2013年 11月 23日
今日の副題 「俺と彼女とオルガンと」 ※吟醸 ジャンル:ハートウォーミングラブストーリー(?)+短編集 プレイ時間:合計で2時間半程度。 その他:選択肢なし。途中でエクストラが開放されていくが、本編と直接的に関係がない。 システム:NScripter 制作年:2013/3/29 容量(圧縮時):32.1MB 道玄斎です、こんばんは。 今日は、お勧めされた作品をプレイしたので、そのレビューを。結構お馴染みな設定だったのにも関わらず、不思議と引き込まれてしまいました。というわけで、今回は「夢見る少女と水の空」さんの『Good days』です。 今回から、ダウンロードサイトのURLも張っていこうと思います。ダウンロードはこちらから。 良かった点 ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。 梅雨の近づく六月初め。 ちょっとあっさりですが、こんな感じです。 久々に、尺が十分にある作品をプレイしました。 と、云っても、本作はちょっと変わった作りで、「本編」を読み進める事で、エクストラの「短編」が読めるようになります。しかし、その短編は、本編と関わりのあるものではなく、独立した短編なのです。 ですので、実は本編だけの尺で云えば、一時間ちょいと云ったところ。 短編の方は全部で四本。長いのも短いのもありますが、これも、全部読んで一時間ちょいでしょうかね。合計すると、大体2時間半くらいです。勿論、短編を飛ばして本編だけ読んでしまう、というのも可能ですし、本編・短編・本編・短編……と交互に読んでいってもいい。ちなみに私は後者の読み方をしました。 さてさて、肝心の中身に入っていこうと思うのですが、本作(本編の方ね)、結構良く目にする設定と、ストーリーの流れを持っているんです。 主人公は、何の気無しに足を踏み入れた廃教会で、一人静かにオルガンを弾く、謎の少女と出会う。そして、その少女は、妙にぶっきらぼうというか、心を閉ざしているような感じがする……。勿論、少女はとても美しい。 こうしたイントロを持つ作品って、ノベルゲームに限らず、結構良く目にします。 ラノベなんかにも多いですよね。作品によっては、主人公が出会うヒロインが、人間じゃなかったりするわけですが、基本的に、ミステリアスな存在だったり、物悲しさを感じさせるような造型になっていたりするわけです。 ですから、「あ、このパターンね」と、作品の型としてはすぐに分かってしまう部分は持っています。 それは、取りも直さず、こうした作品の型が好まれてきたという事でもあります。 同時に、ハシカみたいな、「こういう設定が凄く響く年頃」みたいのも、あると思うんですよ。だから、私はプレイしていて、「いやぁ、もう、この手の設定は卒業したからねぇ」と、ちょっと冷めた目で見ていました。 けど、ジンワリと入ってくる物語は、それが予定調和的であっても、厭味がなく、心地良いものだったんです。「もう卒業した」と云いつつ、実は全然卒業出来てなかったというねw それにしても、お馴染みの設定、お馴染みのストーリーの流れを持った作品でも、「うーん……」と、思ってしまう作品がある一方で、こうして、「やっぱりいいもんだなぁ」と思える作品がある。この差ってなんでしょうね……。 その謎はすぐに解けるハズはないのですが、一つ、本作を、読んでいてピンときたのは、「起承転結」の流れが非常に綺麗だという事。それぞれの尺の配分も良かったと思います。特に承の終わりから転にかけて、そして結への繋ぎ方がスムーズで、次を期待させる作りは、基本を押さえたものですが、それだけに安心感を持ってプレイ出来ます。 そして、一章をプレイする度に開放されていくエクストラの短編集が、全部合わせれば本編と同じくらいのボリュームで、お腹いっぱいになりました。 特に、一個目の短編、『stand by me』が凄く良かったですね。 これも、実は本編と同じく、かなりベタな設定ですw 妙に観念的な話を持ち出す、美人で孤高のオーラを持つ文芸部の先輩とか、本当に良く目にする造型ですよね。 で、そんな彼女に憧れて、文芸部に入部した主人公との関わりを描く、そんなお話なのですが、最初は結構とっつきにくい文章とか話の中身で、アレだったのですが、段々とその先輩が物凄く可愛く思えてきちゃうんですよねぇ。 