2015年 04月 02日
道玄斎です、こんにちは。 今日は珍しく昼間からの更新で御座います。 ■今このシーンで…… 今日は、「箸休め」なんですけど、従来通りのノベルゲームに関係する小ネタというか、そういう話をしていこうかな、と思っています。 で、早速なんですが、今、ノベルゲームで元気の良いっていったらいいのか、まぁ、ちょっと面白いシーンがあって、その一つが「女性向けゲーム」だってところから。 私……に限らず、男性のノベルゲーマーって、割と女性向けゲームに偏見を持ってますよね。 「ありえねぇような完璧超人、しかも優男達がヒロイン(女性プレイヤー)をチヤホヤすんだろ!」とか、「まーた、吸血鬼みたいな男が、純真な女の子に感化されて、その娘と共に生きる道を見つけるんだろ」とかね。 いや、云いたいことは分かります。 それに、それもあながち間違いじゃないw まさに私も昔洋ゲー紹介でやった『Torrey & the Vampire』をマイルドにしたような作風の女性向けゲームを何本もプレイしていますから。 けど、そうはいっても、何て云えばいいのか……「私達男性」が普通に楽しめない、というか食指が動く作品が中々リリースされてこない時期ってありますよね。 そういう時期をして、私なんかはついつい「停滞期」なんて呼んじゃったりするんですけど、女性向けの作品っていうのは、そういう時期でも絶対にコンスタントに制作され、供給され続けてるんですよね。 落ち着いて考えれば、これは凄い事ですよ。 同じような作品がいつの時代でも出てくるんですから、或る意味で、何て云うか能のような伝統芸能の趣すら感じてしまいます。 ■でも、それだけじゃないよね しかし、一応女性向きっぽい作品であっても、何かの拍子にプレイしたりする事ってあります。 そういうのがきっかけで、女性向け作品の一端が分かるんですけど、意外や意外、中々面白いんです。 お話の展開、みたいな所では、やっぱり従来の形を踏襲しているんですけど、結構細かいところで、色々な試みをしてるなぁ、というのが正直な所です。 例えば、BGM。 基本、男性が作る「一般向け」のノベルゲームって、「BGMは場面や背景に合ったものを選びましょう」というのが不文律になっていますけど、女性向けゲーム制作者(もう、縮めて女性制作者と呼びましょう)の場合、そうしたちっぽけな常識を打ち破るようなBGMの使い方をする人が最近増えています。 一見すると「合わないだろ!」って組み合わせを積極的に試していく。 で、結果的にそれが絶妙なコントラストになっている。作品の持つ世界観から浮く事なく、うまく場面になじんで非常に効果的に使われている……。 或いは、選択肢。 詳しく書くと作品を特定しちゃうから書きませんけど、非常に面白い選択肢の使い方をする作者さんも、ちらほら目に付くんです。 単純に「Aを選ぶと好感度+1で、Bを選ぶと-1ね」的なものじゃなくて、作品内容と選択肢(それは、もう、選択肢って云っていいのか分かりませんけど)が密接に絡み合っているもの、そこにゲーム性を強く感じさせるもの……。 とにかく、こういう部分で、非常に新しいというか、先鋭的な試みをしている人達が女性制作者さんなんですよね。 ほら、ノベルゲームでもサウンドノベルでもいいんだけど、基本「文章を読む」って事だから、あまり、手の加えようが無いような気がするんだよ。せいぜい、文句が出ない程度にシステムを整えるとか、その程度でさ。 けど、そういう枠組みの中で、何か面白いこと、思いついたことをやってみよう、とする姿勢があるっていうのはいいですよね(当然、失敗だってありますけど。そうそう、蒸し返して悪いんだけど、ワイド画面はまだそれを活かしたものが出てないような気がするんだよなぁ……。ワイド画面そのものを批判してるんじゃないってとこはご理解頂きたいのです)。 ■女性向けも大変なのです けど、女性向けにも問題がないわけじゃないんですよ。 先ほども少し触れましたが、大きな目で見れば、ストーリーの展開やら運びは、割と単調だし(逆に、そこが好まれる部分でもある)、ちょっぴり排他的な雰囲気もあるし。 先に挙げたような、先鋭的なことをやってる女性制作者さん達ってのは、やっぱり実力や冒険心があるから、シェアの方に移っていっちゃう、っていうのも、フリーゲーム好きとしては寂しいところだったりもします。 当然、シェアっていうのは、ちょっと「男性向け」の路線になる事が多くて、そういう事を考えても、「女性向け」ならではの市場でやっていく、っていうのは、厳しいんでしょうね。 ■ここらで定義 今まで、無節操に「女性向け」って言葉を使っていましたけど、大凡の定義は「(主に女性が制作者で)女性キャラクターが主人公となり、男性キャラクターと結ばれる(もしくは親密になる)事を目的とするゲーム」くらいのゆるーい定義です。 あっ、忘れる所だった。 実は、最近凄い面白そうな女性向け(?)ゲームを見つけたんです。 その名も『ラッパーと恋をする』というもの。 ご存じない方も多いと思います。なにしろ、この作品、スマホアプリの形式でのノベルゲームだからです。 