2014年 12月 19日
今日の副題 「魔女は飛ぶものです!」 ジャンル:ファンタジックADV プレイ時間:初回は20分程度。トータルで1時間くらい。 その他:選択肢アリ(但し、実質一本道みたいなもの) システム:吉里吉里/KAG 制作年:2011/5/14(Ver.1.00、本レビューはVer.2.02にて) 容量(圧縮時):59.0MB 道玄斎です、こんばんは。 忙しさがピークに達している今日この頃ですが、ノベルゲームに飢えて飢えて仕方ないので、ついに遊んじゃいました。たまたま、物凄くテンポの良い作品に出会えて、しかも、ちょっと優しい気持ちになれるような、そういう作品だったので、ご紹介致します。 というわけで、今日は「藍恋工廠」さんの『ウェザーウィッチ 気象魔女の夏』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。 良かった点 ストーリーは、ふりーむから引用しておきましょう。 気象を司る魔女が、気象制御中、事故で落下し、地上人に姿をさらしてしまう。 こんな感じ。 さて、以前ご紹介した事がある『娘子隊皓旗』の作者さんの作品です。 ちょっとファンタジックで、心温まるような、そういう作品でした。 あとがきを読むと分かるのですが、「気象+魔女」という組み合わせの面白さを発見し、それを物語として作っていった、という事のようです。 確かに、巷に溢れる「魔女」というのは、かなりステレオタイプでして、攻撃的な超自然的な力を行使でき、退廃的だったり、妙にミステリアスな造型だったり……という事が多いのですが、本作に出てくる「気象魔女」、フィレルは明るい「女の子」というような感じですし、一般にイメージされる「魔女もの」とは一味違う作品になっている、と云えるでしょう。 この「気象魔女」が、本作のオリジナリティの柱だと思うのですが、実は「天候魔女」と呼ばれる存在は「実在」していました。 ……と、この事を突き詰めていく為に、少しだけ久しぶりに脱線させて頂きますw そもそも、魔女ってなんでしょう? 史実との接点、という所では、やはり「魔女狩り」で摘発された人々、というのが第一にイメージされてきますが、ご存じの通り、「魔女狩り」で摘発され、結果処刑されてしまった人々の中には、男もいますし、実際には冤罪だらけだったわけです(当たり前ですね)。 ただ、その初期の段階では、「こいつは、どうも魔女じゃないか?」と思われるような、疑わしい女性が摘発され、それが「魔女狩り」という大きなムーブメントになっていったわけです。 つまり、「魔“女”」ですから、最初は「女性」が魔女と目され、その後、概念が拡大していったのです。 問題は、どんな女性が魔女とされたのか、という所なんですが、これには二つの系統があります。 一つは、「薬草などの知識が豊富で、占いなども行う女性」の系統です。独自に伝承された医学的・薬学的な知識を持ち、占いなどの神秘的な分野に通じていた人々ですね。 例えば、『魔女の宅急便』の映画を見ると、キキのお母さん(彼女も亦魔女なのです)が、薬を調合しているシーンが描かれています。これは、まさに第一のタイプの魔女の姿です。 もう一方のタイプの魔女は、、「共同体の中での嫌われ者や、社会的な弱者」の系統です。 前者と比較して、「神秘=魔的」な力こそ、あまり感じさせないものの、或るコンテクストに於いて、「有害」と見なされていた人々、と云えましょう。 この二者を比較すると、私達が一般に思い浮かべる魔女は、やはり前者の魔女の系統、という事になりましょうか。 さて、肝心の天候魔女、なんですが、どうも、やはりそれも前者の系統なんじゃないかな、と思います。 本作に於ける気象魔女というのは、「自然現象」として私達が受け止めている、降雨や嵐、或いは快晴、虹などを管理する存在です。そこに「善悪」の概念は存在せず、基本としては、予定表に従い、粛々と気象を管理していく、というのがその姿のようです。 しかしながら、自分達の気象管理によって困る人々がいる、という部分で、主人公フィレル等が悩むシーンもあり、気象魔女のあり方そのものに一歩踏み込む描写もある、とお伝えしておきましょう。 それはさておき、「実在」の天候魔女とは、ズバリ、「悪天候を呼び寄せ、作物の実りを悪くしたりする存在」です。つまり、「天候魔女」という事で告発され、処刑された人もいた、という事です。 この天候魔女は、やはり天候を操る、という神秘的な力を持っている為、私は一番目のパターンの魔女のヴァリアントだと思いますよ。 長々と説明してきましたが、実は天候・気象を操るとされる「魔女」がいた、というのは事実なんですね。 ただ、まぁ、説明した通り、本作の「気象魔女」というのは、そこに「善悪」の基準や指針があって、天候を操っているわけではなく、「仕事」として天候の管理をしている、という造型で、それ故、自らの引き起こした天候によって苦しむ人々を見て、心を痛める事もあるわけです。 