2014年 07月 01日
道玄斎です、こんにちは。 いやぁ、色々最近忙しくってねぇ。忙しいって事もあるし、お気楽な毎日を過ごしているようだけど、私は私で、結構デカイ決断を迫られたり、って事もあるんだよ。 なので、落ち着いてゲームをプレイする、って事は、今は出来ないのでした。「これは、プレイしないとな」ってな作品は2本くらい見つけてあるんだけどもね。 で、例によって例の如く、「日々之雑記」や「箸休め」でお茶を濁そうって訳なんだけど、今日は「箸休め」の方だよ。 ■ファンタジーを巡る問題 RPG作品なんかでは、ファンタジーは、かなりメジャーなジャンルなんだけど、ノベルゲームになると、意外とファンタジー作品は少ないんだ。 そもそもファンタジーとは何か? みたいな話になっちゃうとアレなんだけど、大体のイメージで、「異世界や、現代とは違う場所が舞台」となり、「現実には存在しない化け物が存在」しており、「魔法などの超自然的な力が日常的に受け入れられている」世界、という感じかな。 ファンタジーの区分けも色々あって、例えば、ノベルゲームでもお馴染みの伝奇モノ。あれなんかは、「エブリディマジック」なんてファンタジーの系統に入れられそうなんだよね。 このエブリディマジックっていうのは、舞台は現代、というか現実世界なんだけど、その中に不思議な存在(要素)が入り込んで事件が起こっていく……というタイプ。読んで字の如し、って奴で、「日常生活に入り込んでくるファンタジックな要素」を持った作品なんだ。 伝奇なんてのは、まさにそういう要素があるでしょ? 何事もなく生活していた主人公がいて、彼の周りで不思議な事件なんかが起こる。で、超自然的な力を駆使して戦う奴等が出てきて、いつしか主人公も自らの力に目覚めて……みたいなパターンだよね。 けど、今回話していこうと思うのは、最初に挙げたタイプの「いかにもファンタジーっぽいファンタジー」の世界について、だよ。 ■ノベルゲームはエブリデイ? で、「ノベルゲームでは、直球のファンタジーは少ない」って事だけど、それもそうかな? という気もするんだ。だって、わざわざファンタジックな世界を創造するのは、ちょいと手間が掛かるし(世界の設定や、その説明が大変だもんね)、日常の中にファンタジックな要素を放り込めば、大凡、所期の目的(シナリオの目的)を果たせちゃうんだよね。 つまり、エブリディマジックで十分、って考え方なんだ。 「不思議な行き倒れ少女を拾う」タイプの作品だってエブリディマジックだし、「不思議な魅力を持った転校生の女の子がやってくる」っていうのも、エブリディマジックのパターンが多いよ。 こうして見てみると、ノベルゲームには、ファンタジックな要素を持った作品こそ多いんだけど、「直球のファンタジー」は意外な程少ないってのが分かるよね。 一方、RPG作品なんかは、『ウィザードリィ』や『ウルティマ』、或いは『ドラクエ』や『FF』のように、その元祖的存在が、既に「直球のファンタジー」世界を舞台としているから、今でも、「取り敢えず、ファンタジー世界で」という感じになっている、んじゃないかなぁ……。 ■キャラから? 物語から? ここで、少し話が飛ぶんだけど、どうやらゲームを作る時って、大きく分けて二つのパターンがあるみたいなんだ。 一つは、「ストーリー先行型」。「こういう物語を作りたい!」って事で、あれこれ考えていって、キャラクターや設定を煮詰めて一本の作品に仕上げるってやり方だね。 で、もう一方は、「キャラクター先行型」なんだ。 「このキャラクターが活躍出来る話を作りたい!」って事で、シナリオを練っていくタイプだよ。 勿論、この二つの考えが入り交じって、作品が作られていく、なんて事も実際には多い訳だけど、話を単純化しよう。 こりゃ、私の何となくのイメージなんだけど、女性がゲームを作る時って、割と「キャラクター先行型」が多いような気がするな。特に、イラストを描ける人なんかには、そのパターンが多いみたいだね。 