普通だったら、歯の浮くようなセリフを連呼するであろう男共が全員ラッパーw なんか、すんごい尖ってますよねw 作者名を拝見すると、制作者は男性かなって気はするんですが……。 本当ならば、この『ラッパーと恋をする』を大々的に取り上げてみたかったんですけど、私のスマホではプレイ出来ませんでした! いや、インストールは出来たんです。で、タイトルも表示されたんです。そしてタイトルに表示された「はじめる」もタップ出来たんです。けど、そのあと、話が進むでもなく、タップ出来るようなものもなく……泣く泣くプレイを断念しています……。 プレイ出来なかったわけですから、推測でしかないんですけど、この作品はBGMでもなければ選択肢でもなく、攻略対象となる男性のキャラクターに強烈な個性を加えたものなのでしょう。 ともあれ、こういう方向での強烈な制作もある、というわけです。 で、話を戻して……。 先ほど、「(主に女性が制作者で)女性キャラクターが主人公となり、男性キャラクターと結ばれる(もしくは親密になる)事を目的とするゲーム」というのを女性向けゲームとして、定義したわけですけども、そうした恋愛や、それに準ずるような、まぁ、つまり男性を愛でる行為に主眼がない女性作の作品というのも、当然あるんですよね。 そうした「女性作」の全部が全部当てはまるってわけじゃないですけど、大凡の傾向っていうのもあって、そこらへんについても、少し言及してみましょう。 ■女性作ゲームの何となくの傾向 まず、「ファンタジック」な作風が多い、というのは云えるんじゃないかな、と思います。 これは、ここで云う「女性作」のものだけじゃなくて、先ほどから話題にしている「女性向け」でも云える事なんですけれどもね。 これも、ちょっと分類可能で、一つは「おとぎばなし」、つまりメルヘンな世界、という意味でのファンタジック。 そのものズバリ、既存のメルヘンを換骨奪胎してしまう、なんて事も良く行われます。 もう一つは、所謂中世風ファンタジーの世界観。 耳の長い種族がいて、機能性に乏しい鎧を着けた人達がいる、お馴染みの世界です。けど、私はそういうの凄い好きなんですよ! さらにもう一つは、産業革命前後の近世的な西洋世界。 単純に産業革命前後の文明だったらファンタジックじゃなさそうなんですが、大抵の場合は、「階級社会がまだ残り、魔法などの超自然的な力も微かに生き延びている世界」だったり、そういうファンタジックな味付けがしてあるのが特徴。 これも、中々魅力的ですよね。ちょっと脱線しますけど、なんていうのかなぁ、あのガス灯とかのデザインとかって、なんか凄い素敵じゃありません?w ま、大体、こんな分類が出来るんですね。 ここ数年の傾向として、「とにかく多産なタイプ」っていう、第三の区分もあるわけですが、それはまたの機会にお話致しましょう。 ■こんな違いもあるんです 色々書いてきましたけれども、最初に定義した「(主に女性が制作者で)女性キャラクターが主人公となり、男性キャラクターと結ばれる(もしくは親密になる)事を目的とするゲーム」に、また話は戻ります。 結局、男主人公が、ヒロインとピュアな恋愛をするタイプ(これを、女性向け作者さんは「一般」と呼ぶ事が多いようです)の、性別を逆にしたものが、女性向けゲームの一つの正体という事になります。 けど、本当に違いはそれだけなのでしょうか? いやいや、実は、凄く大きな違いが、ゲームそのもの、ではなく、プレイヤーの方にあるのです。 というのも、私達が、男主人公がヒロインとピュアな恋愛をするゲームをしても、本気で自分を投影しませんよね? いや、寧ろ、ゲームの作り上、現実の自分ではとても出来ないような凄い事を達成出来る人物、として主人公が設定されていませんか? 「こうありたかった」という願望を体現しているような……。 そもそも、学校という枠の中で、あの飄々としたポジションを保っていられる、というのも云ってしまえば「ゲーム的」なのです。 しかし、女性向けゲームの場合、「主人公の女の子に対して、プレイヤーが自己を投影している」ケースが多いのです。 以前、知り合いが「読者とプレイヤーってのは違うよなぁ」と悩んでいましたけど、もしかすると「自己を投影出来るか否か」がノベルゲームでは、その分かれ目なのかもしれません(その要素の為に「選択肢」の使い方とか、また色々な問題が絡んでくるのでしょう)。「読者」っていうのは、ちょっと物語から引いた立場ですしね。 閑話休題。 ともあれ、女性向けゲームの女主人公は「無個性」であるというのが、一つの様式として成り立っており、サーチエンジンでも「個性なし」という項目があるくらいなのですw 何本か典型的な女性向けのゲームをプレイしてみれば、良く分かるのですが、主人公は「美人でもないけど、ブスでもない」という描かれ方が物凄く多いのです。一枚絵や立ち絵では非常に可愛いのですけれどもw 「こんな、何の取り柄もないわたしに……」的な、一昔前の少女漫画的……と云ってもいいのかもしれません。 更に、ゲームを起動して「はじめる」を押すと真っ先に出てくるのが「主人公の名前入力」です。 これも、以前書きましたが、「名前入力させず、デフォルトの名前の作品を作ったら、苦情がきた」という話も結構聞きます。 つまり、名前を入力したいわけですよね? 