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久住女中本舗

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2013年 11月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『ニートと呼ばないで』

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道玄斎です、こんにちは。
今日は、久々のノベルゲームレビュー……の番外編です。昔から好まれてきた話の型を持った作品、って事になりましょうか。
というわけで、今回は「Y-F」さんの『ニートと呼ばないで』です。『津軽雪月花』の作者さんの新作ですね。



周辺的な情報を予め述べておくと、本作は、前作と同じくwolfRPGエディター製の作品です。これも『津軽雪月花』の時にも書きましたが、操作に全く不満はありません。
尺は私がプレイして20分といった所。じっくりじっくり読んでいっても30分掛かるか掛からないか、という、非常にプレイしやすい尺になっています。

さて、作品の中身に入っていきますが、物語冒頭で、主人公鈴木優の家族紹介、みたいなものが行われます。主人公宅にやってきた動物(ペット)のヒメを紹介するパートですね。ペットも亦、家族ですからね。このヒメというメスの動物(何の動物か、最後の最後まで分からなかったのですが、多分、猫かな)と、主人公が兄妹のように育っていった、なんて事が記されるわけです。

そして、時は流れて、主人公は23歳に。
四年制の大学を卒業したものの、就職出来ず、職安に通う毎日……。タイトルである所の「ニート」が活きてきます。
いや、そのニート描写っていうか、それは結構シリアスで、ずしりと重みがあるものでした。求人票だけは出ているけれども、実際に「本当に求人している会社」は少ない、とかね。バイトをしながら資格を取ったりしても、就職できず、職安に通う日々とか、ちょっと読んでいて、悲しくなってきます。

が、そんな主人公の前に、一人の謎の女の子が現れて、彼を励ましてくれる……というのが、うんと粗雑なストーリーの流れですけど、その女の子(ヒイロ)の正体は何なんだ? って事で、悩む人……いないと思うんですよw 云うまでもなく、その女の子は、ペットのヒメが人間に姿を変えたものです。

こうした、動物が飼い主とか、面倒をみてくれた人なんかに対して、恩を返していく話のパターンを、そのまま「動物報恩譚」って呼びます。「鶴の恩返し」とかが、一番分かりやすいですね。
本作も、この「動物報恩譚」という、話のパターンが基調となって展開されていく、というか、ほぼそのままの形ですね。

けど、やっぱり、「動物報恩譚」なんて言葉がある以上、この手の物語は大量に存在していて、昔から今に至るまで、様々な所で見る事が出来ます(フリーのノベルゲームでもありますよね)。つまり、非常に、好まれているパターンなんですよね。
本当に、少し読み進めれば、「あっ、これね」って、話の構造は分かっちゃうにも関わらず、最後まで読んでしまうし、本作の場合、私はやっぱり感動してしまうんです。

それって、こうした話のパターンが持っている力、みたいなものもあると思うんですよ。
前述の通り、本作も、動物報恩譚の典型的なパターンですけれども、読んだ時に、「本作に於ける動物報恩」だけで感動している、っていうよりも、長年熟成されてきた「動物報恩譚のイメージ」みたいなものが、プレイヤーの心の中に底流していて、それを触発させてくれる、というか、そんな印象があるのですが如何でしょうか?


さて、話は戻りまして、途中で厭なヤツ(所謂、勝ち組ってヤツかねぇ……)が出てきたりするんですが、一発キャラみたいな感じで、ストーリーとしては、かなり駆け足気味にラストまで到達してしまいます。
そこが、ちょっと、勿体なかった部分かな、と思いました。

これも先に述べましたが、就職を巡って、かなりシビアな状況に主人公は置かれているんですよね。で、人一倍苦しんでいるし、それがコンプレックスにもなってしまっている。
しかし、ヒイロの叱咤激励によって、就職するに当たっての自分の求める条件を緩和させて……みたいな。

そこに、ちょっと、私は違和感っていうか、何となく落ち着きの悪さみたいなものを感じてしまったのは事実です。そもそも本作、「ニートと呼ばないで」というタイトルで、タイトルの雰囲気だけで云えば、「シリアス寄り」というよりは、「明るさ」とか「軽さ」を感じさせるものだと思うんですよね。
で、「ニート」という問題が一つの焦点である事、疑いの余地はないのですが、そのニート問題、みたいな部分がかなりあっさりとクリア出来ちゃう所に物足りなさ、を覚えてしまったというか。

例えば、ヒイロが人間でいられる期間を一日ではなく、もう少し長目にして、時にコミカルに、時にシリアスにニートの問題を掘り下げていったり、更に、主人公とヒイロ、そして主人公とヒメの関係を、そうした問題に直面させていく中で深めていったり、という事があれば、満足感がもっとあったかな。
換言すれば、もっとふくらみのある物語に十分出来たのになー、という感じでしょうか。

いや、けど、ヒイロがずっと人間だとしたら、その間のヒメの不在はどうするんだ? とか、そういう問題はありますねぇ(一応、タテマエとして主人公はヒイロの存在がヒメと同一である事に気付いていないわけですから)。うーん、そうですねぇ、ヒイロは、昼間、どこからとも無く現れて、主人公に合流する。そして主人公が帰宅する間際になると、どこへともなく消えていく、そして主人公が帰宅すると、何食わぬ顔で、家にヒメがいる、とか? 


いや、まぁ妄想に入ってしまいましたね……。
ともあれ、もっと尺の長いバージョンでこの話を読みたかったなぁ、というのが素直な感想なんです。前作も、全体としての尺はそれなりにありましたが、テンポは良すぎるくらいだったので、一つ一つのエピソードっていうのかな、そういうのを、もう少しじっくり楽しみたいな、なんて思ったり。


ちょっと、辛口気味になってしまいましたが、優しく、プレイする人を選ばない作風は、この作者さんの大きな魅力だと思います。本作は分かりやすさ、みたいなものもプラスに働いていたと思いますしね。


というわけで、今日はこの辺りで。
それでは、また。

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by s-kuzumi | 2013-11-04 15:30 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by Y-F at 2013-11-10 19:50
こんにちは、Y-Fです。

前作に続いて、レビューを頂きありがとうございます♪

わたし自身、内容があっさり過ぎかな? とも思いましたが。
短編の持つ力というのを信じて、公開に踏み切りました。

ちなみにヒメが何の動物か、ハッキリさせなかったのは狙いです。
何の動物のつもりだったのかと言うと……やっぱりヒミツ(笑)

次こそ長編物語に挑戦してみたいですね。
ではでは、失礼いたしましたm(_ _)m
Commented by s-kuzumi at 2013-11-14 20:49
>>Y-Fさん

こんばんは。
コメント有り難うございます。

二作プレイしてみて、Y-Fさんの持ち味のようなものが、大分分かったような気がしていますw
今回も、とっつき易さや、テンポの良さは凄く良いな、と思いましたよ。

次回作、長編……というより、一つ一つのエピソードの密度を高めてみると、また、違った魅力が出てくるように愚案致します。

こちらこそ、わざわざの書き込み有り難うございました。
それでは、失礼致します。
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