふと」さんの『俺のレビューが単なる悪口のわけない』です。



本作、ノベルゲームに詳しい人ならば、ピンと来るかもしれませんね。
というのも、『とあるノベルのレビューサイト』という作品と枠組みがかなり似ているから、です。というよりも、『とある~』に対するアンサーゲーム、というそういう趣でしょう。舞台の背景素材も同じですしw
そこに、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のタイトルをもじって一本の作品に仕立て上げた、という感じ。

友人がRPGゲームを制作したのをきっかけに、ゲームレビューの道へと入り込む主人公。
そんな主人公がとあるゲーム作者の注意書きを見て激怒し、鉄槌を下すべく、巧妙に偽装された実は辛辣なレビューを書く。しかし、そんな主人公も自分の撮影した写真素材に対して、悪口を云うサイトを見つけてしまい……。

こんな感じでストーリーは進んでいきます。
ストーリーそれ自体は、短編ながらもメリハリが効いており、上手く作ってあるな、と思います。
『とある~』がそうであったように、「レビューを開始する→レビューを巡ってトラブルが起きる→事件が収束する」という流れですが、『とある~』より、ストーリー的な深みがある、と云って差し支えないでしょう。

小粒の作品ですし、ネタバレを配慮しちゃうと、書きにくくなっちゃうので、敢えて書きますが、本作の一つのテーマは「悪口を書きたいだけのレビュワーに天誅を下す」というもののようです。
その「悪いレビュワー」に自分が入っていない事を願うのみですが、ノベルゲームのレビューに限らず、問題は結構大きなものを孕んでいます。

それは『とある~』でも示された著作権法に関してです。
『とある~』は、著作権法第三二条①を以て、スクリーンショットを撮る事の合法性を作中で描いていたのですが、本作はそれに疑問を突きつけます。
つまり、現実問題として「フリーゲームのスクリーンショットを巡る裁判の判例がない」為に、「本当に合法かどうか分からない」という問題の提起ですね。

そして、著作権法の第一条、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」を引き、フリーゲームの文化の発展とならないような、スクリーンショット等の引用を含む形での悪口のレビューは、著作権法に示される「文化の発展」の条件を満たさない為、その合法性に疑問を呈するわけです。

さて、難しいのが、「何を以て悪口とするのか」という問題です。
本作の場合、主人公が「本当は悪意があって、貶める為のレビューを書いた」と口を割ってしまうのですけれども、実際問題、ある表現が悪口か否か、この判断は非常に難しいと云わざるを得ない。「これクソゲー。プレイしない方がいいよ!」なんて書いてあったら、そりゃ悪口ですけれどもねw

本作では、繰り返し「悪口」という言葉が出てきますが、ある表現を例えばAさんが見たとして「何の問題もない」と思う一方で、Bさんから見れば「これは悪口」と思う事も十分ありえます。
世の中にいる人全てに配慮する事なんて不可能ですけど(どんなに穏当な表現を使っても、そこに引っかかる人は一人や二人いるでしょう)、その中で悪口にならないように、多くのレビュワーが苦心していると思います。
私も……なるべく気をつけている積もりではあるのですけれども、人によっては「悪口」だと思えるものを書いているのかもしれませんね。勿論、そうした部分気をつけたいと思う反面、べた褒めしかしないようなレビューは私はまっぴらですね。

取り上げたい、と思った作品を取り上げる場合、良い点と気になった点を挙げる(番外編では列挙はしません)。それを軸にしながらレビューを書いていく。
これが私のスタイルですけれども、寧ろ、最近ちょっと甘めかなぁ……なんて思ったりもしていますw 甘いか辛いかも、本当に個々の基準に拠るものなんですけれどもね。良い点だけ挙げるのも、悪い点だけ挙げるのも公平な態度とは云えないでしょう。どんな作品にだって良い点と悪い点があるはずです。人間が作るものですから、完全な作品なんてあり得ません。
その、悪い部分、或いは気になった部分への言及を以て、「悪口」と即断するのは(或いは、されてしまうのは)どうなのかなぁ、と思うわけです。


そして、本作最大の主張と云えるのが、「ゲーム作者なくしてフリーゲーム界はなりたたないが、レビュワーはいなくてもフリーゲーム界は成り立つ」というものです。
ここは、やはり、フリーのノベルゲームのレビューをしている私は、反論したいところです。

勿論、私がフリーのノベルゲーム文化に寄与している、とかそういう奢った考えを持っているわけではありません。NMとか、色々頑張りたいとは思っていますけれどもね。
しかし、私のレビュワーとしてのそもそもの第一歩は、「優れた作品を探す為、レビューサイトをチェックする」というところにあったりします。すぐれたレビューはすぐれた作品へのアクセスを容易にしてくれますし、レビューそのものも、読み応えがあり面白いものです。そして、何より「それじゃあ、プレイしてみようかな」という気にさせてくれるものです。
レビュワーの好みが分かれば、情報の取捨選択だって出来るしね。

私自身、多くの先達に学びつつも、まだまだその域まで達していない事、日々歯がゆく思っているわけですけれども、それがフリーのゲームであるからこそ、「レビュー」はフリーゲームに於いて、重要なものだと思うのですよ。

作品中に、商業ゲームがフリーゲームと対置されて示されますが、商業ゲームは、紹介媒体があるんですよね。専門誌やら或いは専門のサイトやら。
一方、フリーのゲームは、作者さん自らが、作品を広めていく事も勿論ありますけれども、大手の個人がやっているニュースサイト(これはどっちかっていうと同人向けかな?)や、個人で細々とやっているレビューサイトのレビューや、掲示板などでの口コミが主な宣伝媒体でしょう。

