2013年 06月 11日
今日の副題 「SFファン必見! ディック系SFアドベンチャー」 ジャンル:SFアドベンチャー プレイ時間:コンプリートして凡そ2時間。 その他:選択肢有り、バッドエンドも。 システム:Live Maker 制作年:2013/5/20(?) 容量(圧縮時):44.4MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、以前からダウンロードしてあった作品をプレイしたので、その作品のご紹介。あまりお目に掛かれないSF作品です。 というわけで、今回は「あほちゃん」さんの『温かく、暖かい冬、なのか』です。 良かった点 ストーリーは、ふりーむ!の方から引用しておきましょう。 世界中を巻き込んだ核戦争が終わって数百年。人々は地下世界を中心に生活していた。 こんなストーリーです。 さて、冒頭で、あまりお目に掛かれないSF作品、と云いましたが、SFの片鱗を持った作品はちょくちょく目にしますよね。未来からやってきた女の子とか、或いはもっといってしまえば、ループ系のそれだって、SFっぽいわけです。 でも、本作に対して使う「SF」という言葉は、「これも、一応SFだよね」という感じではなく、「SFです!」と強く断言出来ちゃうような、そういうニュアンスだったりします。 とはいへ、別に宇宙船がとか、宇宙人がとか、そっちのタイプのSFではなくて、核戦争によって地上が汚染され、人類は地下に居住する事になった、という、今では割とお馴染みの設定ですが、そっち系のSFですね。 本作のSFらしさを支えているのは、そうした人類の居住地の設定だけではなく、アンドロイドが人間社会に溶け込み、時に犯罪に走るアンドロイドがいる、という設定や、それを狩るハンターの存在がある、という設定に拠る所も大きいです。 でも、ここまでいくと、何か気付きませんか? そう、本作はどう考えても、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢をみるか?』の世界観を下敷きにしているように思われるのです。誤解を恐れずに云ってしまえば、本作は『アンドロイド~』へのオマージュなのかもしれません。 ちょっと脱線しますが、以前どこかで読んだ文章には、こういう事が書かれていました。 曰く「パクリは、元ネタがバレちゃマズイものだが、オマージュは元ネタが分かるとより一層楽しめる」と。これは中々明解で、急所を突いている説明な気がします。 本作の場合は、その設定の類似から、そしてそれを隠すような部分が全くないので、私はオマージュだと判断したわけです。 さて、ストーリーの解説に移りましょう。 主人公ルディは、前述の犯罪に走るアンドロイドを狩って生活をしているハンターです。ただし、殺人といった重い罪を犯すような、凶悪性のあるアンドロイドを狩るのではなく、もう少し大人しめのアンドロイドを狩っている、そういうタイプ。 そして、そんなルディの家に、転がり込んできたのが、同じくハンターをしているウルフです。冷たく、人を寄せ付けない雰囲気を持っているルディに対して、ウルフは、何というかオープンマインドで接してきて、いつの間にか同居を承諾させてしまった、好漢です。 この前半部のストーリーは、世界観の説明、そしてルディ、更にはウルフが生業としている仕事に関する説明、はたまた、ルディには何か過去に人には云えないような事件に遭遇し、それによって性格が現在のようになってしまった、という事を仄めかす、謂わば説明パートに相当するわけですが、これが又、凄くテンポが良くて、しかも面白いんです。 そこに説明臭さは感じませんし、SFらしい楽しさ、面白さを十分に喚起させてくれます。 更に、文章も変に難解な言い回し等はなく、素直に読んでいけるものになっています。何となく、読点(「、」)の位置が気になる箇所はあったのですが、正直私自身も、変な使い方してると思いますし、普通の人に比べて多分、読点の数は多いハズなので、飽くまで私の所感というレベルですね。 まぁ、そういう所を差し引いたとしても、本作は、非常に読みやすくて、前半部のツカミが上々だという事(このツカミが上手いと、その後も前のめりでプレイ出来るので、結構重要な要素かもしれません)、動かない事実だと思います。 個人的な分け方ですが、ルディがウルフと組んで、一緒に違法アンドロイドを狩る辺りまでが前半部。そして、ルディの秘密が明らかになり、ルディとウルフの関係が進展していくまでが中盤、それ以降が後半というイメージですね。 気になった点は、中盤、ルディの秘密が明らかになってから、出てきます。 というのも、特にルディの性格が、前半部と比べて大幅に変化してしまって、プレイしていて思わず戸惑ってしまうのです。 少しづつ、性格、性質が柔らかくなっていって、それがナチュラルな変化であるならば、違和感はないのですが、かなり一気にガラッと性格が変わってしまうので。 同時に、ストーリーの方も、序盤で想像していたのとは、ちょっと違う方向に向いていく事に気がつきます。 それも亦、ナチュラルな変化であれば、良いのですが、何となくその、中盤の出来事を境にして、物語のテイストもガラッと変わってしまう、そういう印象は否めませんでした。 より、正確に書けば、SFらしい舞台の設定や、ストーリーの運びがあって、当然それに応じる形でストーリーが展開されていくのかと思いきや、ノベルゲームでは結構良く目にするような、そういうストーリーに変化してしまった、という印象でしょうか。 そして、ラストへ向かってストーリーが進むわけですが、ちょっと捉え所のないラストというか、明確な形で「ハッピーエンド」、或いは「バッドエンド」とも云えない形(エンディングは分岐しますしね)。 その、曖昧模糊としたラストそのものは、悪いは言い切れません。その何とも云えない淡いの中に、独特の余韻を持たせたり、風情を感じさせたり、という事は、ままあります。 とはいへ、やはり、ちょっと不完全燃焼感のあるラストで、何かしら、この作品ならではの決着を見せて欲しかったな、と思いました。 大体、こんなところでしょうか。 ちょっと辛口になったかもしれないのですが、ディックのそれを踏襲しているとは云え、ノベルゲームでは結構珍しい純SFという感じで、魅力的な世界観、設定を持っており、しかも良いテンポで進む点、評価したい所です。 『アンドロイド~』を読んだ事のある人は、プレイしてみると面白いかもしれませんね。又、本作から入って『アンドロイド~』に行く、というのも有りだと思います! 何だか、私も本作に刺激されて、無性にSFを読みたくなってきてしまいました。元々、私もSF、結構好きなんですよw という事で、今日はこのへんで。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2013-06-11 23:31
| サウンドノベル
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