女性のウェブサイトを見てみると、「お絵かき」と称して、自作のイラストが多数展示されている事が多いよね。そうやって、自分の「とっておき」のキャラクターが何人か集まってくると、「じゃあ、このキャラクター達を使って、物語を作ろう!」って考えるのは自然な事だよ。 で、まぁ、その中の一定数の人が、キャラクターを産み出す時に、「ファンタジーらしいファンタジー」の設定を使うんだ。メインキャラとなる女の子がいて(剣士系か魔法使い系かにザックリ二分出来る)、騎士団とかに所属しているカッコいい男性キャラがいて、普段はぼんやりしているけど、実は凄い魔法使いとか、耳が長いエルフのキャラがいて……と、そんな風に、キャラを作っていくわけ。 そうやって、キャラクターを増やし、設定を固めていくんだけど……そこで、問題が起こったんだ。 ■キャラ先行の落とし穴 ある日、私は、人のツテで、そうした「(ファンタジー)キャラクター先行型」で物語(ノベルゲーム)を作ろうとしてる人にアドバイスをする事になったんだよ。 けど、私のアドバイスなんて別に大した事はないし、殆ど役に立たないんだ。 とはいへ、「アドバイスが欲しい」っていう人の殆どが、実は、具体的なアドバイスを求めている訳でもなくて、「話を聞いてくれ!」という、そういう事が往々にしてあって、その時も、そんな感じだったね。 まぁ、話を聞くくらいは出来るよね。 それに、「話をする」っていうのは、意外と物語作りには役に立つんだよ。 だって、全く知識の無い人に、その作品がどういうテーマを持っていて、どういうキャラクターが出てきて、どういう事件が起こって……みたいな事を話すんだから、自分の頭の整理になるんだ。 当然、会話は一方通行じゃなくて、こっちも混ぜっ返したりするから、それで、設定の不備に気付いたりって事も良くあるよ。 ともあれ、私は話を聞く事にしたんだけど……。 「わたし、自分の作ったオリジナルキャラクター(オリキャラ)を使ったファンタジーを作りたいんです!」 「ほうほう」 「それで、RPGとかは難しそうだから、乙女ゲームみたいにノベルにして、まとめたいなぁって」 「意外と、ファンタジーのノベルゲームは数が少ないから、上手く作れば面白いものが出来るかもね」 「キャラには自信ありますよ! 何しろ5年もキャラクター作り続けてきたんですから!」 「えっ! 五年!? そりゃ、また随分練り込んだねぇ……」 「やっぱ、キャラを色んな人に愛してもらいたいじゃないですか? だから作品のウリはキャラクターですね」 「まぁ、それも一つの考え方だけど、やっぱり、肝心のシナリオがしっかりしてないとね。シナリオの方は出来てるの?」 「バッチリです! 少しづつ設定を積み重ねたので、設定やシナリオには厚みがありますよお~」 「じゃあ、ちょっと設定とかシナリオとか、見せてもらえる?」 と、そこで、その彼女から、設定やシナリオを纏めたページのURLが送られてきたんだ。 正直、そのURLを見て、ちょっと厭な予感がしたんだよ。 だって、「story001.htm」「chara0001.htm」なんて書いてあるんだぜ。 何で、ストーリーに三桁の数字が必要なんだ? キャラクターに至っては四桁じゃないか! 兎にも角にも、先ずは「story001.htm」の方に飛んでみたんだよ。 開けてびっくり玉手箱、じゃないけど、滅茶苦茶驚いたね。 だって、いきなり「全8章」とか書いてあったんだ! で、「第1章 追憶の指輪編」、「第2章 闇の伯爵編」、「第3章 暗黒教団の陰謀編」……なんて調子で、各章立てがしてあったんだよ。 けど、肝心のストーリーは何故か妙に薄かったんだ。 第1章のストーリーは、確かこんな感じだったなぁ……。 「生まれ故郷を追われたリカ(主人公ね)は、放浪の旅に出る。そして旅の途中、荒野にて、魔物達から襲撃を受けてしまう。しかし、そこに現れたのはセリグリア王国の騎士団。魔物達を蹴散らした後、騎士団の団長はリカに問い掛ける。『俺たちと共に戦わないか』と。リカの旅は今まさに始まったのだ……」 みたいなね。 