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久住女中本舗

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2015年 08月 24日

フリーサウンドノベルレビュー 『Lost order ~Last Smile~』

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今日の副題 「この終わりの世界で生きていく」

※大吟醸
ジャンル:女性向け頽廃世界分岐ノベル
プレイ時間:1章3時間程度。合計で10時間ほど
その他:選択肢アリ(後述)、18禁。注意書きを読んだ上でのプレイすること。
システム:LiveMaker

制作年:2014/8/28
容量(圧縮時):92.5MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、人から勧められた作品をご紹介。
最初は、「女性向け」ということで、ちょっと身構えていたのですが、プレイしてみるととっても面白いですし、内容もとても上質だったのです。
というわけで、今回は「Imitation gallerY」さんの『Lost order ~Last Smile~』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・どのキャラクターにも魅力が感じられる丁寧な描写と物語構成。

・暗めの世界観だが、その中でも前向きで上質なエンド。


気になった点

・残酷、グロ描写など苦手な人は要注意。

・いささか誤字の類が多かった気が。


さて、ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。
こちらからどうぞ。



というわけで、久々にプレイのし応えのある長尺のものをプレイしました。

最初は、女性向けということでしたから、ある種のセオリー通りに話が進むのかと思いきや、全くそんなことはなく(主人公の女性に個性がありますし)、開始直後から良い意味で裏切られた作品でした。

というのも、舞台は架空の近未来。
奇病の蔓延により、ゆっくりと人類が滅亡していく、そんな退廃的な世界が舞台で、少し暗いトーンのストーリー展開があったからです。

そして、その世界を牛耳る怪しげな民間組織の下級構成員が主人公のトート(名前変更可)。
彼女を軸にして、物語が進んでいきます。


良いな、と思えたのは、主人公が下級構成員であるが故に、上層部からのミッションをこなしていかないといけない、というところ。
そして、そのミッションに沿う形で、それぞれのキャラへの掘り下げがあり、ストーリーが前進していく構成がとても良かったです。

キャラクターの描写も本当に丁寧で、脇役が本当に魅力ある存在となっているのです。
これは中々出来ることじゃありません。
後書きを読むと、「群像劇」を意識された、とのことですが、なるほど納得です。

主人公とその相手(今回は、女性向けなので男性キャラということになります)だけが焦点化されていくのではなく、脇役には脇役の人生や行動の指針がちゃんとあって、それがメインのストーリーにしっかりと結びついている作りは、王道を踏まえながら、そこに丁寧な物語作りを感じさせてくれます。
そういった意味で、名作『TRUE REMEMBRANCE』に通じる部分もあると思います。どちらも、少しファンタジックな世界を持っていますしね。

個人的なお気に入りは、主人公トートの姉貴分、ヴォルガーレです。
どうしてお気に入りなのか……というのは、プレイして頂ければ分かると思いますw 凄く魅力あるキャラクターですよ。


さて、本作は選択肢ありの作品なのですが、選択肢の使われ方とでもいいましょうか、そうしたものがちょっと独特なので、ここで解説しておきましょう。

第1章から選択肢が出て、ストーリーが分岐していくのですが、それぞれの章によって主人公と結ばれる相手が違います。

例えば、第1章ではチェシャ、第2章ではギル、といったように。
第1章で、チェシャの個別ルートに入ってしまえば、第1章が終わった時点で物語がおわります。
逆に、チェシャの個別ルートに入らなかった場合、ストーリーは第2章へと続き、またギルとの個別ルートに入るか入らないかを、選択肢で選んでいくことになるのです。

ちょっと変わっていますよね。


一つ、言えるのは、「どのエンドも完璧なハッピーエンドではない」ということです。
それは、最終章のトゥルーエンドでもそうです。

何しろ、世界規模で人類が滅亡しつつあるわけで、そうした世紀末的な退廃的なトーンが本作の魅力の1つでした。そして、そのトーンは最後まで失われることはありません。

しかし、そうした世界の中で得られる幸せ、目標、そうした希望(というとあまりに安直ですが)を微かに感じさせる、暗いトーンの中だからこそ活きるエンドはしっかりと描かれています。
これは、安易な形でのハッピーエンドよりも、遙かに説得力があるのです。


上手く説明出来ないのですが、私が凄く好きだった80年代後半~90年代中盤頃のジュブナイル小説(ラノベっていうと、ちょっと違う雰囲気が出てしまうので)に近い雰囲気を持っている作品でした。

そうした小説の中には、ただ単に明るい楽しい話だけではなく、ちょっと渋いというか深みを感じさせる作品があって、それに非常に手触りが似ているのです。
作家の名前まで出しちゃうと、「小林めぐみ」や「冴木忍」(のシリアス作品)あたり、というと伝わる人も多いかと思います。


気になった点は、先に挙げた通りです。
ストーリー的な部分では、何も言うことがありません。

強いて言うならば、サクレのキャラクターは、第1章、第2章でもうちょい主張があっても良かったかな、というくらいです。


長いプレイ時間が全然苦にならない丁寧な構成と、キャラクターの掘り下げが本当に見事な作品です。
女性向け、ということではありますが、男性がプレイしても全く問題がない……というより、是非プレイしてもらいたい作品になっています。

本当に最近は、女性向けのゲームで素晴らしいものが増えてきました。
ちょっと甘いかな、と思いながら、今回は大吟醸です!



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by s-kuzumi | 2015-08-24 19:48 | サウンドノベル | Comments(0)
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