2013年 05月 06日
今日の副題 「ノベルゲームで2ch系ホラー」 ジャンル:(2ch系)現代ホラー プレイ時間:本編2時間半~、オマケまで入れると3時間程度。 その他:選択肢無し、一本道。※15歳以上推奨 システム:吉里吉里/KAG 制作年:2012/09/22(ver.1.01) 容量(圧縮時):181MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、本当に久々のノベルゲームのレビューになります。一応、このブログの本筋って事なんですが、ここ数ヶ月、どうにもこうにも、本筋の活動が停滞していたので、こうして作品をご紹介出来る事、嬉しく思っています。 というわけで、今回は、「箱弐伍遺体」製作委員会さんの『箱弐伍遺体』です。 良かった点 ストーリーは、公式サイトの方から引用しておきましょう。 季節は秋。 こんな感じです。 さて、本作、プレイしてすぐに気付くのは、演出の細やかさです。 冒頭は、インターネットの自殺志願者をターゲットにした、所謂「自殺チャット」でのチャット場面なんですが、これがまた非常に良く出来ていて、「良く作り込んであるなぁ……」と感心しました。 チャット場面を作り込んだ作品というと、『ブラックオクトウバー』がありましたが、あれともまた少し違った感じ。どちらかと云えば、最近巷で大人気の無料通話/無料メールアプリのLINEのように、ポップアップみたいな感じで、フキダシが出てそこにメッセージが記されている、という、そういうタイプですね。 冒頭から10分くらいは、ずっとこのチャット画面で、物語が進行していくわけですが、自殺チャットですから、チャットメンバーは自殺の段取りっていうか、そういうのを話し合っていくわけで、単調になりがちな場面も刺激的で、飽きずに読んでいく事が出来ます。 そして、更に話が進んだ所で、OPムービーが入るんですが、これが気合いの入った、良いムービーだったと思います。所謂ギャルゲーのそれとは違って、ホラーである事をヒシヒシと感じさせるような不吉で歪な感じで、このOPは必見ですよ。 登場人物達は、飛び降り自殺をする為に入り込んだマンションのエレベーターの中に閉じこめられてしまいます。そこで、それぞれの抱えている秘密、もっと云ってしまえば、自殺を決心するに至った経緯を語り合っていく……というのがストーリーの芯の部分になります。 何て云うのかな、こういう、秘密の告白とか、或いは懺悔みたいなものをのぞき見する、っていうのは、人間の好奇心を刺激する設定ですよね。日本に於ける源流を辿っていけば、室町時代に成立したとされる『三人法師』とかね、その辺りに行き着くんじゃないかな? なんて思っています。 ともあれ、こうした自殺志願者という、ワケアリの登場人物達の秘密を見ていく、という趣向が、この作品の眼目の一つである事は間違いなく、非常に個性的なものになっていたと思います。 一方、語られていくそれぞれの秘密の中身に関しては、怪談・ホラー・都市伝説みたいなものが好きな人だと、あまり恐さを感じないかもしれません。 というのも、それぞれの女の子の語る秘密の話には、それ系が好きな人にとってはお馴染みのネタが多く使用されているからです。そもそも冒頭のチャット時から、「ryomen」(リョウメンスクナ)、「8shaku」(八尺様)、「kisaragi」(きさらぎ駅)、「kashima」(かしまさん)といった具合に、2ch系の怪談に詳しい人ならピンと来るハンドルネームが使用されていました。 まぁ、本作は「2ch発の怖い話を題材にしたノベルゲーム」って事なので、そこを突くのはどうか、という気はしますが、告白の中身である、その怖い話がお馴染みのものだという事で、恐さが半減してしまうというのは、ちょっと勿体ない部分ではあります。 もう一点、気になった点を挙げるとすれば、普段、あまり使わないような言葉が結構出てきて、何となくのレベルですが、文章のテンポを妨げていたかもなぁ、という辺りでしょうか。例えば「能弁」とかですけど、この手の言葉ってあまり普段は使いませんよねぇ? 一応、若い女の子達の語りなわけですから、そこらへんは、もう少し砕けた感じにしても良かったのかな、と。 大体、こんな所でしょうか? あっ、そうだ。オマケについても言及しないと。本編を読了すると、オマケのシナリオ(?)を読む事が出来るのですが、何と9つもの怪談(や、心霊のいい話)が収録されています。これも、「洒落こわ」とかを見ていると、「ああ、あの話ね」とすぐに分かっちゃうんですが、スレッドで語られた話を少しアレンジしてあるものもあったりして、お腹いっぱいになります。 個人的に好きなのは「天使です、これは」というお話。全然怖くない、いい話系で、どなたにも安心して勧める事が出来ます。 日頃から、「洒落こわ」を見ていたり、それ系のまとめサイトとかを見て回っていたりすると、恐さが半減してしまう、という問題も持っていますが、逆に、2ch系の怪談に詳しくない、という人がプレイすると、作品の魅力が十二分に引き出されるような気がします。とはいへ、元ネタを知っている人でも、ムービーとか力が入っている作品だと思うので、是非是非プレイしてみて下さい。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2013-05-06 20:36
| サウンドノベル
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