そして、そんな彼女に憧れる主人公を応援したくもなり、いつの間にか、自分を主人公に重ねて、プレイしてしまう……というわけですw ともあれ、ラストも綺麗に決まってますし、これは凄く素敵な短編作品でした。 さて、一方で気になった点は、文章がややくどい、という点でしょうか。 本編や、今書きました『stand by me』なんかも、前半部は「すらっと読める」という感じではなく、どちらかと云えば小説とか、或いはもっといってしまえば、凝ったラノベのそれに近いような、手触りがあります。 そういう文章の傾向は、漢字変換にも現れていて、「まだ」を「未だ」、「せい」を「所為」と表記していたりします。その一方で、「確率」とありたい所が「確立」になっていたりと、誤字が割と多め。 凝った文章にしたせいで、「ん?」となってしまうような表現も散見されます。 例えば、「きっと運命なんて一つもない、本当に偶然の邂逅」という文があるのですが、その偶然の邂逅こそが運命と云うものなんじゃ? という気が私にはするのですw あと、本編で気になった点と云えば、ラストがもう一押し欲しかったな、と。 最後、主人公夏希と、ヒロイン望が幸せに向かって、やっと一歩踏み出そうとする、まさにその時に、物語が終わってしまいます。 そこに、「敢えて最後まで書かない美学」や「余韻の効果」を感じ取る事は容易なのですが、やっぱり、もうちょい続きを書いて欲しかったなぁ、と思いました。 或いは、例えば、これも良くある演出かもしれませんが、適当な所で、物語自体を切り上げてしまう。 そして、エンドロールが流れている最中に、「その後」を描く一枚絵を、何枚かゆったりと表示させていく。そして最後の一枚で、二人の繋いだ手がクローズアップされたイラストを持ってくるとか、そういう演出の方向性もアリかな、と。 何にせよ、折角積み上げてきた物語なわけですから、最後でもう一押ししてやると、良かったのではないか、という事ですね。ラスト辺りでは、主人公夏希も、ちょっとだけ焦れったいトコありますしね。うんと、アレな云い方だと小学生に「愛してる!」とか云ってもいいじゃん! とw もっと前に話をすべきでしたが、本編のヒロイン望は、凄い可愛いですw 大学生と小学生の、年の差恋愛(?)を描くわけですが、望は大人びたタイプですし(勿論、その中に脆さみたいなものもあるわけですが)、丁寧に物語を積み上げていっているので、そこに違和感を感じる事はありません。 ちなみに、本編は、背景がみなモノクロで、一見すると「暗い」イメージがあるのですが、それが、上手く「優しさ」に結びついていたような気がします。そうした優しい雰囲気も、本作の魅力の一つですね。 最後に、エクストラで語られる短編に話を戻して、今日はお終いにしましょう。 本当に、本編とは、全く違う舞台で、全く違う登場人物達の織り成す物語で、一瞬、面食らってしまうのですが、『stand by me』や、『夏と風鈴と彼女』(これもコテコテ設定w)なんかを読んでいくと、どこか、本編との繋がりを、私は感じるのです。 孤高で、孤独な女の子と、それに向き合おうとする不器用な男の子の物語、と云うと、綺麗にまとめすぎた感はありますが、「全く無縁の短編が入ってる」のではなく、か細い糸ではあるものの、本編との連続性を有した作品が、本作に於ける短編集なのではないか、と思うのです。 というわけで、今日は悩んだ末に、久々の吟醸です! みんな何だかんだいって、好きなタイプの作品、ではあると思うので、是非、プレイしてみて下さい。 短編と本編の読み方ですが、私は、やっぱり、本編を読んで、短編を読んで……ってやっていく読み方をお勧め致します。 それでは、また。 /* 以下、宣伝 私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~ http://novelersmaterial.slyip.com/index.php 只今、リニューアル作業をしておりまして、今後、より使いやすいものになる予定です。 以上、宣伝 */
by s-kuzumi
| 2013-11-23 21:23
| サウンドノベル
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