2014年 05月 18日
道玄斎です、こんにちは。 今日は、以前軽く予告しておいたお話をしようかな、なんて思っています。 本当は、猛プッシュされている作品があるので、それをプレイするのがいいのかも、なのですが、ちょっと長そうだから、こうやっていつものようにワンクッション入れるのでした……。 ■悪友達に愛の手を! 前回、『メモリア-day of memory-』という作品をプレイした時に、お馴染みの悪友ポジションの竜司というキャラが気になってしまいました。 正確に云うならば、その竜司を起点として、「悪友とはなんぞや?」という、大きな問題が気になり始めたというか。 『メモリア-day of memory-』の時に書いたように、「悪友にもちゃんと見せ場があるといいよね」という結論自体は変わらないのですが、同じ事を繰り返して書くのも気が引けるので、ちょっとだけ角度を変えて考えてみましょう。 昨晩、いつものように眠れない夜。 「悪友って何だろう?」と考えていたわけですが、「悪友→ノベルゲームではお馴染みのキャラ→ノベルゲームでの定番の存在?→ノベルゲームって何?→そもそも物語とは?」みたいに、思考が及んできました。 ■物語と欠損 私にしては珍しく、深入りしているというかw で、まぁ、色々グダグダ考えたんですが、ここは一つ、思い切って大上段に振りかぶって云ってしまいましょう。「物語とは“欠損”を埋める創作物」だと。 所謂、「無気力高校生、聖母のようなヒロインと出会う」型の作品なんかでも、主人公は「やる気」だったり、「生活のハリ」だったりが欠損しているわけですよね。 或いは、「謎めいた女生徒が転校してくる」型でも、その女生徒は、何か秘密を抱えていて、それが為に苦悩する。そこに欠損がありますし、下手をすれば、それが主人公の失われた記憶(これも記憶の欠損だ)とリンクしていたりして。 もっと分かりやすい例だと、主人公は既にして、肉体的な欠損があり、それを乗り越えて、何とかやっていく道を探す、みたいなタイプの作品がありますよね。有名な所だと『Brass Restoration』とか。 欠損っていうと、ちょっと大袈裟な気もしますけど、「腕を切断しちゃった」なんて分かりやすいものから、「そのキャラクターが内側に秘めているコンプレックス」みたいに、分かりにくく、且つ、そのキャラの「認知」の問題で起こる欠損なんかもあるから、実は、かなり幅広い概念で、何だかんだで、色んな作品に当てはまっちゃうんですよねw ■キャラクターの魅力 で、ノベルゲームなんかをプレイしていて、「お、何かこのシーン、いいじゃねぇか……」と思う時って、告白成功後のラブラブシーンなんかはさておいて、「キャラクターが非常に人間らしい悩みで葛藤する」所だったり、或いは「そうした葛藤を乗り越えていく、キャラクターが成長していく様」だったりしません? 私は個人的に、どうも超人的な主人公には、あまり感情移入出来ないんですよ。 人間らしい弱さもちゃんと持っていて、それに真正面から向き合って、折り合いを付けていく、みたいな、定番ではありますが、そういう魅力があると、プレイヤーも感情移入しやすくなるんじゃないかしら。 あとは、普段はちゃらんぽらんだけど、ここぞ、という時には熱い行動力を発揮したり、とかもね。 ■そして悪友に戻る 主人公やヒロインっていうのは、さっきの説に従えば、欠損を軸にしながら、それを乗り越えて成長していくものです。だからこそ、そこにドラマが生まれるわけです。 一方、悪友っていうのは、主人公やヒロインの周りをうろちょろして、イジられたりイジメられたり、と、あまりドラマがないんですよね。所謂賑やかしだったり、ギャグ要員としての「面白さ」はあるものの、「ドラマのある面白さ」を感じさせない、というか。 もっと云うと、主人公と悪友の間には、優位/劣位の関係があって、飽くまで主人公の方が上、みたいなのを感じさせる作品も多いですよねぇ。 