自分の名前か……或いは本名よりも自分を投影出来る名前かを。 そうなんです、つまり、プレイヤーの自己投影度、が、女性向けとその他のそれでは大きく異なっているのです。 こういう、ゲームを遊ぶ側の意識の違い、というのもあるんですよね。 ■まとめ まぁ、「女性向けゲームが面白いぞ!」という所から始まって、多少、大なたを振るった感はありますが、その分類や特徴を書いてみました。 いや、けど、ほんと、今一番元気がいいのって、女性向けゲームの最前線で頑張っている人達なんじゃないかな? って本気で思ってます。 女性向けのゲームの世界には、ある種の閉鎖性があったり、不文律のようなものが存在していたり、実は、あんまりオープンな場ではなかったりするんですけど、そういうのを、これから、第一線の女性制作者さん達が、切り拓いてくれたら、もっと面白いもの、女性向けと限定しなくても十分に楽しめるもの、が生み出せるんじゃないかな? そして、その時にはもはや「一般」とか「女性向け」とか、そうしたこぢんまりとしたジャンル分けも無くなっているんじゃないかな? なんて思いつつ、筆を擱かせて頂きます。 それでは、また。
by s-kuzumi
| 2015-04-02 12:35
| サウンドノベル
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Comments(2)
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紅茶
at 2015-07-23 23:47
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初めまして、紅茶と申します20代女です。今回の「女性向け」に関する記事、興味深かったです。
私も逆に、男性向けゲーム(所謂galゲーム?)に偏見を持っていました。 「どうせツインテールのろり系美少女や、同じ年なのになぜかですます口調な不思議ちゃんが主人公(男性プレイヤー)に群がるんだろ!」とか、 「必ず主人公のことが大好きなツンデレ幼馴染がいるんだろ!」とか、 「まーた、平凡な男が、なんか知らんが「力」に目覚めて、女の子たちを守る熱い展開があるんだろ!」とか(笑)。 とまぁそんな偏見にまみれていたので(笑)、男性向けはあまりプレイしませんでしたが、それでも日頃お世話になっていて、 自分と好みが合うなぁと感じるレビューサイトさんでお勧めされていると、プレイすることもあります。 その場合、男性管理人さんがお勧めするゲームと、女性管理人さんがお勧めするゲームをプレイしたときに、 どちらも「男性向け」の作品なのに、男性管理人さんのお勧めはあまり楽しめなかったということがよくあります。 また、製作メンバーが全員男性という乙女ゲームを先日プレイしましたが、やはり女性が作るものとは違っていて、 大まかに言えば「少年漫画の主人公を女にして、甘いシーンを所々入れてみた」といった印象なのですが、 ストーリーはともかく、「乙女ゲーム」として楽しめたかというと謎でした。 これらのことも、道玄斎さんが仰るように、(好みもありますが)自己投影だとか男女の感覚の違いもあるのかなぁと思いました。 ただ、恋愛要素がなくとも、女の私は感覚的にチョイスしないだろうなぁと思う作品も、 道玄斎さんや他の男性レビュワーさんの素敵なレビューを見て、興味を惹かれてプレイしてみたときに凄く楽しめた作品があると、非常に嬉しく得した気分になります。 とまぁ結局何が言いたかったのかといった感じですが、これからも男性向け、女性向けに限らず、素敵なレビューを楽しみにしてます。
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s-kuzumi at 2015-07-30 12:33
>>紅茶さん
はじめまして。 コメント、ありがとうございました! 女性向け、というのは一見するとステレオタイプな作品群、という感じなのですが、一度、真摯に向き合ってみると、そこに思いも寄らなかった深さを感じることがあります。 記事にも書いたのですが、BGMの使い方が尖っていたり、新しいことに積極的にチャレンジしていくような姿勢など、寧ろ、今は女性向けの作品のほうが活発な印象すらありますね。 私も、女性向けのゲームにBGMだったり、シナリオのお手伝いだったり、デバッグだったり……で関わるなかで、その深みを思い知ることになりましたw 私は……割合、女性向けも取り上げている方だと思うのですが、これからもグッとくるような女性向け作品に目配りしていきたいですね。 ちなみに、こういう感じの記事でしたら、 http://www.0en-game.com/free/column_dougensai_01.html こんなところで連載を持たせてもらっています。 11回目以降が面白いので(自画自賛!)、もしお時間があれば、こちらもどうぞ! また、どうぞお気軽にコメント残していって下さいね。 |
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