物語は、前述の通り、淀みなく、流れるように進んでいきます。 本当にテンポ良く、気持ちよくプレイ出来る、というのは物凄い高ポイントなんですが、一方で、「ここはもうちょいじっくりと描写しても良かったかな」と思える所もあるのです。 その一つが、今お話した、「気象を操る事によって、人々を苦しめる事がある」という問題です。 気象魔女の存在そのものに関わる重大な問題だと思うのですが、その悩みは、フィレル達の感情を揺さぶり、行動の発端にはなるんです。 けど、その問題に対して、フィレル達は何か自分なりの結論を出す、という事はないんですよね。云うなれば、その問題は、サラリと流れて行ってしまうわけです。 気象魔女というオリジナリティと、そのオリジナリティ故に生じる悩みなので、もうちょっと掘り下げて描写されても良かったかな、と。 また、悲しさなら悲しさ、嬉しさなら嬉しさを、もっとジックリと表現する部分、つまり情緒的な表現が少し物足りなかったかな。 一方で、作品は相当重層的に出来ています。 そこの厚みに関しては大いに評価したい所。 ネタバレになりそうなので、少し自粛しながら話すと、気象魔女達が積み上げてきた「物語」が、物語前史としてあって、その上に、本作の一番の主人公という立ち位置のフィレルの物語が載っかっている、という作りです。 勿論、その物語前史は、ちょくちょくと顔を出し、或いは仄めかされたりして、フィレルの物語を楽しみながら、自然と、その深さを感じられるようになっています。 で、取り敢えず本編を読了すると、Extraの一つとして、物語前史そのものを読む事が出来るようになっていました。 まさにExtraに入るに相応しいお話なんですが、私は、何となくのレベルで、「これ、本編に上手いこと溶け込ませちゃった方がグッときたかも」と思ってしまったんですよね。 本編があって、そこでの物語に決着が着く。 その本編を補完するようなExtraがある。 Extraを見ると、本編の内容が良く分かる。 って事なんですが、それだったら、最初っから本編に、Extraの内容を織り込んでしまえば、本編のラストでもっとガツンとインパクトがあったんじゃないかな、と。 私はこうやってお気楽に書き飛ばしてますけど、実際にやろうと思ったら結構大変だというのも分かりますw だって、時間軸が違うわけですから、場面を上手く変えてやる必要があり、また主人公も違うわけで、視点の管理も必要になってきます。 上手く出来れば、効果的かもしれませんが、実際に上手く出来るかどうか、は分からない。 まぁ、何となく私が感じたこと、って事でご容赦下さいませ。 イラストはついていませんが、そこが却ってプレイヤーのイマジネーションを掻き立てますねぇ。 最近は、スマホ向けのノベルゲームなんてのも良く目にするのですが、「イラストがない」とか「イラストが綺麗じゃない」とか、そこのビジュアル部分が評価軸になっている、そうしたレビューを良く見かけます。 そうした意見だって当然あるとは思いますが、そこがそのレビューの主軸になっちゃうってのはなぁ……と、常々思っています。 優しい気持ちになれるような、そして同時にスピード感のある作品を探している方は、是非プレイしてみて下さい。 今日は脱線多めでしたけど、こんなところで。 それでは、また。 /* 以下、宣伝 私達が運営している、ノベルゲーム制作支援サイト(素材ポータルサイト)、Novelers' Materialなんてものがあるので、良かったら、利用してやって下さいませ~ 素材作者さんも大募集です! http://novelersmaterial.slyip.com/index.php リニューアルも完了し、より使いやすい素材ポータルサイトになっております。 以上、宣伝 */
by s-kuzumi
| 2014-12-19 20:19
| サウンドノベル
|
Comments(2)
ご無沙汰しています。
遅ればせながら、ウェザーウィッチを取り上げて頂いてありがとうございました。 本文の内容が三分割のようになってしまったのはこちらの力量不足でした。 文章も至らない部分が多くて、今見ると手直ししたいところばかりですね。 新作も作りたいですが、中途半端なプロットばかり積み上がってしまって。自分の悪いクセです。 レビューありがとうございました。
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s-kuzumi at 2015-05-14 20:38
>>藍恋さん
こんばんは。 ご無沙汰しております。 イラストがない作品でしたが、キッチリと「物語」になっていて、凄く楽しめましたよ! 内容の分割……は、私が何となく感じたというだけで、気にならない人も多いんじゃないかと思っています。 新作、楽しみにしています! この度は、コメント、本当にありがとうございました!! |
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