中には、本当に悪友が可哀想になっちゃうような、そういう作品もあったりしますからw けど、もし、そうした主人公と悪友の間に優劣をあまり感じさせず、悪友は悪友としての人間的なドラマがあったなら……その悪友はもはや単なる悪友ではあり得ず、立派な助演者としての地位を確立出来るんじゃないかな、というのが、私の主張です。 私が今まで取り上げてきた作品で云えば、『電波電波カプリッチョ!』の明夫なんかは、悪友というか、もはや「舎弟」なんですけど、そういう典型的な「イジられキャラ」のイメージを強く見せつけておきながら、或るルートでは、主人公に対し反旗を翻すような所があったりして、ドラマが生まれています。 しかも、典型的な悪友的キャラとの落差、という部分でインパクトを残しますし、かなり面白い、独自性のある設定だったと思いますよ。 他には、割と最近プレイした『箱庭のうた』なんかは、更に一歩進んでいた印象があります。 プレイしてみると分かるんですが、色々キャラは出てくるんですが、飽くまで「主人公の友人」であって、「悪友」みたいな感じのキャラがいないんですよ。それに近いキャラとして、夏之ってのがいますけど、彼も亦、ただのウザキャラやバカキャラじゃなくて、妹の為に一肌脱ぐみたいな所で、一般的な「悪友」と違う事が示されます。 『箱庭のうた』は、主人公とヒロインを軸とする物語と平行して、「仲間の物語」が描かれており、それぞれのキャラクターはその「仲間」の一員である、という描かれ方なんですよね。 となると、もはや、そこには「悪友」的ポジションのキャラは存在せず、それぞれのキャラクターが、物語内でそれぞれの人生を歩んでいる、という感じで、物語そのものに深みや厚みを感じる事が出来ます。 『電波電波カプリッチョ!』の様に、悪友(舎弟?)のテンプレを使いながらも、それを裏切る、みたいな変化球も面白いですし、『箱庭のうた』のように、「(それぞれにちゃんとキャラが立っている為)もはや悪友と呼べるようなキャラがいない」みたいな設定にしても、魅力的。 「ま、学園恋愛ものだし、悪友出しとくか……」みたいな、惰性での悪友の登用ではなく、何か、目的意識を持った悪友の起用だったり、悪友を魅力ある一人の人間として描けるのならば、その時、悪友は単なる悪友を越えて、物語の名脇役になれるのではないでしょうか。 ■色々あるんだけどもね、実際 と、まぁ、主張は同じなんだけど、ちょっと回り道をしながら、色々話してみました。 例によってちょっととっ散らかった感じはありますけど、「悪友達に愛の手を!」というのが、今回のお話のテーマです。 あまりに不遇な悪友達を、もっと積極的に活かしてやってもいいじゃないか、という事ですね。 何も、強烈な存在感を放たなくても、「その世界に確かに生きている」感触が伝わってくるだけでも、随分違うんじゃないかな、なんて思いますよ。 ちょっと恥ずかしながら、大鉈を振るって、「物語とは」みたいな話もしましたけど、当然、例外はありますよね。「○○という作品では、欠損なんてどこにも出てこねーよ!」みたいな反応は当然あると思いますw 一々例外を挙げて、「○○という作品ではその限りではないが」みたいな文章を入れる、ってのも一つの案ですけど、それはめんどくさいし、そこらへんは読解力っつーか、そういうので察して下さいw けど、「欠損」っていうキーワードで、解釈出来ちゃうものも結構多い、というのも、亦事実なんじゃないかな、と思いますよ。 少し広く解釈していけば、ミステリー作品なんかでも、「事件の真相」という欠損が、読者を惹きつけていくわけですし、その真相を突き止め、還元すれば、その欠損を埋めた所で物語は幕を下ろします。 まぁ、鵜呑みにしないで、話半分で聞いて下さいなw 私のどうしようもない思索が、誰かの考えの種の一つにでもなれば幸いです。 というわけで、今日はこのへんで。 これから、お勧めされた作品プレイしてきます。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2014-05-18 17:12
| サウンドノベル
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