「レビュー」と「 」を付けているのは、様々な形態のレビューが想定出来るから、です。
某掲示板で簡単なテンプレと共に、ちょっとした「レビュー」が書かれる。それに興味を持った人が、その作品をプレイする。或いは、その逆だってあるでしょう。その「レビュー」のせいで「プレイしたくねぇなぁ」と思う人だって当然出てくる。

本作のまとめでは、レビューは「無くてもいいもの」として位置づけられるわけですが、口コミ形態の「レビュー」も果たして不要なのでしょうか? そういうプレイヤー側からの自然発生的な盛り上がりがあってこその、フリーゲームだと思うのですが。
どうも、この辺り、著作権の問題を孕んだ、スクリーンショット等を含むレビューと、その他のレビューがごっちゃになっている感覚があります。


勿論、作品について頷ける部分も当然あります。
例えば、「否定的な意見お断り」なんて但し書きが付いているサイトで公開されているゲームなんて、こちらも取り上げよう、とは思いません。
だからこそ、ちゃんとreadme.txtを読んだ方がいいんですよね。そして、出来れば作者さんのサイトに行ってみる。そうすると、意外と「レビューや紹介目的であれば、スクリーンショットを撮っても構わない。ただし、ネタバレはやめてくれ」なんて書いてあったりするわけです。一応……そこらへんは、私を含め、多くのレビュワーさんもチェックしている部分だと思います。
わざわざ、「否定的な意見お断り」なんて書いてあったら、そりゃこっちも取り上げませんってw

本作の主人公のように、だからといって、そうした作者さんに鉄槌を下す、なんて事になると、それはもはや、レビュー云々の問題じゃなくて、単なる感情的な問題の気がしますw


あと、今日はどうしても作品それ自体の本筋から外れてしまう事が多いのですが、云っておきたい事があります。それは「レビューサイトなんてやっていても、良い事なんてないし、ましてや信者なんて出来やしない」という事ですw

本作は、レビュワー、或いはレビューサイトを或る意味で、こき下ろす作品ですから、どうしても、そうした存在が「悪」の側に回る事はしょうがないにしても、ちょっとレビュワーやレビューサイトに夢を持ちすぎてるんじゃないかなぁ……なんて思いましたw
まがりなりにも、数年間レビューサイトをやってきましたが、私には信者なんていませんし(これは私個人の問題、かな?)、例えアクセス数が上がろうとも、良い事なんて全然ありません。
コメント欄やメールにて探していた作品に出会えたとか、紹介してくれて嬉しかったとか、そういったお声を頂くのが、唯一の報酬ですね。



大体こんなところでしょうか?
このブログは、草の根活動を標榜して、こっそりというか、ひっそりやっているわけですけれども、そんなブログを見て下さっている方は、相当なノベルゲームマニアだと思いますし、ここを含めていくつかのレビューサイトを見ているんじゃないかな? なんて思います。
ですので、レビュー、レビューサイトに真っ向から斬り込む本作も、ちょっと刺激的で十分楽しめると思いますよ。



それでは、また。

by s-kuzumi | 2012-09-10 00:17 | サウンドノベル | Comments(6)
Commented by kz at 2012-09-11 00:38 x
毎日見に来ている私は、もしかしたら信者なのかもしれませんw
Commented by 西日本 at 2012-09-19 03:36 x
このサイトはかなり有名な方ですけどねw
次回の更新も期待しています。
あと、できれば古めのものもレビューしてほしいですね。
Commented by s-kuzumi at 2012-09-20 20:17
>>kzさん

毎日見に来ても、それが乃ち、信者とは限りませんよw
なんか、こう、信者っていうのは、もう少し精神的に対象にズブズブになっていないとw
Commented by s-kuzumi at 2012-09-20 20:18
>>西日本さん

いやぁ、こっそりやってるただ弱小のブログですよw

次回……古めの作品をあれやこれや探しているんですが、もう配布されていない作品とかなら、取り上げたいのあるんですけれどもねー。

逆に何か、取り上げて欲しい作品とかあります?? 良かったら教えて下さいませ!
Commented by 西日本 at 2012-09-21 22:48 x
返信有難うございます。
では私がつい保存してしまった作品のうちで特に印象に残った作品である『Ringlet the Fairytale』などは如何でしょうか?
主に北欧の昔話・神話を現代人にも読みやすいようにアレンジしたものを、二人の登場人物がそれらの物語が収録されている本を読んでいくというスタイルのサウンドノベルです。
最終的には100話近くまでの物語を収録する作品ですので、2006年から現在進行形で制作・更新されているようです。
民俗学をしっかり下地とした内容ですし、登場人物のほほえましい(兄妹です)が大変印象に残る作品だと思いますので、ここでレビューしていなければ是非とも一言紹介して頂ければと、僭越ながら申し上げます。
他にももっとお伝えしたい作品があるのですが、道玄斎さんを困惑させてはいけないので、少々心のブレーキをかけさせてもらいます(笑)。

あと、御体の方も大事にしてください。
折角面白いブログの更新停止で多くの閲覧者が嘆き悲しむ事態になりかねませんので。
Commented by s-kuzumi at 2012-09-30 15:45
>>西日本さん

コメントの返信が遅くなってしまい、申し訳御座いません。

『Ringlet the Fairytale』、凄い壮大な作品みたいですね……。先ずはちょっとプレイしてみないとダメですねぇ……。私も北欧の神話とかは興味があって、「手軽に読める本がない!」と嘆いていたので、丁度良い感じですねー。ただ、時間が掛かりそうでそこが辛いw


こっそり、作品を探してきてはプレイしているのですが、中々紹介しがいのある作品はなくて。
ゲームの紹介(=レビュー)はなくとも、どんな形であれ、少しづつ更新を続けていければと思っています。

取り急ぎお返事まで。
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