それは……ストーリーというよりは、その発端部分っていうか、序章というか、そういう感じだよねぇ。 まぁ、それはいいとしても、何で、都合良く騎士団がやってきたのか、とか、何で、いきなり主人公に入団を勧めたのか、とか、色んな疑問があるんだよね。 そもそも、何で、生まれ故郷を追われてしまったのか、ってトコも、サブタイトルの「指輪」についても不明だし。 「えっと……色々聞きたい事があるんだけど……。いきなり騎士団に誘われるって唐突過ぎない?」 「それはですね、ネタバレになるんですけど、リカと団長には実は血縁関係があるんです。団長はリカを見て、すぐに自分の姪だって分かったんです。だから彼女を誘ったんですよ」 えっ!? ネタバレ!? そういうのは、本来、ちゃんとストーリーに書いておくべきなんだけどもなぁ……。 「……そこらへんはキャラクターのページを見れば書いてあるのかな?」 「はい! バッチリです!」 というわけで、今度は「chara0001.htm」を見てみたんだ。 確かに、キャラページの方には色々書いてあったんだよ。キャラクターのイラストは言うに及ばず、身長、体重、血液型、守護星、属性(?)、好きな食べ物、嫌いな食べ物、気になる異性……etc etc けど、「団長と血縁関係にある」なんて書いてないぞ……。 と思ったら、説明文の中に、妙な空白がある事に気が付いたんだ。 そう、そのネタバレの箇所は、「反転で表示」になってたんだよ。画面を反転させてみると、確かに、団長と血縁関係であること、実はリカは女神の生まれ変わりで、世界の命運を担う者である、なんて情報が載ってたんだ。 そんな事は、けど大した問題じゃなかったんだよ。 「関連キャラクター」なんて項目があって、そこには人名のリストが載っていたんだけど、それが数人なんてレベルじゃないんだよね。20人くらいはいたかな……。当然、その人名はリンクになっていて、そこをクリックすれば、そいつのキャラクターページに飛ぶって寸法。で、当然、そのキャラクターのページにも「関連キャラクター」が数十人単位で書いてあり……。 「あのさ……又しても聞きたい事があるんだけど、キャラクターって全部で何人くらいいるの?」 「全部で1500人ですね。主要キャラは100人くらいです!」 1500人だって!? それじゃ、ゲームにならないだろ! ここに来て、やっと「chara0001.htm」の謎が解けたって訳だよ。マジでキャラクター数が四桁だったんだ……。 ん……? となると、シナリオの方は……。 「え、じゃあさ、シナリオは全8章って事だと思うんだけど……その8章の中に1500人が詰め込まれてるの?」 「えっと、各章には色んなエピソードがあって、細かく分けていくと、全部で300個くらいのエピソードがあるんですよー。だから全員入れられます!」 「もしかして、300個のエピソード、全部一人で考えたの?」 「実際、考えてあるのは5つくらいかな……」 「あっ、じゃあ、残りの295個のエピソードは、未定……?」 「そうですねー。けど、色んなキャラを見てもらいたいですから、頑張ってエピソード作りますよー!」 ■その後の顛末 もう分かるよね? 私がアドバイスする余地なんてどこにも無かったんだよ……。 勿論、「メインキャラは5~6人がいいとこで、敵キャラも同じくらい。合計で10~12人くらいのキャラクター数の方が作りやすい」なんて、常識的なアドバイスも出来る事は出来たんだけど、止めておいたんだ。 結局、当たり障りのない、「ゲームを作るためには、こういうツールがあって、BGMなんかは借りたりして~」みたいな、本当にゲーム制作の概略、みたいな話をしてお開きになったのさ。 キャラクターに凝るのはいいけど、懲りすぎると、こういう事になっちゃうんだなぁ! 結局、彼女は「ゲームを作るより、キャラを増やす方が楽しいや」って事になって、今でもきっと、順調に1500人に向かってキャラを増やしてるはずだよ。 まぁ、楽しみの形は人それぞれだし、ゲームにするってのが絶対解ではないしね。 ■そして再びファンタジー 話は戻るんだけど、エブリディマジック系のお話だと、どんなに頑張ってもある種の制限があるんだ。 飽くまで、「日常の」というか「常識の」範囲内での設定っていうのがあるからね。その中に、いかに面白いファンタジックな要素を入れるか、がキモだから、あまりにも常識ハズレのキャラや設定にしちゃうと、もはや「エブリディ」じゃなくなっちゃうんだよ。 一方、直球のファンタジー世界だと、一から自分で世界を創造していかないといけないわけだから、ある意味で好き勝手が出来るってわけ。 神様の分類をやたら細かく決める事も出来るし、武器や防具、魔法のアイテムだって好きにデザインしていい。これは、制作者の設定欲を満たしてくれるって言い換えてもいいのかな。 けど、本当の事を云っちゃうと、「ある程度の制約があったほうが作品としてまとめやすい」っていうのも事実だと思うな。何もかも自由に出来ますよ! って云われて、本当にそれを綺麗にバランス良く(ここが大事)デザイン出来ちゃう人はいいんだけど、誰しもがそういうパワフルな能力の持ち主じゃないからね。 だから、ファンタジーだったら、『指輪物語』みたいな、影響力を今なお持ってるような作品を下敷きにしておく、なんてのは、意外と有効な方法だと思うな。 ある程度のお約束に則って、自作品の世界を創り上げていく、って方法だよ。 そうやって創られるファンタジックな世界観で、RPGにするならともかく、ノベルゲームでは、ちょっと考えた方がいいって事もあるんだけど……それは、次の機会に致しましょう。 というわけで、今日はこの辺で。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2014-07-01 16:14
| サウンドノベル
|
Comments(2)
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西日本
at 2014-07-01 23:24
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なんだか嘘のようなお話ですね・・・。
伝えたいお話をノベルゲームにするという考えには賛同しますが、内容も登場人物も桁違いの作品を考えている人がいるなんて・・・。 好き勝手にするのは、あくまでも表現技法やテーマであり、自分の望み通りに書く作品には、本当に人に「伝えたい」思いを含む、謂わば作品の心臓が無くてはならないでしょうに。 読み手にとって心地良い、そして何度も読み直すテキストと余韻を「生み出す」こと。 これこそ本当の物語というセカイの創造主でしょうに・・・。 製作者と読み手にとっての物に「ズレ」が生じているのか・・・。 そんな夢想を抱くお話でした。 今後とも道玄斎さんの素敵なお話を期待しています。
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s-kuzumi at 2014-07-02 21:07
>>西日本さん
こんばんは。 嘘みたいですけど、実話ですw 勿論、絶対に該当する方に行き着かないように細部は変えてます。 けど……例のキャラクターの数なんかは、下方修正しているんですよw 何でもかんでも、過ぎたるは及ばざるがごとし、って事で、やり過ぎは良くないですよね。 「物語を作る」って明確な目標があって、キャラクターを作っていくなら、或る程度の自制が効くような気はするんですが、「キャラありき」だと、「それを纏める」という発想が、はなっから無い場合もあって……。 今回みたいに、途中でまとめたい、って思っても難しい事はありますよね。 ともあれ、こういうちょっとヘンテコな話は、まだまだストックがあるので、折に触れてご紹介致しますw どうぞ、ご期待下さいませ。 |
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